更新日:2026年3月5日 (木)

公開日:2022年5月6日 (金)

離婚調停の取り下げはできる?手続き方法や注意点を弁護士が解説

離婚調停の取り下げはできる?手続き方法や注意点を弁護士が解説 離婚調停の取り下げはできる?手続き方法や注意点を弁護士が解説

サマリー

離婚調停を申し立てたものの、夫婦関係の修復や当事者間での話し合いへの移行、調停の進行への不満などから、手続きを取り下げるべきか悩む方もいるのではないでしょうか。

離婚調停は申立人の意思で取り下げることが可能ですが、取り下げ後の相手方との関係性や費用の精算など、あらかじめ押さえておきたい実務上のポイントもあります。

この記事では、離婚調停を取り下げる際の手続きの流れや、取り下げを検討する際の注意点について解説します。

離婚調停の取り下げは可能?基本的なルールと効果

離婚調停の取り下げは可能?基本的なルールと効果

離婚調停の手続きを進めるなかで、状況の変化や気持ちの整理により、調停を途中で終了させたいと考える場面が生じることがあります。

法律上、離婚調停の取り下げは申立人に認められた権利とされています。

申立人の意思による自由な取り下げ

離婚調停は、家事事件手続法第273条1項の規定に基づき、調停手続きが終了する前であれば申立人の判断によっていつでも取り下げることが可能です。

調停期日の当日であっても、手続きが成立または打ち切りによって終了する前であれば取り下げを行えます。

取り下げにあたって相手方(配偶者)の同意や裁判所の許可を得る必要は原則としてありません。

調停は当事者間の話し合いを基礎とする手続きであるため、話し合いの場を維持するかどうかは申立人の自由な意思に委ねられています。

話し合いの継続が不要になったと申立人が判断した場合に、裁判所が手続きを強制することはありません。

手続き終了の効果と相手方への通知

申立ての取り下げが行われると、申立てそのものが撤回され、当該調停手続きは直ちに終了します。

取り下げを行った事実自体が、将来的に再度調停や訴訟を申し立てる際に直ちに不利な事情として扱われるとは限りません。

調停が取り下げられた場合、手続き上の公平性を確保するため、原則としてその旨が相手方へ通知されます。

申立人から相手方に直接通知していない場合は、裁判所書記官から相手方へ通知が行われる仕組みです。

相手方に知られずに調停を終えることはできないため、取り下げ後の関係性や協議の再開を見据え、必要に応じて理由を含めた丁寧な対応を検討することが望まれます。

「取り下げ」と「調停不成立」の違い

調停が終了する形式には「取り下げ」のほかに「調停不成立」などがあります。

両者は決定権者や終了後の進路において明確に異なります。

調停不成立は、合意形成が困難であると調停委員会(裁判官および調停委員)が判断して手続きを打ち切るものです。

これに対して取り下げは、申立人自らの判断で手続きを終了させる点に違いがあります。

比較項目 調停の取り下げ 調停不成立
決定権者 申立人の単独の意思 調停委員会(裁判官・調停委員)
終了の性質 申立ての撤回による終了 合意の見込みがないことによる打ち切り
終了後の主な選択肢 当事者間協議への移行、関係修復など 離婚訴訟(裁判)の提起の検討など

不成立となった場合は次のステップとして離婚訴訟の提起が視野に入ることが一般的ですが、取り下げを選んだ場合は裁判外での話し合いに戻るなど、状況に応じた選択を行いやすくなります。

離婚調停の取り下げが検討される主な理由

離婚調停の申立てを取り下げるに至る背景は、夫婦それぞれの事情によって多岐にわたります。

前向きな関係修復から手続き上の課題まで、代表的な3つの理由を解説します。

夫婦関係の修復や復縁を決意した場合

調停期日を通じて相手方の本音や考えを冷静に把握できたことや、別居や調停期間による一定の冷却期間を経たことで、関係修復を望むようになるケースがあります。

夫婦の間で復縁に向けた意思の一致が得られた場合、離婚調停の手続きをそのまま継続する必要性はなくなります。

家庭生活の再構築に集中するため、速やかに申立てを取り下げることが実務上の選択肢として検討されます。

裁判所に提出する取下書の理由欄にも「円満同居」などの項目が用意されています。

当事者同士の話し合い(協議)に戻す場合

調停を一定期間進めた結果、相手方の具体的な意向や争点が整理され、裁判所を介さずに直接交渉したほうが迅速かつ柔軟に解決できると判断される場面もあります。

家庭裁判所の調停期日は月に1回程度の間隔で指定されることが多いため、手続きの進行に数か月から1年以上の時間を要することも珍しくありません。

大枠の合意形成が見込める段階になった場合は、調停を取り下げて当事者間の協議離婚手続きへと移行させる方法が採られることがあります。

調停委員の対応や手続きの進行に精神的負担を感じた場合

調停委員は公平・中立な立場で話し合いを仲介することが求められますが、担当者の進め方によって「相手方の言い分ばかり尊重されている」「自身の心情が理解されていない」と感じるケースも存在します。

中立性に強い疑問を抱いたまま期日への出頭を重ねることは、申立人にとって大きな精神的負担や疲弊につながるおそれがあります。

こうした手続き上の不満やストレスから、一度手続きを終了させて態勢を立て直す目的で取り下げが選ばれることがあります。

離婚調停を取り下げる具体的な手続きと流れ

離婚調停を取り下げる際の手続きは、書面による方法が原則となりますが、期日当日に口頭で行う方法も認められています。

具体的な流れや必要書類の記載事項を確認しておきましょう。

調停申立て取下書の作成と家庭裁判所への提出

離婚調停を取り下げる場合は、原則として「調停申立て取下書」を作成し、事件が係属している家庭裁判所(または支部・出張所)へ提出します。

申立人が署名押印した取下書が裁判所に受理された時点で、調停の申し立ては取り下げられます。

取下書には、手続きを正確に特定し、取り下げの趣旨を明確にするために以下の項目を記載します。

  • 事件番号および事件名(例:令和〇年(家イ)第〇号、夫婦関係調整(離婚)事件)
  • 当事者の氏名(申立人および相手方)
  • 取り下げの理由(「協議離婚成立」「円満同居」「金員支払い等の協議成立」「話し合いがつかない」「都合により」「その他」など)

取り下げ理由については、様式に用意されている選択肢から該当するものを選び、必要に応じて具体的な事情を記入します。

正確に記載しておくことで、裁判所での事務処理や相手方への連絡が円滑に進められます。

調停期日における口頭での取り下げ

書面での提出が原則であるものの、調停期日に申立人が出席している場合に限り、例外的に裁判官や調停委員に対して口頭で取り下げの意思を伝えることも可能です。

口頭での取り下げは、期日当日の話し合いの中で復縁が決まった場合や、直接の協議に切り替える合意が突発的に形成された場合など、速やかに手続きを終結させたい場面で用いられます。

なお、口頭で取り下げを申述した場合であっても、手続きの確実性を担保するため、裁判所書記官がその内容を調書に記載する処理が行われます。

離婚調停を取り下げる際の3つの注意点

離婚調停の取り下げは申立人の意思で自由に行えますが、実行に移すにあたっては費用面や相手方との関係性など、いくつか考慮すべき点があります。

後悔のない選択をするために、主な注意点を確認しておきましょう。

弁護士費用(着手金など)の精算に関する注意点

離婚調停の取り下げ手続き自体には、裁判所へ納める追加の手数料などは発生しません。

しかし、弁護士に調停の代理を依頼している場合は、すでに支払った着手金の精算について確認が必要です。

委任契約を中途で終了する場合、返金の有無や金額は契約内容および弁護士の業務進捗状況によって判断されます。

申立書の作成や期日出席の準備など、すでに業務に着手している場合は、費やされた労力に応じた費用が差し引かれるのが一般的です。

業務が進むほど精算額が増加する可能性があるため、取り下げを検討し始めた段階で、早めに担当弁護士へ費用の精算基準について相談することが推奨されます。

相手方の心証や今後の協議への影響

調停の取り下げによって法的な不利益を直接受けることは原則としてありませんが、相手方の感情や心証に影響を与える可能性があります。

相手方からすると、調停の途中で突然申立てを取り下げられることで、戸惑いや不信感を覚えるケースがあります。

特に当事者同士の協議に戻る目的で取り下げる場合、一方的な打ち切りと受け止められると、その後の話し合いが難航するリスクも生じます。

取り下げ後の関係性を円滑に保つためには、復縁や協議への移行など、取り下げに至った理由を相手方に誠実に伝える配慮が望まれます。

調停委員への不満が理由の場合の代替手段

調停委員の中立性や手続きの進め方に不満を感じて取り下げを考えている場合、即座に取り下げる前に講じることができる対処法もあります。

調停委員に対して感情的にならず、中立な立場での進行を求める具体的な要望を冷静に伝えることが基本となります。

それでも改善が見られない場合は、調停委員会を構成する裁判官に直接相談し、進行方法についての配慮を求めることも可能です。

また、弁護士に依頼して調停期日に同席してもらうことで、法的な根拠に基づいた適切な主張を展開し、公平な話し合いの場を整えやすくなる場合もあります。

これまでの手続きの積み重ねを無駄にしないためにも、代替策を検討したうえで最終判断を下すことが有効です。

調停の取り下げや今後の進め方に迷ったら弁護士へ相談

調停の取り下げや今後の進め方に迷ったら弁護士へ相談

離婚調停の取り下げは、申立人の意思で行える手続きですが、その後の夫婦関係や法的な解決に向けた流れに与える影響を十分に考慮して進めることが大切です。

取り下げを検討する理由は、関係修復や直接の協議への移行、手続きの進行への疑問など状況により様々ですが、いずれの場合も中長期的な見通しを持った上で判断することが求められます。

特に、調停の進行に戸惑いや不満を感じている場合、感情的な判断で手続きを打ち切ってしまうと、その後の話し合いが難航したり、問題の解決が遠のいたりするリスクも考えられます。

調停手続きを中断することが本当に望ましい選択なのか、現状の問題点を整理した上で慎重に検討することが重要です。

調停の取り下げや今後の進め方に迷いが生じた際には、家事事件を取り扱う弁護士へ相談してみるのも選択肢の一つです。

弁護士は、これまでの調停の経過や双方の事情を法的な観点から整理し、調停を続けるべきか、取り下げて当事者間の協議や別の手段へ移行すべきかについて助言を行うことができます。

また、調停委員とのやりとりに難しさを感じている場合であっても、弁護士の同席や法的な主張の整理によって、手続きの進行状況が改善するケースもあります。

客観的な取扱分野の知見を取り入れることで、取り下げ以外の解決策が見出せる可能性もあります。

離婚調停の取り下げは、これまでの進め方を見直し、今後の方向性を再構築するための契機となり得ます。

納得のいく解決を目指すためにも、自身の状況に合わせた適切な進め方を冷静に見極め、必要に応じて弁護士の知見を活用しながら判断していくとよいでしょう。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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