更新日:2026年3月4日 (水)
公開日:2022年4月11日 (月)
養育費算定表は高すぎる?養育費を払えないときの対処法
サマリー
離婚時に取り決めた養育費や算定表の基準額が高額で、収入の減少などにより毎月の支払いが困難になり悩んでいる方も少なくないでしょう。
支払いが厳しいからといってそのまま放置してしまうと、財産の差押えなどの法的リスクにつながるおそれがあるため、正当な手続きを踏んで減額を求めることが重要です。
この記事では、養育費算定表の仕組みや相場をはじめ、養育費の減額が認められる主なケース、具体的な対処手順や弁護士への相談について分かりやすく解説します。
養育費算定表の仕組みと金額の目安
養育費の金額を取り決める際は、家庭裁判所が実務上の参考資料として公表している「養育費算定表」が広く活用されています。
この算定表は、裁判所における養育費の算定基準を分かりやすくまとめたものです。
算定表では、養育費を支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)双方の収入状況や、子どもの年齢(14歳以下または15歳以上)、子どもの人数を組み合わせて目安となる金額が算出されます。
養育費の目安(受け取る側の年収が0円・子どもが14歳未満の例)
受け取る側の年収が0円で、子どもが14歳未満の場合における養育費の目安は以下の通りです。
支払う側の年収や子どもの人数によって月額の基準が異なります。
| 支払う側の年収 | 子ども1人(月額) | 子ども2人(月額) |
|---|---|---|
| 年収400万円 | 4万〜6万円 | 6万〜8万円 |
| 年収500万円 | 6万〜8万円 | 8万〜10万円 |
| 年収600万円 | 6万〜8万円 | 10万〜12万円 |
令和元年の改定と算定表の位置づけ
養育費算定表は、社会経済情勢の変化などを踏まえて令和元年に改定が行われました。改定前は「金額が低すぎる」との指摘もあったことから、多くのケースで従来よりも養育費が増額される方向で見直しがなされています。
一方で、この改定によって支払う側の負担感が増し、支払いの継続が難しくなるケースも想定されます。ただし、算定表に示されている金額はあくまで一般的な標準的目安です。
算定表に記載された金額を機械的に適用しなければならないわけではなく、当事者の個別事情や合意に応じて減額を協議・請求することも可能です。
養育費の減額が認められる可能性がある主なケース
養育費は一度金額を取り決めた場合でも、その後に予測できなかった事情の変化が生じた際には、減額について協議したり調停を申し立てたりすることが認められる場合があります。
取り決め当時に相場以上の金額で合意していた場合
養育費の金額は当事者間の合意が基本となるため、離婚時に算定表の基準を大幅に上回る金額を設定しているケースも見られます。
取り決め後に支払いを継続することが著しく困難になった場合、算定表が示す一般的な相場を参考にしながら適正な金額への見直しを求める余地があります。
支払う側の収入がやむを得ず減少した場合
支払義務者の勤務先の業績悪化による給与の減少や、病気・怪我によって従前のように働くことが難しくなった場合などは、減額が認められる要因になり得ます。
ただし、収入の減少理由が本人に責任のないやむを得ない事情によるものであることが重視され、就労可能な状態であるにもかかわらず理由なく働かないような場合は、減額が認められない可能性があります。
受け取る側の収入が大幅に増加した場合
支払う側の状況だけでなく、養育費を受け取る側の経済状況が変化した場合も考慮されます。
例えば、離婚当時は無収入やパート勤務であった受取側が、その後に就職してフルタイムの正社員になるなどして大幅に収入が増加したケースでは、負担割合の再検討が行われることがあります。
再婚や養子縁組により扶養関係が変わった場合
離婚した元夫婦の双事または一方が再婚した際にも、養育費の支払額に影響が及ぶことがあります。
特に、受取側が再婚して子どもが再婚相手と養子縁組を結んだ場合、再婚相手が子どもに対する第一次的な扶養義務を負うことになるため、実親である支払側の養育費支払義務が減額または免除される可能性があります。
養育費を支払えないときの具体的な対処手順
収入の減少などにより養育費の支払いが難しくなった場合には、独断で支払いを止めたり金額を減らしたりせず、段階を踏んで法的に適切な手続きを進めることが求められます。
1. 相手方(受取側)との直接の話し合い(協議)
支払いが困難になった事情が生じた際は、まず受け取り側の相手方に対して現在の収入や生活状況を誠実に説明し、養育費の減額についての話し合い(協議)を試みます。
養育費は双方の合意があれば、柔軟に金額や支払い方法の変更が可能です。
当事者同士の口頭のみの合意では、後日「減額に同意していない」といった認識の食い違いが生じ、トラブルに発展するおそれがあります。
減額について相手方の承諾を得られた場合は、合意書などの書面を作成して内容を明確に残しておくことが大切です。
話し合いで合意に至った場合は、後々のトラブルを防ぐためにも、減額後の金額や適用期間を明記した合意書を作成しておくことが重要です。
2. 家庭裁判所への養育費減額請求調停の申立て
直接の話し合いを行っても相手方が減額に同意しない場合や、連絡が取れず話し合い自体が難しい場合には、家庭裁判所に「養育費減額請求調停」を申し立てることができます。
調停手続きでは、裁判官や調停委員が双方の間に立って事情や収入資料などを確認し、客観的な基準をもとに合意に向けた話し合いを進めます。
事案によって異なりますが、調停が成立するまでには数か月から1年程度の期間を要することもあります。
調停での話し合いがまとまらず不成立(不調)となった場合は、自動的に「審判手続」に移行します。
審判では、裁判官が提出された収入証明資料や双方の生活事情などを総合的に考慮し、養育費の減額の可否や金額を決定します。
養育費を支払わずに放置する法的リスク
支払いが困難でも扶養義務は消滅しない
病気や減収などにより経済的な事情が変化し、養育費の支払いが難しくなった場合であっても、法律上の親としての扶養義務が自動的に消滅することはありません。
事前に減額の話し合いや裁判所の手続きを行わずに独断で支払いを停止してしまうと、未払い分が累積し、後から一括で請求されるなど深刻なトラブルへ発展する懸念があります。
債務名義がある場合の強制執行(差押え)
離婚時に強制執行認諾文言付きの公正証書を作成していたり、調停調書や判決・審判書などの「債務名義」が存在していたりする場合、受取側は裁判所を通じて強制執行の手続きを申し立てることができます。
強制執行が実行されると、預貯金口座だけでなく給与の一部なども差押えの対象となります。
給与が差し押さえられた場合には裁判所から勤務先へ通知が送られるため、養育費の支払いが滞っている状況を職場に把握される要因にもなります。
財産開示手続への出頭義務と刑事罰
支払義務者の財産や勤務先が把握できない場合、受取側は裁判所に「財産開示手続」の申立てを行い、財産状況の開示を求めることができます。
裁判所から呼び出されたにもかかわらず正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰の対象となる規定が定められています。
このように、支払いが困難だからといって連絡を絶ち放置することは法的リスクを高める結果につながるため、早い段階で適切な対応を取ることが重要です。
養育費の減額手続きやトラブルに関する弁護士への相談

養育費の減額を求めて元配偶者と直接話し合おうとしても、感情的な対立が生じて冷静な協議が進まないケースは少なくありません。
相手方と直接連絡を取ること自体に大きな精神的負担を感じる場合もあります。
弁護士に依頼した場合は代理人として相手方との交渉を任せられるため、直接顔を合わせたり連絡を取り合ったりするストレスを軽減しながら話し合いを進めることが可能です。
法的な妥当性の判断と見通しの把握
養育費の減額が認められるかどうかは、取り決め当時の前提となった事情からの変化や、双方の現在の収入・生活状況などを総合的に考慮して判断されます。
法的な観点から減額請求が認められる見通しや妥当な金額水準について事前に助言を受けることで、無理のない現実的な方針を立てやすくなります。
調停や審判における適切な対応と主張の整理
話し合いがまとまらず家庭裁判所での調停や審判に移行した場合、減額を求める理由や収入減少の客観的な裏付け資料を適切に提出し、調停委員や裁判官へ論理的に説明する必要があります。
弁護士のサポートを受けることで、必要となる証拠資料の準備や法的な主張の整理を的確に行い、調停期日への同席や審判への対応を任せることができます。
養育費が高すぎて毎月の支払いに困窮している場合や、当事者間での話し合いが難航している場合は、早い段階で弁護士に相談して適切な法的手続きを検討するとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。