更新日:2026年3月4日 (水)
公開日:2022年4月7日 (木)
離婚で父親が親権を獲得するには?割合や判断基準を解説
サマリー
離婚に際して「父親でも子どもの親権を獲得できるのか」「どのような基準で判断されるのか」と悩む方は少なくありません。
統計上は母親が親権者となるケースが多い傾向にありますが、親権の指定においてはこれまでの監護実績や子どもの意思、離婚後の養育体制などが総合的に考慮されます。
この記事では、父親の親権獲得に関する統計データや実情、家庭裁判所における主な判断基準や準備しておくべきポイントを分かりやすく解説します。
離婚時に父親が親権を獲得する割合と現状の傾向

未成年の子どもがいる夫婦が離婚する際には、父母のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。
一般的な傾向として、父親よりも母親が親権者となるケースが多く見られます。
統計データに見る父親の親権獲得割合
厚生労働省の「人口動態統計」によると、離婚時に父親が子どもの親権を獲得する割合は、全体を通しておよそ1割程度で推移しています。
子どもの人数別の推移を見ても、父親が親権を持つ割合は概ね1割強にとどまっており、大多数の家庭で母親が親権者として定められている実態がうかがえます。
| 年 | 総件数 | 夫が親権を取得 | 妻が親権を取得 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 58,029件 | 7,516件(13.0%) | 50,513件(87.0%) |
| 2017年 | 57,166件 | 7,307件(12.8%) | 49,859件(87.2%) |
| 2018年 | 55,682件 | 7,218件(13.0%) | 48,464件(87.0%) |
| 2019年 | 55,251件 | 7,283件(13.2%) | 47,968件(86.8%) |
| 2020年 | 51,406件 | 6,716件(13.1%) | 44,690件(86.9%) |
子どもが2人の場合では父親が全児の親権を持つ割合は約11%前後、3人以上の場合では約10%前後となっており、子どもの人数に関わらず母親が親権を持つ割合が高い傾向にあります。
母親が親権者として指定されるケースが多い背景
統計上で母親の親権獲得割合が高い背景には、日常的な育児の担い手に関する家庭環境が大きく影響しています。
婚姻中、父親が外で働き母親が中心となって子育てを担う分担をしている家庭がまだ多く存在します。
親権の判断においては「これまで実際に誰が子どもを主に世話してきたか」という監護の実績が重視されます。
そのため、日々の生活を共に過ごす時間が長かった母親が親権者として指定されやすい傾向があります。
また、子どもの意見が聴取可能な年齢に達している場合、日常的な関わりが深かった母親との生活を子ども自身が希望することも、母親側が親権者となりやすい要因のひとつと考えられています。
父親が親権を持つ場合のメリットと実情・留意点
父親の経済力と親権判断における位置づけ
父親が親権を希望する際、母親よりも安定した収入や経済力がある点を強みとして考えるケースは少なくありません。
厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、母子世帯の平均年間収入が243万円であるのに対し、父子世帯は420万円となっており、統計的にも父親側の収入が高い傾向が見られます。
しかし、親権者の指定においては、単に親の収入の多さだけで判断されるわけではありません。
法律上、親には子どもに対して自分と同程度の生活を保障する生活保持義務があり、夫婦間の収入差は養育費の支払いや公的な給付によって補完できると考えられているためです。
経済的な安定は考慮要素の一つではあるものの、収入の多さのみを理由に親権が認められるわけではない点に留意が必要です。
仕事と育児の両立における監護時間の確保
父親が親権者となる場合、生計を維持するための仕事と日常的な育児をどのように両立させるかが大きな課題となります。
特にフルタイムで勤務している場合、朝夕の送迎や食事の準備、急な体調不良への対応など、子どもと接する監護時間を十分に確保することが難しくなるケースがあります。
親権の判断においては「実際に子どもと過ごし、身の回りの世話を行える時間や体制があるか」が重視されます。
そのため、父親が親権を希望する際には、自身の勤務形態の調整や、周囲のサポートを得ながらどのように監護時間を確保するかが問われます。
養育費の受け取りに関する実情と留意事項
養育費は子どもの監護費用として、親権を持たない親から監護する親に対して支払われるものです。
したがって、父親が親権者となった場合には母親に対して養育費を請求する権利があります。
ただし、算定される養育費の金額は双方の収入に応じて算出されるため、母親側の収入が低い場合は受け取れる金額も少額になる傾向があります。
厚生労働省の調査では、父子世帯において「養育費を受け取ったことがない」と回答した割合が86%に達している実情もあります。
父親が親権を持つ場合は、養育費の支払いに過度に依存することなく、単独で子どもを養育できる生活設計をあらかじめ想定しておくことが重要となります。
親権者の指定において裁判所などが考慮する主な判断基準

夫婦間の協議で親権が決まらず家庭裁判所で指定を行う場合、裁判所は「子どもの利益(福祉)」を最優先に考え、さまざまな事情を総合的に考慮して判断します。
これまでの継続的な監護・養育実績(継続性の原則)
親権判断において特に重視されるのが、これまで主にどちらの親が子どもの身の回りの世話や養育を担ってきたかという実績です。
生活環境が急激に変わることは子どもの心身に負担を与えるため、現状の安定した監護状態を維持することが優先される傾向があります。
食事の準備や入浴、登園・通学の送迎、通院の付き添いなどを日常的に父親が担ってきた実績があれば、監護者としての適格性を基礎づける重要な要素となります。
子どもの年齢と本人の意思の尊重
子どもの年齢や発達段階に応じて、子ども本人の気持ちや意向も判断の際に考慮されます。
一般的には10歳前後から本人の意思が尊重される傾向が強まります。
さらに家事事件手続法第152条第2項では、子の監護に関する処分の審判において、子どもが15歳以上であるときはその陳述を聴かなければならないと定められています。
15歳以上の子どもが自らの意思で父親との生活を希望している場合、その意向は親権者の判断において非常に強く尊重されます。
双方の監護能力や心身の健康状態
親権者として子どもを適切に監護・教育できる状態にあるかという点から、父母それぞれの心身の健康状態や生活態度は重要な確認事項です。
たとえば、一方の親に重い精神的・身体的疾患があり日常的な育児が困難である場合や、子どもに対する虐待・ネグレクト等の問題行動がある場合には、他方の親が親権者として指定される可能性が高くなります。
兄弟姉妹を分けない配慮(兄弟姉妹不分離の原則)
子どもが複数人いる場合、原則として兄弟姉妹を離れ離れにせず同じ環境で養育することが子どもの情緒の安定につながると考えられています。
そのため、特別な事情がない限り、兄弟姉妹を分属させるのではなく同一の親を親権者として指定する傾向にあります。
父親が親権を希望する際に整理しておくべきポイント
これまでの育児実績を具体的に整理する
父親が親権を希望する場合、まずはこれまでに日常的な育児へどのように関わってきたかを具体的に整理しておくことが大切です。
親権の話し合いや手続きでは、単に監護への意欲を示すだけでなく、日頃の具体的な関わりを客観的に説明できるかどうかが考慮されます。
- 日常的な食事の用意や入浴、身の回りの世話
- 保育園・幼稚園や学校、習い事などの送迎
- 通院への同行や予防接種のスケジュール管理
- 授業参観などの学校行事や地域イベントへの参加
日頃の関わりについて、連絡帳の記録や写真、カレンダーや日記などに記録が残っていれば、監護実績を裏付ける資料として整理しやすくなります。
離婚後の監護体制とサポート環境を整える
父親がフルタイムで勤務している場合、仕事と育児をどのように両立させるかという監護体制の現実性が注目されます。
勤務時間の調整や在宅勤務の活用など自身の働き方の工夫に加えて、急な残業や子どもの体調不良時に頼れる親族などの協力体制を確認しておく必要があります。
自身が不在となる時間帯も含め、周囲のサポートを得ながら子どもが安心して暮らせる具体的な生活環境を整えておくことが求められます。
子どもの福祉を最優先にした話し合いの姿勢を持つ
親権をめぐる協議では、夫婦間の感情的な対立を持ち込まず、子どもの利益と健全な成長を第一に考える姿勢が重要です。
相手方を過度に非難するのではなく、現状の養育環境や子どもの気持ちを尊重しながら、どの選択が子どもにとって望ましいかを冷静に見極める姿勢が協議の進展につながります。
親権を巡る協議がまとまらない場合の弁護士への相談
夫婦間の話し合いで親権についての合意が得られない場合、家庭裁判所での離婚調停や子の監護に関する処分等の調停・審判手続きを利用して解決を図ることになります。
調停委員を介した話し合いで合意に至らない場合は審判や裁判へと移行し、裁判所が双方の主張や事情を総合的に判断して親権者を指定します。
裁判所の手続きにおける主張・立証の進め方
調停や審判の場では、単に親権を獲得したいという希望を述べるだけでなく、これまでの監護実績や今後の養育環境を客観的に示す資料を提出することが求められます。
家庭裁判所調査官による調査が行われることも多く、日頃の関わりや生活状況について法的な観点から整合性のある主張を組み立てていく必要があります。
感情的な対立を避け子どもの利益を重視した解決
親権を巡る争いが激しくなると、当事者同士の感情的な対立が深まり、結果として子どもに精神的な負担を強いてしまうリスクがあります。
親権の指定において重視されるのは子どもの利益(福祉)であり、親の意地や相手への不満を争点にするのではなく、子どもにとって何が最善かを冷静に見据える姿勢が不可欠です。
法的な見通しや手続きの進め方に不安がある場合は、家事事件を扱う弁護士に相談することで、客観的な状況整理や調停での対応について助言を受けることができます。
それぞれの家庭環境に応じた適切な対応を早期に検討し、子どもの将来と健全な成長を守るための解決を目指すことが大切です。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。