更新日:2026年3月5日 (木)

公開日:2022年3月31日 (木)

養育費を払わないとどうなる?支払義務やリスク・減額の手続きを解説

養育費を払わないとどうなる?支払義務やリスク・減額の手続きを解説 養育費を払わないとどうなる?支払義務やリスク・減額の手続きを解説

サマリー

離婚後に養育費の支払いが滞ってしまい不安を抱えている方や、元配偶者から養育費が支払われず困っている方は少なくありません。

養育費は子どもの生活を守るための法律上の義務であり、未払いを放置すると給与の差し押さえなどの強制執行を受ける可能性があります。

一方で、事情の変化によって支払いが困難な場合には、減額などの法的な手続きを検討することも可能です。

この記事では、養育費の支払い義務や不払いによるリスク、減額が認められ得る要件について解説します。

養育費の支払いは法律上の義務|自己破産でも免責されない理由

養育費の支払いは法律上の義務

民法上の扶養義務に基づく養育費の法的根拠

養育費という言葉は法律の条文に直接規定されている文言ではありませんが、その支払い義務は民法が定める親子の扶養義務に基づいています。

婚姻中における生活費の分担は民法752条(同居・協力・扶助義務)や民法760条(婚姻費用の分担)に根拠があり、離婚後においては民法766条において子の監護に要する費用の分担として位置づけられています。

離婚によって夫婦としての法的な関係が解消されたとしても、親と子どもの間にある親子関係や扶養義務まで消滅することはありません。

したがって、親権者とならなかった側の親であっても、子どもに対して生活を支える義務を負い続けることになります。

元配偶者ではなく子どものための費用

離婚の経緯によっては「別れた相手に金銭を渡したくない」という感情が生じることもあります。

しかし、養育費は元配偶者の個人的な利益のために支払うものではなく、子ども自身が健やかに成長し自立するために必要不可欠な費用です。

親の子に対する扶養義務は、自分の生活を保持するのと同程度の生活を子にも保持させる「生活保持義務」と解されています。

親権を持たない親であっても、子どもが適切な水準の養育や教育を受けられるよう費用を分担する責任があります。

自己破産をしても免責されない非免責債権

養育費は子どもの生存や成長に直結する重要な金銭であるため、法律上も強力な保護が与えられています。

仮に支払義務者が経済的に困窮して自己破産の手続きを行い、裁判所から免責許可決定を受けたとしても、養育費の支払い義務が免除されることはありません。

破産法において、子どもの監護に関する義務に係る請求権(養育費など)は「非免責債権」として定められています。

一般的な借入れとは異なり、破産手続き後も支払い義務がそのまま残る点に留意が必要です。

養育費は自己破産をしても免責されない非免責債権であり、親としての扶養責任は法律上重く位置づけられています。

養育費が支払われていない現状と取り決めの実態

ひとり親世帯における養育費の受給状況

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」などのデータによると、養育費を継続して受給できているひとり親世帯は全体の2割強にとどまっています。

養育費は法律上の支払い義務がある費用ですが、実際には離婚後に支払いが途絶えてしまったり、最初から一度も支払われなかったりするケースが少なくありません。

多くのひとり親世帯において養育費が十分に受け取られていない現状があります。

離婚時に養育費の取り決めを行わない背景

養育費の受給率が低い要因の一つとして、離婚をする際に養育費についての明確な取り決めを行っていないケースが多い点が挙げられます。

離婚の手続きを進めるなかで、「相手ともうこれ以上関わりたくない」「一刻も早く離婚を成立させたい」という心理が働き、養育費の話し合いを避けてしまうことがあります。

取り決めを行わないまま離婚が成立すると、その後の支払いが滞る可能性が高くなり、ひとり親世帯の経済的な負担や生活の困窮につながる要因となっています。

事前における取り決めの重要性

口頭での約束のみで済ませていたり、取り決め自体を行っていなかったりすると、支払いが止まった際に請求や回収を行うハードルが高くなります。

子どもの生活と成長を支えるためには、離婚時に養育費の金額や支払期日、支払い期間などの条件を明確に取り交わしておくことが重要とされています。

養育費を払わない場合のリスクと法的手続き

強制執行による給与や預貯金の差し押さえ

養育費の支払いが滞った場合、受け取る側は裁判所に対して強制執行(差し押さえ)の手続きを申し立てることが可能です。

強制執行が認められると、支払義務者の預貯金や給与といった財産から未払い分が回収されます。

特に給与が差し押さえられる場合、裁判所から勤務先に対して差押命令が送達されるため、養育費の未払いや差し押さえの事実を勤務先に知られることになります。

また、将来支払われるべき養育費についても継続して給与から差し押さえの対象となる場合があります。

ただし、強制執行を行うためには原則として「債務名義」が必要です。

債務名義とは、離婚調停調書や審判書、判決書、あるいは執行認諾文言が付された公正証書などを指します。

財産開示手続の罰則強化による刑事罰のリスク

強制執行を行うにあたり、相手方の勤務先や預貯金口座が分からない場合には「財産開示手続」が利用されることがあります。

この手続きは、裁判所が支払義務者を呼び出し、所有する財産について陳述させる制度です。

令和2年4月1日に施行された改正民事執行法により、財産開示手続に対する罰則が強化されました。

正当な理由なく期日に出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合には、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。

改正前の30万円以下の過料から刑事罰へと厳格化されたため、裁判所からの開示命令への不出頭や虚偽の陳述は重大な不利益につながります。

支払期日を過ぎた場合に発生する遅延損害金

養育費の支払期日を過ぎても支払われない場合、未払いとなっている元本に対して遅延損害金が発生します。

遅延損害金は、支払いが遅れたことに対する損害賠償としての性格を持ちます。

取り決めの中で遅延損害金の利率を定めていない場合であっても、民法の規定に基づき法定利率が適用されます。

民法改正後の法定利率は年3%(改正前は年5%)と定められており、支払いが遅れた日数に応じて計算されます。

未払いの状態を放置して期間が経過するほど、遅延損害金が加算されて支払うべき総額が膨らむ点に留意が必要です。

養育費の減額や免除が認められ得るケース

養育費の支払いは法律上の義務ですが、取り決めを行った当時から当事者の生活環境や経済状況が変化した場合、免除や減額が認められるケースがあります。

婚姻関係外の出生で認知がなされていない場合

婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもについて、父親による認知がなされていない段階では、法律上の親子関係が存在しないため養育費の支払い義務は発生しません。

ただし、認知届の提出による任意認知のほか、認知調停や裁判による強制認知が成立した場合には、出生時に遡って法律上の親子関係が生じるため、養育費の支払い義務が発生することになります。

受け取る側の再婚と養子縁組

養育費を受け取っている側が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組を行った場合、第一次的な扶養義務は養親に移ります。

そのため、実親である側の養育費支払い義務は免除または大幅に減額される傾向にあります。

なお、再婚相手と子どもが養子縁組をしていない場合や内縁関係にとどまる場合は、実親の扶養義務は消失しません。

また、養親に十分な収入がない場合などは、実親が第二次的な扶養義務を負い続けることもあります。

収入の増減など当事者の事情変更

養育費を取り決めた後に双方の経済状況が大きく変動した場合は、事情変更として金額の見直しが認められる可能性があります。

支払う側が勤務先の倒産や失業、病気や怪我などのやむを得ない事情によって大幅に収入が減少した場合、従来の金額を支払うことが著しく困難とみなされ、減額の対象となることがあります。

また、受け取る側の就職や大幅な昇給などによって収入が増加した場合も、双方の経済力を反映した算定基準に基づき、養育費の減額が考慮される要素となります。

事情変更に該当する場合であっても、自己判断で支払いを一方的に停止・減額することは避け、当事者間の協議や家庭裁判所の調停等を経て見直す必要があります。

養育費に関するお悩みは弁護士への相談を

養育費に関するお悩みは弁護士への相談を

養育費の支払いは長期間にわたることが多いため、将来的な環境の変化や未払いの発生など、様々なトラブルが生じる可能性があります。

子どもの健やかな成長を支えるためにも、養育費に関する問題は法的な観点から適切に対処することが重要です。

未払い分の請求や取り決めの見直しにおける確認事項

養育費が支払われない場合、過去の取り決め内容や債務名義の有無によって選択できる法的手段が異なります。

公正証書を作成していればスムーズな回収手続きに進みやすい一方で、口頭での約束のみである場合には、まず債務名義を取得するための調停などを検討する必要があります。

また、これから養育費の取り決めを行う段階であれば、執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくことで、将来の不払いリスクに備えることが可能です。

文言の記載内容に不備があると強制執行が難しくなることもあるため、事前の慎重な確認が求められます。

当事者間での合意が難しい場合の裁判手続きの活用

失業や病気、大幅な収入減少などの事情変更があり養育費の減額を求めたい場合や、相手方が支払いに応じない場合、当事者同士の話し合いだけでは感情的な対立が生じて合意に至らないケースも少なくありません。

直接の協議で合意が困難なときは、家庭裁判所に対して養育費請求調停や養育費減額調停を申し立て、調停委員を交えた手続きを通じて解決を図る道があります。

調停で合意が成立しない場合には、審判手続きに移行し、裁判所が判断を下すことになります。

養育費の未払いや減額に関する問題で対応に迷った際は、法的な見通しや適切な手続きを整理するためにも、弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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