サマリー
個人再生の手続きを検討する際、多くの方が気になるのは「結局、いくら返済すればよいのか」「個人再生では最終的な返済額はいくらになるのか」といった点ではないでしょうか。特に、借金がどの程度減額されるのか、月々の返済額はどのくらいになるのかといった点は、手続きを検討するうえで重要な判断材料になります。
個人再生は自己破産と異なり、法律上定められた最低限返済すべき金額を、原則として3年(事情により最長5年)の分割で支払っていく、裁判所の監督のもとで行われる債務整理手続の一つです。破産法に基づく手続であり、裁判所に提出した再生計画に従って一定額を返済することで、残りの債務について減額を受けられる可能性があります。この最低限返さなければならない返済額のことを、個人再生の法律実務では最低弁済額と呼び、裁判所に提出する再生計画(再生計画案)の中で定められる重要な基準となります。
最低弁済額は一律に決まるものではなく、借金総額(債務額)、保有している財産の価値、収入状況や再生手続の類型など、複数の基準(最低弁済基準・清算価値保証基準・可処分所得基準など)を比較して決定されます。そのため、これらの基準を踏まえて適正な弁済額を算出するには、破産法の仕組みや裁判所の実務上の運用に関する知識が必要となることが多く、一般の方だけで正確に試算するのは難しい場合も少なくありません。実務では、弁護士などの専門家が資料をもとに概算を算出するケースも多く見られます。
本記事では、個人再生における最低弁済額の基本ルール、具体的な計算方法、返済シミュレーションの考え方、注意すべきポイント、さらに「返済が難しい場合はどうなるのか」「再生計画どおりに払えない場合はどうなるのか」といった疑問への対処法まで、順を追って詳しく解説します。
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個人再生の最低弁済額とは?
個人再生における最低弁済額とは、破産法の基準に基づき、原則としてこれ以上は減額できないとされる返済額の下限を指します。これは裁判所に提出する再生計画(再生計画案)を作成する際の重要な基準となり、裁判所による審査や認可判断にも影響するポイントです。
個人再生は、債務者の経済的な立ち直り(経済的更生)を図りつつ、貸した側である債権者の利益や公平性(債権者平等の原則)も守る必要がある制度です。そのため、負債の規模や本人の財産状況などに応じて、債権者との公平性を保つための最低ラインとして最低弁済額が設定されています。
例えば、消費者金融やカードローンなどで1,000万円の借入れがある場合でも、一定の要件を満たすと、法律で定められた最低弁済基準に基づき、おおむね200万円程度まで圧縮できる可能性があります。ただし、実際の弁済額は保有している財産の価値(清算価値)や収入状況などによって変わるため、必ずしもこの金額になるとは限りません。
最低弁済額の見込みを誤ると、「大きく減額できると思っていたのに返済総額があまり下がらない」「月々の返済額が現実的ではなく再生計画が認可されにくい」といった問題が生じる可能性があります。実務上も、事前の試算が不十分なまま申立てを行うと、想定していた返済額とのギャップが生じ、再生計画の内容を調整する必要が生じるケースがあります。
個人再生は申立てを行うこと自体がゴールではなく、裁判所による再生計画の認可決定を受けた後、再生計画に従って返済を継続し、計画どおりに返済を完了してはじめて減額の効果が確定します。そのため、申立て前の段階で最低弁済額や月々の返済額の見込みを試算しておくことが非常に重要になります。
最低弁済額は、大きく分けて借金の総額(債務総額)、財産の価値(資産状況)、収入から見た支払余力という3つの観点から判断され、どの基準が重視されるかは個人再生の手続類型(小規模個人再生か給与所得者等再生か)によっても変わります。まず個人再生における最低弁済額の仕組みの全体像を押さえておくと、この後に説明する具体的な計算方法や事例が理解しやすくなります。
最低弁済額の算出には最低弁済基準・清算価値保証基準・可処分所得基準を用いる
最低弁済額を考える際には、破産法の実務において主に次の3つの基準が用いられます。
- 最低弁済基準
- 清算価値保証基準
- 可処分所得基準
1つ目は借金総額を基準に破産法の基準表に従って決められる最低弁済基準、2つ目は保有している財産の価値を基準に算出する清算価値保証基準、3つ目は収入と生活費の差額から算出される可処分所得基準であり、再生計画における支払能力を判断する際の重要な要素となります。
ポイントは、債権者との公平(債権者平等の考え方)を保つため、再生計画において極端に低い返済額は裁判所に認められにくいという点です。
例えば、最低弁済基準では100万円の返済で足りる場合でも、保有している財産を処分すれば200万円相当の価値がある場合には、100万円の返済では債権者にとって不利になりすぎます。これは、自己破産における清算価値とのバランスを考慮する考え方とも関連しています。これは清算価値保証(清算価値保証原則)の考え方に基づくものです。そのため、清算価値が最低弁済基準の金額を上回る場合には、一般的には清算価値の金額が最低弁済額として採用されることになります。
さらに給与所得者等再生では可処分所得基準も比較対象に加わり、これら3つの基準のうち最も高い金額が最低弁済額となります(可処分所得は原則として2年分が基準となります)。どの基準が比較対象になるかは、手続類型(小規模個人再生か給与所得者等再生か)によって異なるため、個人再生の種類としてどの類型に該当する可能性があるのかを最初に整理しておくと理解しやすくなります。
最低弁済基準については2章で、清算価値保証基準については3章で、可処分所得については4章で詳しく解説します。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
個人再生には、破産法に基づき、主に小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの手続類型があります。
小規模個人再生では、最低弁済基準と清算価値保証基準を比較し、そのうち高い方の金額が最低弁済額として採用されます。
一方、給与所得者等再生では、これに可処分所得(原則として可処分所得の2年分)が加わり、3つの基準の中で最も高い金額が最低弁済額となります。収入が比較的安定している会社員や公務員などの場合、この給与所得者等再生が選択肢となることがありますが、可処分所得が高い場合には弁済額が高くなりやすい点に注意が必要です。
実務上、給与所得者等再生は債権者の同意が得られない場合でも再生計画が認可される可能性がある手続類型ですが、その一方で可処分所得基準の影響により弁済額が高くなるリスクがあります。
どちらの手続類型を選択するかによって総返済額が変わる可能性があるため、事前に弁済額の概算シミュレーションを行い、比較検討することが実務上重要とされています。実務では、申立て前に弁護士などの専門家が収入資料や財産資料をもとに弁済額の目安を試算するケースも多く見られます。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違いや選択基準を解説!
個人再生の最低弁済額はどこまで減る?5分の1ルールを解説
借金問題に悩む方にとって、個人再生(破産法に基づく再生手続)のうち一般的に利用される小規模個人再生では、制度上、負債を概ね5分の1程度まで圧縮できる可能性がある非常に強力な債務整理手続とされています。住宅ローン特則などの制度を利用できる場合には、自宅などの資産を維持しながら、返済額を大幅に減らせる可能性がある点が特徴です。
これほど減額が可能となる理由は、破産法において最低弁済額(実務上は最低弁済基準とも呼ばれ、これだけは返済しなければならない下限)が定められているためです。
借金総額が500万円を超え1,500万円以下の場合、小規模個人再生における最低弁済基準として、この5分の1という定率基準が適用され、結果として元本の約80%が減額される仕組みになっています。利息のみをカットする任意整理(裁判外で行う債務整理)とは異なり、裁判所を通じた手続により元本そのものを法的に減額できる点が、個人再生の大きな特徴とされています。
例えば、消費者金融などから合計1,000万円の借金がある場合、小規模個人再生の最低弁済基準である5分の1ルールが適用されれば、返済額は200万円程度まで減る可能性があります。これを再生計画に基づき原則3年(36回)で分割返済する場合、単純計算では月々の支払いは約5万5,555円となります。
ただし注意点として、保有している財産(預貯金、保険の解約返戻金、不動産の余剰価値など)を評価した合計額が最低弁済額を上回る場合には、その財産価値が基準となります。この仕組みは清算価値保障原則と呼ばれ、保有する財産の評価額が高いほど、再生計画で求められる返済額も引き上げられる仕組みになっています。
結論として、個人再生の返済額は、借金総額に基づく最低弁済基準と、財産評価額に基づく清算価値を比較し、そのいずれか高い方を基準として最終的な返済額が決まる仕組みになっています。
なお、5分の1という基準はあくまで一般的な目安にすぎず、実際の返済額は借入総額、財産状況、収入状況など個別事情によって変わります。月々の返済額を正確に把握するためには、弁護士などの専門家による具体的な試算やシミュレーションを行うことが重要とされています。
借金の総額で決まる最低弁済基準|個人再生ではいくら返済する必要がある?
最低弁済基準は、住宅ローンなどの一部の債務を除いた借金の総額(再生債権の総額)を基に、破産法で定められた区分表に当てはめて算出します。
この基準を見ることで、個人再生を利用した場合に借金がどの程度まで減額(圧縮)される可能性があるのか、また最終的な返済額がおおよそどの程度になるのかという目安を知ることができます。
ただし、最低弁済基準はあくまで弁済額を判断するための土台となる基準であり、保有している財産の価値が大きい場合には、清算価値保証(清算価値保証原則)の考え方により弁済額が上回る可能性があります。また、給与所得者等再生を選択する場合には、可処分所得基準(原則として可処分所得の2年分)が適用されるため、可処分所得の金額が上回ることで弁済額が増えることもあります。
借金総額だけで判断すると実際の弁済額よりも低く見積もってしまう可能性があるため、実務上は財産や収入状況も含めて確認し、事前に弁済額の目安を試算しておくことが重要です。
借金総額ごとの最低弁済額(最低限返すべき金額)
破産法では、負債の総額(再生債権の総額)に応じて、次のように5段階の最低弁済額が設定されています。
| 負債の総額 | 最低弁済額(最低限返すべき金額) |
|---|---|
| 100万円未満 | 負債の全額 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円を超え1,500万円以下 | 負債の5分の1(20%) |
| 1,500万円を超え3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 負債の10分の1(10%) |
例えば、借金が300万円であれば、区分は「100万円以上500万円以下」に該当するため、最低弁済額は100万円となります。借金が700万円であれば、「500万円を超え1,500万円未満」の区分に該当するため、700万円の5分の1にあたる140万円が最低弁済額となります。借金が1,000万円の場合も「500万円を超え1,500万円未満」の区分に該当するため、1,000万円の5分の1である200万円が最低弁済額となります。
この金額は法律上定められた最低限の返済額であり、一般的にはこれを下回る内容の再生計画は裁判所に認可されにくいとされています。そのため、再生計画を検討する際には、まずこの最低弁済基準を前提に弁済額の目安を試算し、月々の返済額が現実的かどうかを確認することが重要になります。
なお、個人再生は再生債権の総額が原則5,000万円以下であることが利用要件とされているため、借金総額が5,000万円を超える場合は、この手続きを利用することはできません(住宅ローンなど一部の債権はこの計算から除かれます)。借金が5,000万円を超える場合は通常の民事再生や自己破産など別の手続きを検討する必要があります。
住宅ローンや遅延損害金は最低弁済額の計算に含まれる?
住宅ローン特則(正式には住宅資金特別条項)を利用して自宅を残す場合、原則として住宅ローンは最低弁済基準の計算には含まれず、住宅ローンについては従来どおりの返済を続けることになります。
一方、支払いの遅れによって発生した遅延損害金は、原則として再生手続開始時点までに発生している分が借金総額(再生債権額)に加算されます。延滞期間が長引くと遅延損害金が増え、結果として借金総額の区分が上がり、最低弁済額が増える可能性があるため注意が必要です。
また、保証会社が代位弁済をした場合には、債権者は金融機関から保証会社に変わり、保証会社が求償権を行使する形で債権を回収することになります。そのため、個人再生の申立てを行う際には、債権者の内容と債権額を正確に整理し、債権者一覧表などの資料を整備しておくことが重要です。
実務では、申立て時点での取引履歴や残高証明書などを基に債権額を確定し、その確定額に対して最低弁済基準を当てはめる方法が一般的です。自己判断で概算する場合でも、手元の請求書の数字をそのまま使うのではなく、どの時点の残高なのかを確認することで試算のズレを減らしやすくなります。必要に応じて、弁護士などの専門家に確認することも検討するとよいでしょう。
財産が多いと返済額が増える?個人再生の清算価値(清算価値保証原則)の落とし穴
個人再生では原則として財産を処分する必要はありませんが、保有している財産が多い場合には清算価値保証原則により最低弁済額が引き上げられ、結果として借金の減額効果が小さくなることがあります。この仕組みを正しく理解していないと、想定していたよりも弁済額や返済総額が高くなり、借金の減額効果が思ったほど得られないという事態になりかねません。
特に、退職金や生命保険, 不動産などの財産評価は見落としやすく、弁済額の試算に大きなズレが生じやすいポイントです。
清算価値の算出方法は、裁判所ごとの運用や財産の評価方法によって細かな取扱いが異なることもあります。重要なのは、どのような資産が清算価値としてカウントされやすいのかを理解し、早い段階で現実的な弁済額の試算(弁済額シミュレーション)と返済計画を立てることです。
自己破産よりも債権者を不利にしない清算価値保証原則
個人再生では、保有している財産の総額(清算価値)が最低弁済基準による金額より高い場合、その財産額を下回らない返済額とする必要があるというルールがあります。
これは清算価値保証原則と呼ばれ、自己破産をした場合に全財産を債権者へ配当する場合と比べて、個人再生の返済額がそれより少なくならないようにすることで、債権者間の公平性を確保するためのルールです。
個人再生は、財産を残せる可能性がある一方で、債権者にとっても最低限の回収が確保される仕組みとして設計されています。そのため、 最低弁済基準で算出した金額よりも清算価値が高い場合には、一般的には清算価値の金額が最低弁済額の基準となります。
例えば、最低弁済基準による弁済額が100万円であっても、保有している財産を処分すれば150万円程度の価値があると評価される場合には、150万円未満の返済計画は認可されにくくなります。
実務上重要なのは、清算価値が高い場合には個人再生による借金減額のメリットが小さくなり、結果として返済総額が増える可能性があるという点です。そのため、減額幅だけを見るのではなく、財産を残せるメリットと返済総額の増加とのバランスを比較しながら手続を選択することが、実務上は現実的な判断といえます。
個人再生における清算価値保証原則とは?
清算価値として返済額に影響する主な財産リスト
清算価値に算入されやすい財産として、次のようなものが挙げられます(主に換金可能な財産や資産価値のあるもの)。
- 預貯金
- 99万円を超える現金
- 不動産
- 車
- 生命保険の解約返戻金
- 有価証券
- 投資信託
- 積立型の商品
ただし、財産の評価方法は一律ではないため注意が必要です。
例えば、車や不動産は時価評価が基本となり、ローンが残っている場合には残債を差し引いた実質的な価値(余剰価値)が清算価値として問題になります。生命保険については解約返戻金の金額が財産価値として評価されることが多く、積立型の商品も換金性がある場合には財産として評価されやすい傾向があります。
この分野は裁判所ごとに運用の違いが出ることもあるため、自己判断で財産価値を低く見積もることには注意が必要です。そのため、必要な資料(通帳、保険証券、車検証、不動産資料など)を揃えたうえで根拠のある評価に基づいて試算することが、結果として手続の円滑化と弁済額の適正化につながります。
なお、原則として99万円以下の現金や、民事執行法上の差押禁止財産に該当するものについては、自由財産として清算価値の対象外として扱われるのが通常です。
自己破産したら何を失う?処分される財産と残せる財産を解説
意外な盲点!退職金や生命保険が清算価値として評価される理由
退職金や生命保険が清算価値の評価対象となる理由は、債権者の立場から見ると将来的に換金可能な価値を有する資産と評価されるためです。
そのため、個人再生を検討する段階では、退職金見込額証明書や生命保険の解約返戻金の試算書など、評価に用いる資料を早めに確認しておくことが重要です。
将来受け取る予定の退職金については、一般的に現時点で自己都合退職したと仮定した場合の退職金見込額の8分の1が財産として計上される取扱いが多く見られます(退職時期が近い場合には4分の1程度が評価対象となるケースもあります)。
そのため、勤続年数が長く退職金見込額が大きい場合には、清算価値に与える影響も大きくなりやすいといえます。
生命保険については、保障目的の契約であっても解約返戻金が存在する場合には、その解約返戻金相当額が財産として評価されるのが一般的です。
生命保険を必ずしも解約する必要はありませんが、解約返戻金の見込額は清算価値として算入されるため、保険内容によっては最低弁済額を押し上げる要因となることがあります。
個人再生は生命保険を解約する必要がある?取り扱いと注意点を解説
会社員・公務員は要注意!可処分所得で返済額が変わるケース
安定した収入がある会社員や公務員などは、個人再生の手続の中でも給与所得者等再生という類型を選択できる場合があります。この類型には、小規模個人再生とは異なる独自の基準が設けられています。
給与所得者等再生では、借金総額や保有財産だけでなく、収入から見た支払能力(可処分所得)も返済額の算定に反映されます。
そのため、借金額が大きくても生活に余裕があると評価される場合には、最低弁済額が引き上げられ、結果として減額効果が小さくなる可能性があります。
可処分所得の算定は、単に手取り収入から家賃などを差し引くような単純な計算ではありません。税金や社会保険料の控開に加え、政令で定められた最低生活費を考慮する必要があるため、計算は比較的複雑です。
さらに、家族構成や居住地域などによって最低生活費が変動するため、同じ年収であっても可処分所得の金額が異なることがあります。
個人再生では、手続類の選択を誤ると、同じ借金額や財産状況でも返済総額が増えてしまう可能性があります。
小規模個人再生で進められるのか、それとも給与所得者等再生を選択すべき事情があるのかについて、事前に試算を行ったうえで判断することが重要です。
可処分所得基準とは
可処分所得とは、給料などの収入から税金や社会保険料を控除し、さらに政令で定められた再生債務者および被扶養者の最低生活費を差し引いた金額を指します。
給与所得者等再生では、この可処分所得の2年分以上の金額を弁済額とする必要があります。
2年分の可処分所得額は、概ね次の計算式で算出されます。
2年分の可処分所得額 = 直近2年分の収入合計 − 直近2年間に支払った税金・社会保険料 − 再生債務者と被扶養者の最低生活費2年分
例えば、2年分の可処分所得額が150万円と算定された場合、最低弁済額が100万円であったとしても、150万円以上を返済する内容の再生計画とする必要があります。
小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを選ぶべき?
可処分所得の2年分という基準は高額になることがあるため、実務上は返済額を抑えやすい小規模個人再生を選択するケースが多い傾向にあります。
ただし、小規模個人再生では債権者による書面決議(議決)が必要であり、一定割合の債権者が不同意を示した場合には、再生計画が認可されない可能性があります。
一方、給与所得者等再生では債権者の同意が不要であるため、債権者の反対が見込まれる場合には、この類型を選択するという戦略が検討されることもあります。
最終的には、次のような観点を踏まえて類型を選択する必要があります。
- 返済総額
- 手続の通りやすさ
試算を行わずに判断すると、返済額が想定より増えてしまう、あるいは手続自体が頓挫するといったリスクがあるため、まずは具体的な数字で比較検討することが重要です。
個人再生に反対する業者の意図は?過半数に反対された場合の対処法
【事例別】私の場合はいくら?返済額のシミュレーション
個人再生の最低弁済額は、主に次の3つの要素を基準にして概算することができます。
- 借金総額に応じた最低弁済額
- 財産の価値(清算価値)
- 可処分所得(給与所得者等再生の場合)
実際の返済額は、これらの基準のうち最も高い金額を基礎として決まります。
ここでは、個人再生を検討している方が目安をイメージできるよう、次の3つのケースで返済額のシミュレーションを行います。なお、どのケースも小規模個人再生を利用するものとします。
- ケース1|借金500万円・目立った財産がないケース
- ケース2|借金1,000万円・勤続15年で退職金が多いケース
- ケース3|マイホームを残して借金600万円を整理するケース
シミュレーションのコツは、まず借金総額に応じた最低弁済額を確認し、その次に清算価値がそれを上回らないかをチェックすることです。さらに、給与所得者等再生を検討している場合には、可処分所得の2年分とも比較します。
この順番で整理すると、返済額の計算で見落としが生じにくくなります。
月々の返済額は、最低弁済額を返済期間の月数で割って考えるのが基本です。個人再生では、返済期間は原則3年(36か月)とされますが、事情によっては5年まで延長されることもあります。
また、支払い方法は毎月払いが一般的ですが、裁判所の運用によっては3か月ごとにまとめて支払う方式が採用されるケースもあります。実際の資金繰りは、家計の状況に合わせて無理のない形で設計することが重要です。
なお、ここで紹介する金額はあくまで目安です。実務では、債権額の確定や財産評価の結果を踏まえて、最終的な返済額が判断されることになります。
ケース1|借金500万円・目立った財産がないケース
借金総額が500万円で、財産が預金20万円と生活に必要な家財のみというケースを想定して、個人再生の返済額を試算してみましょう。
個人再生では、まず借金総額に応じた最低弁済額を確認します。借金総額が100万円以上500万円以下の場合、最低弁済額は100万円とされています。
次に、保有財産の価値(清算価値)を確認します。このケースでは財産は預金20万円程度であり、生活に必要な家財は通常大きな評価額にはならないため、清算価値が100万円を超える可能性は高くないと考えられます。
そのため、このケースでは返済総額100万円を基準として再生計画が立てられる可能性が高いでしょう。
個人再生では、返済期間は原則3年(36か月)です。この場合の月々の返済額は次のようになります。
100万円 ÷ 36か月 = 2万7,777円
したがって、目安としては月々3万円程度の返済で借金500万円を整理できる可能性があります。
もっとも、実際の返済額は債権額の確定や財産評価、家計収支などを踏まえて裁判所が判断するため、あくまでシミュレーションとして理解しておくことが大切です。
ケース2|借金1,000万円・勤続15年で退職金が多いケース
借金総額が1,000万円で、勤続15年により退職金見込額が1,600万円あり、さらに預金などの財産が100万円あるケースを想定して、個人再生の返済額を試算してみましょう。
まず、借金総額に応じた最低弁済額を確認します。借金総額が500万円以上1,500万円以下の場合、最低弁済額は借金の20%とされるため、このケースでは次の金額が最低弁済額となります。
1,000万円 × 20% = 200万円
次に、保有財産の価値(清算価値)を確認します。個人再生では、保有財産の価値より少ない返済額にすることはできません。
退職金については、まだ受け取っていない場合でも将来受け取る見込みがある財産として評価されます。実務では、退職金見込額の8分の1程度を財産として算定する運用が多く見られます。
このケースでは、退職金評価額は次のようになります。
1,600万円 × 1/8 = 200万円
ここに預金などの財産100万円を加えると、清算価値は次のようになります。
200万円 + 100万円 = 300万円
小規模個人再生では、最低弁済額と清算価値の高い方の金額が返済額の基準となるため、このケースでは返済総額は300万円となる可能性が高いでしょう。
返済期間が原則どおり3年(36か月)の場合、月々の返済額の目安は次のようになります。
300万円 ÷ 36か月 = 8万3,333円
このように、退職金の見込み額が大きい場合には、借金総額から計算される最低弁済額よりも清算価値の方が高くなり、返済額が増えるケースがあります。
ケース3|マイホームを残して借金600万円を整理するケース
借金総額が600万円あり、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用してマイホームを残す場合の返済額を試算してみましょう。ここでは、住宅以外の財産として預金100万円があるケースを想定します。
住宅資金特別条項を利用する場合、住宅ローンは減額の対象にはならず、これまでどおり返済を続ける必要があります。個人再生で減額されるのは、住宅ローン以外の借金です。
まず、借金総額に応じた最低弁済額を確認します。借金総額が500万円以上1,500万円以下の場合、最低弁済額は借金の20%とされるため、このケースの最低弁済額は次のようになります。
600万円 × 20% = 120万円
次に、保有財産の価値(清算価値)を確認します。今回のケースでは、住宅以外の財産は預金100万円のみと想定しているため、清算価値は100万円となります。
小規模個人再生では、最低弁済額と清算価値の高い方の金額が返済額の基準となるため、このケースでは返済総額は120万円となる可能性が高いでしょう。
返済期間が原則どおり3年(36か月)の場合、月々の返済額の目安は次のようになります。
120万円 ÷ 36か月 = 3万3,333円
このように、住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローンを継続して支払いながら、その他の借金を減額して整理できる可能性があります。
無理なく完済するために!返済期間と支払い方法のルール
個人再生では、返済額が決まれば手続が終わるわけではありません。裁判所に提出する再生計画として、現実的に継続できる支払い設計を立てることが重要です。
支払い計画に無理があると、途中で滞納が生じ、最悪の場合には再生計画の認可が取り消される可能性もあります。
そのため、返済期間や支払い頻度のルールを踏まえながら、次のような点を検討しておくことが大切です。
- 月々の負担をどこまで下げられるか
- ボーナスの扱いをどうするか
- 突発的な支出に対応できる余裕があるか
また、裁判所の運用によっては、手続中に積立(履行テスト)を求められることがあります。この場合、認可前の段階から再生計画どおりに支払いが可能であることを示す必要があります。
制度のルールを家計に落とし込み、早い段階から実行できる形にしておくことが、再生手続を安定して進めるポイントになります。
返済期間は原則3年(最長5年)
個人再生の返済期間は、原則として3年(36か月)とされています。
ただし、最低弁済額が高額で3年では月々の負担が大きすぎる場合など、特別の事情があると認められるときには、裁判所の許可を得て最長5年まで延長できる可能性があります。
ここでいう特別の事情とは、単に支払いが苦しいというだけでは足りず、収入や家計状況から見て3年では現実的に履行が困難であることを合理的に説明できるかが重要になります。
返済額の目安は、最低弁済額を返済月数で割って考えます。
例えば、最低弁済額が180万円の場合は次のようになります。
- 3年(36か月):月5万円程度
- 5年(60か月):月3万円程度
ただし、返済期間を延ばせば月々の負担は軽くなりますが、その分、長期間にわたって家計管理を続ける必要があります。生活環境が変わるリスクも高くなるため、延長ありきで考えるのではなく、無理なく継続できる期間を検討することが重要です。
支払いのペースは3か月に1回以上
個人再生では、再生計画に基づき3か月に1回以上の頻度で弁済を行う必要があります。
実務では、次のような支払い方法が採用されることが多く見られます。
- 毎月支払う方法
- 3か月分をまとめて支払う方法
毎月払いは家計管理がしやすい一方、振込回数が増えるため手数料や手間がかかります。
一方、3か月まとめ払いは振込回数を減らせるメリットがありますが、まとまった金額を計画的に管理する必要があります。
どちらの方法にもメリット・デメリットがありますが、確実性を重視する場合には、毎月一定額を積み立てておき、支払日に送金する仕組みを作ることが滞納防止に有効とされています。
振込の手間を省く弁済代行という選択肢
通常は、債務者自身が各債権者(銀行やクレジットカード会社など)の口座へ個別に振り込みを行います。
しかし、複数の債権者に対して毎回振込を行うのは手間がかかり、1件でも振込を忘れると再生計画の履行に影響するおそれがあります。
そこで、弁護士事務所が返済手続きをまとめて管理する弁済代行(返済代行)というサービスを利用する方法もあります。
弁済代行を利用する主なメリットは次のとおりです。
- 法律事務所の口座に1回振り込むだけで済む
- 振込漏れのリスクを減らせる
- 弁護士が債権者との連絡窓口になる
なお、弁済代行を利用する場合は、一般的に1社1送金あたり約1,100円程度の手数料が発生するケースが多いとされています。
再生手続に影響する不適切な行為とリスク
個人再生は、債務者が誠実に家計を立て直すことを前提とした手続です。そのため、申立ての前後に行った行動が不利に評価されると、説明負担が増えたり、手続が遅れたりする可能性があります。場合によっては、再生計画の認可判断にも影響が及ぶことがあります。
特に多いのが、「家族や保証人に迷惑をかけたくない」という理由で、特定の債権者だけを優先して返済してしまうケースです。また、裁判所の運用によって実施される履行テストで積立が続かない場合には、再生計画の履行可能性が疑問視されることもあります。
一度行ってしまった行為を後から取り消すことは難しいため、個人再生を検討し始めた段階で、問題となり得る行動を避けておくことが重要です。判断に迷う場合には独断で対応せず、弁護士に相談したうえで進める方が安全といえます。
特定の相手にだけ返済する偏頗弁済
偏頗弁済とは、特定の債権者にだけ返済を行い、他の債権者への支払いを停止するなど、債権者間の公平を損なう返済行為をいいます。
個人再生では債権者の平等な取扱いが重視されるため、申立て前後の偏った返済は問題視される可能性があります。
偏頗弁済の典型例として、次のようなケースが挙げられます。
- 親族からの借入れだけを優先して返済する
- 保証人が付いているローンだけ返済する
- 勤務先に知られたくないという理由で社内貸付だけ返済する
これらは気持ちとしては理解できる行動ですが、手続の公平性を損なう可能性があるため、経緯の説明を求められることがあります。
また、こうした返済は、裁判所から本来は手元に残っていたはずの財産と評価され、清算価値に加算されることで、結果的に最低弁済額が増える原因になることもあります。
発覚したからといって直ちに再生計画が不認可になるとは限りませんが、説明や資料提出が増えることで手続が複雑になる可能性があります。返済を続けるべきかどうかは個別事情によって判断が異なるため、自己判断で対応しないことが重要です。
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは?用語の意味をわかりやすく解説
履行テストの失敗
履行テストとは、再生計画で予定されている返済額に近い金額を一定期間積み立てたり支払ったりして、計画どおり履行できるかを確認する裁判所の運用です。すべての裁判所で実施されるわけではありませんが、実質的には家計の継続力を確認するテストとして機能しています。
履行テストでつまずく原因の多くは、月々の支出構造が整理されていないことです。
例えば、以下のような状態では、継続して積立を行うことは難しいでしょう。
- 固定費が高すぎる
- サブスクリプションや保険が整理されていない
- 突発的な支出に備える予備費がなく、家計が毎回崩れてしまう
対策として重要なのは、気合で支払い続けるのではなく、先取りで積立を行う仕組みを作ることです。
具体的には、次のような方法が有効です。
- 給料日に自動で別口座へ資金を移す
- 支出を可視化して固定費を把握する
- 現実的でない家計前提を見直す
こうした仕組みを早い段階から整えておくことで、再生計画の履行可能性を高めることにつながります。
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最低弁済額が払えないときの対処法
個人再生の返済は通常3年から5年にわたるため、認可後に収入の減少や生活環境の変化によって、支払いが難しくなることもあるかもしれません。
しかし、返済が厳しい状態を放置すると、再生計画の取消しや強制執行につながるおそれがあります。そのため、支払いが難しくなりそうだと感じた段階で、早めに対処法を検討することが重要です。
ここでは、個人再生の返済が難しくなった場合に検討される主な対応策を整理します。
返済期間の延長を申し立てる
病気や収入減少など、やむを得ない事情によって再生計画どおりの返済が難しくなった場合、裁判所に申し立てることで返済期間の延長が認められる可能性があります。
個人再生の返済期間は原則として3年ですが、特別の事情がある場合には、裁判所の許可により最長5年まで延長できるとされています。
ただし、延長は自動的に認められるわけではありません。裁判所は、次のような事情を踏まえて再生計画の履行可能性を総合的に判断する傾向があります。
- 事情変更の内容
- 減収の原因
- 将来の収入回復の見込み
- 家計の収支状況
実務では、次のような資料の提出が求められることがあります。
- 収入の変化が分かる給与明細
- 家計収支の見直し資料
- 元の計画が困難になった理由の説明
返済が厳しくなり始めた段階から、家計簿や通帳記録を整理しておくと、事情説明がしやすくなるでしょう。
ハードシップ免責を申し立てる
ハードシップ免責とは、再生計画の履行途中で返済が著しく困難になった場合に、一定の条件のもとで残りの債務の免除が認められる可能性がある制度です。
この制度は例外的な救済措置であり、一般的には次のような事情が考慮されます。
- 債務者の責めに帰することができない事情で返済が困難になったこと
- 再生計画の弁済額のおおむね4分の3以上をすでに支払っていること
- 免責を認めても債権者の利益を不当に害しないと裁判所が判断できること
このように利用には厳格な条件があるため、実際に認められるケースは多くありません。そのため、最初からこの制度を前提とするのではなく、あくまで最終的な救済手段として位置付けるのが現実的です。
また、住宅ローンが関係する場合には注意が必要です。借金の免除が認められても、住宅ローンの担保権は別問題として残る可能性があるため、自宅維持との関係も含めて慎重に検討する必要があります。
再生計画が不履行になった場合のハードシップ免責とは?
自己破産に切り替える
返済期間の延長でも生活の立て直しが難しく、ハードシップ免責の要件も満たさない場合には、自己破産への切り替えを検討する必要があるでしょう。
自己破産で免責が認められれば、税金や養育費などの一部を除き、多くの借金の支払い義務が免除される可能性があります。
一方で、自己破産では原則として一定の財産を処分する必要があるため、マイホームを維持できないケースが多い点が個人再生との大きな違いです。また、手続中は職業や資格に一定の制限が生じる場合もあるため、生活への影響を事前に把握しておくことが重要です。
方針の切り替えは、次のような事情を総合的に考慮して判断します。
- 今後の返済見込み
- 保有財産の状況
- 家族への影響
- 仕事への影響
無理に個人再生を続けて再生計画の認可が取り消されるよりも、早い段階で別の手続への切り替えを検討した方が、結果的に負担を抑えられるケースもあります。
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個人再生にかかる費用の相場と内訳
個人再生を検討する際に、多くの方が気になるのが「手続にいくら費用がかかるのか」という点です。
個人再生では、減額された借金を返済していくだけでなく、手続を進めるための費用もあわせて準備する必要があります。費用を見落としてしまうと、申立準備や履行テストの段階で資金繰りが厳しくなる可能性があります。
個人再生にかかる費用は、大きく次の2つに分けられます。
- 弁護士に支払う費用
- 裁判所に支払う費用
さらに、弁済代行を利用する場合には、毎月の手数料が加わることがあります。
費用は地域や法律事務所、事件の難易度、債権者数、住宅ローン特則の有無などによって変動します。そのため、相場を参考にしつつ、自分のケースで費用が増える可能性があるポイントを確認しておくことが大切です。
弁護士に支払う費用
個人再生の弁護士費用の相場は、40〜60万円程度とされています。
具体的な金額は、次のような事情によって変動します。
- 借金総額
- 債権者数
- 手続の複雑さ
- 住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の有無
主な費用の内訳は次のとおりです。
- 相談料:弁護士に現状を相談し、今後の方針を検討する費用(30分につき5,000〜1万円程度)
- 着手金:弁護士に正式に依頼する際に支払う費用(30〜60万円程度)
- 成功報酬金:個人再生が認可された場合に支払う費用(0〜30万円程度)
- 実費:郵送費・書類取得費などの実費(数万円程度)
なお、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する場合には、追加費用発生するケースが一般的です。
また、弁済代行を利用する場合には、毎月数千円程度の手数料が別途発生することがあります。
弁護士費用については分割払いに対応している法律事務所も多くあります。ただし、分割条件や支払いスケジュールも事前に確認しておくことが重要です。
裁判所に支払う費用
個人再生の申立てには、裁判所に支払う費用も必要です。一般的には数万円程度とされています。
主な費用は次のとおりです。
- 予納金(官報掲載料):13,000円程度
- 収入印紙代:10,000円程度
- 郵便切手代:数千円程度
郵便切手の金額や必要枚数は裁判所ごとに異なるため、正確な費用は管轄裁判所の案内を確認する必要があります。
個人再生委員の報酬が必要な場合もある
裁判所の運用によっては、手続を監督する個人再生委員が選任されることがあります。この場合、委員報酬として15〜25万円程度の費用が必要になることがあります。
例えば、東京地方裁判所では、原則として個人再生委員が選任され、その報酬として25万円程度を納める運用がとられています。
一方で、地方裁判所によっては個人再生委員が選任されないケースもあるため、必要となる費用は管轄裁判所の運用によって異なります。
個人再生の費用相場|弁護士費用や法テラス利用時の費用を解説
個人再生を弁護士に依頼する5つのメリット
個人再生は、破産法に基づく法的手続であり、制度上は弁護士に依頼せず、申立人本人が裁判所へ申し立てることも可能です。しかし実務では、裁判所へ提出する申立書類の多さや手続の複雑さから、弁護士に依頼して進めるケースが多く見られます。
個人再生では、再生計画を作成する前提として行う最低弁済額の計算だけでも、以下のような複数の要素を検討する必要があります。
- 借金総額
- 財産評価(清算価値)
- 可処分所得
さらに、地方裁判所ごとに細かな運用の違いがある場合もあり、書類作成や資料収集の負担も小さくありません。独力で進める場合には、計算ミスや書類不備が生じやすい手続といわれています。
個人再生を弁護士などの専門家に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 督促と返済が止まる
- 最低弁済額を最小限に抑えやすい
- 煩雑な書類作成を任せられる
- 履行テストのサポートを受けられる
- 最適な解決策を提案してもらえる
それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。
督促と返済が止まる
弁護士に債務整理を依頼すると、代理人として債権者へ受任通知が送付されます。貸金業者の場合、受任通知を受けた後は、貸金業法の規定により、原則として債務者本人に対する取立てを行うことが禁止されています。この取立て規制は、貸金業法に基づく取立行為の規制によるものです。そのため、貸金業者からの電話や郵送による督促は、実務上は多くの場合で停止します。
督促が止まることで精神的な負担が軽減されるだけでなく、生活再建に向けて家計を立て直すための時間も確保しやすくなります。また、返済を一時的に止めることで、再生手続の申立費用や履行テストのための積立資金を準備しやすくなるという実務上のメリットもあります。
ただし、税金(租税債権)や一部の債務など、例外的に支払いを止めることができないものもあります。独断で支払いを止めると別の問題が生じる可能性があるため、弁護士の指示に沿って整理することが重要です。
最低弁済額を最小限に抑えやすい
個人再生では、再生計画を作成するうえで最低弁済額の計算が非常に重要になります。計算方法を誤ると、本来よりも高い返済額になってしまう可能性があります。
最低弁済額は、再生計画を作成する際に、主に次の基準をもとに算定されます。
- 借金総額による最低弁済基準
- 清算価値保障原則(財産額以上は返済する必要がある)
- 給与所得者等再生の場合の可処分所得要件
これらはすべて、破産法に基づく仕組みです。
特に財産評価(清算価値)は、清算価値保障原則に関係する重要な要素であり、提出する資料や評価方法によって金額が変わることがあります。根拠のない過小評価は裁判所に認められませんが、逆に必要以上に高く見積もると、その金額を前提に返済額が決まってしまう可能性があります。
弁護士に依頼することで、裁判所へ提出する資料を適切に整えながら、実務上妥当な評価額に整理することが可能になります。
また、小規模個人再生と給与所得者等再生という手続類型のどちらを選ぶかによって、返済総額が変わることがあります。弁護士はそれぞれの制度を比較し、最も負担が少ない手続を検討することができます。
煩雑な書類作成を任せられる
個人再生では、裁判所へ提出する申立書のほかにも多くの書類が必要になります。
例えば、次のような資料を提出する必要があります。
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 家計収支表
- 給料明細
- 通帳コピー
- 保険証券
- 不動産資料
これらの書類は、どこから取得するのか、どの範囲を提出するのかなど、裁判所の運用に基づく細かなルールがあります。慣れていない場合、資料を集めるだけでも大きな負担になることがあります。
弁護士に依頼すれば、申立準備の段階で必要書類の整理や取得方法について具体的な指示を受けながら準備できます。その結果、提出漏れや書類不備による手続の遅延を防ぎやすくなります。
履行テストのサポートを受けられる
裁判所によっては、再生計画の履行可能性を確認するために、履行テスト(積立テスト)が行われることがあります。
これは法律上の明文義務ではなく、裁判所の実務運用によるものですが、実務では重要なプロセスとされています。
履行テストでは、以下のような事項を検討する必要があります。
- 毎月いくら積み立てるか
- 家計のどこを見直すか
- 突発的な出費への備え
弁護士のサポートを受けることで、裁判所の運用を踏まえた現実的な積立計画を立てやすくなります。また、途中で積立が崩れた場合のリカバリーについても相談しながら対応できます。
個人再生は、再生計画を最後まで履行して初めて大きな意味を持つ制度といえます。そのため、履行テストを乗り越えられる家計設計を作ることが成功の重要なポイントになります。
最適な解決策を提案してもらえる
借金問題の解決方法(債務整理)は、個人再生だけではありません。
状況によっては、任意整理で十分なケースや自己破産の方が早く生活再建できるケースもあります。
弁護士に相談することで、最低弁済額の試算だけでなく、現実的な返済計画として完済できるかどうかまで含めて検討することができます。
特に、マイホームを残すかどうかは、住宅ローン特則の利用などにも関係し、家計や将来設計に大きく影響する重要な判断です。住宅を残すために返済額が大きく増える場合には、その選択が本当に適切かどうかを慎重に検討する必要があります。
個人再生では、法的に手続が認められるだけでなく、生活を維持できる解決策を選ぶことが重要です。弁護士から複数の選択肢を提示してもらえることが、依頼する大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
個人再生の返済額は、再生計画において最低弁済額を基準に決まります。この最低弁済額は、以下の基準を比較して判断される仕組みになっています。
- 借金総額による基準
- 財産額(清算価値)
- 可処分所得(給与所得者等再生の場合)
そのため、借金額だけを見て返済額を予想すると、財産や収入の状況によって想定より高くなることもあります。早い段階で返済額の試算(返済シミュレーション)を行い、無理のない返済計画を立てることが重要です。
特に注意したいのが清算価値です。清算価値には、預貯金だけでなく、以下のようなものも含まれるため、思わぬ形で弁済額が増えるケースも少なくありません。
- 退職金見込額
- 保険の解約返戻金
- 不動産の含み価値
個人再生を検討する際は、借金がどれだけ減るかだけでなく、財産を残す代わりに返済額が増える可能性も含めて総合的に判断することが大切です。
実際の検討では、以下の順番で整理すると、現実的な返済計画を立てやすくなります。
- 借金総額による最低弁済基準を確認する
- 財産評価(清算価値)で上振れしないか確認する
- 収入面(可処分所得)から返済可能か検討する
試算が難しい場合や、以下のようなケースでは、早めに弁護士へ相談することが現実的な選択といえるでしょう。
- 最低弁済額が境界ラインにある
- 財産評価が複雑
- 本当に完済できるか判断が難しい
個人再生を検討している方は、ぜひネクスパート法律事務所へご相談ください。
経験豊富な弁護士が、現在の借金状況や収入、財産の状況を丁寧にお伺いしたうえで、個人再生が適しているかどうかを含め、最適な解決方法をご提案いたします。
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一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。