更新日:2026年8月5日 (水)
公開日:2026年8月5日 (水)
過失運転致死傷罪の刑罰とは?実刑になるケース・執行猶予や不起訴の可能性を解説
サマリー
自動車事故で人を死傷させてしまい、過失運転致死傷罪に問われた場合、
「どのような刑罰を受けるのか」
「実刑になる可能性はあるのか」
「不起訴や執行猶予になることはあるのか」
と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
過失運転致死傷罪とは、自動車の運転に必要な注意を怠ったことにより交通事故を起こし、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
交通事故の状況や過失の程度によっては、刑事処分だけでなく、仕事や日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、過失運転致死傷罪の成立要件や法定刑、実刑となるケースと執行猶予が付くケースの違い、不起訴処分が検討される事情、処分の軽減に向けて取るべき対応について詳しく解説します。
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過失運転致死傷罪とは?|不注意による人身事故で問われる罪
過失運転致死傷罪とは、自動車の運転において必要な注意を怠った結果、交通事故を発生させ、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
正式には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」 に規定されています。
被害者が死亡した場合は「過失運転致死罪」、怪我を負った場合は「過失運転致傷罪」が成立します。
この罪が成立するためには、自動車の運転に必要な注意義務に違反し、その過失によって人を死傷させたことが必要です。
単に交通事故が発生しただけでは成立せず、運転者に注意義務違反が認められることが前提となります。
かつて、交通事故による死傷事故には刑法上の業務上過失致死傷罪が適用されることが一般的でした。
しかし、自動車事故に対する処罰の適正化を図るため法整備が進められ、現在では自動車の運転による死傷事故については、原則として過失運転致死傷罪が適用されています。
① 危険運転致死傷罪との違いは「危険性の高い運転行為」の有無

過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪との大きな違いは、運転行為の危険性や悪質性の程度にあります。
危険運転致死傷罪は、アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態での運転や、制御が困難な高速度での走行、ことさらに赤信号を無視する行為など、法律上特に危険な運転によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
これに対し、過失運転致死傷罪は、前方不注意や安全確認不足などの不注意によって事故を起こした場合に適用されます。
危険運転致死傷罪は、単なる不注意による事故よりも危険性や悪質性が高いと評価されるため、過失運転致死傷罪よりも重い刑罰が定められています。
危険運転致死傷罪については、以下の記事で詳しく解説しています。
危険運転致死傷とは?|罰則や弁護活動について解説
② 前方不注意や安全確認不足など「過失」と評価される運転行為の例

過失運転致死傷罪における「過失」とは、運転者が通常求められる注意義務を怠ることをいいます。
具体的には、スマートフォンの操作やカーナビの注視による前方不注意、考え事による脇見運転などが代表例です。
また、交差点での安全確認不足、一時停止義務違反、制限速度を超える走行、居眠り運転なども、状況によっては過失と認定される可能性があります。
これらの行為は日常生活の中で誰にでも起こり得る不注意ですが、その結果として人を死傷させた場合には、過失運転致死傷罪として刑事責任を問われることがあります。
過失運転致死傷罪が成立した場合の刑罰や、実刑・執行猶予の判断に影響する要素については、次章で詳しく解説します。
過失運転致死傷罪の刑罰|拘禁刑・罰金の具体的な内容
過失運転致死傷罪で有罪判決を受けた場合、科される刑罰は事案の内容によって大きく異なります。
特に、死亡事故と傷害事故では量刑傾向に大きな違いがあります。
傷害事故では罰金刑や執行猶予付き判決となるケースもありますが、死亡事故では正式裁判となるケースが多く、事案によっては実刑判決が言い渡されることもあります。
① 法律で定められた「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」
過失運転致死傷罪の法定刑は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第5条に定められています。
同条では、過失運転致死傷罪を犯した者について、「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」が科されると規定されています。
もっとも、実際に科される刑罰は個別の事情によって異なります。
被害結果が比較的軽微で過失の程度も小さい場合には罰金刑となることがありますが、重大な後遺障害が残った事案や死亡事故では拘禁刑が選択される可能性があります。
② 傷害事故では罰金刑や執行猶予付き判決となるケースもある
過失運転致傷罪では、被害者の怪我が比較的軽く、加害者に前科前歴がなく、被害者との示談が成立している場合などに、罰金刑や執行猶予付き判決となることがあります。
また、被害が軽微な事案では、不起訴処分となるケースもあります。
一方で、重傷事故や重大な後遺障害が残る事故では、初犯であっても厳しい処分が検討される可能性があります。
そのため、初犯だからといって必ず軽い処分になるとは限りません。
③ 死亡事故では実刑判決となる可能性もある
被害者が死亡した過失運転致死罪では、傷害事故と比較して重い処分が科される傾向があります。
もっとも、前科前歴がなく、被害者遺族との示談や損害賠償が十分に行われている場合には、執行猶予付き判決となるケースもあります。
他方で、著しい速度超過や重大な前方不注意が認められる場合、複数の被害者が発生した場合、被害結果が重大である場合などには、実刑判決が言い渡される可能性があります。
④ 無免許運転やひき逃げなどが伴うと刑罰はさらに重くなる
過失運転致死傷事故に加えて、無免許運転やひき逃げ(救護義務違反・報告義務違反)、飲酒運転などの悪質事情が認められる場合には、処分が重くなる傾向があります。
特に、アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
危険運転致死傷罪には過失運転致死傷罪よりも重い法定刑が定められており、事案によっては厳しい刑事処分が科されることがあります。
過失運転致死傷罪で処分の軽減を目指すための3つの行動
過失運転致死傷罪で捜査の対象となった場合、その後の対応によって刑事処分の内容が変わる可能性があります。
特に、被害者への対応や反省の姿勢、再発防止に向けた取り組みは、検察官や裁判所が処分を判断する際の重要な事情となります。
もっとも、死亡事故や重大事故では、適切な対応を行ったとしても起訴や有罪判決を避けられない場合があります。
そのため、「処分をなくすこと」だけを目的とするのではなく、自らの責任と真摯に向き合い、被害回復に努める姿勢が重要です。
①被害者や遺族への謝罪と損害賠償に誠実に取り組む
事故後に優先して取り組むべきことの一つが、被害者や遺族への誠実な対応です。
交通事故では、自賠責保険や任意保険による損害賠償が行われますが、それとは別に、加害者本人が反省の意思を示し、被害回復に向けて真摯に対応することも重要となります。
被害者や遺族との間で示談が成立した場合は、被害回復に努めた事情として評価される可能性があります。
また、示談に至らなかった場合でも、謝罪や賠償に向けて誠実な努力を継続した事実が量刑判断において考慮されることがあります。
刑事事件の示談交渉については、以下の記事で詳しく解説しています。
示談交渉とは?刑事事件の示談の流れや注意点・示談金相場を徹底解説
②反省と再発防止への取り組みを示す
執行猶予が付されるかどうかは、法律上の要件を満たしていることに加え、事故の内容や前科前歴の有無、被害回復の状況、反省の程度などを踏まえて判断されます。
そのため、事故後に真摯な反省を示すことに加え、安全運転講習の受講や運転習慣の見直しなど、再発防止に向けた具体的な取り組みを行うことが重要です。
こうした事情は、更生可能性や再犯防止への意識を示すものとして評価される場合があります。
③早期に弁護士へ相談し適切な対応を進める
過失運転致死傷事件では、事故直後からの対応がその後の処分に影響することがあります。
弁護士に早期に相談することで、被害者側への対応方法や示談交渉の進め方、捜査機関による取調べへの対応などについて適切な助言を受けることができます。
また、被害回復に向けた取り組みや反省状況を整理し、検察官や裁判所に適切に伝えるためのサポートを受けることも可能です。
特に死亡事故や重傷事故では、量刑判断に影響する事情が多岐にわたるため、早い段階から交通事故事件に詳しい弁護士の支援を受けることが重要です。
過失運転致死傷罪における免許停止や免許取消しなどの行政処分

人身事故を起こした場合、加害者は刑事処分を受ける可能性があるだけでなく、運転免許に関する行政処分の対象にもなります。
刑事処分が過去の行為に対する責任を問うものであるのに対し、行政処分は将来の交通事故を防止し、道路交通の安全を確保することを目的としています。
行政処分は違反点数制度に基づいて行われ、事故や交通違反の内容に応じて免許停止や免許取消しなどの処分が決定されます。
これらの処分は刑事手続とは別に進められるため、刑事事件で不起訴処分となった場合であっても、行政処分が科されることがあります。
① 事故の責任の重さに応じて決まる違反点数の仕組み
人身事故を起こした場合の違反点数は、事故原因となった交通違反の点数と、人身事故に対する付加点数を合算して決定されます。
例えば、安全運転義務違反や信号無視、一時不停止、速度超過など、事故原因となった違反に応じて基礎点数が付されます。
さらに、被害者の負傷の程度や事故に対する責任の大きさなどに応じて付加点数が加算されます。
そのため、同じ人身事故であっても、事故状況や被害結果によって科される点数は大きく異なります。
② 免許取消しや免許停止となる基準
累積された違反点数が一定の基準に達すると、免許停止または免許取消しの行政処分が行われます。
前歴がない場合、累積点数がおおむね6点以上になると免許停止の対象となり、さらに点数が高くなると免許取消しの対象となります。
ただし、実際の処分内容は、前歴の有無や累積点数、事故の内容などによって異なります。
死亡事故や重大な人身事故では高い付加点数が科されることがあり、初回の事故であっても免許取消しとなる場合があります。
また、免許取消し処分を受けた場合には、一定期間運転免許を再取得できない欠格期間が設けられます。
欠格期間は違反内容や前歴などによって異なり、長期間に及ぶこともあります。
行政処分の具体的な内容は事故態様や違反内容によって異なるため、詳細については各都道府県の公安委員会や弁護士に確認することをおすすめします。
過失運転致死傷で逮捕されたら早期に弁護士へ相談すべき理由
過失運転致死傷罪の疑いで警察に逮捕された場合、その後の人生に大きな影響を及ぼす重要な局面を迎えることになります。
特に、逮捕されてから勾留が決まるまでの最大72時間は、たとえご家族であっても本人と面会することはできません。
このような状況のなかで、本人や家族だけで適切に対応することは容易ではありません。
刑事事件に詳しい弁護士へ早期に相談し、必要に応じて弁護を依頼することで、今後の対応について適切な助言や支援を受けることができます。
① 加害者に代わり被害者感情に配慮した示談交渉を進めてくれる
被害者との示談は、刑事処分の判断において重要な事情となることがあります。
しかし、加害者本人が直接交渉を行うことは容易ではありません。
特に、被害者が死亡した場合や重傷を負った場合には、被害者や遺族の精神的負担が大きく、加害者本人が接触しようとすることで、かえって関係が悪化する可能性もあります。
弁護士が代理人として対応することで、被害者感情に十分配慮しながら、適切な方法で示談交渉を進めることができます。
また、謝罪の意思や被害回復に向けた姿勢を適切に伝えるサポートを受けることも可能です。
② 逮捕・勾留による身柄拘束の長期化を防ぐための弁護活動を期待できる
逮捕や勾留による身柄拘束が長引くと、仕事や家庭生活に大きな影響が及ぶ可能性があります。
弁護士は、逮捕直後から本人と接見し、取調べへの対応について助言を行います。
また、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、身元引受人がいることなどを検察官や裁判所に適切に主張し、身柄拘束の必要性について争うことができます。
こうした弁護活動により、勾留が回避されたり、在宅での捜査への移行が認められたりする可能性があります。
③ 裁判で反省や示談の状況を適切に伝え有利な事情を主張してくれる
起訴されて刑事裁判となった場合にも、弁護士は重要な役割を担います。
弁護士は、被害者との示談が成立していることや、被告人が事故について深く反省していること、再発防止に向けた具体的な取り組みを行っていることなどを整理し、証拠とともに裁判所へ適切に伝えます。
また、家族による監督体制や社会復帰に向けた環境が整っていることなど、量刑判断に影響する事情についても主張・立証を行います。
このような弁護活動を通じて、裁判所に対して被告人の更生可能性や再犯防止への取り組みを適切に伝え、事案に応じた適切な量刑判断がなされるよう努めます。
過失運転致死傷に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、過失運転致死傷罪に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。
Q. 被害者との示談金の相場はいくらくらいですか?
示談金に一律の相場はなく、被害の程度や被害者の年齢、収入、後遺障害の有無などの事情によって大きく異なります。
死亡事故や重い後遺障害が残った事故では、損害賠償額が数千万円に及ぶこともあります。
実際の賠償額は、自賠責保険や任意保険の基準、裁判例などを踏まえて決定されるため、具体的な金額については弁護士や保険会社に相談することをおすすめします。
Q. 人身事故を起こしたら必ず逮捕されますか?
必ず逮捕されるわけではありません。
被害が比較的軽微であり、加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合には、身柄を拘束せずに捜査を進める在宅事件となることが一般的です。
一方で、死亡事故やひき逃げ、飲酒運転、無免許運転など、悪質性が高いと判断される事案では、逮捕される可能性があります。
Q. 示談交渉は保険会社に任せても大丈夫ですか?
保険会社が行うのは、主に民事上の損害賠償に関する示談交渉です。
一方で、刑事事件では、被害者への謝罪や被害感情への配慮、処罰を求めないという意思表示(宥恕)の取得などが重要となる場合があります。
これらについては保険会社が対応できないこともあるため、刑事処分への影響も見据えて対応したい場合には、刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが有効です。
Q. 過失運転致死傷罪で初犯でも実刑になることはありますか?
初犯であっても、被害者が死亡した事故や重大な後遺障害が残った事故、過失の程度が大きい事故などでは実刑判決となる可能性があります。
一方で、事故状況や被害回復の状況、示談の有無などを踏まえ、執行猶予付き判決となるケースもあります。
まとめ
過失運転致死傷罪は、運転上の不注意によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
この罪に問われた場合には、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
もっとも、実際の処分は事故の態様や被害結果、過失の程度、被害回復の状況、前科前歴の有無など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。
事故後は、被害者や遺族への誠実な対応や適切な損害賠償に努めることが重要です。
示談の成立や被害回復に向けた努力は、処分や量刑を判断する際の事情として考慮されることがあります。
また、身柄拘束への対応や示談交渉、取調べへの対応などについて適切な助言を受けるためにも、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することが望ましいでしょう。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
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ぜひ一度ご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。