更新日:2026年8月4日 (火)
公開日:2026年8月4日 (火)
公務執行妨害とは?罪の重さや成立要件を徹底解説
サマリー
公務執行妨害罪(刑法95条1項)とは、公務員が適法な職務を執行している際に、その職務に対して暴行または脅迫を加えることで成立する犯罪です。
実務上は、警察官による職務質問への抵抗や逮捕時の暴行、救急隊員や消防職員の業務を妨害したケースなどで成立が問題となります。
公務執行妨害罪で逮捕された場合、勾留や起訴の判断が行われ、有罪となれば拘禁刑や罰金刑が科される可能性があります。
また、被害者が国や地方公共団体の職員であることから、一般的な刑事事件とは異なり示談が難しいケースも少なくありません。
本記事では、公務執行妨害罪の成立要件や法定刑、逮捕後の流れ、不起訴の可能性、示談の可否、弁護士に依頼するメリットについて詳しく解説します。
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公務執行妨害罪の基本概要をわかりやすく解説
公務執行妨害罪は、国や地方公共団体の職員が行う適法な公務の執行を保護するために設けられた犯罪です。
公務が暴行や脅迫によって妨害されると、行政機能や治安維持など社会全体に大きな影響を及ぼすため、刑法によって処罰の対象とされています。
公務執行妨害罪が成立するためには、公務員が適法に職務を行っていたことや、その職務に対して暴行または脅迫が加えられたことなどの要件を満たす必要があります。
公務執行妨害罪とは公務員の適法な職務を妨害する犯罪
公務執行妨害罪とは、公務員が適法に職務を執行している際に、その職務に対して暴行または脅迫を加える行為を処罰する犯罪です。
この罪の目的は、公務員個人を保護することではなく、国や地方公共団体が行う公務の適正かつ円滑な執行を確保することにあります。
そのため、職務執行自体が違法である場合には、公務執行妨害罪が成立しない可能性もあります。
保護の対象となる「公務」の具体的な範囲

公務執行妨害罪で保護される「公務」の範囲は幅広く、警察官による逮捕や捜査活動、税務職員による差押えなどの権力的な公務だけではありません。
例えば、次のような職務も保護の対象となります。
- 公立学校の教員による授業
- 消防隊員による消火活動
- 救急隊員による救護活動
- 自治体職員による窓口業務
- 自衛官による職務執行
このように、公務の性質を問わず、公務員が適法に行っている職務であれば、公務執行妨害罪による保護の対象となります。
類似犯罪である威力業務妨害罪との違い

公務執行妨害罪と威力業務妨害罪は、いずれも業務を妨害する犯罪ですが、保護される対象や成立要件が異なります。
公務執行妨害罪は国や地方公共団体が行う公務を保護する犯罪であり、成立するためには、公務員に対する暴行または脅迫が必要です。
一方、威力業務妨害罪は、民間企業や個人事業主などの業務を保護する犯罪であり、必ずしも暴行や脅迫を伴う必要はありません。
人の意思を制圧するに足りる「威力」を用いて業務を妨害すれば成立する可能性があります。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 公務執行妨害罪 | 威力業務妨害罪 |
|---|---|---|
| 保護対象 | 国や地方公共団体の公務 | 民間企業や個人の業務 |
| 相手方 | 公務員 | 企業・店舗・個人事業主など |
| 主な手段 | 暴行または脅迫 | 威力 |
| 根拠条文 | 刑法95条1項 | 刑法234条 |
| 典型例 | 職務質問中の警察官を突き飛ばす | 店舗に押しかけて営業を妨害する |
このように、相手が公務員なのか民間人なのか、また妨害行為の内容がどのようなものであったかによって、適用される犯罪は異なります。
判断に迷う場合には、刑事事件に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
威力業務妨害罪については、以下の記事で詳しく解説しています。
威力業務妨害罪とは?適用される典型例、判例等をご紹介
公務執行妨害罪が成立するための3つの具体的要件

公務執行妨害罪が成立するためには、刑法上定められた要件を満たす必要があります。
具体的には、
- 相手が公務員であること
- 公務員が適法な職務を執行中であること
- その職務に対して暴行または脅迫を加えること
の3つが重要な判断要素となります。
いずれか一つでも欠ける場合には、公務執行妨害罪が成立しない可能性があります。
以下では、それぞれの要件について詳しく解説します。
要件①:行為の対象が「公務員」であること
公務執行妨害罪が成立するための第一の要件は、行為の対象が公務員であることです。
ここでいう公務員とは、国または地方公共団体の職員を指し、警察官、消防隊員、救急隊員、市区町村職員、公立学校の教員などが代表例です。
また、法律上、公務員として職務を行う権限を与えられている者が対象となる場合もあります。
公務執行妨害罪が成立するためには、行為者が相手を公務員であると認識していたことが必要です。
一方で、民間企業の従業員や警備員などに対する暴行や脅迫については、公務執行妨害罪ではなく、暴行罪や威力業務妨害罪などが問題となる場合があります。
要件②:公務員が「適法な職務を執行中」であること
第二の要件は、公務員が適法な職務を執行している最中に暴行または脅迫が行われることです。
公務執行妨害罪は、公務そのものの適正な執行を保護する犯罪であるため、公務員による職務執行が適法であることが前提となります。
例えば、警察官による職務質問や逮捕・捜査活動、税務職員による差押え、交通違反の取締りなどは、公務執行妨害罪が問題となりやすい典型例です。
一方、公務員が休憩中である場合や私的な行動をしている場面でのトラブルについては、通常、公務執行妨害罪は成立しません。
もっとも、職務執行の適法性は個別具体的な事情に基づいて判断されます。
そのため、「違法な職務執行だったから公務執行妨害罪は成立しない」と一概に判断できるものではなく、実際の事件では法令や判例を踏まえて慎重に検討されます。
要件③:公務員に対して「暴行または脅迫」を加えること
第三の要件は、公務員の職務執行に対して暴行または脅迫を加えることです。
ここでいう暴行とは、人に向けられた有形力の行使をいい、殴る、蹴るといった典型的な暴力行為に限られません。
例えば、警察官の胸を押す、腕をつかむ、制服を引っ張る、唾を吐きかけるといった行為も暴行に該当する可能性があります。
また、脅迫とは、公務員本人やその家族に対して、生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知し、相手を畏怖させる行為をいいます。
例えば、「後で覚えておけ」「家族に危害を加える」などの発言は、脅迫に該当する可能性があります。
なお、公務執行妨害罪は、実際に公務が妨害された結果まで必要とされているわけではありません。
適法な職務執行に対して暴行または脅迫が行われた時点で成立し得るため、結果的に職務が継続された場合でも公務執行妨害罪が成立する可能性があります。
公務執行妨害罪の成立要件まとめ
| 要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 要件① | 相手が公務員であること | 警察官、消防隊員、救急隊員、市役所職員、公立学校教員など |
| 要件② | 適法な職務執行中であること | 職務質問、逮捕、捜査活動、交通取締り、差押えなど |
| 要件③ | 暴行または脅迫を加えること | 胸を押す、腕をつかむ、制服を引っ張る、脅迫的な発言をするなど |
この3つの要件をすべて満たした場合に、公務執行妨害罪が成立する可能性があります。
もっとも、実際の事件では職務執行の適法性や暴行・脅迫の有無が争点となるケースも少なくありません。
そのため、逮捕された場合や捜査を受けている場合には、早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが重要です。
公務執行妨害罪で科される刑罰の重さと公訴時効
公務執行妨害罪で有罪となった場合には、刑法で定められた刑罰が科されます。
もっとも、実際の量刑は一律ではなく、暴行や脅迫の態様、公務への影響の大きさ、被疑者の前科前歴の有無、反省状況などを総合的に考慮して判断されます。
また、刑事事件には「公訴時効」という制度があり、一定期間が経過すると検察官は起訴できなくなります。
ここでは、公務執行妨害罪の法定刑と公訴時効について解説します。
法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」
公務執行妨害罪の法定刑は、刑法第95条1項により「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」と定められています。
拘禁刑は、2025年6月に施行された改正刑法によって導入された刑罰で、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化したものです。
公務執行妨害罪は決して軽い犯罪ではなく、罰金刑にとどまらず拘禁刑が科される可能性があります。
特に、暴行の態様が悪質である場合や、公務員に傷害を負わせた場合、同種前科がある場合などには、より重い処分が検討されることがあります。
一方で、初犯であり暴行の程度が比較的軽微であるケースでは、罰金刑や執行猶予付き判決となることもあります。
実際の量刑は事件の内容によって大きく異なる
公務執行妨害罪の量刑は、事件ごとの事情によって大きく異なります。
例えば、
- 初犯で暴行が軽微である
- 被害公務員に傷害結果が生じていない
- 深く反省している
- 再発防止に取り組んでいる
といった事情がある場合には、比較的軽い処分となる可能性があります。
一方で、
- 警察官に対して繰り返し暴行を加えた
- 職務執行を著しく妨害した
- 公務員に傷害を負わせた
- 同種前科がある
といった事情がある場合には、実刑判決が選択される可能性もあります。
公務執行妨害罪の公訴時効は3年
公務執行妨害罪の公訴時効は、犯罪行為が終了した時から起算して3年です。
公訴時効とは、一定期間が経過した場合に国家の訴追権が消滅し、検察官が起訴できなくなる制度をいいます。
公務執行妨害罪は法定刑の上限が3年以下の拘禁刑であるため、刑事訴訟法の規定により公訴時効は3年とされています。
公務執行妨害罪で逮捕された後の手続きと勾留期間

公務執行妨害罪は、警察官に対する暴行や脅迫が現場で発生するケースが多いため、現行犯逮捕されることが少なくありません。
逮捕された場合には、警察署の留置施設で身柄を拘束された状態で捜査が進められます。
また、事件の内容や証拠関係によっては、逮捕後に勾留が認められ、長期間にわたって身柄拘束が続くこともあります。
ここでは、逮捕後の刑事手続の流れと勾留期間について解説します。
逮捕から検察官送致・勾留判断までの最大72時間
公務執行妨害罪で逮捕された場合、警察は原則として48時間以内に被疑者の身柄と事件記録を検察官へ送致(送検)します。
送致を受けた検察官は、さらに24時間以内に勾留を請求するか、または釈放するかを判断します。
そのため、逮捕された被疑者は、最大72時間にわたって身柄を拘束される可能性があります。
この期間中は家族との連絡や面会が制限される場合もあり、弁護士による接見が重要となります。
弁護士の接見については、以下の記事で詳しく解説しています。
接見と面会の違いは?接見禁止も解説
検察官による勾留請求と裁判所の判断
検察官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断した場合には、裁判所へ勾留を請求します。
裁判官が勾留要件を満たすと判断した場合には、原則として10日間の勾留が認められます。
さらに、捜査上やむを得ない事情がある場合には、最大10日間の勾留延長が認められることがあります。
その結果、逮捕から起訴・不起訴の判断まで、最大23日間にわたり身柄拘束が続く可能性があります。
もっとも、勾留請求が行われなかった場合や、裁判所が勾留請求を却下した場合には、より早い段階で釈放されることもあります。
起訴・不起訴の決定から刑事裁判へ
勾留期間が満了するまでに、検察官は収集した証拠を精査し、被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。
不起訴処分となった場合には直ちに釈放され、原則として刑事裁判は行われません。
一方、起訴された場合には刑事裁判手続へ移行し、裁判所が有罪・無罪や量刑について判断することになります。
また、起訴後も身柄拘束が継続することがありますが、一定の要件を満たせば保釈請求を行い、裁判までの間の身柄解放を目指すことが可能です。
早期に弁護士へ相談することで、勾留阻止や早期釈放、不起訴処分の獲得に向けた適切な弁護活動を受けられる可能性があります。
保釈制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
保釈とは|保釈請求から保釈決定までの流れを解説
公務執行妨害罪で逮捕された場合に弁護士ができること
公務執行妨害罪の疑いで逮捕された場合は、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することが重要です。
弁護士は、被疑者の権利を守り、不利益を最小限に抑えるために、刑事弁護の専門知識に基づいた活動を行います。
身柄の早期解放に向けた対応や、不起訴処分の獲得を目指す活動、職務執行の適法性に関する法的検討など、その役割は多岐にわたります。
身柄の早期解放に向けた弁護活動
弁護士は逮捕直後から本人と接見し、取り調べに対する適切な対応方法について助言します。
家族であっても面会が制限される場合がありますが、弁護士は接見交通権に基づき、基本的にはいつでも本人と面会することが可能です。
また、勾留の要件である「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」がないことを客観的資料とともに主張し、勾留請求の阻止や、勾留決定に対する不服申立てである準抗告を行うことで、身柄の早期解放を目指します。
早期に身柄が解放されれば、仕事や学校への影響を最小限に抑えられる可能性があります。
不起訴処分の獲得を目指し前科を回避する
日本の刑事裁判では、起訴された事件の有罪率は極めて高いとされているため、前科を回避するためには不起訴処分の獲得が重要になります。
弁護士は、被疑者が深く反省していること、事件の悪質性が低いこと、家族などによる監督体制が整っていることなどの事情を整理し、検察官に対して意見書を提出します。
また、公務執行妨害罪では被害者が国や地方公共団体であるため、一般的な被害者との示談が問題となるケースは多くありませんが、公務員個人が負傷している場合には、謝罪や被害弁償などが量刑上有利な事情として考慮されることがあります。
こうした弁護活動によって、起訴猶予をはじめとする不起訴処分となる可能性を高めることが期待できます。
なお、不起訴処分となった場合には、原則として前科は付きません。
職務執行の適法性を争い無罪を目指す
公務執行妨害罪は、公務員による職務執行が適法であることを前提として成立する犯罪です。
そのため、警察官による職務質問や逮捕手続などに重大な違法性が認められる場合には、公務執行妨害罪の成立自体が否定される可能性があります。
弁護士は、当時の状況や防犯カメラ映像、警察官の供述内容などの証拠を詳細に検討し、職務執行の適法性について法的観点から分析します。
もっとも、実務上は警察官による職務執行の適法性が認められるケースも多いため、単に「納得できない」「警察の対応が気に入らなかった」という理由だけで公務執行妨害罪が否定されるわけではありません。
それでも、違法な職務執行が疑われる事案では、弁護士が適切に主張・立証することで、不起訴処分や無罪判決につながる可能性があります。
公務執行妨害罪に関するよくある質問
ここでは、公務執行妨害罪に関して、多くの方が抱く疑問について回答します。
酔っていて覚えていない場合でも罪に問われますか?
はい、罪に問われる可能性があります。
刑法上、自らの意思で飲酒した結果、酩酊状態になった場合であっても、原則として責任能力は認められます。
そのため、「酔っていて覚えていない」という事情だけで公務執行妨害罪の成立が否定されることは通常ありません。
もっとも、飲酒の程度や当時の精神状態によっては、責任能力の有無が問題となる場合もあります。
相手が公務員だと知らなかった場合でも成立しますか?
相手が公務員であることを全く認識していなかった場合には、公務執行妨害罪が成立しない可能性があります。
公務執行妨害罪が成立するためには、相手が公務員であり、職務を執行していることについて認識が必要とされています。
ただし、制服を着用した警察官や公務員であることが明らかな状況であれば、「知らなかった」という主張が認められない場合もあります。
公務執行妨害罪で示談はできますか?
公務執行妨害罪は、公務の適正な執行という国家的法益を保護する犯罪であるため、一般的な被害者犯罪のように示談によって事件そのものが解決する性質のものではありません。
もっとも、公務員個人が暴行や傷害の被害を受けている場合には、その公務員との間で示談や被害弁償を行うことが可能です。
こうした事情は、検察官による起訴・不起訴の判断や、裁判所による量刑判断において有利な事情として考慮されることがあります。
初犯でも逮捕されることはありますか?
はい、初犯であっても逮捕される可能性があります。
公務執行妨害罪は現行犯逮捕されるケースが多く、前科や前歴の有無にかかわらず逮捕されることがあります。
もっとも、初犯で暴行の程度が比較的軽微な場合には、不起訴処分や略式命令による罰金刑で終結するケースもあります。
公務執行妨害罪で前科は付きますか?
前科が付くかどうかは、最終的な処分によって異なります。
不起訴処分となった場合には、原則として前科は付きません。
一方、罰金刑や拘禁刑の有罪判決を受けた場合には前科が付きます。
なお、不起訴処分となった場合であっても、捜査対象となった事実自体は捜査機関に記録として残ります。
そのため、前科を回避したい場合には、不起訴処分の獲得を目指した弁護活動が重要になります。
まとめ
公務執行妨害罪は、公務員が適法に職務を執行している際に、その職務に対して暴行や脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。
法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められており、決して軽い犯罪ではありません。
また、公務執行妨害罪で逮捕された場合には、逮捕後最大72時間の身柄拘束を経て、勾留が認められれば最大23日間にわたり身柄拘束が続く可能性があります。
そのため、自身や家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕された場合には、できるだけ早い段階で適切な対応を取ることが重要です。
公務執行妨害罪で逮捕された場合や、警察から捜査を受けている場合には、一人で対応を判断せず、まずは刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが大切です。
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コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。