迷惑防止条例とは?違反行為・逮捕された場合の対応を解説

迷惑防止条例とは、公衆に迷惑をかける行為を防止して、住民の安全な生活を保持するための条例です。地方自治体によって行為の定義や罰則が異なることがあります。この記事では、東京都の迷惑防止条例を例に、条例の全体像をご説明します。
目次
迷惑防止条例の概要
ここでは、迷惑防止条例の概要について以下3点をご説明します。
- 迷惑防止条例とは
- 迷惑防止条例における公共の場所とは
- 迷惑防止条例の時効
迷惑防止条例とは
迷惑防止条例(めいわくぼうしじょうれい)とは、公衆に迷惑をかける暴力不良行為等を防止して、住人の安全な生活を保持するための条例です。現在は痴漢や盗撮に対して適用されるケースが多いですが、制定当初はぐれん隊の粗暴行為を防止するためのものでした。
正式には、『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)』といいます。
迷惑防止条例における公共の場所とは
東京都の迷惑防止条例第2条では、公共の場所・公共の乗物を次のように定めています。
- 公共の場所:道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所等を公衆に発売する場所を含む
- 公共の乗り物:汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物
迷惑防止条例の時効
迷惑防止条例の時効は3年です。
迷惑防止条例違反にあたる行為が終わってから3年が経過すると、検察は被疑者を起訴できなくなります。
迷惑防止条例違反にあたる行為
迷惑防止条例違反にあたる行為には、以下のようなものがあります。
- 痴漢
- 盗撮
- その他の行為
それぞれ見ていきましょう。
痴漢
痴漢とは、公共の場所や乗り物で、衣服の上から、または直接に身体に触れる行為です。
東京都の迷惑防止条例第5条1項では、痴漢について次のように説明しています。
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行
為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人
の身体に触れること。
罰則は次の通りです。常習者であった場合は、より重い罪に問われます。
- 通常の場合:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 常習の場合:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
痴漢行為は強制わいせつ罪にあたる可能性もあります。強制わいせつ罪に該当すると、法定刑は迷惑防止条例違反より重いです。強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役です。
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盗撮
盗撮とは、相手に無断で身体や下着を撮影する行為です。撮影器具を差し向けたり、設置したりした場合も盗撮にあたります。
次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体
を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し
向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる
ような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用
し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
東京都の迷惑防止条例における盗撮の罰則は以下のとおりです。
- 撮影したとき:1年以下の懲役又は100万以下の罰金(常習の場合は2年以下の懲役100万以下の罰金)
- 撮影機器を差し向けたとき、設置したとき:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役又は100万以下の罰金)
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その他の行為
痴漢と盗撮以外にも、次のような行為をした場合は迷惑防止条例違反に問われることがあります。
- ぐれん隊による粗暴行為:乱暴な行為のこと
- ダフ屋行為:転売目的でチケットを購入し、高額で売りつけること
- つきまとい行為: 人につきまとうこと、ストーカー
- ピンクビラ配布行為:性風俗産業の勧誘チラシを配ること
- 押売行為:買う意思がない人に無理矢理売りつけること
- のぞき行為:人が衣服を着ない場所(風呂、便所など)をのぞきみること
- 客引き行為:自分の店に客として勧誘すること
- スカウト行為:自分の店に人材として勧誘すること
※違反行為の内容や罰則は自治体によって異なります。
迷惑防止条例違反で逮捕された場合の対応
早期釈放や前科回避を目指すためには、不起訴を得る必要があります。
不起訴を得るためにやるべきことは、主に次の2点です。
- 被害者と示談交渉をする
- できるだけ早く弁護士に相談する
被害者と示談交渉をする
迷惑防止条例のような性犯罪では、被害者感情が重視されます。
迷惑防止条例違反をしてしまった場合は、謝罪と示談交渉をして被害者のゆるしを得る必要があります。
不起訴を得るためには、まず被害者との示談成立を目指すことになります。
できるだけ早く弁護士に相談する
ただ、被害者との示談を成立させるためには、弁護士への依頼が欠かせません。
弁護士に相談するべき理由は、次の3点です。
- 加害者側の方が被害者の連絡先を入手するのは難しいから
- 被害者のゆるしを得るのが難しいから
- 限られた時間で示談を成立させなければならないから
加害者側の方が被害者の連絡先を入手するのは難しいから
示談交渉をする際は、被害者の連絡先を知らなければいけません。被害者の連絡先は警察に聞くことになります。ただ、逃亡や証拠隠滅を防いだり、被害者への危険を回避したりする観点から、加害者側の方に警察が被害者の連絡先を教えることはほとんどありません。
しかし、弁護士であれば被害者の連絡先を教えてもらえる見込みが高くなります。交渉の場を設ける上でも弁護士への依頼が必須です。
被害者のゆるしを得るのが難しいから
示談を成功させるには経験が欠かせません。相手の気持ちに配慮しながら、適切な金額の示談金で話をまとめなければいけません。痴漢や盗撮の被害者はたいへんショックを受けていることが多いので、加害者やそのご家族の方が直接話し合いをするのは好ましいことではありません。
限られた時間で示談を成立させなければならないから
逮捕から起訴までは長くても23日しかありません。対応が遅れるほど身柄拘束の期間が伸びますし、良い結果も得にくくなってきます。刑事事件の実績が豊富な弁護士であれば、限られた時間内に適切な活動を行えます。
【詳細】
【刑事事件】示談交渉を弁護士に依頼するメリット・弁護士費用を解説
まとめ
迷惑防止条例は当初はぐれん隊による粗暴行為を防止する目的で設立されました。しかし今では、痴漢や盗撮で逮捕された場合に適用されるケースがほとんどです。
逮捕されると最大で23日間身柄を拘束されてしまいます。起訴後、有罪判決が下されれば刑罰が言い渡されると共に前科がついてしまいます。
今後の人生への悪影響を最小限にするためにも、痴漢や盗撮が発覚してしまった場合はすぐにご相談ください。
