痴漢で逮捕されそう・された場合の対処法を弁護士が解説

この記事では、主に痴漢で逮捕された場合の対処法を解説します。

他にも、『痴漢で逮捕された場合の取り調べの対応方針』『痴漢による逮捕で弁護士に依頼するべき理由』など、逮捕の危機が迫っているご本人だけではなく、逮捕された方のご家族の方もご参考いただけるような知識を解説しています。今後の対策を立てるためにご活用ください

痴漢で逮捕されそう・された場合の対処法

痴漢で逮捕されそう・された場合の主な対応は以下5点です。

  1. 弁護士・家族に連絡する(最優先!!)
  2. 逃走しない
  3. 謝罪をしない(痴漢をしていない場合)
  4. 供述調書へのに署名捺印に注意する
  5. 家族が逮捕された場合は弁護士を呼ぶ

弁護士・家族に連絡する(最優先!!

逮捕されてからでは電話ができません警察署に連行されるまでの間に、弁護士・家族に連絡をしましょう

【弁護士に伝えるポイント】

  • 痴漢事件に巻き込まれたこと
  • 現在地・駅名
  • 弁護士に面会をして欲しい旨

【家族に伝えるポイント】

  • 痴漢事件に巻き込まれたこと
  • 現在地・駅名
  • 弁護士に面会の依頼をして欲しい旨(ご自身で弁護士に依頼していない場合)

痴漢でトラブルになった直後は、本人に電話をする余裕がないことも予想されます。

「家族が逮捕されてしまった」という方も同様に、弁護士に接見の依頼をしてください

逃走しない

痴漢を疑われた際に逃走するのは推奨できません

理由は以下3点です。

  • 逮捕のリスクが高まる恐れがある
  • 逃げ切れるとは限らない
  • 当人にとって不利な状況になる

第1に、『逮捕のリスクが高まる恐れがある』という点があげられます。

逮捕される条件(要件)の一つに、「逃亡の恐れがあること」というものがあります。犯罪が発覚した場合、逮捕されるイメージがあるかもしれないですが、身柄を拘束せずに捜査が進められることもあります(在宅事件)。

痴漢の現場から逃げ出す姿勢を見せると、逃亡の恐れがあると思われます。

第2に、『逃げ切れるとは限らない』という点があげられます。

仮に通行人や駅員が多い駅で走って逃げ切れたとしても、防犯カメラに映像が残っているので、警察に後日逮捕されるケースもあります。

さらに、逃げる際に通行人に怪我を負わせてしまえば別の責任も発生する可能性があります。

逃亡をする時間をつかって弁護士や家族に連絡をし、弁護士の到着を待った方が、結果的に今後の生活への悪影響を最小限に抑えやすいでしょう。

第3に、『当人にとって不利な状況になる』という点があげられます。

例えば、痴漢が冤罪だったとしましょう。現場から逃走をはかったのちに逮捕された場合、「やっていないならなぜ逃げたのか」といわれることが予想されます。

この時に有効な切り返しをするのは簡単ではありません。逃亡をはかった事実は、刑事事件加害者にとっては不利な状況になります。

謝罪をしない(痴漢をしていない場合)

冤罪の場合は謝罪しないのが無難です。「痴漢をしたから謝ったんだな」と解釈されるリスクがあるためです。

供述調書へのに署名捺印に注意する

供述調書に署名捺印をすると、後の刑事裁判で調書を証拠として提出されてしまいます

供述調書とは、捜査機関が犯行の疑いがある人(被疑者)の供述を記録するために作成する調書のことです。

供述調書は被疑者の供述をもとに検察官が作成します。このとき、事実とは異なる内容が書き込まれることがあります。

例えば、実際よりも悪質な犯行を行ったように書かれている場合や、覚えのない犯行についての内容が書かれている場合などは、供述調書に署名捺印しないようにしてください。

家族が逮捕された場合は弁護士を呼ぶ

こちらは逮捕された方のご家族向けの対策になります。先にお伝えした通り、警察署に連行されると、電話が使えません。逮捕されていることが明らかな場合は、ご家族の方が弁護士を呼びましょう

刑事事件や痴漢事件の取扱実績が豊富な弁護士を探して、被疑者との面会(接見)を依頼してください。

 痴漢で逮捕されそう・された場合の取り調べへの対応方針

痴漢をしている場合も、冤罪の場合も、取り調べの際に作成される供述調書への署名捺印は慎重に行うべきです。ここでは、取り調べへの対応の仕方について、痴漢をやった場合・痴漢をやってない場合をそれぞれ解説します。

  1. 痴漢をやった場合
  2. 痴漢をやっていない場合

痴漢をやった場合

痴漢をしており、痴漢の疑いをかけられた場合は、素直に認めて反省した方が身柄拘束期間が短く済む場合が多いです。また、認めることにより、弁護士による示談交渉が上手くいき、不起訴になる可能性も高まります。

もっとも、認める場合であっても、取り調べで作成される調書は、自分の供述が正しく反映されたものかきちんと確認してから署名捺印するようにしましょう。

痴漢をやってない場合

痴漢をやっていないにもかかわらず、痴漢の疑いをかけられた場合には、はじめにはっきりその旨を伝えましょう。

また、逮捕される前であれば、任意の取り調べですので、必ずしも取り調べを受ける必要はありません。取り調べを受ける場合には、自分の供述が正しく反映されているか、きちんと確認をしてから調書に署名捺印をしましょう。

調書に対する署名捺印は義務ではなく、任意で行うものですので、自分の供述が正しく反映されていない箇所があれば、署名捺印を拒否したり、訂正してもらう権利もあります。ですので、取り調べを受けることになっても、自分の意に沿わない調書の作成は阻止するようにしましょう。

痴漢による逮捕で弁護士に依頼するべき理由3つ

痴漢による逮捕で弁護士に依頼するべき理由は以下のとおりです。

  1. 適切な初期対応をしやすくなる
  2. 身柄拘束の回避・早期釈放を目指せる
  3. 前科・懲役刑の回避を目指せる

適切な初期対応をしやすくなる

一度逮捕されてしまうと、最大で23日間身柄を拘束されます。社会生活への悪影響を避けるには、逮捕を防いだり、逮捕されたとしても長期の身柄拘束を避けたりする必要があります。

上記を目指すには、痴漢で逮捕される前後で適切な初期対応をする必要があります。

間違った対応の例としては、痴漢をしていないのに、取り調べが厳しくて嘘の自白をしてしまったというものがあります。調書の内容は事件の証拠となるため、逮捕された方にとっては不利な事情となってしまいます。

弁護士を呼ぶことで、警察の取り調べへの対応の仕方がわかり、不本意な調書を取られるリスクを下げられます。加えて、被害者との示談交渉など、事件解決に向けた弁護活動を任せられます。

調書にサインする前に弁護士と面会するようにしましょう。

早期釈放を目指せる

逮捕されると最大で23日間身柄を拘束されます。会社や学校への悪影響を少なくするためにも、長期間の身柄拘束は避けたいものです。

弁護士に依頼をすると、事件の初期段階から、釈放に向けた弁護活動を行ってもらえます。例えば被害者との示談交渉が成立すれば、不起訴となって釈放される可能性が高くなります。

このように、刑事事件では弁護士しかできない活動が少なくありません。具体的な活動内容については、『【補足】具体的な弁護活動の内容』をご参照ください。

前科・懲役刑の回避を目指せる

刑事裁判で有罪判決が下されると、前科がついた上で然るべき処分が下されます。

日本では起訴されると99.9%有罪判決が下されるといわれているので、前科をさけるには不起訴を目指すことが重要です。上でも軽くお伝えしましたが、痴漢事件で不起訴を得るためには、弁護士に依頼をして被害者との示談成立を目指すのが得策です。

また、不起訴を得るのが難しい場合でも、弁護士に依頼をしていた場合はより軽い刑罰を目指しやすくなります。長期間身柄を拘束される懲役刑よりも、執行猶予や罰金刑の方が社会復帰を図るためのハードルは低くなります。

【補足】具体的な弁護活動の内容

上記では弁護士依頼をするべき理由をご説明しました。ここでは、上記でご説明した点を実現するために弁護士が行う弁護活動のうち、主に起訴前に行うものを簡単にご説明します。

  • 被疑者との接見
  • 被害者との示談交渉
  • 釈放を目指す活動

被疑者との接見

接見とは、警察に身柄を拘束された被疑者に対して弁護士が面会を行うことです。接見では、弁護士から被疑者に対して、取り調べへの対応方法について助言をします。上でお伝えしたように、事実とは異なる不利な調書を作成されないためにも重要な活動です。

加えて、弁護士から被疑者に対して今後の見通しや家族からの伝言などを伝えることで、被疑者の不安の軽減を図ります。

被害者との示談交渉

上でお伝えした通り、被害者との示談交渉が成立すると、不起訴を得られる見込みが高まります。基本的に、被害者との示談交渉は弁護士に依頼しましょう。

加害者やそのご家族が被害者と直接示談交渉をするのは、現実的ではありません。加害者側の方が被害者に直接接触するのは、被害者からすると危険なことですし、証拠隠滅の恐れもあります。警察から被害者の連絡先を教えてもらうのは難しいでしょう。

示談交渉の経験がある弁護士であれば、被害者感情に配慮しながら和解を目指せます。

釈放を目指す活動

釈放を目指す活動には、示談成立による不起訴の獲得以外にも以下のようなものがあります。

  • 検察官への在宅での取り調べの要請
  • 裁判官に対し、勾留請求を却下するよう要請
  • 準抗告・勾留取消請求 など

痴漢で逮捕されるのはどんなときか(逮捕の要件)

逮捕される場合、基本的に以下の両方が要求されます。

  1. 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
  2. 逮捕の必要性

通常逮捕の場合には、逮捕状が必要です。

被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由

被疑者が認めていない場合には、被疑者が痴漢をしたと考えられる、客観的な事実が必要です。

例えば以下のような、様々な事実と照らし合わせて判断されます。

  • 被害者の証言
  • 痴漢をした瞬間の目撃者がいる
  • 被疑者の手から被害者の衣服の繊維が採取された
  • 防犯カメラ等で犯行状況が明らかになっている など

被疑者が認めている場合には、被疑者と被害者の供述の整合性等により、判断されます。

逮捕の必要性

逃亡の恐れがある

逃亡の恐れとは、被疑者が逮捕により身柄拘束をしなければ行方をくらませる恐れがあるかどうかということです。

住所不定者、定職についていない者、家族などの身寄りがいない人などは、現在の生活を捨てて行方をくらませる可能性が高いと判断され、逮捕の必要性が認められやすくなります。

また、法定刑が重いほど、関与の度合いが高いほど刑が重くなる可能性が高く、その場合にも逃亡の動機が高いと判断されます。

罪証隠滅の恐れがある

罪証隠滅の恐れとは、身柄を拘束しなければ証拠を隠滅する可能性が高いのかどうかということです。

共犯者がいるような詐欺罪や、被疑者と被害者、目撃者等が知り合いである場合は、被疑者が関係者に対し自分に不利な供述をしないように働きかける可能性があるため、逮捕の必要性が認められやすくなります。

また、事件の全貌が分かっていないと捜査機関が判断する場合にも、被疑者を拘束しないと証拠の隠滅が行われる可能性があると判断され、逮捕の必要性が認められやすくなります。

痴漢における逮捕種類2つ

逮捕とは、警察官などが、逃亡や証拠の隠滅を防ぐため、比較的短期間身柄を拘束することをいいます。痴漢の容疑の場合には、現行犯逮捕と通常逮捕が考えられます。

  1. 現行犯逮捕
  2. 通常逮捕

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、犯罪を目撃した一般人や警察官などが、犯罪を行っている人を逮捕することです。例えば、痴漢の被害者や目撃者、駅員などが、痴漢の被疑者を駅員室に連れて行き、警察に身柄を引き渡すような流れは現行犯逮捕にあたります。

通常逮捕

通常逮捕とは、逮捕状をもった警察官に逮捕されることです。逮捕状を発布するためには、証拠をもとに痴漢の犯人を特定する必要があります。証拠には、例えば防犯カメラの映像や、交通系ICカードの乗車履歴などがあります。

痴漢で問われうる罪

痴漢で有罪判決を下された場合に問われる罪には、以下のようなものがあります。

  1. 迷惑防止条例違反
  2. 強制わいせつ罪

迷惑防止条例違反

何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行

為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人

の身体に触れること。

引用元:迷惑防止条例第5条1項

罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(東京都の場合)です。

ケースバイケースですが、衣服の上から触れるような、比較的軽微な痴漢の場合は迷惑防止条例違反になると予想されます。

強制わいせつ罪

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

引用元:刑法第176条

下着の中に手を入れた、暴行や脅迫を伴う痴漢をした、など、比較的悪質性の高い痴漢をした場合は強制わいせつ罪に問われることがあります。

罰則は6か月以上10年以下の懲役です。懲役の期間が迷惑防止条例よりも長く、罰金刑がないより重い罪となっています。

痴漢で逮捕された後の流れ

最後に逮捕後の流れについて簡単にご説明します。

  1. 警察による取り調べ|48時間以内
  2. 検察官へ送致・勾留請求|24時間以内
  3. 勾留|原則10日間、最大20日間
  4. 起訴不起訴の判断
  5. 起訴後勾留
  6. 刑事裁判

警察による取り調べ|48時間以内

逮捕後48時間以内に、警察による取り調べが行われます。取り調べで不利な証言をしてしまうと、本来の罪以上に重い罪に問われる恐れがあります。ただ、この間はご家族の方であっても面会はできません。面会できるのは、被疑者の弁護人のみです。差し入れや伝言をしたい場合は、その旨を弁護人に伝えましょう。

また、できるだけ早い段階で取り調べへの対応方法を弁護士に確認しましょう。

検察官へ送致・勾留請求|24時間以内

被疑者の身柄が送致されると、検察官が24時間以内に勾留請求をするかどうか判断します。

勾留|原則10日間、最大20日間

事件の捜査をする上で必要があると判断された場合に、原則10日間、最大20日間の身柄拘束である勾留がなされます。

起訴・不起訴の判断

検察官が以下のような点を考慮し、被疑者を起訴するかどうか判断します。

  • 勾留中の取り調べ
  • 被疑者の性格、年齢、境遇
  • 犯罪の程度や情状
  • 社会に戻した場合の更生可能性

不起訴を得られれば事件が終了し被疑者の身柄が解放されます。前科もつきません。

起訴後勾留|約2カ月

起訴後、裁判所が被告人の身柄拘束が必要であると判断した場合、刑事裁判が始まるまでの間身柄を拘束されます。

刑事裁判

有罪判決が下された場合、罰金刑、執行猶予、懲役刑が下されます。無罪判決が下された場合は、身柄が解放されます。

まとめ

この記事では、痴漢で逮捕された場合の対応方法など、痴漢で逮捕された方やそのご家族にとって必要な情報をお伝えしました。繰り返しになりますが、痴漢で逮捕された場合は迅速に釈放されることや、不起訴を得ることが重要です。

ネクスパート法律事務所では痴漢事件の取扱実績が豊富な弁護士が在籍しています。接見の依頼をいただければ、迅速にご対応いたします。

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