更新日:2026年3月5日 (木)

公開日:2022年6月24日 (金)

DV

経済的DVとは?チェックリスト10項目|生活費を渡さない配偶者への対策と相談窓口

経済的DVとは?チェックリスト10項目|生活費を渡さない配偶者への対策と相談窓口 経済的DVとは?チェックリスト10項目|生活費を渡さない配偶者への対策と相談窓口

生活費を渡さない、給与を一方的に管理する、働くことを禁止するなどの行為は、配偶者による経済的DV(生活費制限や金銭管理による支配)に該当する可能性があります。

経済的DVとは、配偶者やパートナーが収入や財産を一方的に管理したり生活費を制限したりすることで、相手の生活や行動を支配する行為を指します。

経済的DV(生活費制限・給与管理など)は、離婚や慰謝料請求にも関わる深刻な問題です。

本記事では、経済的DVの典型例や加害者の心理、証拠の収集方法、弁護士に相談すべきケースまで、離婚問題を豊富に扱う法律事務所の視点でわかりやすく解説します。

「生活費がもらえない、自由にお金を使えない」と感じている方は、自分の権利を守るための第一歩としてぜひご覧ください。

次のような状況がある場合、経済的DVの可能性があります。

  • 生活費をほとんど渡してもらえない
  • 自分の給料を自由に使えない
  • 働くことを禁止されている
  • お金の使い道を細かく監視される

これらは単なる家計管理ではなく、配偶者による「経済的DV」に該当する可能性があります。

経済的DVとは?|定義・特徴・生活費の不払い

まずは、どのような行為が「経済的DV(経済的暴力)」とみなされるのか、その具体的な定義や生活費制限、金銭管理の実態を確認しましょう。

経済的DVは、単なる「金銭感覚の不一致」ではなく、相手を自分の思い通りに操るための支配手段として金銭が用いられるのが特徴で、収入や生活費の管理を通じた金銭支配が問題となります。

ご自身の状況が客観的に見て不当な経済的支配にあたらないか、以下の項目と照らし合わせて確認してみてください。

経済的DVの定義|配偶者による金銭支配と生活費制限

経済的DV(経済的暴力)とは、配偶者やパートナーが、生活費制限や収入管理を通じて不当に金銭的制限を加え、相手を支配下に置き生活を脅かす行為を指します。

内閣府の指針や近年の裁判例においても、身体的暴力や精神的暴力と並び、DVの一形態として経済的DVが広く認識されるようになっています。
裁判所の判断でも、生活費制限や給与管理などの実態が、夫婦関係の状況を判断する事情として考慮されることがあります。

最大の特徴は、生活費を渡さないことで相手を自分に従わせ、経済的に支配する状況に追い込む点にあります。

「節約」と「経済的DV」の決定的な違い|正当な家計管理との境界

「将来のために貯金する」という双方の合意のもとで出費を抑えるのは「節約」です。

しかし、相手の同意なしに一方的に支出を制限し、逆らうと怒鳴る、あるいは必要な医療費さえ出し渋るなどの行為は、経済的DVの可能性が高いと考えられます。

  • 合意に基づく家計管理
    「どちらか一方がまとめて管理する方が効率的」と夫婦で冷静に話し合い、双方が内容に納得し、必要に応じて自由に使えるお金が確保されている場合は、経済的DVには該当しません。
  • 一方的な金銭支配
    話し合いの余地がなく、一方が強制的にルールを決め、相手の自由や尊厳を奪う形で生活費や収入を管理している場合は、法的に「不当な支配(経済的DV)」として裁判所で評価される可能性があります。

経済的DVチェックリスト|生活費が足りない・自由に使えない

「うちの家庭は少し厳しいだけかも……」と悩んでいませんか?

経済的DVは、加害者側が「教育のため」「将来のため」と正当化することが多く、生活費や給与の管理を通じて行われることもあるため、被害者自身が気づきにくいという特徴があります。

まずは以下のチェックポイントで、現状の金銭管理状況や生活費の制限が経済的DVに該当しないかを客観的に見つめ直してみましょう。

経済的DVチェックリスト

経済的DVは自覚しにくいケースも多くあります。
以下の項目に複数当てはまる場合は、法的な介入が必要な「経済的DV」の可能性があります。

【経済的DVチェック10項目】

  • □ 生活費を十分に渡してもらえない
  • □ 給与・貯金をすべて管理されている
  • □ 働くことを禁止されている
  • □ 買い物のレシート提出を強要される
  • □ 自由に使えるお金がない
  • □ 家計状況を知らされない
  • □ 借金を押し付けられる
  • □ 貯金を勝手に使われる
  • □ お金のことで人格否定される
  • □ 金銭で支配されていると感じる

経済的DVの具体例|生活費・給与・貯金・働く自由の制限

以下は、日常生活で起こりやすい経済的DVの具体例です。
生活費・給与・貯金・就労の自由がどのように制限されるかを確認しましょう。

① 生活費を十分に渡さない

配偶者が高い収入を得ているにもかかわらず、家計を一方的に管理し、食費や光熱費などの生活費を最低限しか渡さない、または全く渡さない場合は、経済的DVの可能性があります。

② 給与や貯金をすべて管理する

自分自身の給与や結婚前から持っていた貯金を自由に使えず、すべて配偶者が管理し、キャッシュカードや通帳を取り上げられている場合は、経済的DVの可能性があります。

③ 働くことを禁止・制限する

「外で働くことを認めない」「今の仕事を辞めるよう強要される」といった行為は、経済的自立や就労の自由を妨げ、逃げ場をなくす典型的な手口です。

④ お金の使い道を過度に監視する

1円単位の誤差も許さないレシート提出の強制や、日用品の買い物一つひとつに詳細な説明を求める行為は、過度な金銭管理・監視であり、経済的DVの可能性があります。

⑤ 借金を押し付ける

配偶者が遊興費などで作った借金の返済を強制されたり、あなたの名義を無断で使ってローンを組まされたりする場合も、借金管理や名義貸しの問題として、経済的DVの典型的かつ深刻なケースとなります。

経済的DVを行う加害者の特徴と心理的背景

経済的DVの加害者は、単に「お金に細かい」わけではありません。

その根底には、金銭を支配手段・道具として使い、相手を思い通りに動かそうとする心理的背景があります。
心理学的には、支配欲やコントロール欲が強いといった心理的特徴が見られる場合があると指摘されています。

加害者の典型的な特徴を知ることで、現在の状況が「個人の性格の問題」ではなく、法的・社会的に是正すべきハラスメント(経済的DV)であることを正しく理解しましょう。

① 支配欲・コントロール欲が強い加害者

経済的DVの加害者の多くは、配偶者を対等なパートナーではなく、自分の管理下にあるべき対象として捉える傾向が強く、家庭内権力や支配行為として現れることがあります。

② お金を支配の手段として使うケース

生活費や収入を細かくコントロールすることで、相手を自分に従わせようとする行為です。

「金を与えなければ、こいつは俺(私)から離れられないだろう」という計算が働く場合もあり、生活費制限や給与管理などの形で現れる金銭支配の典型例といえます。

③ モラハラや人格否定を伴う心理傾向

経済的DVは、言葉の暴力や無視などの精神的虐待(モラルハラスメント、人格否定)とセットで行われることが多く、被害者の自尊心を削る手段として用いられます。

「お前は金遣いが荒い」「社会経験がないから管理できないんだ」「稼げないくせに生意気だ」といった発言を繰り返すことで、被害者の自尊心を徹底的に削ります。
これにより、被害者は「自分がダメだからお金をもらえないんだ」という誤った思い込みを持つ心理的支配が形成される場合があります。

④ 収入や経済力で優位に立とうとする

「誰が食わせてやっていると思っているんだ」といった発言に象徴されるように、収入の多寡を人間の価値や家庭内の権力差に結びつけ、経済的優位や支配力を誇示する傾向があります。

⑤ 責任転嫁や生活費不足の押し付け行動

加害者は自分の非を認めず、問題の原因をすべて相手のせいにする「投影」という心理的特徴を示すことがあります。

客観的に見て明らかに不足している金額しか渡していないにもかかわらず、やりくりができないことを「お前の管理能力のなさだ」「無駄遣いをしているからだ」と厳しく責め立てます。
被害者が家計の苦しさを訴えても、論点をすり替えて攻撃し、家計管理や経済的支配の責任を一方的に押し付けることがあります。

モラハラ夫やモラハラ妻の特徴や具体例について、詳しくは以下の記事も合わせてご参照ください。

モラハラ夫の特徴とは?|離婚できるケース・慰謝料請求の可否
モラハラ妻とは?特徴・具体例・チェックリストと離婚方法を徹底解説

経済的DVを受けやすい人の特徴|専業主婦・収入差・孤立環境

経済的DVは、特定の性格の人だけが被害に遭うものではありません。

しかし、家庭内権力の偏りや経済状況によって、経済的支配を受けやすい状況が生まれることがあります。
ここでは、実際の相談事例や被害事例で多く見られる、経済的DVを受けやすい環境や状況について解説します。

① 専業主婦・収入差のある家庭で起こりやすい経済的DV

収入格差が大きい家庭では、家計管理や生活費制限を口実に経済的支配が生じやすくなります。

配偶者のどちらかが主に収入を担い、もう一方が家事・育児を担う家庭では、収入を得ている側が家計管理の主導権や家庭内権力を握りやすくなります。
多くの場合は問題ありませんが、次のような行為が見られる場合には経済的DVに該当する可能性があります。

  • 生活費を極端に制限する
  • 必要な支出にも事前の許可を求めさせる
  • 「誰のおかげで生活できているのか」と金銭を盾にする発言を行う
  • 家計の状況を一切共有しない

特に、専業主婦(主夫)の場合、収入がないことで生活費を管理されると、経済的自立が難しくなり、経済的支配に依存するリスクが高まります。

② 育児・介護中で働きにくい人が受けやすい経済的DV

子育てや介護などでフルタイム収入を得にくい状況は、経済的支配や生活費制限を受けやすくなる要因の一つです。

小さな子どもがいる家庭や、親の介護を担っている家庭では、育児負担や介護負担によりフルタイムで働くことが難しい場合があります。
このような状況で、配偶者が次のような行為を行う場合には経済的DVの可能性があるため注意が必要です。

  • 「働いていないのだからお金は渡さない」と言う
  • 子どもの生活費を十分に渡さない
  • 家計の状況を隠し、必要な支出を認めない

育児や介護は家庭を支える重要な役割です。これらを理由に生活費制限を行うことは正当化されず、経済的DVとして問題となる可能性があります。

③ 配偶者への経済依存が強い場合の経済的DV

収入源が配偶者に限られる場合、経済的DVから抜け出しにくくなり、家庭内支配が固定化する傾向があります。

次のような状況では、配偶者への経済依存が強まり、経済的支配や家庭内支配関係が固定化しやすくなります。

  • 自分名義の預金がほとんどない
  • 配偶者が通帳やキャッシュカードを管理している
  • 家計状況を把握していない
  • 自分の自由に使えるお金がほとんどない

経済的DVの特徴は、被害者が生活費不足や生活困窮への不安を抱えやすいことです。
そのため、不当な扱いを受けても心理的・経済的な支配により関係を解消できないケースが少なくありません。

④ 孤立した環境で長期化する経済的DV

孤立した環境では、経済的DVの被害が長期化する傾向があります。

経済的DVは家庭内で行われることが多く、外部からは見えにくい問題です。
次のような状況では、被害が長期化する傾向があります。

  • 家族や友人に相談できない
  • 配偶者が人間関係や交友関係を制限している
  • 家計の問題を他人に話せないと感じている

一人で抱え込まず、早い段階で公的機関や専門家(弁護士・相談窓口)に相談することが重要です。

経済的DVの統計と被害状況|最新の調査結果から

経済的DV(生活費制限・給与管理など)は家庭という密室で行われるため、かつては把握が難しかった被害ですが、内閣府の令和5年度調査により経済的DVの実態が数値として明らかになっています。

約4〜5人に1人がDVを経験

内閣府の調査によると、配偶者から何らかの暴力を受けたことがあると回答した割合は、女性で約4人に1人(25.9%)、男性で約5人に1人(18.4%)にのぼります。

この数字は、DVが決して他人事ではなく、どの家庭でも起こり得る身近な問題であることを示しています。

経済的DVの具体的な割合

暴力の中でも、金銭的な支配を伴う「経済的DV」の経験率は以下のとおりです。

  • 女性:8.6%
  • 男性:2.8%

具体的な行為としては、

  • 生活費を渡さない
  • 給料や貯金を勝手に使う
  • 働くことを妨害する

といった内容が含まれます。

数値上は女性の被害が目立ちますが、男性の場合は「恥ずかしさ」や「世間体」などから被害を自覚・申告しないケースもあると指摘されており、実際には統計に表れない被害が存在する可能性も指摘されています。

参照:内閣府男女共同参画局『男女間における暴力に関する調査』令和5年度概要版

共働き世帯でも潜在化する「現代型」の経済的支配

現代の共働き家庭においても、経済的DVは形を変えて存在しています。

「お互いに稼いでいるから対等なはず」という思い込みが、逆に被害を隠してしまいます。
パートナーに給与口座を完全に握られ、自分が必要な小遣いすら許可制になっている状況は、実質的な経済的支配が成立しているといえます。

経済的DVの証拠一覧|生活費不払い・支配行為を立証する方法

経済的DV(生活費不払い・給与管理など)を法的に主張する場合、客観的な証拠の有無が重要となります。

経済的DVは家庭内で行われることが多く、第三者が見ても状況を理解できる証拠を残しておくことが、調停や交渉を有利に進めるための重要なポイントです。

経済的DVの証拠として有効なもの一覧

証拠の種類 具体的な内容・例 立証できること
通帳・家計の記録 ・通帳の入出金履歴
・家計簿
・家計管理アプリ
・相手の給与明細の写真 など
・生活費が十分に渡されていない事実
・収入との不均衡
・経済的支配の有無
LINE・メールの履歴 ・生活費制限の発言
・レシート提出の強要
・就労を妨害するメッセージ など
・金銭を利用した支配関係
・継続的な経済的虐待の証明
録音データ ・生活費を渡さない発言
・威圧的な発言 など
・精神的DV(モラハラ)や支配的態度の証明

証拠収集における重要な注意点

経済的DVの立証には証拠収集が不可欠ですが、方法を誤ると法的リスク(違法収集やプライバシー侵害)が生じる可能性があります。

  • 違法な方法での収集は避ける
    相手のスマートフォンのパスワードを無断で解除したり、監視アプリを仕込んだりする行為は、不正アクセス禁止法やプライバシー権の侵害に該当する可能性があります。
    違法に取得した証拠は裁判で証拠としての評価が低くなる場合があるほか、プライバシー侵害を理由として慰謝料請求などに発展するリスクもあるため十分に注意が必要です。
  • 専門家に相談しながら整理する
    どの証拠が法的に有効か、また安全に収集する方法については、弁護士など専門家に相談しながら進めることが望ましいです。

経済的DVは犯罪になる?違法性と刑事責任・民事責任

「経済的DVは刑事罰の対象になるのか」「生活費を渡さない行為は犯罪になるのか」といった疑問は、離婚や夫婦トラブルに直面した方から多く寄せられます。

ここでは、経済的DVの犯罪性や刑事責任の可能性、さらに民法上の違法性や民事責任について、家庭裁判所の実務上の運用も踏まえて整理します。

経済的DVは直ちに「犯罪」や刑事罰の対象になるのか

結論からいうと、現在の日本の刑法には「経済的DV罪」といった独立した犯罪類型は存在しません。
そのため、

  • 配偶者に生活費を渡さない
  • 家計を一方的に管理して配偶者の支出を制限する

といった行為だけで、直ちに加害者が逮捕されるなどの刑事責任が問われるケースは、実務上、一般的には多くないとされています。
もっとも、行為の態様や被害状況によっては、別の犯罪に該当する可能性があります。

状況によっては成立し得る刑法上の犯罪

経済的DVの状況によっては、以下の刑法上の犯罪が成立する可能性もあります。

  • 保護責任者遺棄罪(刑法第218条
    高齢者、幼年者、病人など、自力で生活を維持できない家族を保護すべき立場にある者が、生存に必要な保護を放棄した場合には、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。

    たとえば、病気で働けない配偶者に生活費を一切渡さない、食費や医療費を与えず生命・身体に危険を及ぼすといった場合には、刑法上の責任が問題となることがあります。
    ただし、実際に刑事事件として立件されるかどうかは、被害の深刻さや保護義務の程度など、具体的事情を踏まえて判断されます。

  • 強要罪(刑法第223条
    経済的支配を利用して、「お金が欲しいなら仕事を辞めろ」「生活費を渡す代わりに○○をしろ」などと脅迫や威迫を用いて義務のない行為を強制した場合には、強要罪が成立する余地があります。

    この場合も、実際に刑事責任が認められるかどうかは、脅迫の程度や被害者の自由意思がどの程度侵害されたかなど、個別事情によって判断されます。

刑事犯罪にならなくても「違法行為(民事責任)」になる可能性

経済的DVは、刑事事件として処罰されるケースが多くないとしても、民事上は違法行為と評価される可能性があります。

特に問題となるのが、次のような夫婦間の法的義務違反です。

  • 夫婦の扶助義務(民法第752条
    民法第752条では、夫婦は互いに協力し、扶助しなければならないと定められています。

    そのため、正当な理由なく生活費を渡さない行為は、この扶助義務に反する可能性があります。

  • 婚姻費用分担義務(民法第760条
    さらに、民法第760条では、夫婦はその資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用を分担すると定められています。

    これは一般に婚姻費用分担義務と呼ばれ、実務では家庭裁判所における婚姻費用分担請求の調停や審判(家事事件手続法)によって具体的な金額が決められることがあります。
    収入のある配偶者が生活費を一切支払わない状態が続く場合、この義務違反として問題になることがあります。

経済的DVは民法上の「不法行為」として損害賠償の対象になり得る

経済的DVによって相手方に精神的苦痛や生活困難を生じさせた場合、状況によっては民法上の不法行為(民法第709条)に該当すると評価される可能性があります。
この場合、被害者は加害者に対して、

  • 婚姻費用の請求
  • 慰謝料請求
  • 離婚請求

などの民事上の法的手段をとることが可能です。

経済的DVで訴えられるとどうなるのか

被害者が家庭裁判所の手続や民事訴訟を利用した場合、加害者には次のような法的・経済的負担が生じる可能性があります。

  • 婚姻費用の支払い命令と強制執行
    家庭裁判所が婚姻費用の支払いを命じたにもかかわらず支払わない場合、給与や預貯金の差押え(強制執行)が行われる可能性があります。
  • 離婚請求が認められる可能性
    長期間にわたる経済的DVは、婚姻関係の破綻を基礎づける事情として評価されることがあります。
    その結果、裁判所が離婚請求を認める方向に判断する可能性があります。
  • 慰謝料の支払い義務
    経済的支配や生活費の不払いによって配偶者に精神的苦痛を与えたと認められた場合、不法行為に基づく慰謝料の支払いが命じられることがあります。

刑事事件にならなくても民事手続で法的責任を問うことは可能

経済的DVは、警察が直ちに介入する刑事事件として扱われない場合も少なくありません。
しかし、民事手続或いは家庭裁判所の制度を通じて、婚姻費用の請求や損害賠償請求などの法的責任を追及することは可能です。
実際の判断は、

  • 収入状況
  • 別居の有無
  • 生活費の支払い状況
  • 婚姻関係の実態

など、個別事情を踏まえて裁判所が判断することになります。
そのため、具体的な対応については、離婚問題を扱う弁護士などの専門家に相談することが実務上重要とされています。

経済的DVへの具体的な対処法|安全確保・証拠・相談先

経済的DVを受けている場合、感情的な対立を避けながら、冷静かつ戦略的に行動することが重要です。

相手の経済的支配から脱し、生活を再建するためには、安全確保・相談・資金準備などを段階的に進める必要があります。

【経済的DV被害者の優先対策3選~証拠・相談・資金確保~】

  • ① 証拠の徹底保全
    預金通帳、給与明細、家計簿、生活費制限や不当な制約が分かるメッセージ履歴を保存する。
  • ② 公的・専門的窓口の利用
    自治体のDV相談支援センター、警察の相談窓口、弁護士への早期相談を行う。
  • ③ 安全と資金の確保
    身の安全と自分名義の緊急資金を確保する。

まずは安全を確保することが重要

経済的DVが深刻な場合は、まず自分や子どもの安全を確保することが最優先です。

生活費の制限や経済的制裁は、精神的DV(モラハラ)や身体的暴力に発展する前兆となることもあります。

  • 信頼できる人に相談する
    家族や友人など信頼できる人に、経済的DVの状況を共有しましょう。
    一人で抱え込まず、周囲から精神的な支えを得ることで、冷静な判断力を取り戻すことができます。
  • 安全な避難先を確保する
    身の危険を感じる場合は、自治体の「配偶者暴力相談支援センター」を通じて、一時保護施設(シェルター)への避難が可能です。
    シェルターの場所は原則非公開であり、加害者に知られることはありません。
    実家や友人宅へ避難する場合も、相手に追跡されないよう慎重に準備することが重要です。
  • 自分名義の口座作成と資金確保
    相手に管理されていない自分名義の銀行口座を新たに作り、少額でも緊急資金を確保しておくことが重要です。
    緊急資金があることで、避難後の生活や心理的な安心感につながります。

経済的DV相談先一覧|公的機関・弁護士・緊急連絡先

一人で抱え込まず、まずは以下の窓口に連絡してみましょう。

あなたの状況に応じた適切な支援を受けることができます。

相談先名称 連絡先・特徴 こんな時にオススメ
DV相談ナビ 電話:#8008
(はれれば)
どこに相談すべきか迷った時の最初の窓口
DV相談プラス 電話:0120-279-889
(つなぐ はやく)
365日・24時間対応
チャット相談も可能
警察(相談専用電話) 電話:#9110 身体的DVのおそれや緊急性が高い場合
弁護士事務所 各事務所の専用窓口 婚姻費用(生活費)の請求や離婚に向けた具体的な法的措置を検討したい時

経済的DVで離婚できる?慰謝料・婚姻費用の請求方法

経済的DVは、状況によっては離婚や慰謝料請求の理由となる可能性があります。

また、離婚に至らない場合でも、生活費にあたる「婚姻費用」を請求できるケースがあります。
経済的DVが続いている場合、「離婚できるのか」「生活費を請求できるのか」と悩む方は少なくありません。

ここでは、経済的DVにおいて利用できる主な法的手段について解説します。

生活費が支払われない場合の婚姻費用請求

配偶者が生活費を渡さない場合、法律上の「婚姻費用」の請求が可能なケースがあります。

民法上、夫婦は互いに生活を支える義務を負っており(民法第760条)、収入や資力に応じて生活費を分担する義務があります。
そのため、別居中だけでなく、同居中であっても生活費が極端に不足している場合には、婚姻費用の請求が認められる可能性があります。

例えば次のようなケースが考えられます。

  • 配偶者が収入を一方的に管理し、生活費を十分に渡さない
  • 子どもの生活費や教育費を負担しない

弁護士に相談することで、家庭裁判所の基準に基づき、適切な婚姻費用を請求できる可能性があります。

婚姻費用の請求については、以下の記事も合わせてご参照ください。

婚姻費用とは|別居中の生活費を分担する義務や養育費との違い

経済的DVで離婚できる?慰謝料・財産分与の考え方

経済的DVがある場合、夫婦関係の状況によっては、離婚や財産分与、慰謝料請求の検討が必要になることがあります。

経済的DVは、精神的DV(モラハラ)と併存しているケースも多く、夫婦関係が修復困難な状況になっていることがあります。
離婚を検討する場合には、次の問題を整理する必要があります。

  • 離婚条件の交渉
  • 財産分与の範囲と方法
  • 親権および養育費の取り決め(子どもがいる場合)
  • 慰謝料請求の可能性

弁護士に相談することで、法的な権利を守りつつ、離婚手続きを進めることが可能になります。
実際の裁判でも、生活費をほとんど渡さない行為や経済的支配が長期間続いた場合には、離婚や慰謝料が認められるケースがあります。

経済的DVで話し合いができない場合の弁護士対応

当事者同士での話し合いが成立しない場合、弁護士が代理人として交渉を進めることが可能です。

経済的DVを行う配偶者は、次のような態度を取ることがあります。

  • 生活費の話をすると怒る
  • 威圧的な言動を繰り返す
  • 家計情報を一切開示しない

このような場合、当事者同士での話し合いは困難で、状況が改善しないことも少なくありません。
弁護士が代理人になることで、

  • 法的根拠に基づいた請求
  • 相手との交渉
  • 家庭裁判所での調停・裁判手続き

を安全かつ適切に進めることが可能です。

財産隠し・収入隠蔽への弁護士対応策

配偶者による財産隠しや収入隠蔽が疑われる場合、弁護士の権限により調査できる可能性があります。

離婚や婚姻費用請求の場面では、配偶者の収入や財産を正確に把握することが重要です。
経済的DVを行う配偶者の中には、次のような行為を行うケースがあります。

  • 収入を隠す
  • 別口座に資産を移す
  • 投資や貯蓄の情報を開示しない

弁護士に依頼すると、弁護士会照会などの制度を活用して金融機関に情報開示を求められる場合があります。
これにより、財産状況を把握しながら、適切な請求手続きを進めることが可能です。

離婚時の財産分与で通帳開示請求はできるのかについて、以下の記事も合わせてご参照ください。

離婚時の財産分与で通帳開示請求は可能?拒否された場合の対応を解説

経済的DVを法律で守る方法|DV防止法・婚姻費用・保護命令

「家庭内の問題だから」「家計のやりくりは夫婦の自由だ」と言われても、諦める必要はありません。


日本の法律には、不当な経済的支配からあなたを守り、自立を支援するための明確な制度が整備されています。

ここでは、解決の鍵となる法的根拠と、今すぐ検討できる具体的な法的手段について解説します。

DV防止法で保護される経済的制限のケース

日本の法律では、
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)
が制定されています。

かつてはこの法律の主な対象が「身体的暴力」に限定されていましたが、法改正や裁判実務の積み重ねにより、経済的制限を伴う「精神的暴力」も、被害者の心身に重大な影響を与えるものとして保護対象に含まれるようになっています。

たとえ一度も身体的暴力がなくても、経済的支配によって生活の自由が制限されている場合には、
法的保護の対象となる可能性
があります。
ただし、保護命令(接近禁止命令等)の発令には、個別の事情に基づく厳格な判断が必要です。
経済的DVのみで直ちに発令が認められるわけではない点に注意が必要です。

経済的DVの法的手段|婚姻費用・保護命令・離婚請求

経済的DVの被害を解決するために、弁護士が活用する主な法的手段として、以下の3つが挙げられます。

① 婚姻費用の分担請求(生活費の請求)

民法第760条により、
夫婦には「自分と同じレベルの生活を相手にも送らせる義務(生活保持義務)」
があります。
これを婚姻費用分担義務と呼びます。

収入が多い配偶者が、収入の少ない配偶者に対して適切な生活費を支払う義務です。
相手が支払いに応じない場合には、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。
裁判所の算定表に基づき、食費・住居費・医療費・子どもの教育費などを含む客観的な金額が決定されます。

② 保護命令(接近禁止命令等)の活用

経済的DVに加えて、配偶者が激昂し身体的危害や脅迫的言動を行う可能性がある場合、
裁判所に保護命令を申し立てることができます。

これにより、安全な場所で生活を立て直すための時間を確保できます。

③ 離婚請求および慰謝料請求

経済的DVが継続し、夫婦関係が修復困難な場合、民法第770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」として、
裁判上の離婚が認められる可能性があります。

  • 慰謝料
    経済的虐待によって受けた精神的苦痛に対して、慰謝料を請求できる場合があります。
  • 財産分与
    相手が隠し持つ共有財産(預貯金・不動産・厚生年金など)を適正に分割し、将来の生活資金を確保できます。

経済的DVで離婚・慰謝料請求が認められた裁判例


【裁判例紹介】専用の冷蔵庫を購入し、家族に生活費を渡さなかった事例

(東京高裁昭和57年3月30日判決)

【事案の概要】

夫は月10万~16万円の収入がありながら家計にほとんどお金を入れず、妻が働きながら借金をして子どもの養育費を工面していたケースです。
夫は自宅内で家族と部屋を分けて生活し、自分専用の冷蔵庫を設置して家族が触れるのを拒んだり、妻が用意した食事をひっくり返したりするなどの行為を続けました。

【裁判所の判断】

裁判所は、
夫が家計を分担せず、あえて起居を別にしたことなどを重く受け止め、「夫が遺棄(見捨てたこと)により婚姻関係を破綻させた」と認定。


  • 離婚の認容

  • 慰謝料:300万円

  • 財産分与:500万円

【この裁判例から学べるポイント】

単に「生活費を渡さない」だけでなく、家族を経済的に孤立させ、自分だけ別の生活を営む振る舞いも「悪意の遺棄」にあたると判断されました。
たとえ同居していても、経済的・精神的な断絶がある場合は法的保護の対象となり得ます。
昭和の判例ですが、現代の経済的DVにおける離婚・慰謝料・財産分与の判断基準として今なお重要な意義を持っています。

経済的DVのよくある相談事例と法的視点

経済的DVの現れ方は家庭によって異なりますが、法律事務所に寄せられる相談には典型的なパターンがあります。
具体例を確認することで、自分の状況が「単なる不平不満」ではなく、法的に是正が可能な権利侵害にあたるかどうかを判断する参考になります。

生活費を渡してもらえないケース(婚姻費用未払い)

夫婦には互いに助け合う義務(民法上の同居・協力・扶助義務)があり、生活費が極端に不足している場合は、この義務が著しく損なわれている状態といえます。

  • 最低限の生活費しか渡されない場合の事例

    家族の人数や住居環境に照らして明らかに不足する金額(例:食費・日用品費として月3万円のみ)が渡されるケースです。

    【具体例】
    配偶者の年収が1,000万円以上あるにもかかわらず、渡される生活費が極端に少なく、子どもの塾代や自身の医療費までも「貯金から出せ」と指示される場合。
    【法的視点】
    裁判所の「婚姻費用算定表」に基づく金額を大きく下回る場合、婚姻費用請求が認められる可能性があります。

  • 全く生活費を渡してもらえない場合の事例

    配偶者が「自分の稼いだお金は自分のものだ」と主張し、家賃や光熱費以外、食費も一切渡さないケースです。

    【具体例】
    冷蔵庫が空でも「自分は外食で済ませるから関係ない」と言い放つ、または専業主婦(主夫)に「金が欲しければ土下座しろ」といった態度を取る場合。
    【法的視点】
    正当な理由なく協力義務を放棄する「悪意の遺棄」に該当する可能性があり、離婚事由としての根拠となり得ます。

収入や貯金を管理されるケース(支配・搾取)

「共働きなのに、自分の自由になるお金が1円もない」というご相談も増えています。
これは、個人の財産を所有・管理する権利を不当に奪われている状態です。

  • 給与口座を完全に管理される場合の事例

    配偶者が給与振込口座の通帳、キャッシュカード、暗証番号をすべて掌握し、本人がアクセスできないケースです。

    【具体例】
    給料日に全額引き出され、「今月の生活費」として数千円しか渡されず、労働の対価を自由に使えない状態です。
    【法的視点】
    結婚前からの特有財産まで管理下に置かれている場合、財産権侵害としての側面が強まります。

  • 自由にお金を使えない過度な支出監視の事例

    自分の小遣いや必要経費でも、10円単位で許可を求めなければならず、使途を厳しく問い詰められる状況です。

    【具体例】
    買い物後にレシートをチェックされ、安売りでない店で買ったことを数時間説教される、あるいはレシートのない出費を「浮気だ」「横領だ」と責め立てられる場合。
    【法的視点】
    過度な監視は、経済的DVであると同時に精神的DV(モラハラ)としても評価されます。

働くことを制限されるケース(経済的自立の妨害)

経済的DVは、単にお金を制限するだけでなく、「将来的に稼ぐ手段」を奪うことで経済的依存を強化し、支配を永続させる傾向があります。

  • 就職・再就職を禁止される場合の事例

    「誰が養ってやっていると思っているんだ」「家事だけしていれば十分だ」と言され、パートや正社員としての就労を認められないケースです。

    【具体的な事例】
    求人誌を見ているだけで怒鳴られたり、面接に行こうとすると子どもの預け先を拒否したりするなど物理的に就職を妨害される場合があります。
    【法的視点】
    自律的な生活を送る権利が制限される行為であり、婚姻関係が破綻していると判断される重要な要素と評価される場合があります。

  • 退職を強要される場合の事例

    現在勤務している職場に対して「迷惑がかかるから辞めろ」と圧力をかけたり、同僚に悪口を吹き込んだりするなどして、退職に追い込む事例も報告されています。

    【具体的な事例】
    仕事中に何度も電話がかかって業務を妨害される、あるいは「仕事をしているから家事がおろそかになる」と理不尽に責められて退職に追い込まれる場合があります。
    【法的視点】
    経済的な依存状態を人為的に作り出す悪質な支配行為として、裁判上、慰謝料の増額要因になる可能性があります。

経済的DVに関するよくある質問(FAQ)

経済的DVで悩む方から当事務所に寄せられる典型的な質問に、法律的視点で回答します。
法的な解決策や権利行使のヒントとしてお役立てください。

経済的DVは離婚理由になりますか?


A. 経済的DVは、行為の態様や継続期間、夫婦生活への影響によって、民法上の離婚事由(離婚が認められる理由)として認められる場合があります。(ただし、個別の事情により裁判所の判断は異なります。)

民法第770条1項5号では「婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合に離婚が認められます。
長期間の過度な金銭的制限や経済的支配により夫婦間の信頼関係が回復不能な状態(婚姻関係の破綻)と判断される場合、相手が拒否していても裁判で離婚が認められる可能性があります。

経済的DVだけでも慰謝料は請求できますか?


A. 身体的暴力がなくても、経済的DVのみのケースで精神的苦苦が認められれば、慰謝料の請求は可能な場合があります。

慰謝料は、相手の行為によって生じた精神的苦痛の賠償として請求されます。
生活費を渡さず窮乏させたり、金銭を道具にして人格を否定したりするなどの支配行為を継続した場合、客観的証拠に基づき慰謝料が認められる傾向があります。
金額は、不法行為の悪質さ、期間、被害の程度に応じて個別に判断されます。

専業主婦(主夫)でも経済的DVの被害になりますか?


A. はい、専業主婦(主夫)であっても経済的DVは成立します。

「働いていないからお金をもらえなくても仕方ない」と考える必要はありません。
法律上、夫婦には生活保持義務(民法上の扶助義務)があります(民法第752条)。
収入のある側は、収入のないまたは少ない配偶者に対し、自分と同程度の生活を保障する義務があります。専業主婦(主夫)に最低限の生活費を渡さず、経済的に困窮させる行為はこの法的義務に違反するもので、経済的DVの典型例といえます。

まとめ|経済的DVは法律で解決できる可能性があります


経済的DVは、単なる夫婦間の家計トラブルではなく、配偶者による経済的支配や生活の自由の制限として深刻な問題となることがあります。

生活費を渡さない、収入を一方的に管理する、働くことを禁止するなどの行為は、状況によっては経済的DVに該当する可能性があります。
経済的DVが続く場合でも、日本の法律には被害者を守るための制度が用意されています。主なポイントは次のとおりです。

  • 生活費を渡さない場合は、民法第760条に基づく「婚姻費用」を請求できる可能性がある
  • 経済的DVが継続し夫婦関係が破綻している場合、離婚が認められる可能性がある
  • 精神的苦痛が認められる場合、慰謝料請求が認められるケースもある
  • 財産分与により、夫婦共有財産を適正に分けることができる
  • DV防止法などの制度により、被害者の安全確保が図られる場合がある


経済的DVは、当事者だけで解決しようとしても状況が改善しないケースが少なくありません。

生活費の問題や離婚、慰謝料請求などの法的手続きについて悩んでいる場合は、弁護士に相談することで、状況に応じた解決方法を検討することができます。

ネクスパート法律事務所では、離婚問題に強い弁護士が在籍しています。
ご来所による面談はもちろん、仕事が忙しくて相談に行けない人や遠方にお住まいの方のためにオンライン法律相談サービスも実施しています。
ぜひ一度ご相談ください。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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