更新日:2026年8月12日 (水)

公開日:2026年8月12日 (水)

死亡退職金の受取人は誰?相続税の非課税枠と計算方法を解説

死亡退職金の受取人は誰?相続税の非課税枠と計算方法を解説 死亡退職金の受取人は誰?相続税の非課税枠と計算方法を解説

ご家族が亡くなられた際に勤務先から支払われる死亡退職金について、法定相続人以外の誰が受取人になるのか、相続税の申告は必要なのかといった疑問をお持ちではないでしょうか。死亡退職金は、受取人の優先順位が民法上の法定相続人とは異なる場合があり、みなし相続財産として税金の計算にも特別な非課税限度額が設けられています。
この記事では、死亡退職金の受取人の決まり方や相続税の非課税枠、具体的な計算シミュレーション、必要な手続きについて分かりやすく解説します。

死亡退職金とは?知っておきたい基本的な知識

死亡退職金とは、企業の従業員が在職中に亡くなった際、本来であればその従業員に支払われるはずだった退職金を、遺族に対して支払う制度を指します。これは、就業規則や退職給与規程などに基づいて支給される金銭で、給与の後払いや、これまでの功績に報いる功労金といった性格を持っています。
死亡退職金にはいくつかの種類があり、企業が独自に定めるものから、中小企業退職金共済(中退共)や特定退職金共済(特退共)のような外部の制度を利用するものまで様々です。

通常の退職金と死亡退職金は何が違うのか

生前に受け取る通常の退職金と死亡退職金の大きな違いは、課せられる税金の種類や課税関係です。本人が退職後に受け取る退職金は退職所得として扱われ、長年の勤労に配慮した退職所得控除が適用された後、一般的に所得税が源泉徴収されます。所定の申告書を勤務先に提出している場合、原則として確定申告は不要となる傾向にあります。
一方、死亡後3年以内に支給が確定して遺族が受け取る死亡退職金は、相続税の課税対象となり所得税はかかりません。このように、誰が受け取るか、または支給時期によって税務上の扱いが根本的に異なります。

弔慰金との税務上の扱いの違いについて

弔慰金は、故人を弔い遺族を慰める目的で会社から支給される金銭であり、原則として税金がかからない非課税の扱いとなります。一方、死亡退職金はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。
ただし、弔慰金という名目であっても、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分や社会通念上相当とされる金額を超えた部分は、死亡退職金とみなされて相続税が課税される傾向にあります。税務上、非課税となる弔慰金の金額には相続税法基本通達に基づく一定の基準が設けられており、死亡退職金との扱いには明確な違いがあります。

死亡退職金は誰が受け取れる?受取人の優先順位を解説

死亡退職金を誰が受け取れるのかという問題は、残された遺族の生活保障の観点からも非常に重要です。受取人の範囲や優先順位は、民法で定められた法定相続人の順位とは異なる運用がなされるケースが一般的です。実務上、故人の勤務先が定める就業規則などの規定が重視される傾向にあります。
ここでは、どのような基準で死亡退職金の受取人が決まるのか、その優先順位の考え方について詳しく解説します。

原則として会社の規定で定められた人が受取人になる

死亡退職金の受取人について、一般的に最も優先されるのは故人が勤務していた会社の退職給与規程などの規定です。多くの企業では、就業規則や退職金規程の中で、死亡退職金を支給する遺族の範囲と優先順位を具体的に定めています。
例えば配偶者、子、父母、孫といった順位が明記されていれば、実務上はその規定に従って受取人が決まるのが原則です。したがって、遺族はまず会社の規程内容を確認することが不可欠となります。

会社の規定がない場合の受取人の考え方

会社の退職金規程に受取人に関する定めがない、あるいはそもそも規程自体が存在しない場合、一般的に民法などの法律の定めに従って判断されることになります。
未払賃金等であれば労働基準法施行規則第42条および第43条に定められた順位に基づき受取人が決まる場合がありますが、規定のない死亡退職金については、民法の原則に従い相続財産として法定相続人が受け取ると解されるのが実務上の一般的な見解です。
なお、労基則が適用されるケースでの順位は、労働者の死亡当時の生計に頼っていた配偶者、子、父母、孫、祖父母の順となります。この労基則の順位は民法が定める法定相続人の順位とは異なるため、個別の判断において注意が必要です。

相続放棄した人や内縁の妻の受給資格

会社の規程等により指定された受取人の場合、死亡退職金は受取人固有の財産とされるため、相続放棄をしても受け取れるのが一般的です。また、内縁の妻(事実婚の配偶者)も、会社の規定や労働基準法において受取人として解釈される場合には、受給資格が認められる可能性があります。法律上の婚姻関係がなくても、故人と生計を同じくしていた内縁関係が認められれば、優先的に受取人となれるケースが見受けられます。養子や兄弟姉妹の受給資格についても、会社の規定や法律の定めに従って個別具体的に判断されます。

受取人固有の財産となり遺産分割協議の対象外になるのが基本

過去の判例上、死亡退職金は受取人固有の財産と解釈されるのが実務上の基本となっています。これは、亡くなった方の相続財産(遺産)としてではなく、会社の規程などに基づいて特定の受取人が直接取得する権利とみなされるためです。その結果、死亡退職金は原則として遺産分割協議の対象にはならず、他の法定相続人と分ける法的な義務は生じない傾向にあります。会社の規程等で受取人が指定されている場合、一般的にその人が全額を受け取る権利を有します。

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死亡退職金にかかる相続税の非課税枠と計算方法

死亡退職金は相続税の課税対象となりますが、遺族の生活保障という側面を考慮し、税金の負担を軽減するための非課税限度額が設けられています。この非課税枠は相続税法で明確に定められており、国税庁のルールに従って正しく計算を行う必要があります。
ここでは、死亡退職金の相続税における基礎控除とは別の控除の仕組みと、具体的な計算方法について解説します。

死亡退職金はみなし相続財産として相続税の対象となる

死亡退職金は、本来であれば被相続人が亡くなった時点で所有していた民法上の財産ではありません。しかし、被相続人の死亡を原因として遺族に支払われる性質上、税法上は相続によって取得した財産とみなされます。これを実務上、みなし相続財産と呼びます。
この相続税法の規定により、死亡退職金は故人の相続財産の一部として合算され、相続税の課税対象に含まれることになります。死亡保険金(生命保険金)も同様に、みなし相続財産として扱われます。

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相続税の非課税枠である500万円×法定相続人の数を詳しく解説

死亡退職金には、500万円×法定相続人の数という計算式で算出される非課税限度額が設けられています。算出したこの金額までは、原則として相続税がかかりません。
ここでの法定相続人の数とは、民法で定められた法定相続人の数を指します。注意点として、相続税法上の法定相続人の数には、相続放棄をした人がいた場合でも、その放棄がなかったものとした場合の人数を含めて計算します。また、法定相続人の中に養子がいる場合、基礎控除等の計算に含めることができる養子の人数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなります。

【シミュレーション】非課税枠を適用した相続税の計算例

具体的な金額を用いて、相続税の非課税枠の計算シミュレーションを見てみましょう。

例えば、支給される死亡退職金が3,000万円、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人だった場合を想定します。まず、非課税限度額は500万円×3人で1,500万円となります。
次に、支給された死亡退職金の全額から非課税限度額を差し引きます。計算式は3,000万円から1,500万円を引き、残額は1,500万円となります。この残額である1,500万円が、みなし相続財産として相続税の課税対象となる金額です。
なお、勤続年数に応じた退職所得控除は所得税法上の計算に用いられるものであり、相続税の計算においては考慮されません。

死亡保険金の非課税枠と死亡退職金の非課税枠は併用できる

死亡保険金(生命保険金)にも、死亡退職金と同様に500万円×法定相続人の数で計算される固有の非課税枠が設けられています。実務上重要なのは、これら2つの非課税枠は税法上それぞれ独立して設けられており、別々に適用できるという点です。したがって、被相続人が生命保険に加入しており、遺族が死亡保険金と死亡退職金の両方を受け取る場合、それぞれの非課税枠を併用することで、相続税の基礎控除とあわせて税負担を軽減させることが可能となります。

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高額な弔慰金は死亡退職金として課税される場合がある

弔慰金は原則として非課税ですが、税法上の取り扱いには相続税法基本通達に基づく一定の基準が存在します。具体的には、業務上の死亡の場合は故人の死亡時の普通給与の3年分に相当する額、業務外の死亡の場合は普通給与の6か月分に相当する額までが非課税として取り扱われます。
この基準を超える金額の弔慰金を受け取った場合、超過した部分は実質的に死亡退職金として扱われ、みなし相続財産として相続税の課税対象となる傾向があるため注意が必要です。例えば、給与水準に対して高額な弔慰金が支給された場合は、国税庁の基準に抵触しないか税理士や専門家を交えた確認が求められます。

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死亡退職金を受け取るための手続きと必要書類

ご家族が亡くなられた後、遺族が死亡退職金を受け取るためには、故人の勤務先に対して速やかに所定の請求手続きを行う必要があります。請求には法律上の期限が存在し、戸籍謄本などいくつかの提出書類も求められます。
ここでは、勤務先への連絡から実際に指定口座へ死亡退職金が支払われるまでの流れや、手続きに必要な書類について具体的に解説します。

勤務先への連絡から受給完了までの基本的な流れ

従業員の死亡後、遺族はまず速やかに勤務先の人事部や総務部などの担当部署へ連絡し、死亡の事実を伝達します。その後、会社側から死亡退職金の支給に関する案内や、請求手続きに必要な書類についての説明を受けるのが一般的です。遺族は会社の案内に従って戸籍謄本などの必要書類を収集・作成し、速やかに会社へ提出します。
提出書類に不備がなければ、会社の内部決裁を経て、指定された正当な受取人の口座に死亡退職金が振り込まれるというのが実務上の基本的な流れです。

請求はいつまでに行うべき?法律で定められた支払い期限

労働基準法の規定上、死亡退職金(退職手当)の請求権には時効が存在し、原則として権利を行使できる時から5年間で時効により消滅します。そのため、時効を迎える前に、遺族はできる限り早めに請求手続きを行うことが重要です。
一方で、労働基準法第23条では、労働者の権利に属する金品について、権利者から請求があった場合には原則として7日以内に支払わなければならないという使用者の義務が定められています。会社側との未払いトラブルや支払いの遅延を避けるためにも、遅滞なく請求手続きを進めることを推奨します。

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死亡退職金の請求手続きで必要になる書類一覧

死亡退職金の請求手続きにおいては、一般的に以下の書類の提出が求められます。

  • 死亡診断書または死体検案書の写し
  • 故人と受取人の関係を証明する戸籍謄本などの公的書類
  • 受取人の印鑑証明書
  • 受取人のマイナンバーが確認できる書類
  • 会社所定の死亡退職金請求書

遺族がこれらの書類を提出すると、会社側は支払いを完了させた後、所轄の税務署へ退職手当等受給者別支払調書という法定調書を提出する義務を負います。会社によって提出を求められる必要書類が異なる場合があるため、事前に人事・総務などの担当部署へ直接確認を行ってください。

死亡退職金をめぐる親族間トラブルと対処法

死亡退職金は時に高額なまとまった金銭になるため、受取人の権利をめぐって親族間での相続トラブルに発展するケースが見受けられます。特に、誰がいくら受け取るのかという遺産分割協議上の対立や、他の法定相続人からの遺留分侵害額請求などが火種となるケースは少なくありません。場合によっては、当事者同士の話し合い(協議)で解決できず、家庭裁判所での調停や裁判に至ることもあります。
ここでは、そうした親族間トラブルの主な原因と、弁護士など専門家が介入する際の法的な考え方について解説します。

死亡退職金は遺産分割の対象財産に含まれるのか

前述の通り、死亡退職金は会社の規程などによってあらかじめ指定された受取人個人の権利(受取人固有の財産)とみなされるのが実務上一般的です。そのため、民法上の故人の財産である遺産には含まれず、原則として遺産分割協議の対象にはならないと解されています。したがって、正当な受取人は他の法定相続人と死亡退職金を分ける法的な義務は負わず、原則として遺産分割協議書に記載する必要もないとされています。

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他の相続人から遺留分侵害額請求を受けた場合の対応

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障されている、最低限の遺産の取得割合を指します。死亡退職金は受取人固有の財産であり民法上の遺産ではないため、原則として遺留分を計算する際の基礎財産には含まれないと考えられています。
したがって、他の相続人から遺留分を侵害しているとして死亡退職金に基づく金銭を請求されたとしても、法的には応じる義務は生じないのが実務上の基本です。
ただし、受取人の指定や受取額が、実質的に特定の相続人に対する特別受益や生前贈与と同視できるような著しく不公平な特殊ケースにおいては、例外的に遺留分算定の基礎財産に含まれると判断される可能性も否定できません。

死亡退職金に関するよくある質問

ここでは、死亡退職金の手続きや税務に関して寄せられることの多い、複数の質問とその回答をご紹介します。受取人の変更の可否や相続税の申告義務の要否など、多くの方が疑問に抱きやすい点について専門的な観点から解説します。

Q.受取人を変更することはできますか?

A. 原則として社員本人が生前のうちに、勤務先の退職金規程等に沿った所定の手続きを行うことで変更する必要があります。会社の退職金規程で受取人の順位が明確に定められている場合、仮に遺言書で別の人物を受取人に指定したとしても、その効力は会社の規程には及ばず遺言の指定が無効と判断されるのが過去の判例からみた一般的な傾向です。

Q. 死亡退職金が非課税限度額の枠内に収まれば相続税の申告は不要ですか?

A. 死亡退職金以外の相続財産が一切なく、かつ死亡退職金の金額が非課税枠内に収まる場合などは、結果として基礎控除額を超えないため申告不要となります。
しかし、預貯金や不動産など他の遺産が存在し、みなし相続財産を含めた課税対象となる遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、管轄の税務署へ相続税の申告を行う法的義務が生じます。

Q.勤務先に死亡退職金の規定がない場合、請求は不可能ですか?

A. 就業規則等の規程が明文化されていなくても、直ちに請求を諦める必要はありません。中小企業などで明確な規程が存在しない場合であっても、過去に他の退職者や遺族への継続的な支給実績(労使慣行)があれば、それを法的根拠として請求が認められる可能性があります。また、生前の貢献度に応じた経営者との交渉次第で、弔慰金や功労金といった名目で金銭が支払われるケースもあるため、まずは会社側へ相談してみることを推奨します。

まとめ

死亡退職金の受取人は会社の退職給与規程などが最優先され、規程がない場合は原則として民法の相続財産として扱われるのが一般的です(未払賃金等は労働基準法施行規則の順位に従う場合があります)。税金面ではみなし相続財産として相続税の対象となりますが、遺族の生活保障として500万円×法定相続人の数という非課税限度額が適用されます。
なお、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは相続税の対象となりますが、3年を経過した後に支給が確定した場合は、受取人の一時所得として所得税の対象になる点に注意が必要です。また、業務上の事由(労災)による死亡の場合と業務外の死亡の場合とでは、弔慰金として非課税となる限度額の基準も変わります。
退職金の手続きには原則5年の消滅時効が存在するため、できる限り早めに勤務先へ連絡し、請求に必要な手続きを進めることが大切です。
ネクスパート法律事務所には、死亡退職金の受取人トラブルや相続全般を手掛ける弁護士が在籍しています。個別のご事情により法的な判断が異なるケースも多いため、お悩みのある方は、ぜひ一度専門家である当事務所へお問い合わせください。

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