更新日:2026年8月12日 (水)

公開日:2026年8月12日 (水)

NISAの相続はどうなる?手続き・税金・注意点を解説

NISAの相続はどうなる?手続き・税金・注意点を解説 NISAの相続はどうなる?手続き・税金・注意点を解説

NISA口座(少額投資非課税制度)で保有している株式や投資信託などの金融資産は、口座の保有者(被相続人)が亡くなった場合、そのままの状態で引き継ぐことはできず、所定の相続手続きが必要となります。
相続が発生した際の具体的な名義変更・移管手続きの流れや、NISAならではの税金(相続税や所得税)の取り扱い、そして放置による思わぬ落とし穴を避けるための注意点について、多くの方が疑問や不安を抱いている傾向にあります。
この記事では、NISA口座の資産を相続する際の実務上の流れから、2024年以降の新NISAにおけるルールの有無、課税口座への移管に伴う税金の問題、そして生前にできる有効な相続対策までを網羅的に解説します。

NISA口座の相続で知っておくべき大原則:非課税のままでは引き継げない

NISA口座の相続において最も重要な実務上の原則は、運用益が非課税になるメリットを維持したまま、資産を遺族が引き継ぐことはできないという点です。
NISAは口座名義人本人の資産形成を支援するための制度であり、租税特別措置法上、非課税の適用を受ける権利は本人のみに帰属する一身専属のものとされています。
そのため、法定相続人が被相続人の非課税枠や保有資産を、そのまま自身のNISA口座へ移管することは原則として認められていません。
このように非課税メリットを承継できない点は、NISA資産を相続する上で注意すべき最大のデメリットといえます。

NISA口座そのものは相続不可・資産は課税口座へ移管される

相続財産の対象となるのはNISA口座の枠組みそのものではなく、口座内で保有されていた上場株式や投資信託といった有価証券などの金融資産です。
実務上、被相続人の死亡によって当該NISA口座はみなし廃止となり、保有資産は相続人名義の課税口座(特定口座または一般口座)へ払い出される形で移管手続きが行われます。
この移管ルールは、旧NISAである一般NISAやつみたてNISAであっても取り扱いは同様です。
非課税口座から課税口座へ資産が移管された後は、そこで生じる配当金や売却益(譲渡所得)に対して通常通り約20%の税金が課税されることになります。

新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠も相続のルールは同じ

2024年より開始された新NISA制度においても、相続発生時の基本的な法制ルールは旧制度から変更されていません。
新NISAにおけるつみたて投資枠や成長投資枠で保有していた資産についても、相続発生時には非課税の適用が終了し、相続人名義の課税口座へと移管される仕組みです。
非課税保有期間が無期限化されるなど制度が拡充されても、非課税措置の適用はあくまで口座名義人の生存中に限定されるという大原則は維持されています。
したがって、長期的に積立投資を行っていたつみたて投資枠の投資信託なども、すべて課税口座への移管対象となります。

NISA口座の相続手続きを4つのステップで解説

NISA口座で運用していた資産を相続する際の名義変更や移管手続きは、規定のステップを順番に踏んで進める必要があります。
実務上は、被相続人が口座を開設していた証券会社や銀行などの金融商品取引業者との間で直接やり取りを行います。
手続きの遅滞によるトラブルを避け円滑に進めるためには、相続開始後にどのような順序で何から着手すべきか、手続きの全体像を事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、一般的な相続手続きの流れを4つのステップに分けて解説します。

ステップ1:保有者が亡くなったことを取引金融機関へ連絡する

相続が開始した際、遺族が最初に行うべき手続きは、被相続人がNISA口座を開設していた証券会社や銀行などの金融機関へ死亡の事実を申し出ることです。
連絡を受けた金融機関は、不正利用や相続財産の散逸を防ぐため速やかに口座を凍結し、売買や出金などの一切の取引を停止します。死亡の連絡を怠ったまま放置すると、後日他の相続人との間で遺産分割上のトラブルに発展する可能性があるため、速やかに手続きを行うことが推奨されます。
連絡後、金融機関から相続手続きの案内書類および提出が必要な書類の一覧表などが郵送で届くのが一般的な流れです。

ステップ2:遺産分割協議でNISA資産の相続人を決定する

NISA口座内で運用されている有価証券などの金融資産は、現金預貯金や不動産と同様に相続財産(遺産)の一部として扱われます。
有効な遺言書が残されていないケースでは、法定相続人全員で遺産分割協議を実施し、誰がNISA資産を承継するのかを合意によって決定しなければなりません。協議が成立した後は、その合意内容を法的に証明するため遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名および実印による押印を行います。
作成された遺産分割協議書は、後日金融機関での移管手続きを進めるにあたり、印鑑登録証明書とともに提出が求められる重要な公的書類となります。

ステップ3:指示された必要書類を準備して金融機関へ提出する

金融機関から送付された案内に従い、名義変更や移管手続きに必要となる各種書類を漏れなく収集・準備します。一般的に必要とされる書類としては、金融機関所定の相続手続依頼書などの届出書類をはじめ、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)、法定相続人全員の現在の戸籍謄本および印鑑登録証明書、遺産分割協議書などが挙げられます。
ただし、遺言書の有無や金融機関の社内規定によって要求される提出書類が一部異なる場合があるため、事前の入念な確認が求められます。相続手続きを滞りなく完了させるためには、指定された書類に不備がないよう揃えて提出することが重要です。
また、金融機関の規定によっては書類提出までの手続き期限が設けられているケースもあるため注意が必要です。

ステップ4:相続人名義の課税口座へ資産が移管される

提出した必要書類に不備や不足がないことが確認されると、金融機関側で正式な移管手続きが実行されます。最終的な処理として、被相続人がNISA口座内で保有していた株式や投資信託などの資産は、相続人自身が指定する課税口座(特定口座または一般口座)へと振り替えられます。
仮に資産を引き継ぐ相続人が、該当の金融機関に自身の証券口座等を保有していない場合には、移管先として新たに口座開設手続きを行う必要があります。この口座間の移管手続きがすべて完了して初めて、相続人は引き継いだ資産を市場で自由に売却して現金化したり、そのまま運用を継続したりすることが可能となります。

NISA資産の相続で注意すべき税金のポイント

NISA口座の相続実務においては、税務上の取り扱いが通常の金融資産の移管とは一部異なる側面があるため、事前の正確な理解が求められます。
NISA制度を利用しているため一切非課税であるというイメージを持たれがちですが、相続が発生した場面においてはその認識が必ずしも適用されないケースが存在します。
どのような種類の税金が、どのタイミングで、どのように課税されるのかを税務上の観点から把握しておかないと、予期せぬ税負担が発生しトラブルとなるおそれがあります。
ここでは、NISA資産の相続に関連して一般的に問題となりやすい、相続税や所得税のポイントについて解説します。

NISAの非課税メリットは相続税には適用されない

NISA制度における運用益が非課税になる税制メリットは、あくまで投資の利益に対して課される所得税および住民税に関する措置です。
国税庁の通達や税務上の一般的な取り扱いにおいても、遺産を承継した際に発生する相続税の計算上、このNISAの非課税メリットを適用して評価額を控除することは認められていません。したがって、NISA口座内で運用されていた金融資産は、現金預貯金や不動産といった他の遺産と同様に相続財産として合算して評価され、遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を上回る場合には、超過分に対して相続税が課税されます

相続時の取得費は被相続人が亡くなった日の時価で計算される

相続したNISA資産を将来売却する際の所得税の計算上、その基準となる新たな取得費(取得価格)は、原則として被相続人が亡くなった日の時価にリセットされる仕組みとなっています。
一方で、相続税を計算する際の財産評価額については、上場株式の場合、亡くなった日の最終価格だけでなく、死亡月や前月・前々月の平均額のうち最も低い金額を採用できるなど、税目によって計算基準が異なります。
所得税の観点から見れば、たとえ被相続人が過去に非常に安値で該当資産を購入していたとしても、相続による移管時に取得費が死亡日の時価へと引き上げられます。
この税務上の取り扱いにより、相続人が移管後すぐに資産を売却した場合、売却価格と取得費の差額である譲渡所得がほとんど発生しにくくなるため、結果として所得税が課税されないケースが多く見受けられます。
このように相続税評価と所得税の取得費リセットのルールは複雑であるため、正確な税額計算は税理士等の専門家へ相談することが推奨されます。

保有者が亡くなった後の配当金などは準確定申告が必要になる場合も

被相続人の死亡日よりも後に支払いを受けた配当金や投資信託の分配金は、被相続人の相続財産には含まれず、その資産を引き継いだ相続人自身の固有の所得として扱われます。そのため、相続人個人の所得として所得税および住民税の課税対象となり、要件を満たす場合には相続人自身による確定申告の手続きが必要となるケースがあります。
一方で、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までに生じた所得の精算については、相続人が本人に代わって申告・納税を行う準確定申告という手続きを、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に税務署に対して行う義務が定められています。

NISAの相続前に確認したい3つの重要な注意点

NISA資産に関する相続手続きの流れや税務上のポイントに加えて、円滑な承継のために事前に知っておくべき実務上の重要な注意点がいくつか存在します。
これらの注意点は、相続完了後の資産運用や口座管理そのものに重大な影響を及ぼす可能性があり、認識を見過ごすと予期せぬトラブルという落とし穴にはまってしまうリスクが伴います。
ここでは、NISAの相続に関連して特に確認を徹底しておきたい3つのポイントについて詳しく解説します。

相続で受け取った資産は自分のNISA非課税枠を消費しない

被相続人が運用していたNISA資産を相続財産として受け継いだとしても、相続人自身に付与されている新NISAの非課税保有限度額(生涯投資枠1,800万円)が消費されることはありません。理由は、相続によって引き継がれる有価証券等の金融資産は、相続人のNISA口座へ組み入れられるのではなく、原則として課税口座(特定口座または一般口座)へと移管される仕組みになっているためです。
したがって、遺産相続を受けたことによって、ご自身の将来に向けた非課税投資枠が目減りしてしまうのではないかという心配は不要です。また、移管後に課税口座で保有している相続資産を一度売却して現金化し、その売却資金を元手として新たに自分自身のNISA口座で非課税投資を再開することは、実務上も問題なく可能です。

相続手続きを放置すると売却や引き出しができなくなる

遺族が被相続人の死亡事実を証券会社等の金融機関に申し出た時点で、対象となるNISA口座を含むすべての取引口座は即座に凍結措置が取られます。口座凍結により、遺産分割および名義変更などの相続手続きが完全に完了するまでの期間中は、口座内の有価証券を売却したり、解約して預り金を引き出したりすることは実務できなくなります。そのため、凍結期間中に金融市場の暴落などで株価が大きく下落する局面を迎えたとしても、損切りなどの対応ができず市場変動リスクをそのまま負うことになります。
手続きを未了のまま長期間放置することは、結果として大切な相続財産の資産価値を著しく減少させるおそれがあるため注意が必要です。
以上の理由から、相続が開始された場合には、遅滞なく速やかに金融機関所定の手続きを開始することが最も賢明な対応といえます。

移管先の口座は特定口座(源泉徴収あり)がおすすめ

相続したNISA資産の受け皿となる移管先の課税口座には、大きく分けて特定口座と一般口座の2つの種類が存在します。税務申告の負担軽減を優先するのであれば、原則として特定口座(源泉徴収あり)を選択しておくことが一般的に推奨されます。
源泉徴収ありの特定口座を開設して移管を行えば、将来その資産を売却して譲渡益(利益)が発生した際に、証券会社等の金融機関が投資家に代わって自動的に譲渡所得税の計算および源泉徴収による納税処理を代行してくれます。この仕組みを利用することにより、相続人自身で複雑な損益計算を行い、毎年煩雑な確定申告の手続きを行う手間と負担を大幅に省くことが可能となります。
一方で一般口座を選択した場合は、1年間の取引による譲渡損益をすべて自身で計算し、原則として毎年確定申告を行う法的義務が生じます。

NISAの相続に備えるための生前対策

将来の相続が発生した際に遺族が手続きで慌てることがないよう、NISA口座の保有者が生前で判断能力があるうちから計画的な相続対策を講じておくことは有効な手段です。事前の生前対策を適切に行うことで、死後の円滑な金融資産の承継を促進し、残された相続人の心理的・物理的な手続き負担を大幅に軽減できる可能性があります。また、保有資産の規模によっては、将来的に発生するおそれがある高額な相続税の納税資金対策や節税の備えにも直結します。
ここでは、NISA口座で運用する資産の相続に向けて、生前に検討しておくべき具体的な対策方法を紹介します。

相続税対策として生前贈与を活用する方法

将来課税される相続税の負担が懸念される場合、生前贈与の制度を活用することが実務上有効な相続対策の一つとして挙げられます。
具体的な手法としては、NISA口座内で非課税運用している資産を適宜売却して現金化し、その資金を年間110万円の基礎控除額が設けられている暦年贈与の範囲内で、子や孫などの家族へ生前贈与するという方法です。
この暦年課税制度を用いた贈与を毎年計画的に実行することで、被相続人の名義で保有する相続財産そのものを計画的に圧縮し、将来発生する相続税の負担額を適法に軽減する効果が期待されます。
ただし、定期贈与とみなされたり、生前贈与加算の対象となったりするなど、贈与の実行方法によっては後日税務署から否認され追徴課税を受けるリスクも存在するため、税理士などの税務の専門家へ個別に相談することを推奨します。

遺言書でNISA資産の相続先を指定しておく

NISA口座で運用している金融資産を、配偶者や特定の子どもなどに確実に引き継がせたいと希望する場合、法的に有効な遺言書(公正証書遺言など)を生前に作成しておくことが有効な対策となります。遺言書によって有価証券の相続先を明確に指定しておくことで、死後に相続人全員で行う遺産分割協議の手間を省略でき、遺産分割をめぐる親族間の紛争(争族トラブル)を未然に防止する効果が見込めます。
遺産分割協議書が不要となるため、証券会社等の金融機関における名義変更手続きもよりスムーズに進行し、極めて円滑な資産承継の実現が可能となります。
特に、前妻との間の子どもがいる場合など相続関係が複雑なケースにおいて有効ですが、他の法定相続人の遺留分(最低限請求できる財産の割合)を侵害するような内容にすると後日遺留分侵害額請求のトラブルに発展するおそれがあるため、作成時は弁護士にリーガルチェックを依頼することが推奨されます。

NISAの相続に関するよくある質問

NISA口座内で保有する資産の相続実務に関しては、各家庭の個別具体的なケースによってさまざまな法務的・税務的な疑問が生じることが一般的です。
ここでは、相続手続きに直面した多くの方が特に疑問や不安に感じやすい点や、実務上で判断に迷いやすい特有のケースについて、Q&A形式で解説します。予期せぬトラブルを回避し、口座の移管や相続手続きをスムーズに完遂させるための参考情報としてご活用ください。

Q.相続人の死亡を知らずにNISA口座で取引してしまったらどうなりますか?

A.被相続人の死亡後に行われた取引は、原則として無効となり、取り消されます。
もし株式などを売却していたら、その取引は遡ってキャンセルされ、売却代金を返還した上で、元の有価証券が口座に戻される手続きが必要です。
死亡の事実を知ったら、速やかに金融機関へ連絡し、事情を説明して指示を仰いでください。

Q.故人が複数の金融機関でNISA口座を持っていた場合、手続きは別々ですか?

A.はい。その場合、口座を管理している金融機関ごとに個別の相続・移管手続きを行う必要があります。
現行の制度上、NISA口座は原則として一人につき同一年内に一つの金融機関でしか開設・利用することができませんが、被相続人が過去にNISA口座を開設する金融機関を変更(移管)した経緯がある場合、変更前の金融機関に過去の年分の投資枠(旧勘定)の資産がそのまま残っているケースが実務上よく見受けられます。
結果として、資産を保有している金融機関の口座数と同数の名義変更手続きが必要となるため、残高のあるすべての金融機関に対して個別に死亡の連絡を入れ、それぞれ所定の相続手続きを並行して進める必要があります。

Q.相続で課税口座に移した株式や投資信託は、すぐに売却した方が良いですか?

A.税金などの側面を考慮しても、一概に相続後すぐに売却して現金化すべきであるとは断言できません。
所得税の計算上、相続開始日(死亡日)の時価が新たな取得費(取得価格)として設定されるため、仮に相続直後に当該資産を売却した場合、譲渡益(利益)は計算上ほとんど発生しにくく、譲渡所得税がかからないケースが多くなります。
しかしながら、承継した上場株式や投資信託の銘柄が将来的にさらに値上がりすると期待できるのであれば、そのまま課税口座内で運用を継続し保有し続けるという選択肢も十分に有効です。
資産を売却するかどうかの最終的な判断は、相続発生時点での含み損益の状況にのみとらわれるのではなく、相続人ご自身の今後の長期的な投資方針やライフプラン、現金化の必要性などを踏まえて総合的に決定することをおすすめします。

まとめ

NISA口座で運用されていた金融資産は、口座保有者が死亡した事実によって制度上の非課税の恩恵を喪失し、法定手続きを経て相続人名義の特定口座などの課税口座へと移管される仕組みとなっています。
引き継いだこれらの有価証券は、不動産や預貯金などの他の遺産と同様に相続税の課税対象財産として評価されるため、遺産総額が大きい場合には税務上の注意が必要です。
実際に相続が発生した局面では、証券会社等の金融機関への口座凍結の連絡から始まり、遺産分割協議書の作成、必要書類の収集・提出といった一連の煩雑な名義変更手続きを、トラブルを防ぐためにも速やかに進めることが求められます。
また、将来を見据えて被相続人が生前のうちに暦年贈与の活用や遺言書の作成といった法的な対策をあらかじめ講じておくことで、より円滑で揉め事のない確実な資産承継の実現が可能になります。
ネクスパート法律事務所には、遺産分割協議のサポートや遺言書作成など、相続実務全般を専門的に手掛ける弁護士が多数在籍しております。NISA口座を含む複雑な遺産相続の手続きや法的なお悩みが生じた際は、ぜひ一度当事務所の無料相談までお問い合わせください。

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