更新日:2026年8月12日 (水)

公開日:2026年8月12日 (水)

成年後見人になれる人とは?家族が選ばれない理由を解説

成年後見人になれる人とは?家族が選ばれない理由を解説 成年後見人になれる人とは?家族が選ばれない理由を解説

成年後見制度(法定後見制度)の利用を考えたとき、「成年後見人には家族がなれるのだろうか」と不安に感じる方は少なくありません。家族が候補者になっても必ず選ばれるわけではなく、家庭裁判所の審判によって決定されます。そのため、家族が選ばれないケースやその理由を知っておくことが重要です。実務上、申立て全体の約8割で家族以外の第三者(弁護士や司法書士などの専門職等)が選ばれる傾向にあります。
この記事では、成年後見人になれる人の条件や、家族が選ばれにくい具体的なケース、専門家に依頼する場合の費用やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

成年後見人になるための特別な資格は必要?

成年後見人になるために、弁護士や司法書士のような国家資格が必須というわけではありません。法律上の条件を満たしていれば、誰でも成年後見人の候補者になることが可能です。
ただし、家庭裁判所の裁量によって最終的に選任されるため、候補者になれることと、実際に選ばれることは異なります。本人の財産状況や身上監護の必要性、親族間の関係性などを総合的に考慮し、最も適任だと判断された人が選ばれます。

原則として資格は不要!誰でも候補者になれます

成年後見人になるための特別な資格は法律で定められておらず、原則として不要です。
民法で定められている欠格事由に該当しなければ、親族や知人、友人でも候補者になれます。
実際に、成年後見人として活動している人の中には、特別な資格を持たない親族もいます。
申立権者(親族など)は申立ての際に後見人の候補者を記載することができますが、最終的な選任は家庭裁判所の判断に委ねられます。

注意!成年後見人になれない欠格事由に該当する人

成年後見人には原則として誰でもなれる可能性がありますが、民法第847条で厳格に定められた「欠格事由」に該当する人はなることができません。
具体的には、以下のいずれかに該当する人は、実務上後見人の候補から除外されます。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免じられた法定代理人、保佐人又は補助人(過去に家庭裁判所から解任された経歴がある人など)
  • 破産者
  • 本人に対して訴訟をし、又はした者、ならびにその配偶者および直系血族(利益相反の観点から)
  • 行方の知れない者

この欠格事由は、成年被後見人の財産や権利を確実に守るための重要な規定です。
年齢や過去の経歴、本人との関係性などから法的に不適格と判断される人が事前に除外される仕組みとなっており、最終的な選任判断は家庭裁判所の裁量に委ねられています。

実際には誰が選ばれる?家族が成年後見人になるのは約2割という現実

最高裁判所が公表する「成年後見関係事件の概況」などの統計(令和4年のデータでは約19.1%、令和5年では約18.1%)によると、成年後見人に親族が選ばれる割合は全体の約2割にとどまっています。残りの約8割は、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職や、市民後見人、福祉関係の法人が選任されています。このように、家族や親族が候補者として申立てを行っても、必ずしも希望通りに選ばれるわけではないのが実情です。家庭裁判所は、本人の財産管理の複雑さや身上監護の状況などを総合的に判断し、最も適任な人物を後見人として選任します。

なぜ?家庭裁判所が家族を成年後見人に選ばない4つのケース

家庭裁判所が家族を成年後見人に選ばない背景には、本人の財産や利益を確実に保護するという強い目的があります。たとえ家族であっても、財産管理が適切に行えない、あるいは親族間で対立があるといった状況では、後見人として適任ではないと判断される傾向にあります。なぜ家族が選ばれないのか、その理由として実務上代表的な4つのケースが存在します。これらのケースに該当すると、専門家が選任される可能性が高くなります。
家族が後見人になるのが難しい状況を事前に理解しておくことが重要です。

ケース1:親族間で財産管理の方針をめぐり対立している

親族間で本人の財産管理や介護の方針について意見が対立している場合、特定の親族が後見人に選ばれると、親族間の紛争がさらに深刻化するおそれがあります。申立ての際、他の親族から候補者に対して親族の同意が得られない(反対意見が出される)と、家庭裁判所は中立的な立場の第三者(専門職)を後見人に選任する傾向があります。これは、特定の親族の利益ではなく、本人の利益を最優先し、公平な財産管理を実現するためです。

ケース2:本人が不動産などの高額な資産を所有している

本人がアパート経営をしていたり、多額の預貯金や有価証券を所有していたりする場合、財産管理が複雑になります。このようなケースでは、法的な専門知識を持たない家族が管理を行うと、適切な財産保全ができなかったり、意図せず財産を減少させてしまったりするリスクが生じます。また、財産が多いほど、他の親族から使い込みを疑われるといったトラブルも起こりやすいため、家庭裁判所は財産管理の専門家である弁護士や司法書士を後見人に選任することが多くなります。

ケース3:候補者である家族自身に借金や浪費の傾向がある

成年後見人の候補者となっている家族自身に多額の借金があったり、過去に浪費の傾向が見られたりする場合、後見人として不適格と判断されることがあります。後見人には、本人の財産を堅実に管理する能力と倫理観が求められるため、候補者自身の経済的な信頼性は心証形成における重要な判断材料です。本人の財産を自分の借金返済などに流用するリスク(利益相反の懸念)がないとは断定できないため、家庭裁判所が選任に慎重になる大きな理由となります。

ケース4:後見人の候補者が遠方に住んでいて身上監護が難しい

成年後見人の職務は、財産管理だけではありません。本人が適切な医療や福祉・介護サービスを受けられるように契約を手配し、生活環境を整える身上監護も非常に重要な職務です。候補者が遠方に住んでいる場合、定期的に本人と面会したり、入居している老人ホームや病院の担当職員と緊密に連携したりすることが物理的に難しくなります。そのため、身上監護を適切に行うのが難しいと判断され、本人の生活圏に近い場所に事務所を構える専門家などが選任される傾向があります。

家族が成年後見人になる場合のメリット

専門家ではなく家族が成年後見人になることには、いくつかのメリットがあります。特に、費用面での負担が少ないことや、本人の意思を尊重した柔軟な対応が期待できる点は利点です。長年連れ添った家族だからこそ、本人の性格や価値観を深く理解しており、きめ細やかなサポートが可能になる場合があります。家族が後見人になるメリットを正しく理解し、専門家に依頼する場合と比較検討することが大切です。

メリット1:報酬が不要になるケースが多く費用を安く抑えられる

成年後見制度を利用する際、弁護士や司法書士などの専門家が後見人に就任すると、家庭裁判所の審判により、管理する財産額などに応じて月額2万円から6万円程度の報酬が発生するのが一般的です。
この報酬は、原則として本人が亡くなる(または後見開始の審判が取り消される)まで継続的に支払う必要があります。
一方、家族が後見人になる場合、民法第862条に基づく家庭裁判所への報酬付与の申立てによって正当な報酬を受け取ることも可能ですが、実務上は無報酬で引き受けるケースが多く見られます。
そのため、結果的に制度の利用にかかる継続的な費用(ランニングコスト)を大幅に抑えやすい点が、家族が就任するメリットといえます。

メリット2:本人の気持ちに寄り添った柔軟なサポートがしやすい

長年一緒に暮らしてきた家族は、本人の性格や好み、価値観を深く理解しています。そのため、専門家が後見人になる場合に比べて、本人の気持ちに寄り添った柔軟な財産管理や身上監護がしやすいというメリットがあります。例えば、本人が大切にしている趣味や交友関係を維持できるよう生活費に配慮したり、本人の希望に沿った介護サービスを選んだりするなど、事務的な対応に留まらない温かみのあるサポートが期待できます。

家族が成年後見人になる場合のデメリット

家族が成年後見人になることにはメリットがある一方、デメリットやリスクも存在します。
特に、家庭裁判所への定期的な後見事務の報告義務は、慣れない方にとっては大きな事務的負担となります。
また、家族という近い関係性だからこそ、財産管理をめぐって他の親族とトラブルに発展する可能性も否定できません。これらのデメリットを事前に把握しておくことが、制度利用後の後悔や親族間トラブルを防ぐことにつながります。

デメリット1:家庭裁判所へ提出する報告書類の作成が負担になる

成年後見人に選任されると、家庭裁判所に対して定期的な報告義務を負うことになります。
具体的には、選任直後に本人の財産を調査して「財産目録」を作成・提出し、その後も年に一度、後見業務の状況と収支をまとめた「定期報告書」等を提出しなければなりません。これらの書類作成には、預金通帳のコピーや領収書の整理など、煩雑な事務作業が伴うため、ご家族にとって大きな負担となる傾向があります。毎年この作業を継続する必要があるため、負担は長期にわたります。

デメリット2:財産の私的利用や親族間でのトラブルが発生しやすい

家族が後見人になると、本人の財産と自分の財産の境界が曖昧になりやすく、生活費の立て替えなどで意図せず財産を混同してしまうリスク(横領等の疑い)が生じます。
また、他の親族から本人の財産を使い込んでいるのではないかと疑われ、深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。
財産管理の透明性を確保するために、全ての支出について領収書を保管し、厳格に管理することが求められますが、これが親族間の新たな火種となる可能性も考慮しておく必要があります。

専門家(弁護士・司法書士など)に依頼するメリット

家族以外、例えば弁護士や司法書士などの専門職に成年後見人を依頼することには、多くのメリットがあります。法律や福祉に関する専門知識を活かして、本人の財産を適切に管理・保護してくれるだけでなく、中立的な第三者として関わることで、親族間の無用なトラブルを防ぐ役割も期待できます。家族だけで抱え込まず、弁護士等専門家の力を借りることも有効な選択肢の一つです。

メリット1:法律の知識に基づき財産を適切に管理してもらえる

弁護士や司法書士などの専門家は、法律の実務家として、法定後見制度のルールに則った適正な財産管理を行います。本人の不動産の売却や相続手続き(遺産分割協議など)といった複雑な法的手続きが必要になった場合でも、スムーズに対応することが可能です。
また、家庭裁判所への報告書類の作成も正確に行うため、手続き上の不備で問題が生じる心配がありません。法律に基づいた厳格な財産管理は、本人とご家族にとって最大の安心材料となります。

メリット2:中立的な立場で行動するため親族間の揉め事を防げる

専門家は、業務として後見人の職務を遂行するため、特定の親族の意見に偏ることなく、常に中立的な立場で行動します。財産管理の方針をめぐって親族間で意見が対立している場合でも、客観的な視点から本人の利益を最優先した判断を下します。これにより、親族間の感情的な対立や、財産の使い込みを疑われるといったトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。

専門家(弁護士・司法書士など)に依頼するデメリット

専門家に成年後見人を依頼することはメリットが多い一方で、デメリットも存在します。
最も大きな懸念点は、継続的に発生する費用負担です。また、家族以外の第三者が関わるため、コミュニケーションの面で細やかな対応が難しいと感じる場合もあります。これらのデメリットを理解した上で、自分たちの状況に専門家への依頼が適しているかを慎重に判断する必要があります。

デメリット1:月額2万円から6万円程度の報酬が継続的に発生する

弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人に就任した場合、本人の財産から後見人報酬を支払う必要があります。基本報酬の額は管理する財産の額などに応じて家庭裁判所が決定しますが、実務上は月額2万円から6万円程度が目安となります(特別な手続きを行った場合は付加報酬が発生することもあります)。この報酬は、後見が終了する(原則として本人が亡くなる)まで継続的に発生するため、長期間にわたると総額は大きな負担になる可能性があります。本人の財産状況によっては、報酬の支払いが厳しいケースも考えられます。

デメリット2:事務的な対応になり本人の細かな要望が通りにくいことがある

専門家はあくまで法的な職務として後見業務を行うため、その対応は客観的・事務的になりがちです。家族であれば汲み取れるような本人の細かな心情や要望が、必ずしも財産管理の方針に反映されるとは限りません。例えば、本人が「孫の入学祝いにお金を渡したい」と希望しても、それが本人の生活に必要不可欠な支出でなければ、財産保全の観点から後見人として許可しない場合があります。このような厳格な対応に対し、本人や家族が不満を感じることがあります。

誰がどう決める?家庭裁判所による成年後見人の選任プロセス

成年後見人を誰にするかは、申立人が一方的に決められるものではなく、家庭裁判所が最終的な判断を下します。家庭裁判所は、申立ての際に提出された書類や、家庭裁判所調査官による調査結果、医師の診断書など、さまざまな情報を基に、誰が後見人として最もふさわしいかを慎重に審理します。この成年後見制度における後見人選任のプロセスを理解することは、制度を適切に利用する上で不可欠です。

申立てから審判までの基本的な手続きの流れ

成年後見制度を利用するための手続きは、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行うことから始まります。
申立権者(配偶者や四親等内の親族等)は、申立書のほか、本人の戸籍謄本、財産に関する資料、医師の診断書など、所定の書類を不備なく準備して提出する必要があります。
申立てが受理されると、家庭裁判所調査官が本人や親族、後見人候補者と面談を行い、生活状況や財産状況の事実調査を進めます。
その後、調査結果や提出資料に基づき、家事事件手続法に則った審理を通じて裁判官が心証形成を行います。
本人の利益(財産の保全や身上監護)を総合的に考慮したうえで、最終的に最も適任な後見人を選任する審判が下されるのが一般的な流れです。

選任で最も重視されるのは、本人の利益になるかという視点

家庭裁判所が成年後見人を選ぶ際に最も重視するのは、誰が後見人になるのが、最も本人の利益(財産や心身の保護)になるかという視点です。申立人が特定の家族を候補者として希望していても、その人が後見人になることが本人の利益にならないと判断されれば、希望は通りません。
本人の財産状況、心身の状態、生活環境、親族間の関係性などを総合的に考慮し、本人の財産を適切に保護し、心身を健やかに保つために最もふさわしい人物を選ぶのが、家庭裁判所の重要な役割です。

成年後見人になれる人に関するよくある質問

成年後見制度を利用するにあたって、誰が後見人になれるのか、具体的な実務運用について多くの疑問が寄せられます。例えば、「候補者として希望した家族が必ず選ばれるのか」「複数人で後見人を務めることは可能なのか」といった質問です。ここでは、成年後見人になれる人に関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q. 候補者として希望した家族が必ず選ばれるのですか?

A. 必ずしも選ばれるわけではありません。申立ての際に家族を候補者として希望することはできますが、最終的な選任権限は家庭裁判所にあります。裁判所が、財産状況や親族関係などを総合的に考慮し、候補者である家族が適任でないと判断した場合は、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。そのため、申立人の希望通りにならないケースも少なくありません。

Q. 複数人が成年後見人になることはできますか?

A.はい、可能です。財産管理が複雑な場合は弁護士や司法書士、身上監護は社会福祉士といったように、複数の専門職がそれぞれの専門性を活かして共同で後見業務を行うケース(複数後見)があります。
また、個人だけでなく、社会福祉法人やNPO法人などが法人後見として就任することも認められています。これにより、より安定的で継続的なサポートが期待できます。

Q. 一度選ばれた成年後見人を辞めたり、解任したりすることはできますか?

A. 成年後見人を辞任するには、民法第844条に基づき「正当な事由」があること、かつ家庭裁判所の許可を得ることが必須となります。
例えば、後見人自身の重病や高齢、遠方への転居などが正当な事由として認められる傾向にあり、単なる自己都合で自由に辞めることは原則として認められません。
一方、後見人に財産の使い込みといった不正な行為や、任務に適しない著しい不行跡があった場合は、親族等が家庭裁判所に解任を請求することができます(民法第846条)。
裁判所の審判(または家庭裁判所の職権)によって解任が認められるケースがあり、その後は本人の保護のために裁判所が新たな後見人を速やかに選任する運用となっています。

まとめ

成年後見人には特別な資格は不要で、家族も候補者になれます。しかし、最新の司法統計等によれば実際には親族が選ばれるのは約2割にとどまっており、多くは弁護士や司法書士などの専門家が選任されています。これは、家庭裁判所が親族間の対立や財産の複雑性を慎重に考慮し、本人の利益を最優先に判断するためです。
成年後見制度を利用する際は、家族が選任されない可能性も踏まえ、専門家への依頼も視野に入れながら、本人の状況に最も適した方法を検討することが大切です。個別の事情によって最適な手続きや見通しは異なるため、成年後見制度の利用を検討されている方は、法的なアドバイスが可能なネクスパート法律事務所に一度お問い合わせください。

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