更新日:2026年3月5日 (木)
公開日:2022年4月26日 (火)
婚姻費用分担請求調停の流れと必要書類|申立て手順を解説
サマリー
配偶者と別居しているものの生活費(婚姻費用)の支払いに応じてもらえず、家庭裁判所での手続きを検討している方もいるのではないでしょうか。
夫婦間の話し合いで合意できない場合、調停を通じて婚姻費用の分担を求めることが可能です。
しかし、手続きの流れやどのような書類が必要になるのか分からず、不安を感じることもあるかもしれません。
そこでこの記事では、婚姻費用分担請求調停の申立て手順や必要書類、期日での進行の流れ、費用の目安について分かりやすく解説します。
婚姻費用の分担請求調停とは|制度の概要

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な生活費全般を指します。
法律上、夫婦には互いに同程度の生活を保障する扶助義務があるため、別居中であっても離婚が成立するまでは、原則として収入の多い側が少ない側へ婚姻費用を支払う必要があります。
夫婦間の話し合いで支払額や支払い方法について合意がまとまらない場合に、家庭裁判所を利用して解決を図る手続きが「婚姻費用の分担請求調停」です。
調停委員を介した話し合いの手続き
婚姻費用分担請求調停では、裁判官1名と民間から選ばれた調停委員2名で構成される調停委員会が間に入ります。
当事者双方が直接対面して議論するのではなく、調停委員が双方の言い分を個別に聞き取りながら合意を目指す形式で進行します。
調停においては、夫婦双方の収入や資産状況、別居に至った経緯などを考慮したうえで、適切な分担額が検討され、解決に向けた提案や助言が行われます。
子どもの有無にかかわらず請求が可能
婚姻費用と聞くと子どもの養育費を連想されることも少なくありませんが、婚姻費用は配偶者自身の生活費も含む概念です。
そのため、子どもがいない夫婦であっても、収入差がある場合には婚姻費用の分担を求めることができます。
居住費や食費、水道光熱費、医療費など、離婚成立までに発生する日常的な生活費用全般が分担の対象となります。
調停不成立時は自動的に審判手続きへ移行
調停はあくまで話し合いによる合意を目指す手続きであるため、無理に合意を強制されることはありません。
双方が提示された条件に納得できず、調停が不成立に終わった場合でも、手続きがそこで打ち切りになるわけではありません。
婚姻費用の分担請求は、調停が不成立になると自動的に「審判手続き」へ移行する仕組みになっています。
審判手続きでは、家庭裁判所の裁判官が提出された収入資料や双方の主張などを総合的に考慮し、適正な分担額を決定します。
調停申立てに必要な書類と事前準備
婚姻費用の分担請求調停を申し立てる際は、家庭裁判所に提出する所定の書類をあらかじめ揃えておく必要があります。
書類は裁判所の窓口やウェブサイトで入手できます。
申立てに必要な基本書類
申立てにあたっては、申立書原本とその写しを用意します。
申立書には当事者の氏名や住所、申立ての趣旨のほか、これまでの生活費の支払い状況などを正確に記載します。
あわせて、夫婦関係を公的に証明するための戸籍謄本(全部事項証明書)1通が必要です。
抄本では受け付けられない場合があるため注意しましょう。
さらに、調停を円滑に進めるため、別居に至った経緯や生活状況を記載する「事情説明書」、裁判所からの照会事項に回答する「進行に関する照会回答書」、「連絡先等の届出書」などを提出します。
適正な額を算定するための収入証明資料
婚姻費用の分担額を検討するうえで、双方の収入状況を客観的に把握できる資料は極めて重要です。
調停期日をスムーズに進めるためにも、申立て時に自身の収入資料を提出します。
給与所得者の場合は直近の源泉徴収票や直近数か月分の給与明細書、自営業者の場合は確定申告書の控えなどが該当します。
収入を証明する資料が不足していると、算定基準の確認に時間がかかり手続きが長期化する要因となるため、事前の収集が大切です。
相手方に住所等を知られたくない場合の非開示申出
DVやモラハラなどが原因で別居しており、相手方に現在の居所や電話番号を知られたくないケースでは、裁判所への情報管理の配慮を求めることが可能です。
「非開示の希望に関する申出書」を提出することで、相手方に送達される書類や閲覧可能な記録から、秘匿したい情報を伏せる措置を講じてもらえます。
安心して手続きを進めるためにも、住所などの秘匿を希望する場合は、書類提出の段階で忘れずに非開示の申出を行いましょう。
調停期日で聞かれる主な質問内容
調停期日では、調停委員や裁判官が申立人・相手方の双方から個別に事情を聞き取ります。
事前に提出された事情説明書や証拠書類を踏まえ、適切な分担額を検討するために様々な質問が行われます。
双方の収入状況や特別な支出
婚姻費用の算出における基礎となるため、現在の収入状況については詳しく確認されます。
給与所得者か自営業者かといった勤務形態や、直近の収入、今後の増減見込みなどが尋ねられます。
通常の生活費以外に生じている特別な支出の有無も確認事項の一つです。
高額な医療費の負担や住宅ローンの支払い、別居に伴う住居費の二重負担などがある場合は、具体的な金額や支払状況について質問がなされます。
別居に至った経緯や現在の夫婦関係
同居から別居に至った理由や、婚姻費用の分担請求調停を申し立てるに至った経緯についてヒアリングが行われます。
別居開始後の生活費の支払状況や、これまでの夫婦間での話し合いの経過なども確認されます。
別居の背景にDVなどの事情がある場合は、安全への配慮が必要となるため状況を正確に伝えることが求められます。
また、別居についての双方の認識や今後の夫婦関係の見通しが尋ねられることもあります。
子どもの監護状況と教育費・養育費
未成年の子どもがいる場合は、どちらの親が実際に監護・養育しているか、生活環境や学校生活の様子について質問されます。
子どもの人数や年齢は婚姻費用の算定において重要な要素です。
学校の学費や給食費だけでなく、塾や習い事、部活動の費用、私立学校への通学費用など、個別の事情に応じた教育費の負担状況も確認されます。
持病による通院費用などがある場合も聞き取りの対象となります。
調停委員からの質問に対しては、事前に提出した資料と齟齬が生じないよう、事実関係を整理したうえで落ち着いて回答することが大切です。
婚姻費用分担請求調停の流れと成立後の効力
家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てると、裁判所側で書類の確認が行われた後、第1回調停期日の日程調整が進められます。
日程調整は裁判所主導で行われるため、申立人が相手方と直接連絡を取り合って日程を決める必要はありません。
第1回期日は、申立てからおおよそ1か月程度先の日程に指定されるのが一般的です。
期日当日は、申立人と相手方が交互に調停室へ入って調停委員と話を進める形式となり、1回あたりの所要時間は2時間程度を見込んでおく必要があります。
期日の進行と調停成立までの流れ
婚姻費用の調停は、双方の主張や提出された収入資料の確認を丁寧に行うため、1回の期日だけで終わることは少なく、複数回の期日を重ねて合意を目指すのが通例です。
- 家庭裁判所への申立てと第1回期日の日程調整(申立てから約1か月後が目安)
- 第1回期日の実施(調停委員による双方の事情聴取・資料確認)
- 第2回以降の期日(算定表をベースとした分担額の調整や条件のすり合わせ)
- 合意成立(調停調書の作成)または不成立(審判への移行)
双方が提示された金額や支払条件に納得し、おおむね3〜4回程度の期日を経て合意に至ると調停成立となります。
合意内容は裁判所によって「調停調書」という公的な書面にまとめられます。
調停調書の効力と強制執行
調停成立時に作成される調停調書は、裁判の確定判決と同様の法的な効力を持ちます。
単なる口約束や当事者間だけで作成したメモとは異なり、高い実効性を備えている点が特徴です。
調停調書があれば、相手方が婚姻費用の支払いを怠った場合に、裁判所を通じて預貯金や給与の差し押さえといった強制執行の手続きを申し立てることが可能です。
不成立時の審判移行と留意点
調停はあくまで話し合いの手続きであるため、双方が提示された金額や条件に納得できない場合は、無理に合意する必要はなく調停不成立となります。
調停が不成立に終わった場合、別途申立てを行わなくても自動的に「審判手続き」へと移行します。
審判へ移行した場合は裁判官が一切の事情を考慮して決定を下しますが、最終的な結論が出るまでに期間を要し、問題が長期化しやすい点には留意が必要です。
なお、審判や調停の結果が出るまでの生活費に困窮するおそれがあるようなケースでは、調停手続きと並行して婚姻費用の仮払いを求める保全処分などの申立ても検討されます。
調停にかかる費用と弁護士への相談

婚姻費用分担請求調停を申し立てる際には、家庭裁判所に納める実費が発生します。
また、手続きを弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用が必要になります。事前に費用の内訳や目安を把握しておくと安心です。
家庭裁判所に納める申立費用の目安
家庭裁判所での調停申立てにかかる実費は、比較的低額に設定されています。
主な費用は、申立手数料としての収入印紙代と、裁判所からの書類送達等に用いられる連絡用の郵便切手(予納郵券)代です。
| 費用の項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙(申立手数料) | 1,200円 | 申立書に貼付して提出します。 |
| 予納郵券(連絡用切手) | 1,000円〜1,500円程度 | 管轄の家庭裁判所により金額や内訳が異なります。 |
予納郵券の金額や組み合わせは申立てを行う家庭裁判所によって異なるため、事前に管轄の裁判所ウェブサイトや窓口で確認しておくと手続きが円滑に進みます。
弁護士費用の一般的な目安と並行手続き
婚姻費用分担請求調停はご自身で申し立てて進行することも可能ですが、実務上は離婚調停と並行して申し立てられるケースも多く見られます。
複数の手続きが同時に進むと、書類準備や期日への出席に関する負担が重くなることがあります。
弁護士に依頼する場合の費用としては、着手金がおおよそ30万円から40万円前後、解決時に支払う報酬金、調停期日への出頭に応じた日当などが一般的です。
離婚調停と同時に依頼する場合には、費用体系が調整されることもあるため、個別の事務所への確認が推奨されます。
適切な分担額の算出や手続きに迷ったときの相談
婚姻費用の算定においては、算定表を基準にしつつも、住宅ローンや医療費、私立学校の学費といった個別の事情をどのように主張に反映させるかが重要な論点となります。
相手方が支払いを拒絶している場合や、双方の収入状況に争いがある場合など、ご自身での対応が難しいと感じるときは、早い段階で弁護士へ相談することを検討するとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。