更新日:2026年3月5日 (木)
公開日:2022年4月23日 (土)
離婚調停は拒否できる?離婚したくない場合の対処法と流れ
サマリー
配偶者から離婚調停を申し立てられたものの、「離婚には同意したくない」「調停を拒否することはできるのか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
離婚調停は合意を目指す話し合いの手続きであるため、一方の同意がなければ調停での離婚は成立しません。
しかし、調停期日を無断で欠席・拒否することには手続き上のリスクも伴います。
この記事では、離婚調停における合意の仕組みや出席拒否のリスク、離婚を回避したい場合の対処法と調停不成立後の流れについて解説します。
離婚調停は拒否できる?合意の原則と不成立の仕組み

離婚調停(夫婦関係調整調停)は、裁判所の調停委員会が間に入り、夫婦双方の話し合いによって合意を目指す手続きです。
裁判とは異なり、裁判官が一方的に結論を下す場ではないため、相手方が離婚を求めていても、自身が離婚を拒否し続けることは法的に可能です。
離婚調停において一方が合意しない限り、強制的に離婚が成立することはありません。
調停期日を重ねても双方の主張が平行線のままで、合意に至る見込みがないと調停委員会が判断した場合は、調停は「不成立」として終了します。
不成立となった時点では離婚の効力は生じず、法的な婚姻関係はそのまま継続します。
司法統計に見る離婚調停の不成立割合
裁判所が公表している司法統計によれば、令和2年に家庭裁判所で実施された離婚調停事件58,969件のうち、調停不成立(調停をしない等を含む)となった件数は9,999件であり、全体の約16〜17%を占めています。
約6件に1件の割合で調停が不成立に終わっており、話し合いによる合意が困難な場合には不成立という結末を迎えるケースも一定数存在することが分かります。
調停不成立後の位置づけと手続きの流れ
調停が不成立になった場合、その手続き自体は終了しますが、問題が根本的に解決したわけではありません。
その後は、再度当事者間での協議を試みるか、あるいは相手方が離婚裁判(訴訟)を提起して法的な判断を求める流れへ進むケースが一般的です。
なお、調停が一度不成立になった後であっても、事情の変化や期間を置いた後に再度調停を申し立てること自体は制度上可能です。
離婚調停への出席を拒否・無断欠席した場合のリスク
家庭裁判所から離婚調停の呼出状が届いた際、離婚に応じたくないからといって期日を無視したり、無断で欠席したりすることは避ける必要があります。
調停への出席自体を拒否し続ける行為には、手続き上いくつかの大きな不利益が生じるおそれがあります。
調停委員会に対する心証への影響
正当な理由がないにもかかわらず調停期日を欠席すると、調停委員会に対して「夫婦関係の話し合いに誠実に応じる姿勢がない」という心証を与えてしまう可能性があります。
調停委員は双方の言い分を聞いて調整を行いますが、相手方のみが出席して一方的な主張を展開した場合、こちらの考えや関係修復への意向が反映されないまま手続きが進んでしまう恐れがあります。
調停不成立から離婚訴訟(裁判)へ進むリスク
期日への出席を拒み続けて話し合いが不可能と判断されると、調停は不成立として終了します。
離婚調停が不成立に終わった場合、相手方は裁判所に離婚訴訟(裁判)を提起することが可能になります。
裁判手続きでは、話し合いによる合意ではなく裁判官による判決で離婚の可否が判断されるため、自分に離婚の意思がなくても法律上の離婚原因が認められれば離婚が命じられるケースがあります。
主張を行わないことによる不利益
離婚を避けたいと考えているのであれば、調停を拒絶するのではなく、手続きに参加して「なぜ離婚に反対しているのか」「夫婦関係の修復に向けてどのように考えているのか」を明確に伝えることが大切です。
もし裁判にまで発展し、その期日も欠席してしまうと、相手方の請求を認める判決が確定する可能性も生じます。自らの意見を適切に反映させるためにも、早期から真摯に対応することが求められます。
離婚したくない側が調停手続き中に取れる対処法
配偶者から離婚調停を申し立てられたものの、離婚に同意したくない場合には、感情的な対立を深めずに適切な法的手続きと主張を行うことが重要になります。
離婚届不受理申出書を提出して無断提出を防ぐ
離婚協議や調停の最中に、配偶者が一方的に署名・押印した離婚届を役所へ提出してしまうトラブルが生じることがあります。
形式が整っていれば役所で受理されてしまうリスクがあります。
このような勝手な提出を防止するために、あらかじめ市区町村の役所へ「離婚届不受理申出書」を提出しておく方法が有効です。
不受理申出をしておくことで、仮に配偶者が離婚届を持参しても役所で受理されなくなります。本人が取り下げを行わない限り申出の効力は継続します。
期日に誠実に出席し陳述書で論理的に主張する
調停期日には特別な事情がない限り出席し、落ち着いた態度や丁寧な言葉遣いで対応することが望まれます。
単に離婚を拒絶するだけでなく、修復を望む理由を伝えることが大切です。
口頭での説明に不安がある場合は、事前に「陳述書」を作成して裁判所に提出しておく方法があります。
自身の考えやこれまでの経緯を書面に整理しておくことで、調停委員に正確な意向を伝えやすくなります。
関係修復の糸口を探り「円満調停」の活用を検討する
まずは配偶者が離婚を求めている具体的な理由を確認し、家事の分担や日頃の言動など、改善できる点があれば自発的に見直していく姿勢が求められます。
また、家庭裁判所の調停には、離婚を目指す手続きのほかに夫婦関係の改善を目指す「夫婦関係調整調停(円満)」も存在します。
相手から離婚調停を申し立てられている場合でも、自身から円満調停を申し立てることで、関係修復を強く望んでいる意向を明確に示すことが可能です。
調停不成立後に裁判へ進んだ場合の法定離婚事由
離婚調停で話し合いがまとまらず不成立となった場合、配偶者が次の手続きとして離婚裁判(離婚訴訟)を起こすケースがあります。
調停は双方が合意しなければ離婚が成立しない場でしたが、裁判では裁判官が双方の主張や証拠を審理し、判決によって離婚の可否を決定します。
判決が確定すると強い法的拘束力が生じるため、たとえ一方が離婚を拒否し続けていたとしても、法的に離婚が成立することになります。
裁判で離婚が認められるための5つの法定離婚事由
裁判において離婚を請求するためには、民法第770条第1項に規定されている「法定離婚事由」が存在していなければなりません。
法律で定められている事由は以下の5項目に限られており、これらのいずれかに該当すると裁判所に認められる必要があります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき(民法770条1項1号)
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき(同条2号)
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(同条3号)
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(同条4号)
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(同条5号)
法定離婚事由の判断基準と具体例
法定離婚事由のうち、「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」については、個別の事情に応じた判断が行われます。
例えば「悪意の遺棄」には、正当な理由がないのに同居を拒む行為や、生活費を渡さないといった婚姻関係における義務違反行為などが挙げられます。
また、「婚姻を継続し難い重大な事由」としては、ドメスティック・バイオレンス(DV)や著しいモラルハラスメント、長期間に及ぶ別居状態などが該当する場合があります。
一方で、協議や調停でよく挙げられる「性格の不一致」単独では法定離婚事由には直接該当しないため、法律上の事由が立証できなければ裁判で離婚が認められない可能性もあります。
なお、民法770条第2項により、1号から4号までの事由がある場合であっても、裁判所が諸事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めたときは請求が棄却される規定も設けられています。
調停成立後の取り消しは可能?注意点と提出義務
調停成立後の取り消しは原則として認められない
離婚調停の場で双方が合意し、裁判所によって「調停調書」が作成されると、その時点で法的に離婚が成立します。
調停調書は確定判決と同様の強い効力を持つ公的な文書です。
一度調停調書が作成されると、後から「やはり納得がいかない」「考え直したい」と主張しても、原則として取り消しや撤回はできません。
そのため、少しでも離婚に迷いがある場合や条件に納得できない場合は、調停の場で安易に合意せず、慎重に判断することが極めて重要です。
なお、調停成立後に再び夫婦関係に戻ることを望む場合は、改めて再婚の手続きを行う必要があります。
調停成立後の離婚届提出に関するルール
調停成立後は、戸籍上の記載を変更するために市区町村役場へ離婚届を提出する必要があります。
この手続きには、通常の協議離婚とは異なる法的なルールが定められています。
- 調停成立の日から10日以内に市区町村役場へ離婚届を提出する義務がある
- 調停調書の謄本を添えて提出するため、相手方の署名・押印は不要となる
- 届出義務者が期間内に提出しない場合、もう一方の当事者から提出が可能となる
「離婚届を出さなければ離婚を止められる」と考えて提出を拒否したとしても、調停成立による離婚の法的効力自体を消滅させることはできません。
期間を過ぎた場合は相手方から単独で離婚届が提出され、戸籍上の手続きが進められることになります。
離婚調停への対応に不安がある場合の弁護士への相談

配偶者から離婚調停を申し立てられたものの、離婚に同意したくない場合、調停の席でどのように対応すべきか判断に迷うことも少なくありません。
調停手続きへの対応や主張の進め方に不安がある場合は、法律の取扱分野として離婚問題に対応している弁護士への相談を検討することも一つの方法です。
調停での主張の組み立てと法的観点からの整理
離婚を拒否し、夫婦関係の修復を望む場合であっても、感情的な反論を繰り返すだけでは調停委員に意図が伝わりにくくなることがあります。
弁護士に相談することで、これまでの経緯や自身の考えを法的な観点から整理し、調停委員に理解されやすい形へ主張を組み立て直すことが可能です。
また、調停期日に向けて提出する陳述書の作成や、関係修復に向けた具体的な改善策の提示方法などについても、客観的な視点から助言を受けることができます。
代理人としての関与と訴訟への備え
相手方と直接顔を合わせない形式であっても、裁判所へ一人で出頭することに精神的な負担を感じる場合は、弁護士を代理人として選任し、調停期日に同席または出席してもらうことも可能です。
調停手続きの段階から代理人を立てることで、不利な条件での合意を防ぎ、冷静な話し合いを進めやすくなるメリットがあります。
さらに、調停が不成立となって相手方から離婚裁判を起こされた場合にも、調停段階での主張と齟齬が生じないよう、早い段階から一貫した対応方針を検討しておくことができます。
離婚を望まない立場であっても、今後の見通しや法的なリスクを把握しておくことは重要です。
自身の状況に合わせた適切な進め方を知るためにも、まずは法律相談を活用してみるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。