更新日:2025年8月7日 (木)

公開日:2025年8月7日 (木)

偽装請負の判断基準とは?派遣との違いや罰則・リスクを解説

偽装請負の判断基準とは?派遣との違いや罰則・リスクを解説 偽装請負の判断基準とは?派遣との違いや罰則・リスクを解説

サマリー

業務委託や請負の形で外部人材を活用する企業が増える一方、業務の実態によっては「偽装請負」とみなされるリスクが懸念されています。形式上は請負契約を結んでいても、発注者が直接指示を出しているような実態があれば、労働者派遣法違反などの問題に発展しかねません。この記事では、偽装請負と派遣の法的な違いや実質的な判断基準をはじめ、違反と判断された場合の罰則・リスクについて分かりやすく解説します。

偽装請負とは?請負契約と労働者派遣の違い

偽装請負とは?請負契約と労働者派遣の違い

近年、企業における人手不足への対応や業務効率化を背景として、外注や業務委託といった外部人材の活用が広がっています。その一方で、契約上は請負契約を締結しているものの、実態は発注者が労働者に指示を出して働かせている「偽装請負」が問題視されるケースが増加しています。

厚生労働省や都道府県労働局などでは偽装請負への監視や是正指導を行っており、意図的でなくとも業務実態によっては発注側の企業が法的責任や指導の対象となることがあります。

請負契約の法的性質と特徴

請負契約とは、民法上、受託者がある仕事を完成させることを約束し、発注者がその仕事の結果(成果物など)に対して報酬を支払う契約です。業務の進め方や具体的な作業手順については受託者自身の裁量と責任に委ねられる点が特徴とされています。

したがって、請負契約においては、発注者が受託側の労働者に対して直接指示を出したり、作業の進め方を細かく管理したりすることは原則として想定されていません。

労働者派遣契約との根本的な違い

これに対して労働者派遣契約は、派遣元企業と雇用関係にある労働者が、派遣先企業の指揮命令を受けて業務に従事する形態を指します。派遣先企業は派遣労働者に対して直接的な指示や労務管理を行う権限を有しています。

請負契約と労働者派遣契約の根本的な相違点は、労働者に対する「指揮命令権の所在」にあります。

契約の名称が「業務委託」や「請負」であっても、発注者が労働者へ直接指示を出している状態であれば、法的には派遣労働とみなされ、労働者派遣法等の規制に抵触する可能性があります。

項目 請負契約 労働者派遣契約
契約の目的 仕事の完成・成果物の納品 労働力の提供
指揮命令権者 受託企業(請負事業者) 派遣先企業
業務の遂行方法 受託者が自己の裁量で管理 派遣先の指示に従い遂行
適用法令の例 民法など 労働者派遣法、労働基準法など

偽装請負とみなされる主な判断基準

請負契約が適法に成立しているかどうかの判断においては、契約書の表題や記載内容といった形式面だけではなく、実際の業務遂行がどのように行われているかという「業務の実態」が重視されます。

形式上は請負契約を結んでいても、実態として発注者の指揮命令下で業務が行われていると認められる場合は、偽装請負と判断される可能性があります。

発注者による具体的な業務指示・指揮命令の有無

請負契約では、受託者が自己の裁量と責任において業務を遂行することが求められます。そのため、発注者が作業員に対して日々の業務の進め方を直接細かく指示している実態は、指揮命令関係を示す典型例とされます。

作業順序や方法、配置の変更などを発注者が直接指定して労働者を動かしている場合、請負としての独立性が失われているとみなされる要因になります。

勤務時間・勤務場所の管理と備品の支給状況

発注者側が受託側の労働者の始業・終業時刻を管理していたり、勤務場所を指定して出退勤を厳格に拘束していたりする状況も、判断の重要な要素です。

また、発注者が専用のIDカードや制服などを直接支給し、自社の従業員と区別がつかない形で管理・稼働させている場合も、実質的な労働者派遣と評価されるリスクが高まります。

専属的な常駐勤務と組織への組み込み

受託側の労働者が発注元の事業場に長期間常駐し、他社の業務を行う余地がない専属的な状態で稼働している場合、発注者の組織に実質的に組み込まれていると判断されやすくなります。

発注側が「外注として依頼している」と認識していても、これらの実態が認められれば、客観的な基準に基づいて偽装請負と扱われる点に留意が必要です。

偽装請負が発覚した場合の罰則と法的リスク

偽装請負が外部からの通報や行政調査などによって発覚した場合、企業は行政上・刑事上・民事上のさまざまな法的リスクを負うことになります。

行政機関からの是正指導と企業名公表

厚生労働省や都道府県労働局による調査で偽装請負の実態が認められた場合、是正勧告や指導、業務改善命令などの行政処分を受ける可能性があります。

指導に従わずに改善が見られない場合や、違反態様が悪質と判断された場合には、企業名が公表されるリスクがあります。企業名が公表されれば、社会的信用の低下や取引先との関係悪化、採用活動への悪影響など、事業運営に大きな支障をきたしかねません。

労働者派遣法違反に伴う刑事罰

偽装請負は、労働者派遣法に基づく許可や届出を経ずに派遣労働を行わせている、あるいは違法な形態で労働力を受け入れているとみなされることがあります。

違法な労働者派遣と評価された場合、労働者派遣法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

発注者側が「外注のつもりだった」と認識していたとしても、業務の実態をもとに違法性が判断されるため、知らなかったという理由だけで責任を免れることは困難です。

労働者からの未払い残業代請求や損害賠償

偽装請負の疑いがある場合、行政対応だけでなく、現場で業務を行っていた労働者本人から民事上の請求を受けるリスクも生じます。

実質的に発注者の指揮命令下で労働していたと評価されると、労働基準法上の労働者と同様の扱いが求められ、時間外労働や休日労働に対する割増賃金(未払い残業代)の支払いを請求されるケースがあります。

さらに、業務中に事故や負傷が生じた場合の労災補償に関連する損害賠償請求や、実質的な雇用関係を理由とする地位確認請求など、大規模な労務トラブルへ発展する懸念もあります。

偽装請負に関するよくある質問(Q&A)

Q. 契約書に「指揮命令を行わない」と記載すれば偽装請負を回避できますか?

契約書上に文言を明記したとしても、それだけで法的な違法性が回避されるわけではありません。偽装請負に該当するか否かは、書面の形式や名称ではなく、現場における実際の就業実態に基づいて判断されるためです。

契約書に記載があっても、実態として発注者が直接指示を出している場合は違法とみなされる可能性があります。

したがって、契約書の条項を整えることと並行して、日常の連絡手順や指示系統が請負の要件を満たしているか、運用体制そのものを見直すことが重要になります。

Q. 偽装請負の指摘を受けた場合、契約を解除すれば問題は解決しますか?

指摘を受けた段階で契約を打ち切るだけでは、根本的な解決とならない場合があります。過去に生じていた違法状態に対する行政指導や罰則の適用リスクが直ちに消滅するわけではないためです。

また、受託企業の労働者から残業代の支払いや損害賠償などを求められる民事上の紛争に発展する可能性も残ります。単に契約を終了させるだけでなく、発生した原因を特定し、組織的な再発防止策を講じる必要があります。

Q. 偽装請負を解消するためには、具体的にどのような対応が考えられますか?

偽装請負を解消するための主な選択肢としては、業務実態を適正な請負形態へ是正する方法と、労働者派遣契約など別の適法な契約形態へ切り替える方法の二つが挙げられます。

発注者が現場で細かな指示を出したい場合は、派遣契約への切り替えや直接雇用を検討することが現実的です。一方、請負契約を維持する場合は、受託側の現場責任者を介して指示を伝達するなど、業務プロセスの見直しが求められます。

労務体制の確認や契約見直しにおける弁護士への相談

労務体制の確認や契約見直しにおける弁護士への相談

外注や業務委託を適法に運用するためには、契約書の文言だけでなく現場の業務実態を含めた総合的な確認が欠かせません。偽装請負のリスクを回避するため、弁護士による法的助言を活用することも有効な手段の一つです。

業務実態に合わせた契約スキームの適法性確認

弁護士に相談することで、既存の契約書面を精査するだけでなく、現場での具体的な指示系統や勤務実態をヒアリングした上での適法性チェックを受けられます。

業務の性質や発注側の関与度合いに応じて、請負契約の維持が適切か、あるいは準委任契約や労働者派遣契約、紹介予定派遣などへの切り替えが望ましいかを客観的に検討できます。

社内ルールの整備とトラブル予防

契約書が適法であっても、現場の担当者が誤った指揮命令を行ってしまえば偽装請負と判断されるおそれがあります。そのため、発注担当者向けの業務指示ルールやガイドラインの策定、社内研修の実施など、再発防止体制の構築について助言を受けることが可能です。

また、労働局などの行政機関から調査や是正指導を受けた場合の手続き対応や、労働者側から残業代請求や地位確認などの紛争が生じた際の交渉・対応についても法的なサポートが受けられます。

偽装請負の防止には、契約書面の形式的な整備だけでなく、日々の業務運用が適法であるかを継続的に確認する体制づくりが重要となります。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

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