更新日:2026年9月15日 (火)

公開日:2026年9月10日 (木)

会社法改正の中間試案を解説|株主総会と株式発行の見直し8項目

会社法改正の中間試案を解説|株主総会と株式発行の見直し8項目 会社法改正の中間試案を解説|株主総会と株式発行の見直し8項目

サマリー

会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案が、令和8年3月に取りまとめられました。従業員等に対する株式の無償交付を認める案、バーチャルオンリー株主総会を非上場会社にも開く案、実質株主確認制度の創設など、8項目の見直しが示されています。いずれも複数の案が併記された検討段階ですが、変更の方向はおおむね見えています。

この記事では、同月に取りまとめられた中間試案から、何がどう変わりそうかを項目ごとに整理します。

(参照:「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」(令和8年3月18日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会第12回会議取りまとめ))

株式の発行に関する見直し

従業員等に対する株式の無償交付

現行の会社法では、上場会社が取締役・執行役に対して出資を要しない株式を交付することは可能ですが、従業員等は対象となっていません。中間試案は、従業員等への無償交付を認める方向で、取締役会の決議で可能とし有利発行規制に服させる案(A案)と、株主総会で可能とし有利発行規制に服しないものとする案(B案)を示し、両案の併存も妨げないとしています。結論を得るには労働基準法上の賃金該当性の整理が必要とされており、株式報酬の設計はこの整理の行方に左右されます。

株式交付制度の対象拡大と手続の簡素化

株式交付制度は、株式交付親会社が株式交付子会社の株式を譲り受け、その対価として自社の株式を交付して子会社化する制度です。中間試案は、すでに子会社である会社の株式を追加取得する場合や、持分会社・外国会社を制度の対象に加える方向を示しています。手続面では債権者異議手続の廃止が検討されており、株式対価M&Aを使いやすくする方向での見直しといえます。スタートアップへの知的財産権等の現物出資規制の緩和も、あわせて検討されています。

株主総会に関する見直し

バーチャルオンリー株主総会が非上場会社にも開かれる

オンラインだけで開催する株主総会は、現在、産業競争力強化法66条に基づき、経済産業大臣・法務大臣の確認を受けた上場会社に限って認められています(令和3年の同法改正で創設)。中間試案は、この規律を会社法に設け、非上場会社も含め、大臣の確認がない場合にも実施可能とする方向を示しています。社債権者集会についても同様です。招集や議事の基本的な流れは通常の株主総会と共通するため、株主総会の流れと開催のポイントもあわせて確認しておくとよいでしょう。

実質株主確認制度の創設

上場会社では、株主名簿上の名義株主の背後に、議決権行使に係る指図権等を有する実質株主が存在することがあります。中間試案は、会社が名義株主である仲介機関に対してその指図権限を有する者の情報の提供を請求できる制度と、株主側から会社に通知する制度を併せて設ける方向です。通知については、金融商品取引法の大量保有報告制度と基本的に同一の範囲(保有割合5%超)で義務付ける案が示されています。

事前の議決権行使と当日の議事の関係

上場会社では、事前の議決権行使で決議の成否の大勢が決していることが多い一方、当日の議事運営が決議取消事由になり得るため、慎重な対応が求められてきました。中間試案は、事前の議決権行使で決議要件を満たした場合について、決議があったものとみなす案と、当日の議事による法令違反等を決議取消事由としない案を示しています。

株主提案権の議決権数要件

取締役会設置会社では、原則として、総株主の議決権の1%以上の議決権または300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主が株主提案権を行使できます(会社法303条2項)。中間試案は、議決権数の要件を廃止する案と、「300個」の個数を引き上げる案を示し、行使期限の延長も検討の対象としています。議決権の数と株主の権利の関係は、持株比率と株主の権利の関係を整理した記事も参考になります。

企業統治に関する見直し

指名委員会等設置会社の指名委員会の決定

指名委員会等設置会社では、指名委員会が取締役の選任に関する議案の内容を決定します。中間試案は、取締役の過半数が社外取締役である場合には、この決定を取締役会の決議によって変更できるようにする方向を示しています。社外取締役の選任が進んだ実態を踏まえた見直しであり、要件そのものは社外取締役および社外監査役の要件で整理しています。

事業報告等と有価証券報告書の一本化

上場会社は、会社法に基づく事業報告等と、金融商品取引法に基づく有価証券報告書を別に作成しています。中間試案は、株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日までに有価証券報告書を提出した場合には、事業報告等の作成を不要とする方向を示しています。この場合の有価証券報告書には、事業報告等の開示事項のすべてを記載することが想定されています。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

中間試案が示す変更の方向は、株式による人材の確保に道を開くこと、株式対価M&Aと株主総会のデジタル化を進めること、上場会社の開示と株主総会運営を合理化することに整理できます。もっとも、条文の内容も施行日も定まっていません。自社に関係する項目を絞り、要綱や改正法案が示された段階で具体的な対応を検討するのが現実的です。バーチャルオンリー株主総会のように非上場会社に開かれる項目もあるため、上場会社だけの話として片づけないほうがよいでしょう。

ネクスパート法律事務所では、企業の法律問題に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

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