刑事裁判の流れはどうなっている?起訴から判決までを解説
刑事裁判の流れが分からず不安だという方も少なくありません。
確かに、刑事裁判を受けることは非日常的な出来事であることから、そうしたお気持ちになることも無理はありません。
以下では、少しでもそうした不安を解消していただくべく、刑事裁判の流れについて解説してまいります。
刑事裁判の流れ
刑事裁判は、公開の法廷で行われる正式裁判と書面審理のみの略式裁判があります。
以下では、正式裁判の流れについて解説してまいります。
- 【正式起訴の流れ】
- 国選弁護人の選任(在宅事件で、起訴時に私選弁護人を選任していない場合)
- 刑事裁判に向けた準備、打ち合わせ
- 第一回公判期日の指定
- 刑事裁判(冒頭手続・証拠調べ手続・弁論・判決)
①正式起訴
正式起訴とは正式裁判を求めるための起訴です。
起訴されると、裁判所から、在宅事件の場合はご自宅(起訴状に記載されている住所)、身柄事件の場合は収容されている留置場などに「起訴状謄本(起訴状の写し)」という書面が送達されます。
②国選弁護人の選任
在宅事件の場合は起訴状謄本に加えて、弁護人を選ぶか選ばないか、選ぶとして私選か国選かについて回答する「照会・回答書」、在宅事件のうち任意的弁護事件(※)の場合は、現在の資力を証明するための「資力申告書」が送達されます。
死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件については、弁護士がいなければ開廷できませんです。これを必要的弁護事件といいます。これに対して、弁護人がいなくても開廷できる事件を任意的弁護事件といいます。
国選弁護人を希望する場合は資力申告書にも必要事項を記入して裁判所へ返送する必要があります。
③刑事裁判に向けた準備、打ち合わせ
被告人(正式起訴された人)の私選又は国選弁護人は、検察官が裁判で請求する予定のある証拠やその他の証拠を開示してもらい、証拠を精査した上で被告人と裁判に向けた打ち合わせを行います。
打ち合わせは在宅事件の場合は弁護士の法律事務所で、身柄事件の場合は収容されている留置場、拘置所で行います。
④第一回公判期日の指定
刑事裁判の日を公判期日といいます。
公判期日は裁判所から候補日が弁護人、検察官へ打診され、調整の上決定されます。
在宅事件の場合、被告人は弁護人から候補日を教えてもらえますので、都合のつく日を弁護人に伝えればよいでしょう。
なお、第一回公判期日は起訴からおおよそ1か月から1か月半後となることが多いです。
⑤刑事裁判
①から③の手続きを経ていよいよ刑事裁判が始まります。
身柄事件の場合は収容施設の職員に裁判所まで護送されて出廷します。
他方で、在宅事件の場合はご自身で出廷しなければなりません。忘れずに出廷しましょう。
冒頭手続
冒頭手続は「人定質問」、「起訴状朗読」、「黙秘権等の告知」、「起訴事実(公訴事実)に対する認否」から構成されます。
「人定質問」は、裁判官が被告人に対して氏名、生年月日、本籍、住所などを尋ねて人違いでないかどうか確認するための手続きです。
「起訴状朗読」は、検察官が起訴状にかかれた起訴事実やそれに適用する罪名、罰条を読み上げる手続きです。
「黙秘権等の告知」は、裁判官が被告人に対して刑事裁判の最初から最後まで黙秘し続ける権利があること、あるいは反対に、刑事裁判の手続き中、いつでも発言する権利があること、発言の内容は被告人に有利にも不利にも扱われる可能性があることなどを説明する手続きです。
「起訴事実」に対する認否は、被告人(又は、弁護人が選任されている場合は弁護人)が、検察官が読み上げた起訴事実を認めるか認めないかを裁判官に対して告げる手続きのことです。
なお、前述のとおり、あらかじめ被告員に起訴状謄本が被告人に送達され、打ち合わせ済みですから、ここでは打ち合わせどおりの回答をします。
証拠調べ手続
証拠調べ手続は、主に「検察官の証拠請求、立証」、「弁護人の証拠請求、立証」、「被告人に対する質問」から構成されます。
「検察官の証拠請求、立証」では、はじめに検察官が証拠によって証明しようとする事実を述べ(「冒頭陳述」といいます)、証拠を請求します。
その後、裁判官は弁護人に検察官に対する証拠請求に関する意見を聴いた上で、証拠を採用するかどうかを決めます。
採用された証拠が書類の場合は、通常、検察官が書類の要旨を述べます。
証拠物の場合は法廷で提示するなどします。証人の場合は証人尋問を行います。
「検察官の証拠請求、立証」が終わると今度は弁護人の証拠請求、立証です。
弁護人は、通常の刑事裁判では、検察官の冒頭陳述のようなことは行いません。
その後の証拠請求から尋問までの流れは検察官と同じです。
「被告人に対する質問」は、通常、検察官・弁護人の立証が終わった後行われます。
弁護人による質問が行われた後、検察官による質問が行われます。
弁論手続
弁論手続は「検察官の論告・求刑」、「弁護人の弁論」、「被告人の最終陳述」から構成されます。
「検察官の論告・求刑」は、証拠調べ手続きの結果を踏まえ、検察官が、なぜ被告人が有罪と考え、どのような刑、刑の重さを科すべきかと考える公訴事実、法律の適用、量刑に関する意見を述べる手続きです。
自白事件の場合、公訴事実については「本件公訴事実は、当公判廷において取調べ済みの関係各証拠により、証明十分である」という定型の文言が述べることが多く、情状に関する意見をメインに述べます。
他方で、否認事件の場合、公訴事実についても詳細に述べることが多いです。事件によってはA4用紙数十枚分の意見を述べることがあります。
「弁護人の弁論」は、被告人の立場に立った事実、法律の適用、量刑に関する意見を述べる手続きです。
自白事件の場合は、主に量刑に関する意見を述べます。
否認事件の場合は、検察官同様、公訴事実についても詳細に述べます。
「被告人の最終陳述」は、これまでの手続きを踏まえ、被告人が判決前に最後に発言できる手続きです。
裁判官から「最後に述べておきたいことがあれば、簡潔に述べてください。」などと言われます。
判決
判決は、裁判官が有罪か無罪か、有罪であるとして被告人に対して科す量刑(実刑か執行猶予かなど)を宣告する手続きです。
無罪の場合は、単に「主文、被告人は無罪」とだけ宣告されます。
有罪の場合は、「主文、被告人を懲役●●年に処する。」などと宣告されます。
まとめ
刑事裁判は、簡易な自白事件でも、起訴から判決まで約2か月程度を要します。
複雑な否認事件の場合は数年単位を要することを覚悟しておかなければなりません。
また、上記のように、裁判自体の手続きも複雑ですし、精神的な負担も大きいでしょう。
弁護士としっかりコミュニケーションを取りながら乗り切ることが大切です。