住居侵入罪とは?成立要件、罰則、弁護活動について解説

住居侵入罪とは、要は、「住居」に「侵入」した場合に問われる罪です。

住居侵入罪は、その罪自体では、人の身体に対する直接的な危害を及ぼしていないとはいえ、人の住居の平穏を害するだけでなく、他の犯罪の手段として行われることが多いため、統計上(平成29年)、逮捕率は5割を超えており、逮捕されればほぼ8割近く勾留されています。

そして、公判請求と略式請求を含む起訴率は、4割を超えています。

このように、住居侵入罪に対しては厳しい対応になっています。

以下においては、住居侵入罪の内容、住居侵入罪を犯した場合の身柄状況、住居侵入罪を犯した場合の起訴不起訴の処分状況について概観した上、住居侵入罪とはどのような犯罪で、逮捕勾留され、さらに起訴されたりするのかについて説明することとします。

住居侵入罪とは

住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。

(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

刑法130条は住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪、不退去罪の3つの罪から構成されています。

「正当な理由がないのに~侵入し、」までが住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪に関する規定です。また、「要求を受けた~のに退去しなかった」までが不退去罪に関する規定です。

住居侵入罪は正当な理由がない+人の住居+侵入という要件がそろってはじめて成立する罪です。

以下、それぞれの要件や罰則・量刑(刑の重さ)について解説してまいります。

正当な理由がない

正当な理由がない」とは、住居への立ち入り行為が違法だ、ということです。

立ち入り行為が違法かどうかは、まず侵入目的が適法かで判断されます。

たとえば、窃盗や盗撮目的で知人宅に立ち入る行為は違法ですから「正当な理由がない」ということになる可能性があります。

他方で、警察が捜索・差押えする目的で人の住居に立ち入る行為は適法ですから「正当な理由がある」ということになるでしょう。

また、立ち入り行為が違法かどうかは侵入目的のみならず、立ち入りの態様や住居権者の推定的意思をも勘案されます。

たとえば、反戦ビラを投函する目的で防衛庁庁舎の共用部分に立ち入った行為につき、ビラによる政治的意見の表明が憲法で保障されるとしても、これを投函するために、庁舎管理者の意思に反して庁舎の共用部分に立ち入ってよいということにはならないとし、管理権者の意思をも考慮して住居侵入罪の成立を認めた判例(最高裁平成20年4月11日)があります。

人の住居

」とは、自分以外の他人、という意味です。

たとえ相手が自分と身近な家族、友人・知人、彼氏・彼女であっても、相手から住居への立ち入りを拒まれているような状況下で相手の住居に立ち入った場合は住居侵入罪に問われる可能性があります。

住居」とは、人が寝泊りしたり食事したりする場所、という意味です。

この点、住居というと人の家、つまり、一軒家をイメージしがちですがそれだけに限られません。

アパート、マンションの一室のほか、旅館やホテルなどの客室など一時的に利用するものも住居に含まれます。

また、アパート、マンションのベランダのほか、エントランス、エレベーター、廊下など共用部分についても、住居と一体となるものと認められる限り「住居」に当たります。

一軒家の庭についてもそれが囲繞地と認められる場合は「住居」に当たります。

もっとも、囲繞地というためには、客観的にその土地が住居の付属地であることが明らかであること、塀等の設置によりその土地が他と明確に区別され、住居の付属地として住居の利用のために供されていることなどの要件を満たす必要があります。

侵入

「侵入」については、

  • 住居の平穏を脅かす立ち入りを「侵入」とする考え方
  • 住居権者の意思に反する立ち入りを「侵入」とする考え方

がありますが、実務では後者の考え方が取られています。

そのため、住居権者の承諾あるいは推定的承諾がある場合は、原則として住居侵入罪が成立しません。

もっとも、承諾あるいは推定的承諾は任意かつ真意に出たものでなければなりません。

したがって、窃盗や盗撮目的を秘した上で知人宅の家に立ち入ったとしても、後でそのことが発覚した場合は、立ち入り時点で、住居権者である知人の真意の承諾があったとは認められないことから、当該立ち入りは「侵入」に当たります。

住居権者の意思に反するかどうかは、立ち入りに至るまでの経緯、立ち入りの態様・状況、立ち入り場所の状況、立ち入りの時間帯、立ち入り後の状況などが勘案されます。

罰則・量刑

住居侵入罪の罰則は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

初犯で住居侵入罪のみの罪に問われる場合は罰金を科されることが多いでしょう。

しかし、以下のように、住居侵入罪はそれのみというよりかは、他の犯罪と併せて処罰されることの多い罪です。その場合は罰金ではなく、懲役を科される可能性が高くなります。

住居侵入罪の内容

犯罪の成立

住居侵入罪は、正当な理由がないのに人の住居等に侵入することによって成立します(刑法130前段)。

客体

客体は、人の住居又は人の看守する邸宅・建造物・艦船です。

「住居」とは、日常の生活に使用される場所をいいます。

通常は、起臥寝食のために用いられるものを指しますが、一定時間継続して使用されるのであれば、旅館やホテルの一室、事務所や店舗なども住居といえます。

住居性が肯定される場所であれば、家人等が一時不在中でも、住居性が否定されることはありません。

また、建物の全部でなく、区画された一部分、例えば、マンションの各居室も独立に住居となり得ます。

そして建物に付属する囲繞地も住居に含まれると解されます。

「人」の住居とは、他人の住居をいいます。

他の者と共同生活を営んでいる場合には人の住居ではありませんが、共同生活を解消した場合には人の住居となりますから、家出した息子が強盗の目的で実父宅に侵入した場合は住居侵入罪が成立します(判例)。

「邸宅」とは、一般に、空き家、閉鎖中の別荘など、居住用の建造物で住居以外のものをいいます。

「建造物」とは、住居、邸宅以外の建物、例えば、官公署の庁舎、学校、工場、倉庫、神社等をいいます。

なお、邸宅又は建造物に付属する囲繞地は、それぞれ邸宅又は建造物に含まれると解されます。

「艦船」とは、軍艦及び船舶をいいます。

「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配していることをいいます。

看守の態様としては、監視者を置くとか鍵をかけるなど人的・物的設備を設けるのが普通と考えられます。

行為

行為は、正当な理由がないのに、他人の住居等に侵入することです。

「侵入」とは、住居権者等の意思に反して立ち入ることです。

立ち入るというのは、住居内に入ることだけではありませんから、住居の屋根に上がる行為も侵入に当たります。

また、判例は、建物とその敷地を明確に画し外部からの干渉を排除する作用を果たしている塀も建造物に含まれるとして、その塀の上部に上がった行為も侵入に当たるとしています。

侵入は、正当な理由がなく行われることを要します。

居住者や看守者ら住居権者等の真意に出た承諾がある場合、又は承諾が見込まれる場合は、住居侵入罪を構成しません。

一般に、営業中の飲食店・店舗、ホテルのロビーなど客の来集が予想されている場所とか、一般公衆に開放されている官公署の庁内・構内等においては、通常予想される目的の立入りである限り、居住者等の包括的承諾があると考えられています。

しかし、これらの場所についても、違法な目的で、あるいは社会通念上是認されないような態様で立ち入るときは、住居侵入罪(罪名としては建造物侵入罪)を構成します。

判例では、①店内の客と闘争する目的で、日本刀を携えて勝手口から料理店に立ち入ること、➁正当な用務もないのに、警察官の制止を排して官公署の庁舎内に立ち入ること、➂ATM機を利用する客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で、銀行支店出張所に立ち入ることなどは、建造物侵入罪を構成するとされています。

住居侵入罪に該当する行為には、人の住居の平穏を害するだけでなく、他の犯罪の手段として行われることが多いのです。

刑罰

住居侵入罪は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。

住居侵入罪を犯した場合の身柄状況

平成30年版犯罪白書(以下「犯罪白書」といいます)によれば、平成29年の住居侵入罪の身柄状況は下記のとおりです。

(逮捕関係)

総数
(A)
逮捕されない(B) 逮捕後釈放(C) 身柄付送致(B+C)÷A 検察庁で逮捕 身柄率
7,718 3,546(45.9%) 433(5.6%) 3,737(48.4%) 2(0.03%) (48.4%)

(勾留関係)

認容(D) 却下(E) 勾留請求率(D+E)÷(B+C)
3,198 192 90.7%

上記の数字からすれば、逮捕されない者が45.9%とはいえ、逮捕率は54.1%(4,172人)となっています。

そして、逮捕されれば76.7%勾留されているのです。

上記の数字からすれば、起訴率は4割を超えていることが分かります。

そして、住居侵入罪が、他の犯罪の手段として行われることが多いため、公判請求の方が略式請求よりも起訴率が高いのです。

住居侵入罪を犯した場合の起訴不起訴の処分状況

2017年検察統計年報(平成29年の統計)によれば、検察庁が住居侵入罪で送致を受けた者の起訴不起訴の処分状況は、下記の表のとおりです。

総数 起訴
(起訴率)
(起訴で占める率) 不起訴
(不起訴率)
(不起訴で占める率)
公判請求 略式請求 起訴猶予 その他
5,609 2,293
(40.9%)
1,368(59.7%) 925(40.3%) 3,316(59.1%) 2,500(75.4%) 816(24.6%)

住居侵入罪に付随する罪

住居侵入罪は何か目的を持ってなされることが多い罪です。

そのため、住居侵入罪はその目的となった罪と併せて処罰されることが多い罪といっても過言ではありません。

たとえば、盗み目的で人の住居に侵入した場合は、住居侵入罪と併せて窃盗既遂罪あるいは窃盗未遂罪に問われる可能性があります。窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、単純に住居侵入罪との罰則を合わせて科されるわけではありません。

窃盗が目的、住居侵入が手段、というようにある罪とある罪が目的、手段の関係にある場合は、いずれか重たい罪の罰則をベースに刑が科されます

たとえば、窃盗罪と住居侵入罪とが目的、手段の関係にある場合は、罰則の重たい窃盗罪を基準に刑が科されます。

窃盗罪のほか住居侵入罪と併せて処罰されることが多い罪は以下のとおりです。

  • のぞき目的→軽犯罪法の窃視の罪(拘留又は科料)
  • 盗撮目的→各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金など)
  • 強盗目的→強盗罪(5年以上の有期懲役)など
  • 強姦目的→強制性交等罪(5年以上の有期懲役)など
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住居侵入罪での弁護活動

住居侵入罪での主な弁護活動は示談交渉です。

身柄を拘束された場合は、示談交渉に加えて早期釈放や不起訴処分獲得に向けた弁護活動も必要となりますが、示談交渉がうまくいけば加害者の早期釈放、不起訴処分につながりやすくなるといえます。

示談交渉の相手は住居を管理している住居権者です。たとえば、一軒家の場合は住居の名義人、アパート・マンションの共用部分の場合は管理組合の代表者などです。

住居侵入罪においては、実質的には被害者といえない人と示談交渉する必要がある場合も出てきます。

示談金の額は罪の内容などにより異なります。住居侵入罪のみでは低く、他の罪が重なると高くなる傾向にあります。

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まとめ

住居侵入罪は、正当な理由がなく人の住居に侵入した、場合に問われる罪です。

他の罪と併せて問われることも多く、その場合は、刑が重たくなる可能性もあります。

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