第三債務者とは?定義や具体例・債権執行の流れをわかりやすく解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

第三債務者とは?定義や具体例・債権執行の流れをわかりやすく解説

借金を返済できなくなったとき、債権者(貸主)は、債務者(借主)が持つ債権を強制的に差し押さえることがあります。この手続きを債権執行といいます。

債権執行では、債務者が直接所有する財産ではなく、債務者が受け取る権利のある財産(債権)を、第三者から差し押さえることになります。ここで重要な役割を果たすのが第三債務者です。

この記事では、第三債務者とは何か、誰が該当するのか、また、差押え命令を無視した場合のリスクなどについて解説します。

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第三債務者とは

第三債務者とは何を指すのか、早速説明していきます。

債務者にとっての債務者

第三債務者とは、債務者(B)が持つ債権における債務者(C)を指します。もう少し詳しく見ていきましょう。

  • 債権者(A):お金を貸している人
  • 債務者(B):お金を借りている人
  • 第三債務者(C):Bが債権を持つ相手(たとえば、Bの勤務先の会社)

具体例を挙げると次のような関係になります。

Aがお金を貸した相手がB。Bが給料を受け取っている勤務先の会社Cが、第三債務者に該当します。

このように、第三債務者は債務者(B)の債務者として、債権執行の対象になることがあります。

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債権執行時に差押えを受ける人や会社

第三債務者が注目されるのは、債権者が債権執行を行う場合です。

債務者が返済を履行しない場合、債権者は裁判所に対して債権差押命令の発令を申し立てます。この申し立てが認められると、裁判所は第三債務者に対して直接支払いを命じる債権差押命令を発令します。

これにより、債権者は債務者を介さずに、第三債務者から直接、債務の回収を実現できます。

先ほどの例で言えば、BがAに借金を返済しないとき、AはC(Bに給料を支払う者)から直接債務を回収することが可能です。

債務と債権について

債務と債権の違いも押さえておきましょう。これらはお金の貸し借りだけでなく、幅広い関係を指す言葉です。

  • 債務:借金の返済、給料の支払い、契約した仕事の履行など、特定の義務を負う立場
  • 債権:上記の義務を相手から受ける権利を持つ立場

たとえば、勤務先の会社が従業員に給料を支払う場合、会社にとって給料は債務(給料を払う義務)であり、従業員にとっては債権(給料を受け取る権利)となります。

この違いを理解しておくと、第三債務者の位置づけがより明確になります。

債権差押命令における第三債務者の例

債権差押命令は、債務者が持つ債権を第三債務者に直接執行する手続きです。ここでは、第三債務者となる典型的な例を挙げ、具体的に解説します。

債務者の預金を預かっている銀行

債務者が銀行に預金をしている場合、その銀行は債権者からすると第三債務者に該当します。

債務者が銀行にお金を預けると、債務者は銀行からお金を引き出す権利(債権)を持ち、銀行は預金者の求めに応じてお金を返還する義務(債務)を負うからです。

債権者が裁判所を通じて差押命令を取得すれば、銀行は債務者の預金から差押え分を引き、債権者に支払うことになります。

債務者に給料を払う会社(勤務先)

債務者が会社に雇用され、給料を受け取っている場合、その勤務先も、債権者からすると第三債務者に該当します。

債権者が給料差押えを申立てると、勤務先は債務者の給料の一定割合を差押え分として控除し、それを債権者に送金する必要があります。

もっと簡単にいうと、従業員に支払うはずだった給料を、債権者(従業員がお金を借りている相手)に直接支払うことになります。

債務者に売掛金を支払う取引先

債務者が事業者の場合、取引先からの売掛金が差押えの対象になることがあります。

たとえば、債務者が工務店を経営しており、取引先の建設会社から工事代金として売掛金を受け取る権利を有している場合、その建設会社が第三債務者となります。

差押命令が発令されると、取引先である建設会社は、債務者に支払うべき工事代金を一時的に止められ、その金額を債権者に直接支払うことになります。

債務者に家賃を支払う物件の住人

債務者が不動産の大家であり、物件の住人から家賃を受け取っている場合、住人は第三債務者に該当します。

裁判所から差押命令を受けた住人は、大家に家賃を支払うことを禁じられます。

その後、債権者と住人が直接連絡をとって家賃分のお金を債権者に支払うことになります。

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債権執行手続きの一般的な流れ

債権執行では、債権者が裁判所を通じて、債務者から借金の回収を行います。しかし、相手は債務者本人ではなく、債務者の債務者(第三債務者)となります。

ここでは、一般的な債権執行の手続きの流れを紹介します。

債権者が債務名義を取得する

債権執行を開始するための第一歩は、債務名義の取得です。

債務名義とは、債権者が債権の存在を法的に証明できる文書のことで、これには確定判決、公正証書、調停調書などが該当します。

これらの文書により、債務者が債務を履行しなかった場合でも、強制執行が可能となります。

債務名義の取得には時間がかかることがあり、裁判や調停などを経る場合には数カ月から数年が必要となることもあります。

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債権者が裁判所に執行の申し立てをする

債務名義を取得した債権者は、裁判所に対して執行の申し立てを行います。

この申し立てでは、債権執行の対象となる財産や債権の詳細を記載する必要があります。

たとえば、債務者の銀行口座を差し押さえる場合は、銀行名や支店名を明確に特定しなければなりません。

必要な情報を正確に記載しなければ、申し立てが認められない可能性があるため注意が必要です。

裁判所による差押命令の発令

裁判所が申し立てを受理し、審査を行った後、適正と判断されれば差押命令が発令されます。

この差押命令は、第三債務者や金融機関、勤務先など、差押えの対象となる第三者に送達されます。

差押命令が届いた時点で、第三債務者は債務者に対する支払いを一時的に停止する義務が生じます。

たとえば、債務者が勤務先から給与を受け取っている場合、その勤務先が差押命令を受けた時点で、給与支払いが差し止められることになります。

第三債務者による陳述書の提出

差押命令を受けた第三債務者は、一定期間内に陳述書を裁判所に提出しなければなりません。

陳述書では、債務者に対する債務の内容や金額、支払期日などを詳細に記載します。この情報は、債権者が差し押さえるべき金額や範囲を確定するために重要です。

第三債務者が陳述書を提出しない場合や虚偽の記載を行った場合には、過料や罰則を受ける可能性があります。

第三債務者に対する差押えを行う

裁判所は、陳述書の内容を確認した後、差し押さえるべき金額を確定します。その後、第三債務者に対して差押えが正式に執行されます。

たとえば、債務者が銀行に預金を持っている場合、銀行口座の残高から債権額が差し引かれ、債権者に渡される手続きが行われます。

勤務先で給与が差し押さえられた場合は、債務者が受け取る予定の給与から、法律で定められた範囲内の金額が債権者に渡されます。

債権回収を執行できたら完了

差押えによって債権が全額回収できた場合、執行手続きは完了します。

しかし、債務者の財産が十分でない場合や、第三債務者が義務を履行しない場合には、債権の回収が困難になるケースもあります。

その際には、さらなる法的手段を検討する必要がある場合もあります。

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第三債務者が差押命令を拒否・支払わないとどうなる?

第三債務者が差押命令を受けた場合、その命令に従い、債務者に対する支払いを停止し、債権者に支払いを行う義務を負います。

これを拒否したり支払いを怠ったりした場合、第三債務者には法律上の責任が生じる可能性があります。以下では、具体的な影響について解説します。

債権者に対する損害賠償責任を負う

第三債務者が差押命令を無視し、債務者に対して支払いを続けた場合、その行為によって債権者が回収できるはずの金銭を失うことになります。

この場合、第三債務者は債権者に対して損害賠償責任を負うことになります。

たとえば、給与の差押え命令が出されているにもかかわらず、勤務先が債務者に給与を支払った場合、その金額相当分を債権者に弁済する義務が生じる可能性があります。

過料(行政処分)を受ける

第三債務者が正当な理由なく裁判所の差押命令を拒否した場合、裁判所から過料の行政処分を科されることがあります。

過料は差押命令に従わないこと自体を罰するものであり、その額は裁判所の判断に基づいて決定されます。

これは、第三債務者が命令に従うよう促すための措置として取られます。

刑事責任を負う可能性も

第三債務者が意図的に虚偽の陳述を行ったり、債権執行を妨害する行為を行ったりした場合、刑事責任が問われる可能性もあります。

具体的には、虚偽陳述や証拠隠滅、財産の不正処理などが該当し、これらの行為が悪質であると判断された場合には罰金刑や懲役刑が科されることもあります。

第三債務者に無視された場合の債権者の対応策

第三債務者が差押命令を無視し、債権者に支払う義務を履行しない場合、債権者にはいくつかの対応策がありますので、紹介します。

裁判所に申し立てをする

第三債務者が差押命令を無視した場合、債権者はまず裁判所に申し立てを行い、適切な対応を求めることができます。

裁判所は、第三債務者に対して過料や強制執行を行うよう命じることができます。

また、裁判所は、第三債務者に対する強制的な措置を取ることができるため、債権者は法的手段を通じて第三債務者に対して圧力をかけ、履行を促進することができます。

損害賠償請求をする

第三債務者が差押命令を無視し、債権者に損害を与えた場合、債権者はその損害について損害賠償を請求することができます。

たとえば、第三債務者が不履行により債権者が回収できるはずだった金銭を失った場合、その金額相当分を第三債務者に対して請求できます。

損害賠償請求は、債権者にとって差押え以外の回収手段として有効です。

再度債権執行の申し立てをする

第三債務者が差押命令を無視して支払わない場合、債権者は再度債権執行の申し立てを行うことができます。

再度の執行申し立てにより、債権者は別の方法で差押えを行うことが可能となり、たとえば第三債務者の別の財産や収入源を差し押さえることができます。

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第三債務者に関するよくある質問

第三債務者が給与差押えを受けたら?

第三債務者が給与差押えを受けた場合、その給与の一部が差し押さえられ、債権者に支払われます。

差押えの対象となる金額は法定の基準に基づき、生活費を差し引いた後の部分です。

会社は第三債務者に当てはまる?

はい、会社は第三債務者に当てはまることがあります。

たとえば、社員の給与を支払う会社は、社員に対する債務者となり、従業員が借金などを返済できない場合、会社は第三債務者として差押命令に従う必要があります。

まとめ

第三債務者とは、債務者(借主)が持つ債権に対して支払い義務を負う第三者のことです。

例えば、債務者が会社に勤務し給与を受け取っている場合、その勤務先が債務者からみた第三債務者となります。

債権執行では、債権者の申立てにより、裁判所が差押命令を発令することで、債権者が第三債務者に対して直接支払いを請求できるようになります。

これにより、債権者は債務者を介さずに借金の回収を行うことが可能となります。

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