少額管財事件とは?費用・流れ・注意点を解説
少額管財事件(しょうがくかんざいじけん)は、自己破産手続きの1つです。管財事件よりも破産者の費用負担が軽減されており、手続きが簡易になっています。
自己破産をする際は、できるだけ費用をかけたくないものです。出費を抑えたい方は、少額管財事件について簡単に理解しておくといいかもしれません。
今回は、少額管財事件の費用・流れ・注意点を解説します。
目次
少額管財事件とは?
少額管財事件のメリットと、他の自己破産手続きとの違いを解説します。
少額管財事件のメリット
少額管財事件はどのようなメリットがあるのでしょうか?
費用が少なくて済む
自己破産で管財事件に振り分けられた場合、予納金という費用を裁判所に支払わなければいけません。
予納金には破産管財人に対して支払われる報酬が含まれ、自己破産の負債額によって金額が変わります。
金額は、以下のとおりです。
負債総額 | 法人 | 個人 |
5,000万円未満 | 70万円 | 50万円 |
5,000万〜1億円未満 | 100万円 | 80万円 |
1億〜5億円未満 | 200万円 | 150万円 |
5億〜10億円未満 | 300万円 | 250万円 |
10億〜50億円未満 | 400万円 | |
50億〜 | 500万円〜 |
管財事件に振り分けられると、上記の通り最低でも50万円が必要です。
しかし少額管財事件であれば、約20万円の予納金で済みます。
このように借金で苦しんでいる人が自己破産手続きを利用しやすくして、再出発できるように定められたのが少額管財事件です。
手続きが簡単で免責までスムーズ
管財事件では手続きから免責の判断が下されるまで、約半年から1年ほどの時間が必要です。また自己破産申立人の財産や債権者の数によっては、1年以上必要になるケースもあります。
しかし少額管財事件であれば、約3ヶ月から半年程度で全ての手続きが終了します。手続きが終了して借金が免責されれば、半年後には新しい人生のスタートを切ることが可能です。
少額管財事件と管財事件の違い
少額管財事件と管財事件の違いを以下に表としてまとめたので参考にしてください。
【少額管財事件と管財事件の違い】
少額管財事件 | 管財事件 | |
費用 | 手数料等:2~3万円程度
予納金:最低20万円~ |
手数料等:2~3万円程度
予納金:最低50万円~ |
期間 | 3ヶ月から半年 | 半年から1年(財産や資産の量、債権者の数によって1年以上かかることも) |
特徴 | 管財事件と比較すると費用がかからず期間も短い | ・高額な費用が必要
・財産や債権者の数によっては手続きが長引く |
少額管財事件と同時廃止事件の違い
少額管財事件と同時廃止事件の違いを以下に表としてまとめたので参考にしてください。
【少額管財事件と同時廃止事件の違い】
少額管財事件 | 同時廃止 | |
費用 | 最低20万円~ | 2~3万円程度 |
期間 | 3ヶ月から半年 | 3ヶ月から半年 |
特徴 | ・管財事件と比較すると費用がかからず期間も短い | ・手続き開始と同時に破産手続きは廃止
・期間も管財事件と比較すると短い |
少額管財事件の費用
自己破産手続きが少額管財事件に振り分けられた場合、必要な費用は以下のとおりです(東京地方裁判所の場合/2024年9月24日~)。
費用 | 金額 |
収入印紙 | 1,500円 |
予納郵便切手 | 4,950円分 (内訳:500円×4枚・180円×1枚・110円×22枚・50円×4枚・10円×15枚) |
予納金(官報公告費用) | 13,834円 |
引継予納金(引継予納金) | 最低20万円~ ※財産の数や債権者の人数によって金額は増える可能性がある |
弁護士費用 | 相場は30万円〜50万円 |
少額管財事件の流れ
ここでは少額管財事件の流れを解説します。
弁護士に手続きを依頼
少額管財事件は、まず弁護士へ手続きの依頼をする必要があります。
どの弁護士に相談するか決まっていない人は、無料相談を利用して信頼のできる弁護士に依頼しましょう。
債権者への通知
債務者から依頼を受けた弁護士は、債権者へ自己破産手続きの受任通知を送ります。
受任通知を受け取った債権者は、それ以降債務者に対して催促や取り立てを含めた連絡を行うことはできません。
受任通知事項はすべて弁護士が代理人となるため、債務者は生活を立て直すことだけに集中できます。
破産手続き開始の申し立て
必要な書類など全て準備したら、弁護士と自己破産手続きの開始申し立てを行います。
債務者審尋
債務者審尋とは、裁判所と債務者が行う面談の事です。
債務者審尋では、主に以下のような内容を質問されます。
- 債権者の数
- 所有している財産
- 負債
- 破産申立に至った経緯
- 法人の場合 事業内容
債務者審尋では弁護士が付き添いをしてくれるほか、事前に質問内容を想定して答えを準備してくれるので、債務者も安心して面談に臨めます。
破産手続き開始決定
債務者審尋を経て特に問題がなければ、裁判所は破産手続開始決定を行います。
破産手続き開始決定の法的な要件は、以下のとおりです。
- 債務者が支払不能であること
- 債務者が債務超過であること
- 破産手続きに必要な費用が与納されていること
- 不当な目的で破産手続き開始の申し立てを行なってはいないこと
裁判所による調査
破産手続き開始決定がなされたら、裁判所は破産管財人を選任します。
選任された破産管財人は、主に以下のような業務を行います。
- 債権の調査:債権者や債権額に関する調査を行って、破産手続きで財産を分配・配当する債権を確定します
- 破産財団の財産換価・処分:債務者が所有している財産を全て換価して、債権者に対して公平に分配・配当を行います
- 免責不許可事由の調査:破産管財人により免責不許可事由がないかの調査が行われます
債権者集会・配当
破産手続開始後、破産管財人による破産財団に属する財産の換価処分手続きを経て債権者集会が開催されます。
債権者集会では、債権者に対して財産の分配額、配当の見通しなどの説明が行われます。
免責許可・不許可の決定
免責不許可事由がなかった場合、裁判所は免責許可・不許可の判断を下します。
免責が許可された場合は、その後2週間の即時抗告期間を経て免責許可決定の確定です。
少額管財事件の注意点
ここでは少額管財事件の注意点について解説します。
少額管財を行なっていない裁判所がある
少額管財事件は、全ての裁判所で運用されている手続きではありません。
裁判所によっては少額管財事件を取り扱っていない場合もあるので、事前に管轄裁判所がどのような手続きを行っているのか確認する必要があります。
事前に依頼する弁護士に、手続きを進める管轄裁判所が少額管財事件を取り扱っているか確認しておきましょう。
利用できないケースがある
自己破産を申し立てる人の所有している財産や資産によっては、少額管財事件が利用できないケースもあります。
また管轄裁判所の運用方針によっても異なるので、依頼する弁護士に少額管財事件として振り分けられる可能性があるか事前に確認しておきましょう。
弁護士への依頼は必須
少額管財事件では、弁護士に自己破産手続きを依頼することは必須です。
なぜなら裁判所の運用方針として、少額管財事件に振り分けるのは弁護士が代理人として申し立てることと定められているためです。
管財事件とは異なり、少額管財事件は少ない費用で迅速に手続きを行うことが目的として制度が定められました。
弁護士が代理人でなければ、迅速な解決は困難です。
万が一弁護士費用を節約したい場合、自分で自己破産手続きを進めることになります。しかし自分で自己破産手続きを進める場合、管財事件に振り分けられるため予納金が最低でも50万円必要です。
弁護士にかかる費用が約20〜50万円程度なので、所有している財産や資産によっては、弁護士に依頼した方がお得な可能性もあります。
まとめ
少額管財事件は、自己破産手続きを迅速かつ費用も抑えめで行うことができます。
もっとも少額管財事件に振り分けられるかは裁判所が判断するため、申し立てをすれば必ず少額管財事件になるわけではありません。
また裁判所の方針として、弁護士が代理人となっていなければ少額管財事件にならないのも事前に把握しておく必要があります。
現在自己破産をしようか悩んでいる方で、少額管財事件に振り分けられるかわからない場合は、まず弁護士に相談してみましょう。