年金を滞納するとどうなる?差し押さえを受ける条件や流れを解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

年金を滞納するとどうなる?差し押さえを受ける条件や流れを解説

年金保険料を未納でも差し押さえはされないという人や、借金を滞納しても年金は差し押さえられないと思っている人もいるでしょう。

しかし、年金保険料を未納にしていると、財産が差し押さえられる可能性があります。

一方で、借金を滞納しても、年金は基本的に差し押さえの対象外です。ただし、実務上では年金が差し押さえられるケースがあるため、注意が必要です。

この記事では、以下の点をわかりやすく解説します。

  • 年金の未納による差し押さえについて
  • 借金を滞納したことによる年金の差し押さえについて
  • 差し押さえを回避する方法

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公的年金を滞納すると差し押さえを受ける

公的年金を滞納すると、差し押さえを受ける可能性があります。

ここでは、そもそも公的年金とは何か、差し押さえられる財産の種類、実際に差し押さえが実施された件数を解説します。

公的年金は国民年金と厚生年金の2種類

公的年金とは、国が運営する年金制度で、老後の生活を支えるお金です。2024年時点では、65歳から年金を受け取ることができます。

国が運営する公的年金には2種類あります。

国民年金 ・20歳から60歳未満の人はすべて加入しなければならない年金
・納めることで老後に受給できるほか、病気やケガで働けない場合に障害年金、配偶者が亡くなった場合に遺族年金が受け取れる
厚生年金 ・会社員や公務員、要件に該当するアルバイトなどが加入する年金

厚生年金に加入している人は、国民年金と厚生年金で支払った分の年金を受け取ることができます。

基本的にすべての国民は、国民年金に加入して保険料を支払わなければなりません(国民年金法第7条、第88条)。

厚生年金は、会社が給料から国民年金と厚生年金を差し引いて納付しているため、基本的に未納になることはありません。

未納に注意が必要なのは、国民年金だけに加入している自営業者、農業者、学生、無職などの人です。

国民年金を支払わずにいると、最終的に国に個人の財産を差し押さえられることになります。

差し押さえの対象になる財産の種類

年金の未納で差し押さえ対象となる財産は以下の通りです。

  • 預貯金、給料
  • 家賃収入
  • 自動車
  • 貴金属や宝石、骨とう品や絵画、証券
  • 不動産 など

差し押さえ対象となりやすいのは、預貯金や、自営業者の場合だと仕事の売り上げです。

これら現金は、換金の手間がないため、差し押さえ対象になりやすいです。

他にも、車などが差し押さえられて、換金されることがあります。

さらに注意したいのは、世帯主や配偶者は、年金保険料の納税義務者と連帯して年金を納付する義務を負う点です(国民年金法第88条)。

そのため、年金未納者がいる世帯主や、配偶者が年金未納者である場合は、世帯主や配偶者の財産も、差し押さえの対象となる可能性があります。

国民年金の未納による差し押さえの件数

国民年金を未納でも差し押さえはされないとする声もありますが、事実ではありません。

現に、日本年金機構は、2023年に3万789件の財産差し押さえを行っています。

そのため、国民年金を滞納し続けると、実際に差し押さえを受けるおそれがあります。

なお、2023年分の納付率は77.6%と約8割の人が保険料を納付しています。

参考:国民年金保険料強制徴収の実施状況 – 日本年金機構

国民年金の滞納で差し押さえを受ける条件

前述の通り、国民年金保険料を滞納すると、財産の差し押さえを受けるおそれがあります。

国民年金の滞納で、財産の差し押さえを受ける条件は、以下の通りです。

  • 所得額が300万円以上
  • 7ヶ月以上の未納

所得額が300万円以上

国民年金の滞納で差し押さえを受ける条件の一つが、控除後の所得額が300万円以上の場合です。

この所得額とは、給与所得者の場合、給料から所得控除や基礎控除、社会保険料を差し引いた金額です。

自営業者の場合は収入から経費を差し引いた金額を指します。

この基準は法律によるものではなく、日本年金機構が差し押さえ対象としている基準です。

2014年当時は、控除後の所得400万円以上で、13か月以上の滞納者が差し押さえ対象でした。

差し押さえ対象の基準は年々引き下げられています。今後は控除後の所得300万円以下でも、差し押さえ対象になるかもしれません。

参考:「国民年金保険料の強制徴収の取組強化」の結果について – 日本年金機構

7ヶ月以上の未納

控除後の所得額が300万円以上で、かつ、年金の未納期間が7か月以上ある場合は、差し押さえ対象となります。

そのため、未納期間が7か月になりそうな場合は、早い段階で免除や納付猶予、分割納付を年金事務所に相談しましょう。

国民年金の未納で差し押さえを受けるまでの流れ

国民年金の未納で差し押さえを受けるまでの流れは、以下の通りです。

  • 納付勧奨
  • 督促
  • 差押え

取り立てから差し押さえを受けるまでの流れを解説します。

納付勧奨

年金が納付期限までに納付されない場合、納付勧奨が行われます。

例えば、電話や文書(国民年金未納保険料納付勧奨通知書、催告状)による納付案内が届きます。

これを無視して未納の状態でいると、次の特別催告状というものが届きます。

特別催告状は、青、黄色、赤という順で封筒の色が変化していき、赤い封筒になると、財産の差し押さえ準備に入ることが通知されます。

督促

特別催告状を無視すると、今度は最終催告状、その次に督促状、そして差押予告通知が届きます。いずれも強制徴収(差し押さえ)の警告です。

また、督促状の場合は、指定の期日までに納付しないと、納付が遅れた日から納付までの延滞金も請求されます。

参考:国民年金保険料の延滞金 – 日本年金機構

差押え

最後に届く差押予告通知には、これ以上支払いを待たず、強制徴収を行うことが記載されています。

特別催告状を無視しても、すぐに差し押さえが行われるわけではありません。

差押予告通知まで待ってくれるので、延滞金が上乗せされる前に支払うか、役所に支払いの相談をしましょう

差押予告通知を無視すると、最終的には財産が差し押さえられます。

参考:日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収) – 日本年金機構

国民年金の未納による差し押さえを回避する方法

国民年金の未納による差し押さえを回避するためにも、保険料の免除や猶予制度を活用しましょう。

保険料免除 ・前年所得が一定額以下の場合や、失業した場合など、保険料の納付が困難な場合に保険料が免除される制度
・免除額は全額、4分の3、半額、4分の1がある
納付猶予 ・20~50歳未満の人で、前年所得が一定額以下の場合に保険料の納付を猶予される制度
・2年間は支払いを猶予される
学生納付特例制度 ・申請による在学中の保険料の納付が猶予される制度
・前年の所得が一定以下の学生対象
産前産後期間の免除制度 ・出産予定日、または出産日の月の先月から4か月間、国民保険料の納付が免除される制度
法定免除制度 ・生活保護、障害年金の受給者、国立ハンセン病療養所などで療養している人対象の国民年金免除制度

免除や猶予を受けると、将来の年金受給額が減る点には注意が必要です。

可能なら10年以内に免除や猶予された分を納めるようにしましょう。

年金の免除や猶予制度については、お住まいの近くの年金事務所に相談できます。

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借金の滞納で年金は差し押さえられる?

年金と同様に、借金を滞納すると、最終的には財産が差し押さえられます。

もし年金を受給している場合、借金を滞納すると、振り込まれた年金が差し押さえられることはあるのでしょうか。わかりやすく解説します。

公的年金は差押禁止財産に指定されている

公的年金は、差し押さえ禁止財産に指定されているため、原則として差し押さえは禁止されています。

国民年金や公的年金を差し押さえられてしまうと、生活ができなくなってしまいます。

そのため、憲法第25条の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利により、民事執行法第152条に差し押さえ禁止財産が定められています。

他にも、国民年金は国民年金法第24条、厚生年金は厚生年金法第41条に、差し押さえ禁止が明記されています。

ただし例外的に差し押さえられるケースがあるため、後述します。

個人年金は差し押さえの対象となることがある

一方、個人が任意で加入して支払いを行う個人年金(私的年金)は、差し押さえの対象となる場合があります。

個人年金は、公的年金を補うために、個人の意思で加入する年金です。

公的年金は加入が義務ですが、個人年金は個人の意思で加入するため、個人的な財産だと判断されます。

ただし、生活を維持するために個人年金を受給している場合は、支給額の4分の1までしか差し押さえられません。

また、以下の個人年金は、公的年金と同様に扱われるため、差し押さえの対象にはなりません(確定給付企業年金法法第34条)。

  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 国民年金基金
  • 厚生年金基金

借金の滞納で公的年金が差し押さえられるケース

例外的に、借金の滞納で公的年金が差し押さえられるケースを解説します。

年金が銀行口座に残されている場合

銀行口座が差し押さえられる場合、口座内に振り込まれた年金があると、預貯金として差し押さえられます

本来、公的年金は差し押さえが禁止されています。しかし、口座内にお金が残されていると、預貯金なのか、年金なのか判断ができないため、差し押さえられてしまいます。

なお、預貯金の差し押さえは、給料のように差し押さえの上限が定められておりません。

そのため、完納できるだけの金額が差し押さえられることになります。

税金などを滞納している場合

同様に、税金などを滞納している場合も、口座内に年金が残されていれば、預貯金として差し押さえられてしまいます。

特に税金の差し押さえは、一般的な借金と異なり、裁判を行わなくても差し押さえが可能です。

地方税(住民税など)の場合、督促状から10日間で納付がなければ、すぐに差し押さえができます(地方税法第331条)。

税金の納付が難しい場合は、すぐに役所に分割納付などを相談しましょう。

年金を担保に借金をしていた場合

過去に、年金を担保にした借金を滞納した場合は、年金が差し押さえられる可能性があります。

年金を担保にした貸付制度には以下の3つがあります。

ただし、上記の年金担保貸付制度は、2022年3月末で申し込み受付が終了しています。

生活費にあてられるべき年金を担保にして行う貸し付けが、利用者の困窮を招くとの指摘を受けて制度が終了しました。

制度終了前に年金担保貸付制度を利用して返済中の人は、繰り上げて返済する必要はありません。

しかし、支払いができなくなれば、差し押さえを受ける可能性があります。

なお、現在は年金を担保にした借り入れは禁止されているため、違法な融資を受けないようにしましょう。

借金の滞納による年金の差し押さえを回避する方法

借金を滞納すると、年金やそれ以外の財産を差し押さえられるおそれがあります。

そのため、どうしても借金が返済できない場合は、債務整理(さいむせいり)を検討しましょう。

債務整理とは、簡単に言うと借金を減額・免除できる手続きのことです。

任意整理 貸金業者と交渉して、今後発生する利息をカットしてもらう方法
個人再生 裁判所の許可のもと、借金を大幅に減額して返済する方法
自己破産 裁判所の許可のもと、借金の返済義務をなくす方法

どの手続きが適しているのかは、借金額や借り入れの状況、返済能力の有無などによって異なります。

借金がなかなか減らない場合は、どの手続きが適しているのか、債務整理が必要かどうかも含めて、まず弁護士に相談しましょう。

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年金の差し押さえでよくある質問

借金滞納で障害年金は差し押さえされる?

借金を滞納すると、公的年金だけでなく、障害年金も差し押さえられる可能性があります。

公的年金同様に、障害年金も原則として差し押さえが禁止されています。

しかし、障害年金が口座に残されていると、預貯金として差し押さえられる可能性があるため、注意が必要です。

年金の差し押さえは違法?

本来は公的年金の差し押さえは違法です。公的年金の差し押さえは、以下の法律で禁止されています。

ただし、公的年金が銀行口座に残されている場合、それが年金か預貯金か判断できないため、預貯金として一緒に差し押さえられてしまうのが実情です。

国民年金の差し押さえは家族の財産も対象?

国民年金の未納による差し押さえは、家族の財産も対象になる可能性があります。

一般的な借金は、貸金業者と契約した人の財産が差し押さえの対象となります。

しかし国民年金の場合は、納付義務者だけでなく、納付義務者の世帯の世帯主や配偶者も、連帯して年金を納付する義務を負います。

そのため、世帯内に未納者がいると、世帯主や配偶者の財産が差し押さえられるおそれがあります。

まとめ

年金を未納のままでいると、自分だけでなく、自分の家の世帯主や配偶者まで財産を差し押さえられるおそれがあります。

実際に、日本年金機構は2023年に約3万件の差し押さえを実施しています。

それとは別に、借金を滞納しても、口座に振り込まれた年金が残っていると、預貯金の差し押さえと一緒に年金も差し押さえられることになります。

借金があって年金保険料が払えない人や、借金が払えずに年金が差し押さえられそうな人は、債務整理を検討しましょう。

年金保険料の未納や借金の滞納は放置せず、早い段階で年金事務所や弁護士に相談することが大切です。

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