任意整理後に借金を払えなくなったら?滞納リスクと対応策を解説
任意整理は、裁判所を通さず、債権者(お金を貸した側)と債務者(お金を借りた側)の交渉により返済方法を変更する手続きです。合意内容に基づく金額を、原則3~5年で分割払いします。
任意整理による返済開始後、「うっかり支払いを忘れてしまった!」「収入が減って払えなかった」など、予期せぬ理由で借金が払えなくなるケースもあります。
この記事では、任意整理後の借金の支払いについて、次の点を解説します。
- 任意整理後に借金が払えないとどうなる?
- 任意整理後に借金が払えない場合の対応策
- 任意整理後に借金が払えないときにすべきこと
- 任意整理後に借金が払えないときにしてはいけないこと
任意整理で解決した借金の支払いを忘れてしまった方、長期間支払えそうにない方は、是非最後までご覧ください。
目次
任意整理後に借金が払えないとどうなる?
任意整理後に借金が払えなかった場合のペナルティは、和解内容や滞納期間により異なります。一般的には、2ヶ月分以上の滞納でペナルティが発生します。
任意整理の和解書(合意書)には、一般に、懈怠約款が設けられています。懈怠約款とは、債務者が返済を怠った場合のペナルティを定める条項です。
懈怠約款の例は、次のとおりです。
債務者がその返済を2回以上怠った場合、当然に期限の利益を失い、その翌日から完済に至るまで、年○%の損害金を付して弁済する。 |
ここでは、次のとおり滞納期間別の取扱いを説明します。
- 滞納が1ヶ月だけの場合
- 滞納が2ヶ月分の場合
- 滞納が3ヶ月分以上の場合
ひとつずつ説明します。
滞納が1ヶ月分だけの場合|危険度★
滞納が1ヶ月分だけの場合、次の返済日までに滞納を解消できれば問題ありません。
ただし、1ヶ月分の滞納で和解を無効とする取り決めをした場合は、1ヶ月分の滞納でも一括請求のリスクが生じます。
滞納が2ヶ月分の場合|危険度★★
滞納が2ヶ月分の場合、次のようなリスクがあります。
- 一括請求される可能性が高まる
- 遅延損害金が発生する
ひとつずつ説明します。
一括請求される可能性が高まる
滞納が2ヶ月分の場合、債権者から残債務を一括請求される可能性が高まります。懈怠約款により分割返済ができなくなる(期限の利益を失う)からです。
遅延損害金が発生する
返済が滞ると、滞納日数に応じた遅延損害金が発生します。遅延損害金が発生する時期や利率は和解内容によって異なります。
任意整理では、通常2ヶ月分滞納したときから遅延損害金の負担が生じます。
滞納が3ヶ月分以上の場合|危険度★★★
1~2ヶ月の滞納であれば、その後すぐに返済するなど誠実な対応を取ることで、債権者が見逃してくれるケースもあります。しかし、滞納が3~4ヶ月と続き、滞納を解消できる見込みがない場合は、債権者も許してくれません。
債権者が借金を回収できる見込みがないと判断した場合、裁判・支払督促の手続きを経て、債務者の財産を差し押さえることがあります。
後述する任意整理後に借金が払えない場合の対応策を検討し、滞納を解消できる見込みがない場合にはすぐに弁護士に相談しましょう。
任意整理後に借金が払えない場合の対応策
ここでは、任意整理後、借金が払えない場合の対応策を紹介します。
滞納が1ヶ月分だけの場合
未払を解消する
滞納が1ヶ月分だけの場合は、滞納分を速やかに支払いましょう。すぐにお金を準備できなければ、滞納した月の翌月の返済日に2ヶ月分をまとめて支払います。
滞納が2ヶ月分以上の場合
滞納が2ヶ月分以上の場合の対応策には、次の2つの方法があります。
- 再和解を交渉する
- 追加介入を検討する
ひとつずつ説明します。
再和解を交渉する
任意整理で和解した債権者に、再和解を交渉します。もう一度任意整理して返済方法を変更する方法です。
ただし、滞納がある場合は再和解に応じてない債権者もいます。再和解が認められた場合も、1回目より条件が厳しくなるでしょう。
追加介入を検討する
複数の借金がある場合、追加介入することで返済が楽になる可能性があります。
追加介入とは、過去に任意整理の対象から外した債権者について追加で任意整理することです。
追加介入で毎月の負担額が軽減できれば、返済の継続・滞納の解消が見込めます。
滞納を解消できる見込みがない場合
滞納を解消できる見込みがない場合は、個人再生・自己破産を検討します。
個人再生に切り替える
個人再生は、任意整理と異なり、借金の元本も減額して分割返済できます。任意整理後に返済ができなくなった場合の対応策として有効です。
次のようなケースでは、個人再生の要件を満たせば利用を検討できます。
- 月々の弁済額が抑えられれば返済できる
- 返済を継続できる安定した収入がある
ただし、任意整理で一度和解しているため、小規模個人再生を選択した場合は、債権者の同意が得られない可能性があります。
自己破産に切り替える
事故や病気、失業により長期間収入が見込めない場合は、自己破産で再スタートを図るのも有効です。
ただし、自己破産へ切り替える場合は、条件やデメリットを踏まえて検討しましょう。
任意整理後に借金が払えないときにすべきこと
ここでは、任意整理後に借金が払えなくなった場合にすべきことを紹介します。
債権者・弁護士に早めに連絡する
返済が遅れる可能性があると分かった時点で、債権者(和解金の弁済を弁護士に委任している場合は弁護士)に連絡をしましょう。返済日前に連絡することで、債権者に柔軟な対応をしてもらいやすくなります。
病気や怪我で一時的に減収する見込みがある場合は、事前に相談することで、一定期間支払いを猶予してもらえることもあります。
払える金額だけ振り込む
滞納が2ヶ月分未満であれば、一括請求のリスクを回避できます。滞納額をまとめて支払えない場合は、払える金額だけでも返済しましょう。
例えば、毎月1万円ずつの返済で、滞納額が2万円に及ぶ可能性がある場合、翌月の返済日までに1万5,000円を支払い、残りの5,000円を翌々月の返済額に上乗せします。
この場合も、債権者への連絡・相談は必須です。
任意整理後に借金が払えないときにしてはいけないこと
ここでは、任意整理後に借金が払えないときにしてはいけないことを紹介します。
債権者・弁護士からの連絡を無視する
返済日までに支払えなかった場合、債権者または弁護士から連絡が入ります。連絡は無視せず、返済が遅れる理由やいつ支払えるかを必ず伝えましょう。
和解締結後も弁護士との委任関係が継続しているのに弁護士からの連絡を無視し続けた場合、信頼関係がなくなり代理人を辞任される可能性があります。
返済のために他社から借金する
借金返済のために新たな借金をすることは、返済を先送りにするだけなく、借入額を膨れ上がらせる危険な行為です。
まとめ
任意整理後、借金の支払いが遅れそうな場合は、早めに弁護士または債権者に連絡しましょう。早期に対処すれば、債権者が寛大に対応してくれるケースがほとんどです。
失業や怪我・病気により長期間収入が見込めない場合は、他の債務整理に切り替える必要も生じます。
個別の事情については弁護士に相談するとよいでしょう