法テラスでの自己破産の費用は?手続きの流れや条件を解説
借金が膨らみ過ぎてしまったり、収入と支払いの釣り合いが取れず、生活が破綻したりした場合には、最終的に自己破産をすることになります。
しかし、自己破産をするにも、弁護士費用などのまとまったお金が必要です。
多くの弁護士事務所は、債務者(借主)に無理のない形での分割払いを提案してくれますが、現状収入がない方は、それさえも難しいでしょう。
そこで、法テラスの出番です。
収入や資産が一定のラインを下回るなど、条件を満たしている方は、法テラスに自己破産の費用を肩代わりしてもらうことができます。
ここでは、法テラスの利用条件、法テラス利用時の自己破産の費用、法テラスを利用した自己破産の流れなどを紹介します。
目次
法テラスとは
まずは、法テラスがどんなものなのか理解しましょう。
国が設置した法的トラブル解決の総合案内所
法テラスは、国が設置した、法的トラブル解決の総合案内所です。正式名称は、日本司法支援センターといいます。
全国に110の事務所があり(令和2年時点)、主に、以下の業務を行っています。
- 相談者に対する法制度の情報提供
- 相談者にとって最適な相談窓口の紹介
- 法律の無料相談(条件あり)
- 弁護士や司法書士への依頼(条件あり) など
これらの業務を、無料で行っています(弁護士への依頼は有料)。
ですので、「法律問題で困っている、でも法律もわからないし、誰に相談していいのかもわからない」といった場合は、まず法テラスに連絡してみるといいでしょう。
【関連:相談窓口・法制度|法テラス】
一定の条件で自己破産の費用を肩代わりする
法テラス最大の特徴は、収入や資産(貯金など)が一定の条件を下回る人は、無料で法律相談を受けることができ、弁護士や司法書士にかかる費用を肩代わりしてもらえる点にあります。
この法テラスの業務のことを、民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)と呼びます。
生活が困窮している人は、この民事法律扶助を利用して、自己破産をすることができます。
法テラスの民事法律扶助が利用できる条件
次に、法テラスの民事法律扶助を利用するための条件を紹介します。
月収や資産が一定以下であること
まず、月収や資産が一定以下であること。
これは依頼者本人だけでなく、配偶者の収入や資産を合計した金額になります(夫婦間での紛争の場合は合算しない)。
月収の条件は以下の通り。
単身者 | 2人家族 | 3人家族 | 4人家族 |
182,000円以下
(200,200円以下) |
251,000円以下
(276,100円以下) |
272,000円以下
(299,200円以下) |
299,000円以下
(328,900円以下) |
()内の金額は東京や大阪といった、大都市にお住いの方の基準となります。
5人家族以上の場合は1人につき33,300円を加算、医療費や教育費、家賃、住宅ローンなどを負担している場合には、限度額の範囲内で金額が加算されます。
次に資産の条件です。資産とは現金、預貯金、有価証券、不動産などの価値の合計を指します。
単身者 | 2人家族 | 3人家族 | 4人家族 |
180万円以下 | 250万円以下 | 270万円以下 | 300万円以下 |
医療費や教育費などの出費がある場合、応じた金額が控除されます。
月収と資産、両方が基準を下回っていることが民事法律扶助を利用するためのひとつ目の条件です。
自己破産の免責が見込まれること
ふたつ目の条件は、自己破産の免責が見込まれること。
法テラスのホームページには、勝訴の見込みがないとはいえないこと、と記載されています。
つまり、自己破産が認められる可能性があるのであれば民事法律扶助を利用できますが、その見込みが全くない場合、利用することができません。
民事法律扶助の趣旨に適していること
民事法律扶助の趣旨は収入や資産がない方でも、適切な法的支援を受けられるようにすること。
- 報復や嫌がらせを目的とした利用
- 宣伝などを目的とした利用
- 他人のための利用 など
この条件が問題となるケースはあまりありませんが、該当する場合には、民事法律扶助を利用できません。
破産者が個人であること
最後の条件は、依頼者が個人であることです。法人や団体は民事法律扶助を利用できません。
また、個人であっても、不法滞在をしている外国人や日本国内に住所のない者も同様です。
自己破産を依頼する際にかかる費用
次に、自己破産を依頼する際にかかる費用について、説明します。
通常の弁護士:40万円~
法テラスを介さずに、弁護士に依頼した場合、以下の費用がかかります。金額は弁護士事務所によって違うため、おおよその相場として捉えてください。
名目 | 内容 | 金額相場 |
相談料 | ・弁護士に相談するための費用
・初回無料の事務所も多い |
30分/5,000~1万円程度 |
着手金 | ・弁護士と契約するための費用
・破産できなかったり、途中でキャンセルしたりしても返金されない可能性が高い |
30~60万円程度 |
成功報酬 | ・自己破産が成功した際にかかる追加費用 | 0~30万円程度 |
自己破産の弁護士費用は、少なめに見積もっても40万円~と考えておきましょう。

法テラス:15万5,000円~21万円
法テラスを介して自己破産を依頼する場合、通常の半額に近い金額で依頼をすることが可能です。
法テラスの場合、債権者数(借入社数)によって弁護士費用が決まります。
債権者数 | 法テラスの自己破産費用 |
1~10社 | 実費23,000円、着手金132,000円 |
11~20社 | 実費23,000円、着手金154,000円 |
21社 | 実費23,000円、着手金187,000円 |
この通り、債権者数が21社以上の場合でも、21万円で自己破産を依頼することが可能です。
別途裁判所に払う費用
上記で説明したのは、弁護士に依頼するための費用です。別途、裁判所に納めなければいけない費用があります。
- 申立て手数料:1,000~2,000円程度
- 予納郵券:数千円程度(裁判所によって異なる※)
- 官報掲載料:1万~1万5千円程度
※東京地方裁判所の場合、予納郵券は4,950円です(2024年9月24日~)。
要注意なのは、依頼者が家や車など価値のある財産や、99万円以上の現金、口座内に20万円以上の現金などを所有している場合です。
このようなケースでは、自己破産が管財事件として扱われ、裁判所が選任した弁護士(破産管財人)が依頼者の財産を売却し、債権者に配当するなどの業務を行います。
管財事件の場合、破産管財人の報酬や、借金額に応じた予納金が発生します。
これらの費用は、法テラスの立て替えの対象外となっているため、自己負担しなければなりません。
法テラス利用のメリットデメリット
次に、法テラス利用のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
3回まで無料相談が可能
民事法律扶助の条件を満たしている場合、法テラスと契約している弁護士に、3回まで無料相談をすることができます。
これは、まだ自己破産すべきか、まだ悩んでいる状況でも利用可能です。
1回の相談に使える時間は30分ですが、事前に聞きたい内容をまとめておけば、時間が足りず困る、などの心配も少ないでしょう。
通常の半額近い費用で破産が可能
法テラスを介さずに、弁護士に自己破産を依頼した場合、少なく見積もっても40万円~の弁護士費用がかかります。
それが、民事法律扶助を利用すれば15万5,000円~21万円で依頼できます。
通常の半額近く、もしくはそれ以上の費用で依頼できるのは、法テラスの大きなメリットです。
肩代わり分は少しずつ分割払いできる
法テラスに立て替えてもらった弁護士費用は、分割で返還していくことになります。
原則3年以内での返還が求められますが、月々の費用は5,000~10,000円程度。
このように、少額で分割払いできるのも、法テラス利用のメリットでしょう。
生活保護者は費用の返済が免除される
生活保護受給者が、法テラスを利用して自己破産する際、破産手続き後も生活保護が継続していた場合は、立て替え費用(弁護士費用)の返済が免除されます。
また、裁判所に払う費用(予納金)の一部の返済も免除されるため、生活保護受給者にとっては利用しやすい設計となっています。
デメリット
通常より手続きに時間がかかる
法テラスを利用した場合、利用しない場合と比べて手続きに時間がかかります。
通常であれば、弁護士に依頼・契約をすれば速やかに手続きに移れる一方、法テラスの場合、審査に2週間~1か月ほどの期間を要するためです。
審査期間中も取り立てが止まない
法テラスの審査結果を待っている間も、債権者からの取り立てが止むことはありません。
通常、依頼を受けた弁護士が、債権者に対して受任通知を送付します。
受任通知とは、弁護士が債務整理の依頼を受け、依頼者の代理人となったことを通知する書面、のことを指します。
これを受け取った債権者は、破産者に対して取り立てをすることができなくなります(貸金業法第21条取り立て行為の規制)。
法テラスを利用する場合でも、審査を通過し、弁護士が破産手続きを開始すれば、債権者からの取り立てはストップします。
ですが、法テラス利用の場合はそれまでに時間がかかることを覚えておきましょう。
弁護士を自由に選べない
法テラスを利用した場合、依頼する弁護士を自由に選ぶことはできません。
法テラスと契約している弁護士を紹介してもらうことになります。
担当になった弁護士が、自己破産にあまり精通していない、依頼者と弁護士の性格が合わずストレスになる、などの事態が起こる可能性も否定できません。
ただし、法テラスと契約している弁護士の範囲内ですが、自分で弁護士を選ぶ方法もあります。
法テラスのホームページから、法テラスに登録している弁護士を探し、直接相談を申し込む方法です。
以下の流れで弁護士を探してみましょう。
- 法テラスのホームページにアクセス
- 相談をご希望の方へから地方事務所→お近くの法テラスをクリック
- 自分が住んでいる都道府県をクリック
- 関連ページの見出しから契約弁護士・司法書士名簿をクリック
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
裁判所への費用は肩代わりされない
民事法律扶助によって、自己破産に必要な弁護士費用は、法テラスに立て替えてもらうことができますが、裁判所に払う費用は対象外となります。
破産を申し立てる際、依頼者が20万円以上の財産を所有していた場合、管財事件として扱われます。
管財事件の場合、裁判所が選任した弁護士(破産管財人)が依頼者の財産を調査、売却し、債権者に配当します。
その際にかかる破産管財人への報酬や、裁判所に支払う予納金は自分で用意する必要があります。
これらの費用は分割払いができない可能性も高いため、何かしらの方法で用意する必要があるでしょう。
法テラスを利用した際の自己破産の流れ
法テラスを利用した際の、自己破産の流れをわかりやすく説明します。
まずは法テラスに無料相談を申し込む
まずは、公式HPに記載されているサポートダイヤルから法テラスに問い合わせをしましょう。
相談方法 | 連絡先 | 受付時間 |
電話 | 0570-078374 | 平日9:00~21:00
土曜9:00~17:00 |
メール | URLはこちら | 24時間 |
無料相談を希望する場合、最寄りの法テラスを紹介してもらえるため、紹介された法テラス事務所で、無料相談の申し込みを行います。
相談の希望日時だけでなく、借金額、借入件数、収入や資産、家族構成など基本的な情報を聞かれる可能性があるため、答えられるようにしておきましょう。
ここで、民事法律扶助の条件を満たしていることが確認できたら、弁護士への相談に進みます。
法テラスと契約している弁護士に借金を相談
予約した日時に法テラス事務所へ行き、弁護士に無料相談を行います。
ここで、法テラスと契約している弁護士が相談に乗ってくれます。
相談は1回30分、同じ問題について最大で3回まで相談することが可能です。
民事法律扶助に必要な書類を集め法テラスに提出
弁護士と相談し、民事法律扶助を利用して自己破産をすることが決まったら、法テラスの審査に必要な書類を集めることになります。
必要書類の例は以下となりますが、詳細は弁護士や法テラスに確認しましょう。
- 本人確認書類
- 収入を証明する書類
- 資産を証明する書類
- 建て替え費用を返還するために必要な口座に関する書類
- 自己破産に必要な書類 など
必要書類が揃ったら、法テラスに提出し、審査の結果が出るのを待ちます。
審査を通過すると法テラスが費用を肩代わりする
必要書類を提出したのち、法テラスが審査を行いますが、これには最大で1か月程度かかります。
審査を通過できれば、法テラスが弁護士費用を立て替えます。
弁護士が費用を受け取ることで、本格的に自己破産の手続きがスタート。
また、契約を交わした2か月後から立て替え金の返還(分割払い)が始まることも覚えておきましょう。
依頼した弁護士が自己破産に着手する
法テラスから費用を受け取った弁護士が、自己破産の業務に着手します。
ここからは、基本的に弁護士にお任せしておけば、心配はありません。
裁判所での面談などもありますが、弁護士が同席してくれます。
破産完了後、肩代わり分を法テラスに分割払いする
自己破産の手続きが完了し、免責が許可されれば、晴れて借金の返済が免除されます。
法テラスに関するよくある質問
法テラスに関するよくある質問を紹介します。
生活保護受給者は法テラスを使える?
生活保護受給者も、法テラスを利用して自己破産をすることが可能です。
通常、民事法律扶助を利用することで、立て替えてもらえるのは弁護士費用のみです。裁判所へ支払うお金(予納金)は含まれていません。
一方、生活保護受給者の場合、弁護士費用だけでなく、予納金も立て替えの対象となります。
さらに、自己破産後も生活保護を受給していた場合、20万円を上限として、予納金の返還も一部免除されます。
これらの理由で、現在生活保護を受給されている方は、法テラスを利用して自己破産をするのがおすすめです。
法テラスでの個人再生の費用は?
法テラスの民事法律扶助を利用した際の、個人再生の費用は以下となります。
下記のように債権者数(借入社数)によって金額が変化します。
債権者数 | 費用 |
1~10社 | 実費35,000円、着手金165,000円 |
11~20社 | 実費35,000円、着手金187,000円 |
21社 | 実費35,000円、着手金220,000円 |
このように、借入件数が21社以上の場合でも、255,000円で個人再生が可能です。
過払い金がある場合、別途報酬金がかかります。
まとめ
法テラスは、国が設置した法的トラブル解決の総合案内窓口です。
収入や財産が一定の基準を下回るなどの条件を満たしている場合、自己破産にかかる弁護士費用を、法テラスに立て替えてもらうことができます。
現状収入がなく、弁護士費用を捻出できない方や生活保護受給中の方などは、法テラスを利用して自己破産を行うべきでしょう。
今回の内容で重要だったポイントをまとめます。
- 一定の条件を満たせば法テラスの民事法律扶助を利用できる
- 民事法律扶助を利用すれば、自己破産に必要な弁護士費用を立て替えてもらえる
- 民事法律扶助を利用すれば、自己破産の弁護士費用は通常の半額近くまで安くなる
- 民事法律扶助で立て替えてもらった弁護士費用は、毎月5,000~10,000円ずつ分割で返還していく
- 弁護士費用は立て替えてもらえるが、裁判所に支払う費用などは立て替えてもらえない
法テラスでの民事法律扶助を利用した自己破産が認められなかった場合、改めて一般の弁護士に相談をしましょう。
多くの弁護士事務所は、依頼者にまとまった費用がないことを想定し、費用の分割払いに対応しています。
自己破産手続きが得意な弁護士に相談をすれば、依頼者にとって損となることはないはずです。