個人再生の開始決定とは?要件や注意点を解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

個人再生の開始決定とは?要件や注意点を解説

個人再生は、裁判所に再生計画を認可してもらい、借金を概ね5分の1に減額する手続きです。再生計画を認可してもらう前に、個人再生の手続きを開始してもらわなければなりません。

この記事では、個人再生における開始決定について、以下のとおり解説します。

  • 個人再生における開始決定とは?
  • 個人再生の申立てから開始決定までの期間は?遅い?早い?
  • 個人再生の開始決定通知とは?
  • 個人再生の開始決定後も通帳の提出が必要となる理由とは?
  • 個人再生の開始決定後に注意すべき点とは?

個人再生の申立てを検討中の方は、ぜひご参考になさってください。

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個人再生における開始決定とは?

個人再生の申立後、裁判所が要件を満たしていると判断した場合、再生手続きが開始されます。このときの裁判所の決定を、再生手続開始決定といいます。

ここでは、個人再生における手続開始の要件について解説します。

個人再生には、次の2つの手続きがあります。

  • 小規模個人再生
  • 給与所得者等再生

それぞれの手続きには、共通する開始要件と固有の開始要件がありますが、ここでは、手続きごとに詳しく解説します。

小規模個人再生の開始要件

小規模個人再生の開始要件は、以下のとおりです。

  • 個人であること
  • 小規模個人再生を行うことを求める旨を申述したこと
  • 債務者に破産の原因たる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること
  • 将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること
  • 再生債権の総額が5,000万円以下であること
  • 通常の民事再生手続きの法定棄却事由がないこと

ひとつずつ説明します。

個人であること

個人再生は、個人(個人事業主を含む)を対象とした手続きであるため、法人は利用できません。小規模個人再生は、個人事業主でも給与所得者でも利用できます。

小規模個人再生を行うことを求める旨を申述したこと

小規模個人再生を申立てる際には、再生手続開始の申立てにおいて、小規模個人再生を行うことを求める旨を申述しなければなりません。

具体的には、申立書にその旨を記述し、債権者一覧表を提出します。

債務者に破産の原因たる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること

自然人の場合

破産の原因たる事実(支払不能)の生じるおそれがあることが必要です。必ずしも現実に支払不能の状態である必要はありません。

支払不能とは、支払能力を欠き、支払期日が来た債務を弁済できない状況が継続することです。

個人事業主の場合

申立人が個人事業主の場合は、上記に加え、事業の継続に著しい支障をきたすことなく、弁済期にある債務の弁済ができないことが必要です。

例えば、事業用資産を売却して換価すれば返済ができても、売却すると事業が継続できないケースなどが想定できます。

将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること

自営や雇用により、将来(先3~5年間)収入を継続して得られる見込みがあることが必要です。収入源に制限はないため、継続的に安定収入が得られれば年金受給者でも申立てできます。

再生債権の総額が5,000万円以下であること

借金の総額から住宅ローンや担保物件の売却益を差し引いた金額が5,000万円を超えないことが必要です。

通常の民事再生手続きの法定棄却事由がないこと

個人再生は、通常の民事再生手続きの特則であるため、民事再生手続きの法的棄却事由がないことが必要です。

以下の申立棄却事由に一つでも該当するものがあれば、再生手続きは開始されません。

  • 再生手続きの費用の予納がないとき
  • 再生計画の作成、可決、または再生計画認可の見込みがないことが明らかなとき
  • 破産手続きが係属し、その手続きによることが債権者の一般の利益に適合するとき
  • 不当な目的で申立てがなされたとき
  • 申立てが誠実になされたものでないとき

給与所得者等再生の開始要件

給与所得者等再生の開始要件は、以下のとおりです。

  • 個人であること
  • 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述をしたこと
  • 債務者に破産の原因たる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること
  • 将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること
  • 給与等の定期的な収入があり、かつ、その収入の変動幅が小さいと見込まれること
  • 再生債権の総額が5,000万円以下であること
  • 通常の民事再生手続きの法定棄却事由がないこと
  • 過去7年間に免責又は再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

ひとつずつ説明します。

個人であること

給与所得者等再生は、会社員や公務員などの給与所得者を対象とする手続きです。個人事業主は利用できません。

給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述をしたこと

給与所得者等再生を申立てる際には、再生手続開始の申立てにおいて、給与所得者等再生を行うことを求める旨を申述しなければなりません。具体的には、申立書にその旨を記述します。

申述の際は、給与所得者等再生の要件を満たさない場合に備え、以下の意思も明らかにしておかなければなりません。

  • 通常の民事再生に切り替えてもらうことを求めるか否か
  • 小規模個人再生に切り替えてもらうことを求めるか否か

債務者に破産の原因たる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること

破産の原因たる事実(支払不能)の生じるおそれがあることが必要です。必ずしも現実に支払不能の状態である必要はありません。

支払不能とは、支払能力を欠き、支払期日が来た債務を弁済できない状況が継続することです。

将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること

雇用により、将来(先3~5年間)収入を継続して得られる見込みがあることが必要です。

給与等の定期的な収入があり、かつ、その収入の変動幅が小さいと見込まれること

給与所得者等再生の手続きが開始されるためには、会社員や公務員など毎月の給料が予測できる人で、過去2年間の年収に20%以上の変動がないこと必要です。

歩合給やパート・アルバイトでも、年収でみて変動幅が小さければ要件を満たします。

再生債権の総額が5,000万円以下であること

借金の総額から住宅ローンや担保物件の売却益を差し引いた金額が5,000万円を超えないことが必要です。

通常の民事再生手続きの法定棄却事由がないこと

個人再生は、通常の民事再生手続きの特則であるため、民事再生手続きの法的棄却事由がないことが必要です。

以下の申立棄却事由に一つでも該当するものがあれば、再生手続きは開始されません。

  • 再生手続きの費用の予納がないとき
  • 再生計画の作成、可決、または再生計画認可の見込みがないことが明らかなとき
  • 破産手続きが係属し、その手続きによることが債権者の一般の利益に適合するとき
  • 不当な目的で申立てがなされたとき
  • 申立てが誠実になされたものでないとき

過去7年間に免責又は再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

給与所得者等再生は、債権者の意向に左右されず借金の減額等が認められる手続きです。

そのため、債権者保護の観点から、以下の期間の再申立てが制限されています。

  • 給与所得者等再生で再生計画が完遂された場合:当該再生計画認可決定確定日から7年
  • ハードシップ免責が確定した場合:当該免責決定にかかる再生計画認可決定日から7年
  • 破産免責の決定が確定した場合:当該免責決定確定日から7年
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個人再生における再生手続開始決定の効果

ここでは、個人再生における再生手続開始決定の効果について解説します。

再生手続開始決定の効果には、主に以下のものがあります。

  • 再生債権の弁済の禁止
  • 他の手続きの中止等

ひとつずつ説明します。

再生債権の弁済の禁止

再生手続開始決定が出ると、再生債務者は、原則として再生債権者に対する弁済を禁止されます。

他の手続きの中止等

再生手続開始決定が出ると、次のような法的効果が生じます。

  • 再生債権者は再生債務者に対する新たな強制執行等ができなくなる
  • 再生債務者の財産に対してすでにされている強制執行等が中止される
  • 再生債務者について破産を申立てられなくなる
  • 再生債務者についてすでにされている破産手続きが中止される

中止された手続きは、再生手続認可決定の確定により効力を失います。

個人再生の申立てから開始決定までの期間は?遅い?早い?

ここでは、個人再生の申立てから開始決定までの期間について解説します。

申立てから開始決定までの期間は概ね1ヶ月

個人再生の申立てから開始決定までの期間は概ね1ヶ月です。

申立てから開始決定までの流れ

申立てから開始決定までの流れは、以下のとおりです。

  • 個人再生の申立て
  • 個人再生委員の選任・手続開始に関する意見書の提出
  • 個人再生手続開始決定

ひとつずつ説明します。

個人再生の申立て

住所地を管轄する裁判所に個人再生申立書類を提出します。住宅資金特別条項を利用する場合は、申立てと同時に住宅ローンの弁済許可申立てを行います。

個人再生委員の選任・手続開始に関する意見書の提出

裁判所の運用によって異なりますが、申立時に裁判所が必要と認めた場合は、個人再生委員が選任されることがあります。

東京地方裁判所の運用では、原則すべての事件で個人再生委員が選任され、開始決定の前に個人再生委員との面接が行われます。面談後、個人再生委員は、裁判所に手続開始に関する意見書を提出します。

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個人再生手続開始決定

裁判所は申立書類を審査し、その内容に問題がなければ、再生手続開始決定を出します。

個人再生委員が選任されている場合は、個人再生委員の意見を聞いた上で決定します。

裁判所は、再生手続開始決定と同時に、再生債権届出期間と異議申述期間を定めます。

個人再生の開始決定通知とは?

ここでは、個人再生における開始決定通知について解説します。

知れたる債権者への再生手続開始決定の送達

裁判所は、再生手続開始決定を出した場合に、その旨を公告するとともに、再生債務者および知れたる再生債権者に書面で知らせます。この書面を開始決定通知(書)といいます。

開始決定通知書に記載される内容

開始決定通知書には、以下の事項が記載されます。

  • 再生債務者の氏名、生年月日、住所
  • 決定の日時
  • 決定の主文
  • 再生届出期間
  • 一般異議申述期間
  • 再生計画案の提出期限
  • 個人再生委員の住所、氏名(個人再生委員が選任される場合)

小規模個人再生と給与所得者等再生の通知書の例を確認しましょう。

小規模個人再生の通知書例

小規模個人再生の開始決定通知書例は以下のとおりです。

事件番号:令和〇〇年(再イ)第〇〇〇号 小規模個人再生事件

通知書

再生債権者各位

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所〇〇支部

裁判所書記官 〇 〇 〇 〇  印

 

頭書事件について、再生手続開始の決定があったので下記の事項を通知します。なお、再生債務者提出の債権者一覧表は別添のとおりです。

再生債務者の表示

氏  名  〇 〇 〇 〇

生年月日  昭和〇〇年〇月〇日

住  所  〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号

決定の日   令和〇年〇月〇日〇〇時〇〇分

決定の主文   再生債務者〇〇〇〇について小規模個人再生による再生手

続を開始する。

債権届出期間   上記決定の日から令和〇年〇月〇日まで

一般異議申述期間   令和〇年〇月〇日から同年〇月〇日まで

再生計画案の提出期限   令和〇年〇月〇日まで

個人再生委員   〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号 弁護士〇〇〇〇

【債権届出の状況や再生債務者の財産状況の開示について】

民事再生規則(124条、129条)で再生債務者による備置きが定められている債権届出の状況や再生債務者の財産状況に関する書面は、裁判所で事件記録に閲覧できるほか、下記に照会することもできます。

〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号

〇〇法律事務所(再生債務者代理人 弁護士 〇〇〇〇)

電話番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 FAX〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

通知書の記載は、各裁判所によって異なることがあります。

給与所得者等再生の通知書例

給与所得者等再生の開始決定通知書例は以下のとおりです。

事件番号:令和〇〇年(再ロ)第〇〇〇号 給与所得者等再生事件

通知書

再生債権者各位

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所〇〇支部

裁判所書記官 〇 〇 〇 〇  印

 

頭書事件について、再生手続開始の決定があったので下記の事項を通知します。なお、再生債務者提出の債権者一覧表は別添のとおりです。

再生債務者の表示

氏  名  〇 〇 〇 〇

生年月日  昭和〇〇年〇月〇日

住  所  〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号

決定の日   令和〇年〇月〇日〇〇時〇〇分

決定の主文   再生債務者〇〇〇〇について給与所得者等再生による再生

手続を開始する。

債権届出期間   上記決定の日から令和〇年〇月〇日まで

一般異議申述期間   令和〇年〇月〇日から同年〇月〇日まで

再生計画案の提出期限   令和〇年〇月〇日まで

個人再生委員   〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号 弁護士〇〇〇〇

【債権届出の状況や再生債務者の財産状況の開示について】

民事再生規則(124条、129条)で再生債務者による備置きが定められている債権届出の状況や再生債務者の財産状況に関する書面は、裁判所で事件記録に閲覧できるほか、下記に照会することもできます。

〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号

〇〇法律事務所(再生債務者代理人 弁護士 〇〇〇〇)

電話番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 FAX〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

通知書の記載は、各裁判所によって異なることがあります。

個人再生の開始決定後も通帳の提出が必要となる理由とは?

個人再生の申立時には、過去1〜2年分通帳のコピーを裁判所に提出します。開始決定がなされれば、通帳の追加提出が必要になることは通常ありませんが、申立後も提出を求められることがあります。

ここでは、開始決定後も通帳の提出が必要となる理由について解説します。

履行テスト中の家計状況の確認

東京地方裁判所などの一部の裁判所では、計画通りの返済が可能かどうかを判断するため、返済予定額を積み立てるテスト(履行テスト)が行われます。この履行テスト期間中に通帳の提出を求められることがあります。

履行テスト中に遅滞等の問題が生じたときに、その原因が不測の事態による出費か、浪費などによる失敗かなどを判断するために通帳が確認されます。

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個人再生の開始決定後に注意すべき点とは?

ここでは、個人再生の開始決定後に注意すべき点を解説します。

新たな借金をしない

再生手続開始決定後に新たな借金をした場合、その借金は個人再生による減額の対象となりません。新たな借金をして負債を増やすなどの不誠実な行為により、再生計画が不認可となるおそれがあります。

ギャンブルや浪費をしない

個人再生の申立てを決断した時点で、ギャンブルや浪費はやめましょう。

ギャンブルや浪費をすると、裁判所や個人再生委員に更生の意欲がないと判断され、再生計画が不認可となる可能性があります。

偏頗弁済をしない

偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、友人から借りたお金を優先的に返済するなど、特定の債権者のみに優先して返済する行為です。

個人再生では、全ての債権者を平等に扱わなければならないので、偏頗弁済は禁止されています。

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裁判所や申立代理人の指示を無視しない

個人再生では、裁判所や個人再生委員、申立代理人から様々な指示を受けることがあります。

それらの指示に従わない場合、再生手続きが打ち切られる可能性があります。

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まとめ

個人再生で開始決定を受けるためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

再生手続開始決定により、個人再生の手続きが開始されるとともに、様々な法律上の効力も発生します。法律や手続きを正しく理解していなければ、個人再生に失敗してしまう可能性があります。

個人再生を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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