仮差し押さえとは?債務者のリスク・仮差し押さえを止める方法も解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

仮差し押さえとは?債務者のリスク・仮差し押さえを止める方法も解説

借金を滞納すると、仮差し押さえを受ける可能性があります。

差し押さえはよく耳にする言葉ですが、仮差し押さえとはどういった手続きなのでしょうか?

この記事では、仮差し押さえについて、次のとおり詳しく解説します。

  • 仮差し押さえされたらどうなる?仮差し押さえのリスク
  • 仮差し押さえとは?
  • 仮差し押さえの効果
  • 仮差し押さえと仮処分の違いは?
  • 仮差し押さえと差し押さえの違いは?
  • 仮差し押さえ手続きの流れ
  • 仮差し押さえを止める方法|取下げ・解除

借金滞納でお困りの方は、ぜひご参考になさってください。

寺垣弁護士
寺垣弁護士
借金問題で仮差押えをされることはあまりありませんが、もしされてしまうと生活費に困ることもあるかもしれません。

仮差押えが不安な方な方は一度ご相談ください。

仮差し押さえされたらどうなる?仮差し押さえのリスク

仮差し押さえされたらどうなるのでしょうか?

ここでは、仮差し押さえによって債務者に生じるリスクについて解説します。

財産を自由に処分できなくなる

仮差し押さえされると、その財産を自由に処分できなくなります。

仮差し押さえは、将来の強制執行を可能にするために、債務者が現状を変更できないように財産を保全する手続きだからです。

周囲の人に借金がバレる可能性がある

例えば、給与が仮差し押さえされると、裁判所から勤務先に仮差押決定正本が届きます。そのため、借金はもちろん、仮差し押さえされたことが勤務先にバレます。

債務者にも裁判所から仮差押決定正本が送付されます。裁判所からの郵便物で家族に借金の存在や仮差し押さえを受けた事実がバレる可能性があります。

仮差し押さえとは?

仮差し押さえとは、債権者がお金を回収するにあたり、判決等が出るまでの間、債務者の財産を仮に差し押さえる手続きです。

債権者は、裁判手続きで債務名義(判決や支払督促など)を得て、それに基づく強制執行により債権を回収できます。しかし、裁判手続きには時間がかかる場合があります。その間に、債務者が財産を隠したり、処分してしまったりすると、お金を回収できなくなります。仮差し押さえすれば、債務者は自由に財産を処分できなくなるので、債権者にとって債権の回収率をあげるために有効です。

ここでは、仮差し押さえの要件や方法を解説します。

仮差し押さえの要件

債権者が仮差し押さえするには、次の要件を満たす必要があります。

  • 被保全権利の存在
  • 保全の必要性

ひとつずつ説明します。

被保全権利の存在

被保全権利とは、仮差し押さえにより保全される権利です。債権者は、被保全権利が存在することを裁判所に疎明しなければなりません。

疎明とは、即時に取り調べられる証拠によって、一応確からしい心証を裁判官に与えることです。一般的には、契約書や借用書などの客観的な証拠によって明らかにします。

保全の必要性

裁判を起こす前に仮差し押さえによって権利を保全する必要性がなくてはなりません。

仮差し押さえによる保全の必要性は、主に次の場合に認められます。

  • 差し押さえるべき財産を放置すると強制執行ができなくなるおそれがあること
  • 強制執行をするのに著しい困難を生じるおそれがあること

仮差し押さえの方法

仮差し押さえには、主に次の3つの方法があります。

  • 不動産の仮差し押さえ
  • 動産の仮差し押さえ
  • 債権の仮差し押さえ

ひとつずつ説明します。

不動産の仮差し押さえ

不動産の仮差し押さえは、債務者が所有する不動産に対して、仮差押命令に基づき仮差押登記がなされます。

動産の仮差し押さえ

動産の差し押さえは、執行官に動産仮差押執行を申立てると、執行官が現場に行き債務者の動産を仮差し押さえます。

債権の仮差し押さえ

債権の仮差し押さえは、債務者が第三者(第三債務者といいます)に対して有する債権を仮差し押さえます。銀行口座や給与を対象とするのが一般的です。

仮差し押さえの効果

仮差し押さえをされると、債務者の財産はどうなるのでしょうか。

ここでは、仮差し押さえの効果を解説します。

不動産の仮差し押さえ

仮差押の登記がなされると、たとえ債務者がその不動産を処分しても、債権者は勝訴判決等の債務名義に基づき、将来その不動産の強制競売手続きができます。

実際には、仮差押登記がなされた不動産は、将来差し押さえられる可能性があるため、買い手がつかず、債務者が処分できないのが通常です。

動産の仮差し押さえ

執行官による仮差し押さえの執行を受けると、債務者はその動産を処分できなくなります。後日勝訴判決等を得た債権者によって、動産執行が可能です。

債権の仮差し押さえ

債権の仮差し押さえによって、仮差押決定正本が第三債務者に送達されると、第三債務者はその債権を債務者に支払うことができなくなります。後日、債務名義に基づく債権執行が可能になります。

銀行口座の仮差し押さえ

銀行口座を仮差し押さえされると、債務者の口座から一定額が引き出されて別の口座(管理口座)に移されます。よって、債務者は預金を引き出せなくなります。

後日、債権者が勝訴判決等を得れば、預金は差し押さえられます。

給与仮差し押さえ

給与が仮差し押さえされると、手取給与の4分の1を受け取れなくなります。手取給与の4分の3が33万円を超える場合は、超えた部分の金額が受け取れなくなります。

仮差し押さえ手続きの流れ

ここでは、仮差し押さえ手続きの流れを解説します。

仮差し押さえの申立て

仮差し押さえは、次のいずれかの裁判所に申立てます。

  • 本案の管轄裁判所
  • 仮差し押さえする物の所在地を管轄する裁判所

仮差し押さえでは、債権者は担保を立てなければなりません。事前に担保をどのような方法で立てるか、金額をいくら準備できるかを確認します。

裁判官面接及び担保決定

裁判所によって異なりますが、通常、裁判官面接が行われます。面接では、疎明資料の原本を提示したり、申立てに至った事情を説明したりして、担保の額と方法・提供期間を決定します。

裁判官面接がない裁判所では、電話等で担保額を決定することもあります。

担保の提供

担保の提供には、次の2つの方法があります。

  • 供託による担保
  • 支払い保証委託契約(ボンド)による担保

ひとつずつ説明します。

供託による担保

担保を供託で立てる場合は、原則として仮差し押さえを申立てた裁判所の所在地を管轄する供託所に、金銭または有価証券により供託します。

支払保証委託契約(ボンド)による担保

支払保証委託契約とは、債務者に対し損害賠償の必要が生じた場合に備え、債権者の代わりに、支払保証先の銀行等がその支払いをするよう、あらかじめ締結する契約です。通常は、担保と同額の定期預金を積み、それに質権を設定します。

仮差押決定の発令

担保の提供が終わり、債権者が立担保の証明書や目録等を提出すると、裁判所が仮差押決定を出します。

仮差押決定の送達

仮差押決定正本は、通常、その日のうちに債権者に交付されます。債権の仮差し押さえの場合は、第三債務者へも送達されます。

債務者には、決定発令日の翌日から起算して概ね1週間後に決定正本が送達されます。債務者への送達が遅い理由は、債務者による財産の処分を防ぐためです。

つまり、債務者は仮差し押さえを事前に知ることができません。

第三債務者からの陳述

債権の仮差し押さえを申立てる場合は、同時に第三債務者に対する陳述催告の申立てを行います。陳述催告の申立てとは、仮差押債権の存否等を第三債務者に確認するための手続きです。

仮差押決定正本を受領した第三債務者は、裁判所に対し、仮差押債権の存否等を報告(陳述)します。

仮差し押さえを止める方法|取下げ・解除

仮差し押さえを取り下げてもらうにはどうしたらよいでしょうか。

ここでは、仮差し押さえを止める方法を紹介します。

裁判所に保全異議を申立てて取り消しを求める

返済すべき借金がない場合や、請求額に異議がある場合は、裁判所に保全異議を申立てられます。

保全異議を申立てると、通常は裁判に移行して審理されます。解決までに時間がかかることも多く、すぐに取り消しが認められるわけではありません。

解放金を払って取り下げてもらう

仮差し押さえを解放してもらうため、解放金を支払う(供託する)方法があります。

たとえば不動産を仮差し押さえられた場合、裁判所が決定した解放金を払うことで、仮差押登記を抹消してもらえます。預金口座を仮差し押さえされた場合は、解放金を払うことで口座が使えるようになります。

一時的に現金が必要ですが、その後の裁判で支払義務がないことが認められれば、解放金は返還されます。

債権者と交渉する

債権者と交渉をして、仮差し押さえを取り下げてもらいます。

一括返済が難しくても、分割返済の合意が得られれば、仮差し押さえを取下げてもらえることがあります。

具体的な支払い方法や時期が提示できなければ、交渉で仮差し押さえを取り下げてもらうのは困難です。そもそも交渉に応じてもらえないこともあります。

裁判所に起訴命令を申し立てる

債権者が本案訴訟を提起しない場合は、裁判所に起訴命令を申立てます。債権者が本案訴訟を提起しなければ、債務者は長期にわたり不当に財産の処分に制限を課せられるからです。

起訴命令の申立後、概ね1ヶ月以内に債権者が本案訴訟を提起しなければ、保全命令の取り消しの申立てにより、仮差し押さえられた財産を取り戻せます。

仮差し押さえと仮処分の違いは?

仮差し押さえと仮処分は、いずれも民事保全の手続きです。では、どのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、仮差し押さえと仮処分の違いについて解説します。

仮差し押さえと仮処分の違い

仮差し押さえは、金銭債権による将来の強制執行を保全するために、債務者の財産を仮に差し押さえることを目的とする手続きです。

仮処分は、裁判で争いの目的となっている物(係争物)や、法律上の地位(仮の地位)を保全するために、その維持・実現を目的としてなされる保全手続きです。

仮処分の要件

仮処分の要件は、次のとおり仮差し押さえの要件と同じです。

  • 被保全権利があること
  • 保全の必要性があること

仮処分の方法

仮処分には、大きく分けて次の2種類があります。

  • 係争物に関する仮処分
  • 仮の地位を定める仮処分

ひとつずつ説明します。

係争物に関する仮処分

係争物に関する処分は、特定の物に関する給付請求権の強制執行を保全するために、目的物の現状を維持する処分です。

例えば、不法占有者に対して不動産の明渡しを求める裁判をしている間に、その目的不動産の占有者が変わってしまうと、強制執行ができなくなる可能性があります。不法占有者が別の第三者を入居させることを防ぐため、占有移転禁止の仮処分をする場合などが代表的な例です。

仮の地位を定める仮処分

仮の地位を定める仮処分とは、争いのある権利関係について、裁判で解決に至るまでの間の暫定的な措置を求め、これを維持・実現することを目的としてなされる処分です。

仮の地位を定める仮処分の主な例は次のとおりです。

  • 解雇された労働者が雇用契約上の権利を有することを求める地位保全仮処分
  • 労働者が未払賃金を求める場合の金員仮払い仮処分
  • 日照等の生活上の権利を害する建物の建築の差し止めを求める建築工事禁止の仮処分

仮処分の効果

仮処分には、どのような効果があるのでしょうか?具体例を挙げて説明します。

係争物に関する仮処分

占有移転禁止の仮処分を行えば、仮処分命令に反し占有者が変わっても、債務名義の効力は、変更後の占有者にもおよぶため、債権者は強制執行できます。

仮の地位を定める仮処分

解雇された労働者が裁判で解雇無効を争うときに、従地位保全の仮処分を行えば、会社から賃金を受け取りながら裁判を続けられます。

仮差し押さえと差し押さえの違いは?

仮差し押さえと差し押さえは、どのような違いがあるのでしょうか?

いずれも財産の処分を禁止する点で共通しますが、仮差し押さえは、強制執行されるまでの暫定的な手続きです。そのため、結果的に存在しない権利に基づき財産を制限したことで、債務者に損害を与えてしまう可能性があります。したがって、仮差し押さえでは担保金を提供しなければなりません。

差し押さえは、債権回収を実現するための手続きです。

ここでは、差し押さえの概要を解説します。

差し押さえの要件

差し押さえは、執行力ある債務名義の正本に基づく申立てが必要です。

債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在と内容を示した公的な文書です。

債務名義の主な例は次のとおりです。

  • 判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 公正証書

このほか、差し押さえ(強制執行)の開始又はその続行には次の要件が必要です。

  • 請求債権が存在すること
  • 債務名義等の正本または謄本が債務者に送達されていること
  • 請求債権の弁済期が到来していること
  • 担保の提供が必要なときに担保が提供されていること
  • 反対給付と引き換えにすべき場合、債権者が反対給付またはその提供をしたこと
  • 請求が代償請求の場合には、主たる請求の執行が不能に帰したこと

差し押さえの方法

差し押さえ(強制執行)には、大きく分けて次の2つの方法があります。

  • 金銭執行
  • 非金銭執行

ひとつずつ説明します。

金銭執行

金銭執行は、実現されるべき請求権が金銭の支払いを目的とする強制執行です。

金銭執行には、次の種類があります。

  • 不動産執行
  • 船舶・航空機・自動車・建設機械等執行
  • 動産執行
  • 債権その他財産権に関する執行

非金銭執行

非金銭執行は、物の明渡しや引渡しを目的とする執行と、債務者の作為・不作為を目的とする執行に分けられます。

非金銭執行には、次の種類があります。

  • 物の引渡し・不動産明渡し等の執行
  • 代替執行
  • 間接強制
  • 意思表示の擬制

差し押さえの効果

差し押さえ(強制執行)は、債権者の権利を強制的に実現する手続きです。差し押さえによって、債務者は自己の財産を自由に処分できなくなります。

債権者は、差し押さえた財産について取り立てたり、換価処分等を行ったりして、債権を回収します。

まとめ

仮差し押さえは、債権者が債権回収のために動き出した合図です。仮差し押さえへの対応が分からず放置していると、最終的に財産が差し押さえられます。

借金の滞納が続いている場合には、仮差し押さえをされる前になるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

相談無料。取立てストップ。借金問題は弁護士の力で解決・減額できます! お困りの方は今すぐご連絡ください。

0120-949-229
メール相談フォームはこちら