管財事件とは?流れ・費用・ならないためのポイントを解説
管財事件(かんざいじけん)とは、破産管財人が選任される自己破産手続きのことです。破産管財人は、破産者と債権者の間に入り、財産の調査・管理・処分・債権者への配当・免責不許可事由の調査・裁量免責の可否に関する意見をします。裁判所に選任された弁護士が破産管財人になります。
この記事では、管財事件の全体像を解説します。
- 管財事件とは
- 管財事件の流れとかかる期間
- 管財事件になるケース
- 裁判所の選択基準
- 管財事件で債務者にかかる制限
- 管財事件にならないためのポイント
目次
管財事件とは
管財事件の特徴を解説します。
自己破産手続きの種類の1つ
自己破産手続きは、以下の3つの種類があります。
- 管財事件
- 少額管財事件
- 同時廃止事件
管財事件では、裁判所により破産管財人が指定されます。
破産管財人は、債務者の財産の調査・管理・処分を行い、自己破産が妥当か判断します。
少額管財事件との違い
管財事件と少額管財事件の違いは以下のとおりです。
管財事件 | 少額管財事件 | |
費用 | ・裁判所費用:50万円~
・弁護士費用:30万円~100万円 |
・裁判所費用:20万円~
・弁護士費用:30万円~60万円 |
かかる期間 |
6ヶ月から1年 |
1年前後
(債務者の所有している財産・資産によっては1年以上期間がかかる可能性あり) |
特徴 | ・管財事件より費用・期間がかからない | ・高額の費用が必要になるケースも
・手続きが長引く場合もある |
同時廃止事件との違い
管財事件と同時廃止事件の違いは以下の通りです。
管財事件 | 同時廃止 | |
費用 | ・裁判所費用:50万円~
・弁護士費用:30万円~100万円 |
・弁護士費用:30万円~60万円 |
期間 | 6ヶ月から1年 | 3ヶ月から半年 |
特徴 | ・高額の費用が必要になるケースがある
・1年以上の期間が必要になるケースがある |
・手続き開始と同時に破産手続きは廃止
・期間も管財事件と比較すると短い |
管財事件の流れと解決までの期間
管財事件が終結するまでの期間は6ヶ月〜1年以上です。
管財事件で、弁護士に依頼してから破産手続きが終了するまでの流れは、以下の通りです。
- 申し立ての準備
- 破産手続き開始
- 免責の申し立て
- 審理
- 破産手続開始決定
- 管財人の選任
- 債権者集会
- 債権確定
- 破産財団による債務者の財産の管理・処分
- 債権者への換価した財産の配当
- 破産終結決定
自己破産の流れと必要書類については、以下の記事で詳しくご説明しています。
管財事件に必要な費用
管財事件では、弁護士費用のほかに裁判所に納める予納金が必要です。
予納金とは、裁判所に指定される破産管財人の報酬であり、抱えている負債額によって金額が変わります。管轄裁判所によって若干の費用差はありますが、東京地裁民事第20部における予納金の額は以下のとおりです。
負債総額 (単位:円 ) | 法人 | 自然人 |
5000万円未満 | 70万円 | 50万円 |
5000万〜1億円未満 | 100万円 | 80万円 |
1億〜5億円未満 | 200万円 | 150万円 |
5億〜10億円未満 | 300万円 | 250万円 |
10億〜50億円未満 | 400万円 | |
50億〜100億円未満 | 500万円 | |
100億円以上 | 700万円以上 |
裁判所が管財事件と同時廃止事件を選択する基準
裁判所が管財事件と同時廃止事件を選択する基準について以下で解説します。
免責不許可事由がある場合
裁判所の実務では、免責不許可事由がある、もしくは免責不許可事由がないことが不明な場合、管財事件への振り分けを行っています。
これは裁量免責を認めるかどうか破産管財人に判断させるためです。
免責不許可事由がなく、破産手続き費用を支払う財産がないことが明らかな場合、同時廃止事件へ振り分けられます。
現金が33万円を超えている、財産が20万円を超えている場合
現金が33万円を超えている、もしくは財産が20万円を超えている場合、自己破産は管財事件に振り分けられます。
現金以外の財産の具体例は、以下のものが該当します。
- 貸付金
- 退職金
- 持ち家
- 車
- 保険の解約返戻金
個人事業主、法人代表者の場合
個人事業主・法人代表者の場合、自己破産は原則管財事件へ振り分けられます。
なぜなら個人事業主・法人代表者は、個人で所有している財産や資産の他にも、売掛金や買掛金なども多いためです。
利害関係のある債権者の数や調査しなければならない財産が多いため、破産管財人を選定し財産の調査・管理・処分・分配を行う必要があります。
ただし、自営業者で生活実態がほとんど個人と変わらない場合、同時廃止事件に振り分けられるケースもあります。
管財事件で債務者にかかる制限
ここでは管財事件で債務者にかかる制限について解説します。
破産管財人が財産を処分・管理する
自己破産が管財事件に振り分けられると、債務者が有している財産の管理処分権は破産管財人へと移行します。
手続き後は破産管財人しか財産の管理処分ができなくなるため、債務者は自分が所有している財産・資産を勝手に売却はできません。
車などどうしても必要な財産がある場合、破産管財人に自由財産拡張の申し立てを行い認められると、管理処分権が債務者に戻り自由に利用できます。
居住地の制限
管財事件に振り分けられた後は、手続きが終了するまでの間、裁判所の許可なく引っ越すことは禁じられています。
事前に裁判所の許可を得れば、自己破産手続き期間中でも引っ越しが可能です。
郵便の制限
自己破産が管財事件に振り分けられると、債務者宛の郵便物は破産管財人へ転送されます。
この郵便物の制限は、破産管財人が郵便物を先に確認して、申告していない財産や債権者はないか、破産手続き上問題となるやり取りはしていないか確認するためです。
郵便物の制限は、破産手続きが終わるまで継続します。
ただし、公共料金の支払いや携帯電話・通信費用など、速やかに確認する必要がある郵便物は、破産管財人と個別に相談して直接受け取れます。
一定の職業・資格の制限
自己破産手続き期間中は、一部の職業・資格に制限がかかります。
該当する職業・資格に関連する仕事をしている場合、手続き期間中の間は働けません。制限がかかる職業・資格は以下のとおりです。
- 士業(弁護士や公認会計士、税理士など)
- 役員・取締役(日本銀行の役員など)
- 金融関係(貸金業社、生命保険募集人など)
- 公務員(国家公安委員会の委員など)
- その他の職業(警備業、探偵業、酒類の製造免許など)
職業・資格の制限は、手続きが終了するとなくなるので、再び同じ仕事に戻れます。
管財事件にならないためのポイント
自己破産が管財事件にならないためのポイントを解説します。
ギャンブルなどの浪費が借金の原因ではない
ギャンブルなどの浪費が借金の場合、自己破産は管財事件に振り分けられます。
しかし、適切な方法で申し立てることで、ギャンブルなどの浪費が原因の借金でも裁判所に同時廃止事件と認めてもらえます。
ポイントは以下のとおりです。
- 裁判所に対して真摯な説明を行う
- 生活態度の改善をする
- 節約などで家計収支の改善を図る
- 不正行為・虚偽の申告はしない
浪費が原因の借金でも、現在は更生して自分の収入の範囲内で堅実に生活している姿勢をアピールできれば、裁判所に同時廃止事件へ振り分けてもらえる可能性が高まります。
偏頗弁済していない
偏頗弁済は主に以下のケースが該当します。
- 知人や家族、親族への返済
- 車のローン会社への返済
- 日頃お世話になっている取引先への返済
上記ケースは、自己破産を申し立てる人が偏頗弁済とは気づかずにやりがちな行為です。
偏頗弁済をすると管財事件へ振り分けられてしまい、時間・費用が余分にかかります。自己破産手続き中の返済は、偏頗弁済に該当しないか必ず確認しましょう。
弁護士に依頼する
費用を節約するために、個人で自己破産手続きを行う人もいますがあまりおすすめできません。
個人で手続きを進めた場合、裁判所は管財事件に振り分けます。同時廃止事件は自己破産を迅速に終えるための手続きであり、弁護士が代理人でない場合は時間がかかってしまうためです。
結果的に管財事件となるため、裁判所に予納金を支払わなければならず無駄な費用がかかります。
自己破産手続きの時間と費用をできるだけ抑えたいならば、まずは弁護士に相談して適切な対策を行いましょう。
まとめ
自己破産を管財事件に振り分けられないためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。
早い段階で弁護士に依頼して自己破産の準備をすれば、同時廃止事件での処理を狙えます。
特にギャンブルなどの浪費が原因で借金を作ってしまった人は、必ず事前に弁護士へ相談して自己破産手続きを行いましょう。