自己破産の申立てとは?自分で申立てる際すべきことや注意点も解説!
支払不能の状態に陥っても、自動的に自己破産の手続きが開始されるわけではありません。自己破産の手続きをするためには、裁判所への申立てが必要です。
自己破産は弁護士や司法書士に依頼しなくても、ご自身で申立てられます。
この記事では、自己破産申立てについて、次のとおり解説します。
- 自己破産の申立てとは?
- 自己破産の申立てに必要な書類は?
- 自己破産の申立てにかかる手数料とは?
- 自己破産は自分で申立てできる?
ご自身での自己破産申立てを検討中の方は、是非最後までご覧ください。
目次
自己破産の申立てとは?
自己破産の申立てとは、個人または個人事業主が裁判所に破産手続開始を申立てることです。
ここでは、自己破産の申立ての概要を解説します。
破産手続開始の申立て
破産手続開始の申立ては、債務者本人だけでなく債権者も行えます。
債務者本人による申立て
債務者が自ら裁判所に破産手続開始を申立てることを自己破産の申立てと呼びます。
債権者による申立て
債権者が裁判所に破産手続開始を申立てることを債権者申立てと呼びます。
免責許可の申立て
破産手続開始の申立てが認められても、借金の支払義務は免除されません。免責手続において、裁判所から免責を許可されると支払義務が免除されます。このため、破産手続開始の申立てとは別途、免責許可を申立てなければなりません。
免責許可の申立ては、通常、自己破産の申立てと同時に行います。もっとも、破産法では、債務者が破産手続開始の申立てたときは、反対の意思表示がなされない限り、同時に免責許可を申立てたものとみなします。
ただし、債権者申立ての場合は、免責許可が申立てられたとはみなされません。よって、債務者は、破産手続開始決定確定日から1ヶ月以内に免責許可を申立てなければなりません。
自己破産の申立てに必要な書類は?
自己破産の申立てに必要な書類は、大きく分けて次の2種類があります。
- 申立書類
- 添付資料
裁判所によって申立書類の書式・添付資料が異なります。
ここでは、標準的な必要書類を紹介します。
申立書類
申立書類は、次のいずれかの方法で入手します。
- 管轄裁判所の窓口でもらう
- 管轄裁判所のウェブサイトからダウンロードする
一般的な申立書類は次のとおりです。
- 申立書
- 債権者一覧表
- 滞納公租公課一覧表
- 財産目録
- 陳述書
- 家計収支表
- 事業収支実績表(個人事業主の場合)
- チェックリスト
裁判所の書式に従って必要事項を記入します。
添付資料
添付資料とは、申立書類に記載した内容を明らかにする資料です。
主に次の資料が必要です。
- 申立人及び申立人の居住地を特定する書類(戸籍謄本・住民票・賃貸借契約書)
- 財産の内容を明らかにする資料(預貯金通帳・車検証・登記事項証明書等)
- 負債の内容を明らかにする資料(債権調査票・取引履歴・借用書等)
- 収入を明らかにする資料(給与明細・源泉徴収票・確定申告書・課税証明書等)
自己破産に必要な書類の詳細は、下記関連記事をご参照ください。
自己破産の申立てにかかる手数料とは?
ここでは、自己破産申立時・申立後にかかる手数料・費用を解説します。
申立手数料
申立手数料は1,500円です。申立書に収入印紙を貼り付けて裁判所に納めます。
債権者申立ての場合、破産申立手数料は20,000円です。
その他自己破産申立て時にかかる費用
その他申立時には、次の費用がかかります。以下、東京地方裁判所に納める費用の内訳を紹介します(裁判所によって異なります)。
予納郵券(郵便切手)
予納郵券は裁判所によって異なりますが、数千円程度です。
東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額・内訳は以下のとおりです(2024年9月24日~)。
金額 | 内訳 |
4,950円 | ・500円×4枚 ・180円×1枚 ・110円×22枚 ・50円×4枚 ・10円×15枚 |
※大型合議事件の場合は、金額や内訳が異なります。
予納金(管財人報酬)
管財事件になった場合、次のとおり破産管財人の報酬として予納金を支払わなければなりません。
- 少額管財の場合20万円以上
- 通常管財の場合50万円以上
- 債権者申立ての場合70万円以上
官報公告費
官報公告費用は、次のとおり手続きによって金額が異なります。
- 同時廃止の場合11,859円
- 管財事件の場合18,543円
その他手数料
各種証明書が必要な場合は、裁判所に手数料を納付して申請します。
破産事件受理証明申請手数料
破産事件受理証明書とは、自己破産の申立てが受理されたことを証明する書面です。
申請手数料は証明書1通につき150円です。申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
証明書の用途は後述します。
免責決定確定証明申請手数料
免責決定確定証明書とは、免責許可が確定したことを証明する書面です。
申請手数料は証明書1通につき150円です。申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
証明書の用途は後述します。
自己破産は自分で申立てできる?
自己破産は自分で申立てできるのでしょうか。
ここでは、自己破産を自分で申立てる場合の注意点やポイントを次のとおり解説します。
- 自分で自己破産を申立てる場合のデメリットや注意点
- 弁護士に依頼しないと利用できない制度とは?
- 自分で自己破産を申立てる場合にすべきこと
ひとつずつ説明します。
自分で自己破産の申立てる場合のデメリットや注意点
自分で自己破産を申立てる場合のデメリットや注意点は、次のとおりです。
弁護士に依頼した場合より準備期間・手続期間がかかる
自己破産の申立てには、多くの書類を集めなければなりません。申立書類の作成も、法律知識がなければ相当な時間がかかります。
申立後も、書類に不備不足があれば、補正・追加書類を求められます。これらの対応を全て自力で行うため、弁護士に依頼した場合よりも時間や手間がかかります。
弁護士に依頼した場合より費用がかかることがある
自己破産申立後、管財事件として取り扱われた場合は、予納金(管財人報酬)として50万円以上のお金を裁判所に納めなければなりません。
弁護士に依頼すれば、少額管財制度の利用により予納金(管財人報酬)を20万円程度に抑えられる可能性があります。
弁護士に依頼した場合より取り立てが長引く
弁護士に自己破産を依頼した場合、弁護士は債権者に受任通知を送付します。受任通知は、債権者からの取り立てを停止させる効果があります。
ご自身で手続きを進める場合は、債権者からの取り立てが止まらないばかりか、申立前に差し押さえを受ける可能性もあります。
免責が得られない可能性がある
自己破産で免責を得るためには、免責不許可事由に該当しないことが必要です。免責不許可事由に該当する場合は、裁判官による裁量免責が得られるように努力しなければなりません。
免責を得られるかどうかの判断や、免責を得られそうにない場合の対応策を練るためには、法律の知識が不可欠です。自力で裁判官を説得できず、免責が得られない可能性があります。
弁護士に依頼しないと利用できない制度とは?
自己破産では、次のとおり、弁護士に依頼しないと利用できない制度があります。
少額管財事件
少額管財とは、通常管財(特定管財)より簡略化された手続きです。予納金の額も通常管財に比べて安く設定されています(最低20万円~)。
少額管財は、弁護士が代理人に就いている場合のみ利用できます。
即日面接制度
即日面接とは、裁判官が同時廃止事件にするか管財事件にするかを決めるために、申立代理人と面接する制度です。
個人の同時廃止申立のうち、弁護士が代理人に就いている場合に利用できます。東京地方裁判所独自の制度です。
自分で自己破産を申立てる場合にすべきこと
ここでは、自分で自己破産を申立てる場合にすべきことを解説します。
破産事件受理証明書を取得して債権者に送付する
自己破産の申立てが裁判所に受理されたら、破産事件受理証明書(破産手続開始申立受理証明書)を取得しましょう。
弁護士に自己破産を依頼すると、受任通知で取り立てが止まりますが、自分で自己破産を申立てる場合は、債権者からの取り立てが止まりません。
受理証明書のコピーを債権者に送付すれば、取り立てを止められます。
免責決定確定証明書を取得する
免責が許可されると、裁判所から免責許可決定通知が届きます。免責許可決定は、確定してはじめてその効力が発生します。免責許可決定から確定までは概ね1ヶ月間かかります。
裁判所は確定を通知しませんので、免責許可決定が確定したことを証明したい場合は、免責決定確定証明書を申請します。
免責決定確定証明書は、次のようなケースで利用します。
- 生活保護の申請時に、社会福祉事務所から提出を求められた場合
- 債権者一覧表に記載のない(申告が漏れていた)債権者から請求された場合
免責の効果は、原則として申告が漏れていた債権者にも及びます(債権者一覧表にあえて記載しなかった債権者を除く)。
まとめ
自己破産の申立ては、ご自身でも行えます。申立書類も時間をかければご自身で作成できるでしょう。しかし、免責を得るためには破産法の理解が不可欠です。
自己破産では、弁護士に依頼した場合した場合にしか利用できない制度もあります。
ご自身で自己破産の申立てを検討される場合も、一度弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所は、自己破産に関するご相談は無料です。お気軽にお問合せください。