破産手続廃止決定とは?制度概要や流れを解説
破産手続きの終わり方には、以下のパターンがあります。
- 財産を処分後に免責許可が下されるケース
- 財産の精算が終了する前に手続き終了が決定するケース
後者の手続きを破産手続廃止決定といいます。通常の自己破産とは異なる流れで手続きが進みます。
この記事では、破産手続廃止決定について以下の点を中心に解説します。
- そもそも破産手続の廃止とは
- 破産手続の廃止の種類
- 破産手続廃止決定で免責許可が下されるまでの流れ
破産手続廃止決定の概要をあらかじめ把握し、スムーズに手続きを終えましょう。
目次 [非表示]
破産手続の廃止とは
破産手続廃止決定の概要をご説明します。
破産手続の廃止
破産手続の廃止とは、申立人に処分する財産がない場合に、財産を清算することなく破産手続きを終了させる手続きです。
自己破産の目的は、債務者の財産を債権者に対して公平に処分・分配することです。しかし、申立人に処分する財産がない場合、破産手続きを続けても債権者に対して配当できないので、破産手続きを継続する必要がありません。
破産手続き終結
自己破産は、申立人の財産を債権者に対して公平に処分・分配することで目的が達成されます。
財産を公平に処分・分配した時点で自己破産の目的を達成するため、破産手続きは終結となり終了します。
破産手続廃止決定の効果
破産手続廃止決定が確定すると、破産手続きは終了します。
破産手続き廃止決定における免責について
免責許可決定が下されると、裁判所は官報に掲載します。債権者から不服申立がなく2週間が経過すれば、免責許可決定の確定です。この時点で、抱えていた債務の法律上の支払い義務が免除されます。
破産手続き廃止の3つの種類
破産手続の廃止には、廃止の理由や方法によって、3つの種類に区別されます。
財団不足による廃止 | 破産手続開始決定と同時 | 同時廃止 |
破産手続開始決定後 | 異時廃止 | |
債権者の同意による廃止 | 同意廃止 |
同時廃止
同時廃止事件とは、債権者に対して支払うことのできる財産を所有していないため、手続き開始決定と同時に破産手続きが終了する手続きです。
破産管財人が選任されませんので裁判所への予納金も極めて低くなり、財産・資産の調査・処分・分配作業もありませんので、手続きが早く終了します。
弁護士に依頼して自己破産を申し立てた場合には同時廃止となる余地がありますが、ご本人で申立を行う場合(司法書士に依頼した場合も含む)には、原則として同時廃止にはなりません。
異時廃止
異時廃止とは、自己破産手続き開始決定後に廃止決定が行われることをいいます。破産手続開始決定と同時に廃止される場合を同時廃止というのに対し、破産手続開始とは異なる時期に廃止されるため、異時廃止と呼ばれています。
自己破産手続きでは、通常債権者に分配する財産がないことが明らかでない場合や免責不許可事由に該当する可能性がある場合、原則裁判所は管財事件へと振り分けます。
しかしその後の調査で、手続きに必要な財産を申立人が有していないことが明らかになった場合、管財事件として振り分けられた後でも破産手続きが廃止になります。
異時廃止は、主に次のようなケースが該当します。
- 破産手続きに必要な費用の追加納付がなされないこと
- 破産手続き費用を負担できないことが破産手続き開始決定後に判明したこと
- 破産財団をもって手続きに必要な費用が負担できないこと
同意廃止
債権届出期間内に届出をした債権者全員が廃止に同意をした場合、または、同意をしない債権者に対して裁判所が相当と認める担保を提供したときに、破産者の申立てにより、裁判所の決定で廃止することを同意廃止といいます。
ただし、債権者は財産の分配を得られないため、全債権者の同意を得ることは不可能に近いです。
破産手続き廃止決定で免責許可が下されるまでの流れ
破産手続き廃止決定で免責許可が下されるまでの流れを見ていきましょう。
弁護士への依頼
まず自己破産するかを弁護士へ相談・依頼しましょう。
自己破産手続きを弁護士に依頼するメリットは以下のとおりです。
- ミスなく手続きがスムーズになる
- 財産がない場合同時廃止となる可能性がある
- 裁量免責を得やすい
- 自己破産以外の解決方法も提案してくれる
- 専門知識が必要な複雑な手続きは委任可能
受任通知と必要書類の準備
依頼を受けた弁護士は、債権者に対して受任通知を送付します。
受任通知を受け取った債権者は、それ以降債務者に対して借金の取り立て・催促が禁じられています。
受任通知を送られた債権者は、それ以降の借金取り立て・催促の行為が貸金業法21条9項によって禁じられています。
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続きをとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済を要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済を要求すること。
引用:貸金業法21条9項
受任通知を送付すると、債務者は取り立てや催促に怯える生活から解放されます。
受任通知送付と並行して、弁護士は債務者とともに自己破産手続きに必要な書類の準備を行います。
自己破産手続きに必要な書類の一例は以下のとおりです。
- 住民票
- 給与明細
- 課税証明書
- 源泉徴収票/確定申告書
- 預金通帳の写し
- 土地建物の全部事項証明書・査定書
- 保険証書
- 解約返戻金計算書
- 退職金見込額証明書
- 毎月の家計表
- 自動車検査証・査定書
自己破産申し立て
集めた書類をもとに、裁判所に提出する申立書を弁護士が作成します。作成の際には、弁護士は依頼者に対して借金の理由や保有している財産について質問をします。虚偽の回答をした場合、免責不許可が下される可能性があります。
破産審問
自己破産手続きでは、裁判所で破産審問が行われるケースもあります。審問の結果によって免責許可が下されるため、通知された日時に必ず裁判所へと出席しなければなりません。
審問では裁判官から様々な質問がされますが、嘘をつかず答えれば滞りなく審問は終了します。
免責許可・不許可の決定
裁判所が特に問題ないと判断したら、免責許可決定を下します。免責許可決定後、1ヶ月が経過すると免責決定が確定して以下のとおりとなります。
- 債務が免除される
- 申立人は破産手続き以前の状態に戻り、手続き期間中の資格制限がなくなる
まとめ
破産手続の同時廃止は、手続きにかかる時間も短く費用もかからないため、申立人にとっては有利な制度です。
しかし、裁判所では原則自己破産手続きを管財事件に振り分けています。破産手続の同時廃止に振り分けられるかどうかは、弁護士へ確認する必要があります。
個人で手続きを進めることを選ぶ人もいますが、同時廃止事件に振り分けられず、また、予納金も増えることに加え、免責許可を受けるまでには専門知識や複雑な手続きが必要となるため、専門家である弁護士のサポートが必要です。
破産手続きを検討されている方は、まず弁護士に相談しましょう。