夫婦が離婚をする際、相手に離婚の原因がある場合には慰謝料を請求することができます。実際、離婚後の生活の事も考えて請求できるものはしっかりと請求したいものです。

しかし、慰謝料をどれくらいの金額請求できるのか、どのようなケースで請求できるのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回、離婚で請求できるケースや慰謝料の相場、請求方法などを詳しく解説していきます。

ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします

相手の有責行為が原因で離婚する場合に慰謝料は請求可能

離婚で必ずしも慰謝料を請求できるとは限りません。離婚で慰謝料を請求できるケースとしては、相手方の有責行為が原因で離婚に至った場合です。有責行為とは、不倫やDVなどといった夫婦関係を破綻させる行為です。

ですので、離婚の原因がお互いにある場合や、性格や価値観が合わないといった理由での離婚など、どちらか一方だけの責任ではない場合、慰謝料を請求することは難しくなります。

離婚時の慰謝料は2種類ある

離婚で請求できる慰謝料には主に以下の2種類があります。

  • 有責行為に対する慰謝料
  • 離婚自体への慰謝料

有責行為に対する慰謝料とは、DVや不貞行為などが原因で受けた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。一方で離婚自体への慰謝料とは、離婚が生じたことで受けた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料のことです。

例えば、配偶者の不倫が原因で離婚となった場合には、不貞行為に対する慰謝料と、不貞行為が原因で離婚に至ったことに対する慰謝料を請求することが可能です。

離婚で請求できる4つのケースと慰謝料相場

離婚で請求できる慰謝料の相場は、明確に規定された金額は存在しませんが、離婚原因によって相場が異なってきます。離婚原因の中でも大きく4つに分けることができ、それぞれの慰謝料の相場は過去の判例などを基にすると以下の通りとなります。

離婚原因 慰謝料相場
浮気・不倫 (不貞行為) 100万円〜300万円
DV 50万円〜300万円
悪意の遺棄 50万円〜300万円
性行為の拒否 0円〜100万円

不貞行為の慰謝料相場

不貞行為の慰謝料相場 100~300万円

不貞行為とは、簡単に言うと「既婚者がパートナー以外と性的な関係を結ぶ」ことです。民法第770条で法定離婚事由として認められており、不貞行為をした配偶者だけでなく、浮気相手などにも慰謝料を請求できます。

ただし、不貞行為で慰謝料を請求する場合は、基本的に肉体関係があったことを証明できる証拠が必要です。デートや食事に行っただけというようなケースでは、不貞行為と認められない可能性もあります。

不貞行為の慰謝料金額を決める要素例
  • 婚姻期間
  • 子供の有無
  • 不貞行為の期間・回数

【関連】
不倫(不貞行為)の慰謝料相場と過去の判例
【不貞行為の定義とは】どこからが不倫?簡単にわかりやすく解説

DVの慰謝料相場

DVの慰謝料相場 50~300万円

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者もしくは事実婚状態にあるパートナーなど親密な関係にある男女間で行われる暴力のことを言います。

「ドメスティック・バイオレンス」の用語については、明確な定義はありませんが、日本では「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。

引用元:ドメスティック・バイオレンス(DV)とは | 内閣府男女共同参画局

殴る蹴るといった身体的な暴力をもちろん、大声で怒鳴ることや人前でバカにするなどといった精神的暴力なども該当します。DVが離婚原因となった場合も慰謝料を請求できる可能性があります。また、DVによって入院したり後遺症が残るようなケガを負った場合には慰謝料が高額になるケースがあります。

【関連】DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠

悪意の遺棄の慰謝料相場

悪意の遺棄の慰謝料相場 50~300万円

悪意の遺棄(あくいのいき)は民法第770条で規定されている離婚原因です。夫婦は民法752条で「同居・協力・扶助」する義務があります。

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

どちらか一方が正当な理由なくこの義務をはたさなければ「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。悪意の遺棄の例としては以下のような行為があげられます。

  • 生活費を渡さない
  • 一方的に別居した
  • 暴力を振るって家から無理やり追い出す
  • 健康なのに働かない

しかし、相手方の行為が実際に悪意の遺棄に該当するかどうかは判断が難しいため、弁護士などの専門家から意見を貰うことをおすすめします。

性行為の拒否の慰謝料相場

性行為の拒否の慰謝料相場 0~100万円

配偶者から性行為を一方的に拒否され、夫婦生活が上手くいかなくなり離婚する場合も慰謝料を請求できる可能性があります。また、セックスレスの期間が長く、拒絶の程度が大きい場合などは慰謝料は高くなる傾向があります。

ただし、どちらも性行為を望んでいない、夫婦が高齢、一方が仕事で忙しく機会がなかった、などのケースではセックスレスと認められないこともあります。

離婚で慰謝料を請求できないケース

離婚で慰謝料を請求できないケースは主に以下の項目が該当します。

  • 性格・価値観が合わない
  • 姑などとの親族関係が理由で離婚した
  • 宗教や信仰
  • 婚姻関係がすでに破綻していた
  • 有責行為を証明できる証拠がない
  • 慰謝料を支払う能力がない

「性格の不一致」は離婚で最も多い理由になりますが、配偶者や親族との不仲は基本的に一方に原因があるとは言い難く、離婚や慰謝料の請求は認められにくくなります。(参考:性格の不一致で離婚が成立するケースと慰謝料の相場

また、慰謝料を請求しても相手に支払う能力がない場合、不貞行為やDVなどの証拠がない場合なども慰謝料の請求は認められないことがあります。

相手の年収によって慰謝料の金額は変わる?

結論から言うと、離婚の慰謝料は相手方の年収も考慮して金額を決めます。慰謝料の金額を決める要素は様々ありますが、相手が支払えないほどの金額を請求しても、実際は回収が難しいため相手の年収も金額を決めるひとつの要素となります。慰謝料金額を考慮する事項としては主に以下の2つとなります。

  • 離婚原因となった相手方の行為
  • 婚姻期間がどのくらいか

結婚期間、離婚の原因となった行為の程度によって精神的苦痛も大きいと評価されるため、慰謝料が高くなる傾向があります。例えば「結婚2年目で夫が1年間不倫をしていた場合」と「結婚10年目で夫が5年間不倫をしていた場合」とでは、後者の方が婚姻期間・不貞行為をしていた期間も長いため慰謝料が高額になります。

離婚で慰謝料を請求する方法と手順

ここからは実際に慰謝料を請求する方法について解説していきます。具体的には以下のステップを踏んで慰謝料請求を行います。

協議離婚

協議離婚は夫婦間で離婚の条件や慰謝料の金額について話し合います。双方が納得できる形でまとまれば、後は離婚届けを出せば離婚は成立します。

別居している場合や関係が悪化し直接話をすることが難しい場合などは、弁護士に依頼することで交渉を代行してくれます。

話し合いがまとまった場合は離婚協議書を作成する

夫婦間での話し合いがまとまった場合には離婚協議書を作成します。慰謝料の請求や金額に対して相手方が応じたことを書面としてまとめていきます。

万が一相手が合意内容に反して慰謝料を支払わない場合には、財産の差し押さえ等ができるよう公正証書で離婚協議書を作成しておいた方が良いでしょう。

離婚調停

話し合いで決着がつかない場合には離婚調停を行います。相手方の住所地の管轄である家庭裁判所に夫婦関係調停申立書を提出することで離婚調停の申立が可能です。(関連:離婚調停申し立ての手続きや流れ

離婚調停では、家庭裁判所の調停委員を介して双方の意見を伝え合い、話し合いを進めていくこととなります。調停委員は中立の立場ではありますが、離婚に至った経緯をしっかりと伝え証拠を示すことができれば、こちら側の言い分を理解し相手方への説得をしてくれる可能性があります。

【関連】離婚調停とは

離婚裁判

離婚調停でも話し合いがまとまらない場合には訴訟を起こし、離婚裁判を行うことになります。裁判によって離婚を成立させるためには、民法770条で規定されている離婚原因に該当する必要があります。

具体的には以下の通りです。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 配偶者に不貞な行為があったとき。
 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

また離婚訴訟を行った場合、以下の流れで裁判が進んでいきます。

  1. 訴状作成
  2. 訴状の提出
  3. 相手方への訴状の送達
  4. 第1回口頭弁論の期日決定
  5. 複数回口頭弁論を実施
  6. 判決

なお、裁判中でも場合によっては和解が成立するケースもあります。

まとめ

離婚で請求できる慰謝料の金額は離婚に至った原因などによって異なってきます。

慰謝料を請求できるかをどうか判断が難しい場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。

離婚の慰謝料相場でよくある質問

モラハラで離婚する場合の慰謝料相場は?

モラハラの内容によっては「悪意の遺棄」に該当し、慰謝料の相場は「50万円〜300万円」になります。モラハラの期間が長い、回数が多い、モラハラが原因で病気になった、などの場合は慰謝料が高額になる傾向があります。

うつ病で離婚する場合の慰謝料相場は?

法定離婚事由の中に「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」には離婚請求ができると定められていますが、実際には「うつ病」が裁判で離婚理由として認められるケースは少ないです。また、うつ病を患っている場合、仕事を休んでいて収入がないケースも多く、そういった場合は慰謝料の請求は難しいことが多いでしょう。

妊娠中の場合は慰謝料が高くなる?

妊娠中に配偶者の有責行為が原因で離婚する場合は、精神的苦痛も大きくなり慰謝料の金額は高くなる可能性があります。
また、養育費に関しても、子供がまだ生まれておらず妊娠中であった場合も請求できます。