離婚の原因はDVや不倫など様々にありますが、その中でも特に多いのが「性格の不一致」で離婚するケースです。裁判所が開示している令和2年度の「婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別」の資料を見ると「性格が合わない」という理由が圧倒的に多いです。

実際に離婚を検討している方でも、なんとなく相手との相性が合わないから離婚したいと考えている方は多いのではないでしょうか?しかし、性格の不一致という理由だけでは離婚が難しいケースもあります。

そこで今回性格の不一致で離婚をすることができるのか、慰謝料の相場やポイントなども踏まえて解説していきます。相手と性格が合わないために離婚を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

性格の不一致とは

夫婦間での性格の不一致とは、相手との人間関係において性格が合わなかったり、一緒にいて苦痛を感じるほど相性が良くない状態を指します。相手と相性が合わない理由は数多くありますが、多くの夫婦がこの問題に悩まされています。

この性格の不一致は夫婦間だけではなく、親族や友人関係を含めた人間関係全般にも存在します。また、性格の不一致から夫婦の関係が悪化していき、不倫やDVなどの問題に発展することもあります。夫婦は常に家庭で一緒に暮らす密接な関係であるため、小さな夫婦のすれ違いが大きな問題になりやすいのです。

性格の不一致で離婚はできるのか?

結論から言うと性格の不一致を法的な離婚理由とすることはできません。しかし、これはあくまで裁判上で「性格の不一致」が離婚理由に認められていないというだけで、お互いが離婚を望んでいる場合は協議離婚などによって離婚することが可能です。

裁判で法的な手続きに則り離婚を行う場合には、民法第770条で規定されている以下の法的離婚事由に該当する必要があります。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 配偶者に不貞な行為があったとき。
 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

上記の法的離婚事由を見てみると、離婚の訴えを提起できる条件として性格の不一致が記載をされていません。そのため、裁判所においても性格の不一致が離婚原因に該当するとは判断されません。

性格の不一致で離婚が成立するケース

互いに離婚を合意した場合

離婚したい理由が性格の不一致であっても、離婚調停などで双方話し合い合意を形成した場合には離婚が可能です。

ただし、性格の不一致が原因で離婚を検討している場合、当事者間で直接冷静に話を進めるのはなかなか難しいと言えます。こういった場合には弁護士を活用し、第三者を通して交渉を進めてもらう方法があります。

夫婦関係が破綻状態にある場合

夫婦関係が破綻状態にあると判断される場合には、離婚をすることが可能です。夫婦関係が破綻状態にあると判断されれば、民法第770条で規定される法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するため、裁判で離婚が認められるケースがあります。

ただし、裁判において夫婦関係が破綻状態にあることを証拠に基づいて証明する必要があります。そのため、性格の不一致を感じている状況や、関係修復の努力を行っている内容、夫婦喧嘩が絶えず別居しているなど具体的な事実を証明できるように、証拠として準備しておく必要があります。

性格の不一致で請求できる慰謝料の相場

基本的には性格の不一致だけで慰謝料を請求することはできません。なぜかというと、離婚時における慰謝料は不倫やDVといった相手方の行為が原因で精神的苦痛を受けた場合に請求できるものだからです。

性格の不一致はどちらか一方だけに原因があるとは判断しづらく、一方に責任があるわけではないため慰謝料を請求することは難しいでしょう。ただし、性格の不一致から相手方が不貞行為など慰謝料の請求対象となる行為に及んだ場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。

【関連】離婚慰謝料の相場は?年収との関係や請求できないケースとは

財産分与は請求が可能

性格の不一致の理由だけでは慰謝料の請求は難しいですが、財産分与は請求が可能です。そのため、性格の不一致による離婚で慰謝料が請求できなかったとしても、財産分与で慰謝料分を補填することはできます。

特に専業主婦などの場合は、離婚後に仕事に就くまでの生活費用のためにも、財産分与における扶養的財産分与の請求を行うことをおすすめします。(参考:離婚時の財産分与とは?財産分与の対象になるものと3つの決定方法

夫婦の一方が離婚直後に経済的な不安がある場合、扶養的財産分与の請求を行うことで、財産分与として生活の援助を受けることができます。

性格の不一致で離婚する前に確認すべきポイント

ここでは性格の不一致が原因で離婚をする前に確認しておくべきポイントについて解説します。というのも、性格が合わないという点に関してはまだやり直せる可能性もあるからです。

具体的には以下のポイントを冷静に考えてみましょう

離婚することによる子供への影響

もし夫婦間で子供がいた場合は、離婚することにより子供にも影響が生じてしまいます。両親の離婚により子どもの心を傷つけてしまうことも多く、特に子どもの年齢が若いうちはその影響も大きくなってしまいます。

離婚によって引越しをするなど子供の環境も変化する可能性があるため、 お子さんがいる場合には、一度冷静に離婚後の生活は大丈夫かどうかを考えてみましょう。

もし夫婦間で性格が合わなかったとしても、互いに子供に対して愛情を持って接することができるのであれば、子供を育てるパートナーとして一緒に生活を続けるという選択肢もあります。また、離婚をするにしても、子供への影響を考え、子供がある程度の年齢になるまで待つという選択肢もあります。

結婚期間が短いと財産分与の金額も少ない傾向がある

結婚期間が短い場合は、夫婦で築いた財産も少ない場合が多いため、財産分与の金額も少なくなる傾向があります。財産分与だけでなく年金分割についても、結婚期間中の年金の支払い実績を分け合う形になるため、金額が少なくなる可能性があります。

こういった金銭面の事も考え、我慢できないほどの事情がない場合には、慌てて離婚しない方がお互いにとってメリットとなる可能性もあります。

性格の不一致で離婚して後悔しないか

性格の不一致で離婚して後悔しないかという点も一度考えた方が良いでしょう。夫婦間に限らず、人間にはそれぞれの性格において納得できる部分とできない部分があるため、一緒に暮らす上で全ての場面で互いの意志が合うことも難しくなります。

子育てや仕事が忙しくて余裕がないときは夫婦のコミュニケーションが少なくなり、一時的に夫婦関係が悪化する事も多いでしょう。一度冷静になって離婚後の生活を想像し、後悔の念が出ないかどうか想像してみることをおすすめします。

一度別居を検討してみる

冷静に夫婦関係を見つめ直すためには、別居するという手段もあります。特に性格の不一致は感情面の問題であるため、互いに距離が近い状態でいると冷静に物事を判断できないケースが多くあります。

一度別居してみて冷静に夫婦生活について考え、最適な選択肢を探していくのも選択肢のひとつです。

まとめ

性格の不一致だけでは離婚をするのは難しいですが、互いに離婚について合意した場合や夫婦関係が破綻状態にあると判断できる場合は、離婚が成立する可能性があります。

また、慰謝料に関しても性格の不一致だけで請求することは難しく、不貞行為やDVと言った精神的苦痛を受けている場合には、慰謝料の請求が可能です。

もし性格の不一致で離婚をする場合には、離婚ができるかどうかや慰謝料を請求できるかどうかの判断を当事者自身で行うのは難しいため、法律の専門家である弁護士に相談した方が良いでしょう。