DV(ドメスティックバイオレンス)は身体的な暴力だけではなく、言葉や態度によって精神的なダメージを受ける精神的DVもあります。配偶者からの精神的なDVで悩む方は珍しくありません。
また、精神的DVは身体的なDVよりも周囲に気付かれにくく、本人もDVだと気付いていないケースもあるでしょう。ここでは、精神的DVとはどんな行為か、相談先などを紹介していきます。
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目次
精神的DVとは
精神的DVとは、言葉や態度による暴力です。殴る・蹴るなどの物理的な暴力とは異なり、相手に精神的なダメージを与える言葉や態度をとることを指します。内閣府のホームページでも、精神的なDVについて記載しています。
精神的なもの
心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。精神的な暴力については、その結果、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に至るなど、刑法上の傷害とみなされるほどの精神障害に至れば、刑法上の傷害罪として処罰されることもあります。
精神的DVは、家庭内における嫌がらせ・いじめのようなものであり、近年では「モラハラ夫」などの言葉も浸透しています。また、精神的DVに悩む方は女性だけでなく、男性側が被害に合うことも珍しくありません。
実際に、令和2年度の統計データでは「精神的に虐待する」という離婚理由が男性側で2位、女性側で3位となっており、男女ともに精神的DVに悩んでいることがわかります。(参考:離婚を決めた理由ランキング|男女別の離婚原因トップ5)
精神的DVの症状や後遺症のリスクとは
精神的DVを受けている被害者は、自分が被害者であることに気付かないケースも珍しくありません。また、精神的DVを受けていることに気付いても、トラウマティック・ボンディングによって離れたくても離れられない状態になっていることもあります。
トラウマティック・ボンディングとは、DV被害を受けている時は恐怖や緊張状態に陥るものの、「相手には自分しかいない」「優しい部分もある」と考えて離れることができない特殊な精神状態のことを指します。
また、精神的DVから離れることができたとしても、後遺症に悩まされる方も多いです。PTSDや抑うつ、対人恐怖症などの後遺症が生じることもあります。
精神的DVに該当する行為チェックリスト
言葉や態度によって配偶者に精神的なダメージを与える行為が精神的DVです。では、具体的にどのような行為が精神的DVになるのでしょうか。以下のチェックリストより、配偶者の言動や態度が精神的DVに該当するのかどうか確認してみてください。
☑ | 大きな声で怒鳴る |
☑ | 長時間無視されることがある |
☑ | 「バカ」「お前が悪い」など人格を否定するような言葉を吐く |
☑ | 常に監視されている |
☑ | 友達や両親に連絡を取ることや会うことを制限されている |
☑ | 子供や親を引き合いに出して脅迫する |
☑ | SNS上で誹謗中傷をする |
☑ | 失敗すると嫌味や説教が長時間行われる |
また、内閣府のホームページでも精神的DVにあたる行為の例を紹介しているので、一度チェックしてみてください。
精神的DVで離婚する場合に知っておくべきこと
精神的DVを理由に離婚できる?
離婚の方法には「協議」「調停」「裁判」の3種類があります。一般的には、当事者同士の話し合いで離婚を進める「協議離婚」から試みることが多いです。協議離婚では、理由に関係なく双方が離婚に合意すれば離婚を成立させられます。
しかし、精神的DVを受けている場合は、協議により離婚を進めることは難しいでしょう。なぜならば、相手に委縮して離婚を言い出せないケースや、離婚を切り出すことでDVが悪化してしまうケースがあるからです。
そのため、協議離婚をするのであれば、両親や友人、弁護士など第三者も交えて協議を行うことをおすすめします。協議離婚が難しい場合には、裁判手続きの一種である調停離婚を行います。調停離婚とは、調停委員が両者の意見を調整して問題を解決する方法です。
調停離婚でも相手の合意が得られない場合には裁判で離婚を争うことになりますが、裁判で離婚するには法律で定められた離婚理由である「法定離婚事由(民法第770条)」が必要です。精神的DVは法定離婚事由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
精神的DVの証拠を用意する
裁判で離婚するには、精神的DVがあったことを立証できる証拠が必要です。証拠がなければ相手は精神的DVがあったことを認めない可能性があり、裁判でも離婚が認められません。精神的DVを立証する証拠には、次のようなものが挙げられます。
- 精神的DVが行われていることが分かる録音や録画
- 脅迫や暴言が吐かれているメール内容
- 被害について記載しているメモや日記
- 病院の診断書
また、精神的DVについて専門機関や警察へ相談した場合、相談の記録が残っているケースがあります。そのため、相談の記録の有無も確認するようにしましょう。
精神的DVの慰謝料相場
精神的DVを受けていた場合、配偶者に対して慰謝料を請求することができます。慰謝料とは、他人の権利や利益を侵害する不法行為があった場合に加害者へ請求することができる損害賠償金のことを指し、法律上でも加害者が被害者に対して賠償責任を負うことが定められています。
(不法行為による損害賠償)第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。引用元:民法 | e-Gov法令検索
そして、精神的DVは不法行為です。離婚時の慰謝料の相場は50~300万円と言われており、夫婦関係や行為の悪質性などを考慮して金額が判断されます。
精神的DVで悩む方の相談先
配偶者からの精神的DVを受けていても、両親や友人など周囲に相談することができずに悩んでいる方も多いです。しかし、精神的DVに悩む方が相談できる相談窓口は多数存在します。一人で悩まずに、次のような相談窓口を利用して相談してみてください。
DV相談プラス
内閣府の男女共同参画局が運営するDVの相談窓口です。専門の相談員に電話やチャットで相談することができ、最寄りの相談機関や支援について案内してもらうことも可能です。
まずは誰かに話を聞いてもらいたいという場合や、今後どのように対処すべきか分からないという場合などに利用できます。
・DV相談プラス|内閣府 DVのお悩みひとりで抱えていませんか?
配偶者暴力相談支援センター
精神的DVの被害によって身体や心の危険を感じている場合には、配偶者暴力相談支援センターに相談しましょう。全国に設置されている公的施設で、DV被害を受けた女性の保護や支援を行っています。
また、カウンセリングも実施しているので、相談だけでも訪問することが可能です。DVの被害者を守るシェルターとして機能しているため、住所は公表されていません。まずは内閣府のホームページから最寄りのセンターの電話番号を探し相談をしてみましょう。
離婚を検討している場合は弁護士
精神的DVが原因で離婚を検討している場合には、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。また、精神的DVかどうか分からないという場合でも弁護士に相談すれば、法的に精神的DVかどうかという判断を得られます。
精神的DVを立証するための証拠集めのアドバイスも得られ、精神的DVを理由に離婚や慰謝料を請求するための足がかりになるはずです。弁護士に依頼すれば自身の代理人として離婚協議や手続きなども行ってもらえるため、精神的負担も軽減されます。
暴力、身の危険を感じる時は警察
精神的DVに加えて暴力や身の危険を感じる場合には、警察へ相談することをおすすめします。暴力は犯罪ですし、身の危険を感じる時には保護が必要です。110番で通報することや、近隣の警察に逃げ込んで自身の身を守ることを優先してください。
まとめ
精神的DVは繰り返し行われるものであり、エスカレートする恐れがあります。精神的DVを受けているかもしれないと考えている場合や、精神的DVを受けているけれどどうすればいいか分からないという場合には、紹介した相談窓口を利用して相談してみてください。
我慢して結婚生活を続けていても、精神的なダメージが積み重なり、いずれは心が壊れてしまいます。離婚も含めて精神的DVから逃れる方法を検討し、「まずは誰かに相談する」という一歩を踏み出す勇気を持つことが大切です。