裁判所にて調停委員会が間に入り、夫婦の今後を話し合うのが離婚調停です。いきなり調停の通知をもらった場合、どうしたらいいのか困惑される方も多いです。この記事では、離婚調停をこれから行う方が離婚したくない場合の対処法について解説します。
目次
調停で離婚が成立しない確率は?不成立になる割合
家庭裁判所にて公表されている司法統計を見ると、令和2年に離婚調停を実施した件数が58,969件で、調停が不成立となった件数は9,999件と約6分の1です。3年間のデータを見てみると、調停の不成立が認められている割合は全体の約16~17%です。
離婚調停が不成立になった場合、その時点では離婚は成立しませんが、その後裁判や再度の協議によって離婚を進めていくケースが多いです。調停はあくまで話し合いによって離婚を目指す方法ですので、離婚したくない場合は拒否をすることも可能です。
・離婚調停が不成立になる割合とその後の流れ
・婚姻関係事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所
離婚調停を申し立てられたけど離婚したくない場合
配偶者から離婚調停の申し立てをされたけど、離婚したくない場合はどうすればいいのでしょうか。
もし調停で離婚に反対意見を述べた場合はどのような流れになるのか、調停への参加を拒否した時はどうなるのか確認していきましょう。
調停で離婚を拒否すれば不成立になる
一方が離婚を強く否定しており、話し合いが平行線のままになると調停は不成立になります。調停は裁判所の調停委員会が間に入って、双方の話し合いにより合意を目指す場のため、一方に離婚したくない言い分がある限り、調停で離婚が認められることはないでしょう。また、一度調停が不成立になっても、再び調停を申し立てることは可能です。
調停が不成立になれば裁判に進む場合がある
夫婦間の協議や調停でも折り合いがつかない場合は裁判によって離婚を目指す方法があります。裁判では、最終的に判決によって離婚するかしないかが決まるため、たとえ離婚したくない場合であっても離婚が成立する可能性があります。
裁判官の判決が確定となれば、判決内容に従う義務が生じるため、言い争うことができなくなります。判決に納得がいかなければ控訴することもできますが、控訴が認められるのは「最初の時とは異なる理由」が必要です。
・離婚裁判で負ける理由と離婚できる確率|負けた場合離婚できない?
調停への出席自体を拒否・無視した場合
正当な理由なく離婚調停を欠席すると、調停委員会からの印象が悪くなり、裁判に発展した場合は不利な立場に置かれる可能性もあります。また、裁判への出席も拒否した場合は、申立人の全面勝訴となるため離婚が成立します。
いずれにしても、調停や夫婦の話し合いを無視するデメリットは大きく、真摯に対応することをおすすめします。離婚したくない場合はその理由を主張していく必要もあるため、自分で対応するのが難しければ、弁護士を代理人として自分の代わりに出席してもらうことも可能です。
・離婚調停の呼び出し状が届いた!調停を申し立てられた側の対処法
・離婚調停中にやってはいけないことと不利な発言
裁判で離婚が成立するケース
離婚裁判は調停と異なり、一方に離婚反対の意思があっても離婚が認められる場合があります。裁判で離婚が認められるケースとしては、民法第770条に定められた離婚理由があるかどうかがポイントなります。
(裁判上の離婚)第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。引用元:民法 | e-Gov法令検索
上記5つの理由のうち、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」は判断が難しい部分があります。「悪意の遺棄」の例としては、正当な理由もなく別居を強要された(同居義務違反)、生活費を入れなくなった(扶助義務違反)などの行為が該当します。「婚姻を継続し難い重大な事由」の例としては、主にDVやモラルハラスメント、長期間の別居などの行為が該当します。
逆に言えば、法律で定められた離婚理由がなければ、裁判では離婚が認められないということになります。代表的な離婚理由に「性格の不一致」がありますが、これは法定離婚事由には該当しないため、裁判では離婚が認められない可能性は高いでしょう。
・悪意の遺棄とは|該当する行為や慰謝料の相場
・性格の不一致で離婚が成立するケースと慰謝料の相場
離婚したくない人が調停中にやるべきこと
離婚したくないからの理由で調停を無断欠席してしまうと、今後不利な状況になりやすく離婚成立の可能性が高くなるとお伝えしました。次は、離婚をしたくない人が調停中にやるべきことをご紹介します。
離婚届の不受理申出書を出す
一方が離婚に同意をしていないにもかかわらず、配偶者が役所へ勝手に離婚届を提出してしまって、離婚の手続きが進められてしまった事例があります。そのようなことを防ぐための手段として、あらかじめ役所へ離婚届に関する不受理申出書を出す方法があります。
不受理の申し立てをすることで離婚届が提出されても受理されなくなります。取り下げをしない限りは不受理申出書の有効期限はありませんので、早めに申出書を提出しておくとよいでしょう。
調停の対応を真摯にする
裁判所から調停に参加するようにと通知が来た場合は、特別な事情がない限りは必ず参加してください。身だしなみを整え、丁寧な言葉遣いを心がけることで、調停委員からの評価が下がることはないでしょう。
調停時は調停委員に自分の主張を伝えることになりますので、離婚に反対する理由を論理的に伝えましょう。自分の意見をきちんと伝えられるか不安な方は陳述書を用意しておくと、自身の考えを整理できるので効果的です。
夫婦関係を修復する糸口を探す
実際に離婚調停に進んだ夫婦が関係を修復していくのは容易なことではありません。まずは、配偶者の離婚したい理由を確認し、夫婦関係を修復していく糸口を見つけていくしかありません。
例えば、家事に非協力的であったのが原因ならば家事の分担内容を明確化する、言動や態度が問題であれば行動を改める必要があります。また、調停には離婚を目指す「離婚調停」と夫婦関係を修復することが目的の「円満調停」というものあります。(参考:夫婦関係調整調停(円満)|裁判所)
離婚したい側が離婚調停を申し立て、離婚したくない側が円満調停を申し立てるといったケースもあります。円満調停を申し立てることで、自分は離婚したくないという意思を明確に相手に伝えることができます。
裁判に進んだ場合の準備をする
離婚したくない気持ちを伝えても相手が離婚への決意を固めているのであれば、双方の意見の一致がないため、調停不成立となりやがて離婚裁判となる可能性があります。
裁判をするということは、法定で離婚が認められる事由に該当する材料を配偶者は持っていると考えられます。一方で離婚したくない側も、裁判で「婚姻を継続すべき」と判断されるように主張していく必要があります。反論には法的な知識が求められることもあり、裁判に進んだ際は一度弁護士に相談することをおすすめします。
・離婚裁判(離婚訴訟)の流れと平均期間
・離婚裁判にかかる費用と弁護士費用の相場
離婚調停成立後に離婚届を出さないとどうなる?
離婚調停が成立した後に「やっぱり離婚したくないから離婚届を出さない」というのは通用しません。調停調書に離婚の旨が記載された時点で離婚は成立しています。
調停成立後は10日以内に市町村役場に離婚届を提出する必要があります。また、通常離婚届は夫婦両方の署名捺印が必要となりますが、調停で離婚が成立した場合には、どちらか一方だけの署名捺印で済みます。
離婚調停が成立した後に離婚の取り消しを主張することは原則できませんので、夫婦に戻りたいのであれば再婚を目指すしかありません。
まとめ
離婚調停に進んだ夫婦が関係を修復することは簡単なことではありませんが、離婚したくないのであれば真摯に対応し、自身の行動を改め、配偶者と関係を修復していく必要があります。関係を修復できる可能性は決してゼロではないため、諦めずに誠実に対応していくことが大切です。