離婚の解決方法の一つに「離婚調停」という手段があります。離婚に向けて夫婦間の協議が決裂した場合や、争うべき点が当初から多い場合には、調停を行うことで事件の解決を目指します。(参考:離婚調停とは)
離婚調停は家庭裁判所で行うもので、訴訟とは異なり話し合いにおける解決を模索するものです。今回は離婚調停を申立※する際に必要な書類や入手方法、注意点を詳しく解説します。
※申立とは、裁判所に対して調停をするように願い出ることを意味します。
目次
離婚調停の必要書類一覧と入手方法
離婚調停の申立で必要な書類とはどのようなものでしょうか。まずは下記一覧ご確認ください。
- 申立書3通
- 事情説明書 1通
- 子についての事情説明書 1通(未成年の子がいる場合のみ)
- 連絡先等の届出書 1通
- 非開示の希望に関する申出書 1通(必要時のみ)
- 進行に関する照会回答書 1通
- 夫婦の戸籍謄本 1通
- 年金分割のための情報通知書 1通(必要時のみ)
- その他
では次に、それぞれについて入手方法と注意点に詳しく触れていきます。
申立書について
離婚調停の申立てを願い出るための書類です。3通作成する必要があり、1つは裁判所用、もう1つは相手方用、もう1通は自分用(控え)です。様式は裁判所のリンクより取得可能です。ご自身で申立を行う場合には家庭裁判所で書式を受け取り、アドバイスを受けながら記入することもできます。
注意点
裁判所用と相手方用を書き換えることはできません。同じもの2つを裁判所へ提出します。嘘偽りなく記載するようにしましょう。
事情説明書1通
こちらはどうして離婚調停を申立するのか、裁判所に対して事情を説明するための書面です。財産状況や夫婦の不和の原因を簡潔に書く書面です。こちらも裁判所のリンクや裁判所で取得することができます。
注意点
事情説明書の内容が不明瞭な場合、裁判所から詳しく聞き取りを求める電話が入ることがあります。速やかに調停に進むためにも電話に応じるようにしましょう。
子についての事情説明書1通(未成年の子がいる場合のみ)
こちらはご夫婦の間に未成年のお子様が要る場合に提出する書面です。現在お子様を監護している人は誰かなどを書き込みます。また、裁判所に伝えるべき子に関する事情があれば記載します。こちらも裁判所で取得できます。
連絡先等の届出書
裁判所は申立人に代理人弁護士がいない場合には申立書類の審査から調停終了まで、申立人に直接書類を郵送する、平日昼間に電話を入れてくることがあります。(弁護士がいる場合は弁護士に連絡が入ります。)
そのため郵送が届く住所と平日昼間に連絡が付く電話番号を提出する必要があります。こちらも裁判所で取得できる書面です。
注意点
裁判所からの郵便が届かない、電話に出られないことは調停が進まなくなる原因です。相手方に居場所を知られたくない場合でも裁判所には連絡先を届け出る必要があります。
非開示の希望に関する申出書(必要時のみ)
裁判所に提出する書類等のうち,DVなどの理由で相手方に知られたくない勤務先や住所などの情報がある場合や家庭裁判所 が見る必要がないと思われる部分(マイナンバーなど)はマスキング(黒塗り)できます。非開示を求める場合にはマスキングしてほしい書面ごとに非開示の希望に関する申出書を添付していきます。こちらも裁判所で取得できます。
注意点
すべての非開示請求が認められるわけではありません。原則として居場所を知られたくないケースは非開示が認めらます。しかし例として、財産分与を調停で決める場合には財産状況の全てをマスキングすることはできません。
進行に関する照会回答書1通
調停の進行を行うにあたって、裁判所が知っておくべき事情を伺う書面です。調停に関しての日程調整で事前に伝えておくべきこと(例・通院で金曜日は応じられないなど)やDVの有無などを書き込みます。こちらも裁判所で取得可能です。
夫婦の戸籍謄本1通
夫婦の戸籍謄本を一通、申立時に添付して提出します。こちらは戸籍筆頭者の本籍地の市町村役場(区役所)の窓口まで行くか郵送で取得することになります。
注意点
戸籍謄本であり、戸籍抄本ではありませんので注意しましょう。また、筆頭者の本拠地で取得する必要があるので注意が必要です。裁判所への提出は発行から3か月以内というルールがありますので早すぎる取得には注意しましょう。
年金分割のための情報通知書1通(必要時のみ)
年金分割請求を行う場合には、現在の年金状況がわかる「年金分割のための情報通知書」を提出する必要があります。こちらは加入先の年金事務所や共済年金制度の窓口に依頼し取得します。取得に時間を要することもあるので、あらかじめ相談を開始しておくことがおすすめです。
注意点
年金事務所へ書面を求める際には「年金分割のための情報提供請求書」を提出する必要がありますが、大変複雑な書類です。不備を避けるためにも窓口で教えてもらいながら書くことをおすすめします。情報通知書も発行から3か月以内のものを提出する必要があるので、準備を手際よく進めましょう。
その他
調停の申立て内容によっては、裁判所側は住民票や収入状況が分かる源泉徴収書などの書類を求めてきます。例えば婚姻費用分担調停や養育費に関する調停を行う場合にはお金に関して調停員もわかるような資料を提出する必要があります。
所得証明書や給与明細書などを求められるので注意しましょう。裁判所で取得できる書類は下記リンクをご参考ください。基本的に書式は全国の家庭裁判所で共通して使えます。
離婚調停の申立とはどのように行うのか
家庭裁判所に離婚調停を申立する場合には、どのように行うのでしょうか。この項では簡単に流れについて解説します。
まず管轄地の家庭裁判所を把握する
離婚調停は家庭裁判所への申立が必要ですが、どの家庭裁判所でも良いわけではありません。原則として相手方の住所地を管轄している家庭裁判所へ申立を行います。例として妻が現在東京都内に在住し、夫が埼玉県さいたま市に在住しているとします。
妻が夫に対して離婚調停を申立したい場合には東京都内ではなく、さいたま市を管轄するさいたま家庭裁判所への申立を行います。しかし夫婦間で話し合いが出来ている状態であれば、双方の納得の上で別の家庭裁判所へ申立を行うこともできます。
【関連】離婚調停申し立ての手続きや流れ|有利に進める3つのポイント
必要書類を揃える
離婚調停を申立する場合には、上述の必要書類を揃える必要があります。家庭裁判所へ電話等の連絡をすれば調停を受付してくれるわけではなく、必要書類を揃えて提出し、家庭裁判所が無事に受理をしたら申立人と相手方(調停を申立てられた側)へ裁判所から調停期日通知書が届きます。
日程の調整申立書を裁判所に提出し受理されたら,期日の調整後おおむね2週間後に申立人と相手方に調停期日通知書が届きます。ここからが調停のスタートです。
まとめ
この記事では離婚調停に必要な書類について、種類や取得方法を紹介しました。離婚調停はご自身で申立することも可能ですが、必要書類を見ていただくとわかるように準備に時間を要します。
また、お金に関する調停(財産分与、養育費など)は細やかな収入や財産状況の資料も提出する必要があります。調停の前段階から弁護士に依頼し、アドバイスをもらうことでスムーズな申立と解決が可能です。調停に関する疑問点は、是非お気軽に弁護士へお尋ねください。