配偶者の不法行為によって離婚に至った場合は、精神的苦痛に基づく慰謝料を請求できます。不法行為とは、簡単に言うと「夫婦の権利を侵害する行為」です。不倫やDV、モラハラ、悪意の遺棄などが不法行為に該当します。今回の記事では、離婚した際に請求できる慰謝料の相場や不法行為などについて解説します。
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目次
精神的苦痛を受けた場合には離婚・慰謝料を請求できる
先述した通り、精神的苦痛で慰謝料を請求できるケースとしては、配偶者の不法行為によって離婚する場合です。ただし、配偶者から受ける行為が「不法行為」に該当するのかどうかは判断が難しく、自分が「精神的苦痛を受けている」と思っていても慰謝料が認められない可能性もあります。
配偶者の態度や言動によって精神的に追い詰めるモラハラ行為も「不法行為」に該当する可能性があり、不法行為として認められれば精神的苦痛に基づく慰謝料を請求できます。
また、実際に「精神的な虐待」で悩む方は多く、令和2年度の司法統計では「性格の不一致」や「生活費を渡さない」などに並んで多い離婚理由となっています。
理由 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
性格が合わない | 9,240 | 16,304 |
異性関係 | 2,132 | 6,505 |
暴力を振るう | 1,454 | 8,576 |
精神的に虐待する | 3,159 | 10,948 |
生活費を渡さない | 686 | 13,235 |
参考:令和2年度の司法統計(婚姻関係事件数―申立ての動機別)
精神的苦痛の慰謝料相場
精神的苦痛は、被害者が受ける損害の程度がさまざまであるため、認められる慰謝料額には幅があります。なお、具体的な慰謝料の相場は以下の通りです。
不貞行為 | 100〜300万円 |
---|---|
モラハラ | 50〜300万円 |
DV | 50〜300万円 |
悪意の遺棄 | 50万円~300万円 |
性行為の拒否 | 0~100万円 |
一般的に、離婚の慰謝料は子どもの有無や婚姻期間、相手の有責性や支払い能力など、さまざまな要素を考慮して算出されます。そのため、上記の相場はあくまで目安として捉えてください。必ずしも相場内の金額が受け取れるわけではないので注意しましょう。
精神的苦痛で慰謝料を請求できる行為の例
相手からの精神的苦痛について、どんな場合でも慰謝料請求が認められるわけではありません。ここからは、離婚で精神的苦痛に基づく慰謝料請求をできる代表的な行為について解説します。
モラハラ(暴言を吐く、無視するなど)
離婚の慰謝料を請求できる行為としてまず挙げられるのが「モラハラ」です。精神的暴力としてDVの1つにも分類され、具体的に以下のような行為が当てはまります。
- 突然大声で怒鳴る
- 何を言っても無視する
- 気に入らないときに執拗に暴言を吐く
- 実家や友人とつきあうのを制限する
- なぐる素振りなどをして脅す
- 命令するような口調で話す
モラハラを原因とする慰謝料の金額は、回数や程度、期間などの事情が大きく関係します。また、モラハラ行為の内容の他にも、モラハラによってうつ病、後遺症などを引き起こした場合は悪質と判断され、慰謝料額が増額される傾向にあります。
DV(殴る・蹴る・叩くなど)
DVを受けた場合も離婚の慰謝料を請求できます。男女共同参画局のサイトでは、たとえば次のような行為をDVとして挙げています。
- 平手で打つ
- 足で蹴る
- 身体を傷つける可能性のある物で殴る
- 刃物などの凶器を体に突きつける
- 髪を引っ張る
- 首を絞める
- 引きずり回す
- 物を投げつける
モラハラ同様、DVによりケガやうつ病などが生じて医療機関を受診しているような場合は、程度に応じて慰謝料が増額される傾向にあります。また、離婚話を切り出すと、相手が感情的になって更なる暴力行為を受ける危険性もありますので、まずはご自身の安全を確保してから離婚の話し合いを進めるようにしましょう。
・「ドメスティック・バイオレンス」とは|内閣府男女共同参画局
・DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠
悪意の遺棄(一方的に別居する、家から追い出すなど)
聞き慣れない言葉かもしれませんが、悪意の遺棄といった行為があった場合も離婚の慰謝料を請求できます。悪意の遺棄とは、正当な理由なく配偶者としての義務を果たさない行為のことです。たとえば、以下のような行為が当てはまります。
- 正当な理由なく、一方的に別居する
- 正当な理由なく、家から追い出す
- 資力があるにもかかわらず、生活費を入れない
以上の行為に加えて、別居や婚姻期間が長い、子供がいる、相手が不倫相手と同居するために家を出たなどの事情があれば慰謝料が高額になる傾向があります。
セックスレス(性交渉の拒否)
セックスレスも慰謝料の請求事由になり得ます。セックスレスの場合は、相手に性交渉を求めたものの、相手が正当な理由なく拒否し続けたという事実が必要です。また、一般的に調停や裁判では、おおよそ1年以上のセックスレス期間がなければ慰謝料が認められにくい傾向があります。セックスレスの状況にモラハラやDVが加わった場合、さらに慰謝料が高額になる可能性があります。
精神的苦痛で慰謝料請求できないケース
一方、慰謝料を請求できない代表的なケースに「性格の不一致」があります。性格の不一致は離婚の理由として最も多いですが、基本的に性格の不一致だけを理由に慰謝料の支払いを認めさせることは難しいでしょう。
離婚の慰謝料は、相手から精神的苦痛が与えられた場合に発生するものです。性格の不一致は夫婦の性格や価値観にズレが生じている状況であり、どちらかだけが悪いというものではありません。
そのため、仮に「ただ単に性格が合わない」ことを理由に慰謝料を請求した場合、裁判所が容認するのは難しいでしょう。
精神的苦痛で慰謝料を請求するために必要な証拠とは
離婚の慰謝料を請求するためには、相手の有責性、つまり精神的苦痛を受けたことを証明する証拠を用意する必要があります。では、どんなものが証拠になるのでしょうか。
医師の診断書
1つ目に、医師の診断書が挙げられます。医師の診断書があれば、身体的に悪い影響が出るほどの精神的苦痛があったことの証明になります。DVの場合、その都度アザや傷の写真を残しておくと暴力の大きな証拠になるでしょう。
また、精神的な苦痛から医師やカウンセラーに相談した事実も、有効な証拠になる可能性があります。病院に通院した記録などは可能な限り残しておきましょう。
音声や動画データ
音声や動画データも、精神的苦痛を受けたことの証拠になります。精神的苦痛の程度を具体的に示す証拠を示すことで、慰謝料を増額できる可能性が高くなるでしょう。
特にモラハラや性交渉の拒否などは目に見える傷が残りにくいため、音声や動画データは有効な証拠になり得ます。なるべく、全体の流れや状況、日時等もわかるよう録音することをおすすめします。
日記やLINE
日記やLINEも、代表的な証拠の1つです。日記やLINEから、どれだけ精神的苦痛を受けていたのかが推定されれば、精神的苦痛があったことの証明になります。
そのため、日頃の精神的苦痛やストレスなどを日記に残す場合は、「今日も相手に髪を引っ張られた」「セックスを求めても、もう女として見れないと拒否された」など、具体的に記載しておきましょう。
また日常的にDVを受けている場合は、警察や配偶者暴力相談センターなどに相談することもおすすめです。相談した履歴が警察や行政機関に保管されるため、慰謝料請求のときの証拠にもなります。
まとめ
今回は、精神的苦痛によって離婚に至った際に、請求可能な慰謝料やその相場について解説しました。離婚する際には、慰謝料の請求の他にもさまざまな条件を話し合う必要があります。
しかし、相手から精神的苦痛を受けている状況では、対等に話し合うこと自体が難しいといった場合も少なくありません。相手と話し合うことが難しい場合は、弁護士に依頼し、代理で交渉してもらうこともおすすめです。
よくある質問
旦那のせいでうつ病を発症。慰謝料を請求できますか?
旦那のモラハラなどでうつ病を発症した場合は慰謝料を請求できます。ただし、旦那と性格が合わないから、旦那の両親との仲が悪いから、など一概に旦那のせいだけとは言えない場合は慰謝料を請求するのは難しくなるでしょう。旦那のどういった行為でうつ病を発症したかがポイントとなります。