保釈金とは|保釈金の相場や保釈金が返ってくるケースを簡単に解説

保釈金(保釈保証金)とは、刑事裁判まで拘束をされている人が、保釈中に裁判所の命令に背かないように、裁判所に預けるお金のことです。

そのため、逃亡や裁判に欠席など、命令に反すれば没収される担保のようなものだと考えればわかりやすいでしょう。

没収されると困る金額が設定されるため、お金持ちほど高額な保釈金を要求されることになります。

有名人などが高額な保釈金を払うのには、このような理由があるのです。

また、保証金と罰金は全く異なるものですので、保釈金を払っても身柄が解放されるだけで、罪が許されたわけではありません。

この記事では、誤解の多い保釈金に関して次の点をわかりやすく解説します。

  • 保釈金の概要
  • 保釈金の相場と保釈金が返ってくるかどうか
  • 保釈金の支払い方法や流れ
  • 保釈金が払えない場合 など

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保釈金とは

ここでは、保釈金についてわかりやすく解説します。

保釈金は身柄解放の際に預けるお金

保釈金は、身柄を解放してもらう際に、裁判所の命令を守るように裁判所に一時的に預けるお金のことです。

正確には保釈保証金と言います。

刑事事件では、逃亡や証拠隠滅などのおそれがあると判断された場合、逮捕から刑事裁判まで、留置場や拘置所に長期間身柄を拘束されます(勾留)。

しかし、勾留されている人が限りなく怪しいとしても、裁判で有罪だと決まったわけではありません。

まだ無罪である可能性のある人を長期間勾留してしまうと、生活ができなくなってしまったり、家族を養えなくなってしまったり、生活や更生に影響してしまいます。

そのため、①一定の条件をクリアして、②保釈金を裁判所に預け、③許可された人のみ、勾留から解放してもらうことができます。

しかし、保釈されたことにより、逃亡されたり、また悪事に手を染められたりしては、治安が悪化してしまいますよね。

そのため、裁判所はこうした行為を禁止して、それを守らせるために保釈金という人質を取るのです。

また、保釈金は、裁判で有罪が確定した後に科せられる罰金とは全く異なります。

あくまでも裁判所の命令を守らせるためのお金なので、保釈金を支払ったからといって、無罪になったわけではありません

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保釈金の基準と相場

有名人が保釈される際は、その保釈金の金額が度々話題になります。

近年で言えば、カルロス・ゴーン被告が、保釈金として15億円を納めて、話題となりました。

保釈金が決まる基準と、保釈金の相場はいくらくらいなのでしょうか?

保釈金の相場と年収

保釈金は、職業や年収で一律に決まるわけではありませんが、一般的な相場はおおよそ150~300万円ほどです。

例えば、会社員や公務員の場合は、相場の150~300万円程度になるケースが多いです。

高収入な職業であれば300万円を超えることもあります。有名人であれば、さらに高額になるケースが多いです。

下表は有名人が支払った保釈金の一例です。

起訴内容 保釈金
元アイドル 飲酒運転とひき逃げ 300万円
元プロ野球選手 覚せい剤 500万円
音楽プロデューサー 詐欺 3000万円
実業家 証券取引法違反 6億円

一方で、アルバイトや学生など収入が少ない場合は、100万円程度のケースもあります。

保釈金の上限は、被告人の資産状況や、罪名などによって異なりますが、100万円を下回ることはほとんどありません。

そのため、最低でも100~150万円は必要になるでしょう。

また、次項で解説するように、保釈金の決定には様々な事情が考慮されます。

保釈金が決まる基準

先述したとおり、保釈金は、保釈中の逃亡などを抑止するために納付させるお金で、裁判所の命令に違反をした際に没収されることになります。

そのため、保釈金は被告人(裁判で訴えられた人のこと)が没収されると困る金額で設定されます

有名人は高額なお金を払えば保釈されるので不公平だという意見がありますが、収入や財産があればあるほど高額になります。

それ以外にも、法律では次の点を考慮して裁判所が決定するとしています。

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
引用:刑事訴訟法第93条2項 – e-Gov

具体的には次のような事情が影響します。

  • 被告の収入や財産、経済状況
  • 被告の家族構成、身元引受人など監督者の有無
  • 犯罪の種類、共犯者の有無
  • 前科の有無
  • 言い渡される量刑の予想
  • 容疑を否認しているか認めているか など

例えば、次のような場合、保釈金はおおよそ150万円程度になるケースが多いです。

  • 初犯や比較的軽微な犯罪である
  • 執行猶予が見込める事案
  • 逃亡や証拠隠滅のおそれがない

保釈金は裁判官が、上記の事情を勘案して職権で決定します。

被告人や家族などが工面できる金額でなければ、納付できず、勾留からも解放されません。

そのため実務上では、弁護士が事前に依頼者と話し合っておき、担当の裁判官と面談した際に、工面できる範囲で許可されるよう交渉しています。

罪名別保釈金の相場

保釈金に影響するのは、資産状況だけではありません。

重い処分が下される重大な犯罪だと、逃亡の欲求も大きくなるため、保釈金も高額になる傾向があります。

罪名別の保釈金の相場はおおよそ次のとおりです。

窃盗 約150~200万円
傷害
詐欺 約150~200万円、組織的詐欺だと約500万円
不同意わいせつ 約200万円
不同意性交等 約300万円
薬物の所持 約150万円
覚せい剤 約200万円
複数の薬物で起訴されている場合 約300~500万円
車のひき逃げや死亡事故 約200~300万円

他にも、重大な事件であれば300万円を超えることもあります。

ただしこれらはあくまでも目安です。先述したような、様々な事情を照らし合わせて、保釈金が決定されます。

保釈金は返ってくる?

保釈金の相場は世間一般で考えれば、決して安い金額ではありません。

保釈金は返ってくるのでしょうか?

保釈金は条件を満たせば返ってくる

保釈金は、あくまでも逃亡防止や裁判に出席させるための人質であるため、約束を守れば、判決内容に関係なく返還してもらえます

ただし、裁判所からの命令に背けば、全額や一部を没収されることになります。

判決から1週間程度で返還される

保釈金は、判決から早くて2~3日、遅くても1週間程度で、指定の銀行口座に振り込まれます

保釈金を納付する際は、一緒に保管金提出書という書面を提出します。

保管金提出書には、還付先の金融機関の情報を記入する欄があるため、そこに金融機関を指定しておけば、特に手続きなどを行わなくても、自動的に返還されます。

また、保釈は弁護士が申請を行い、依頼者から預かった保釈金を納付するケースが多いです。

そのため、返金時も弁護士の口座に振り込まれてから返金されるのが一般的です。

弁護士費用の支払いが終えてない場合は、弁護士費用が差し引かれて、依頼者の口座に返金される場合があります。

保釈金が返ってこないケース

保釈金は裁判所の命令に違反すると没収されることになります。

一般社団法人 日本保釈支援協会によると、2020年に保釈が許可された人は1万5,431人(全体の31.35%)、保釈が取り消された被告人の数は208人でした。

ここでは、保釈金が返ってこずに没収されてしまう次のケースを解説します。

  • 裁判に出席しなかった
  • 保釈中に逃亡や証拠隠滅をした
  • 許可なく住居の変更や旅行をした
  • 被害者など関係者と接触した

裁判に出席しなかった

保釈が取り消されて保釈金が没収されてしまうケースの1つは、裁判所への出頭義務を守らなかった場合です。

刑事事件では、被告人が出席しなければ、裁判を行うことができないと定められています(刑事訴訟法第286条)。

保釈したことで、逃亡や裁判に欠席することがないよう、保釈の条件には裁判への出席が義務付けられています(刑事訴訟法第96条1項)。

日本保釈支援協会によると、次のようなケースで保釈が取り消された事例があります。

  • 体調不良を理由に何度か裁判の出席を延期し、繁華街で飲酒していた
  • 裁判への出席が嫌で自宅にいた
  • 経営している会社の取引の契約があったため裁判を欠席した

安易に裁判を欠席すると、保釈金が没収されることになります。

参考:協会で仕事をして感じた事!後編 – 一般社団法人 日本保釈支援協会

保釈中に逃亡や証拠隠滅をした

同様に、保釈中に逃亡や証拠隠滅をすることも禁じられています。

近年では、カルロス・ゴーン被告が保釈中に国外逃亡したことから、保釈金の15億円が没収されたと報道されました。

参考:ゴーン被告、保釈金15億円は没収 過去最高額か – 朝日新聞デジタル

過去にはPCを遠隔操作し、ネットに無差別殺人の予告をした疑いのある男性が保釈された際に、真犯人を名乗るメールを送るなどして、偽装工作をしたことで保釈が取り消された事例もあります。

PC遠隔操作事件では、保釈金1,000万円のうち、600万円が没収されました。

許可なく住居の変更や旅行をした

保釈中は、仕事はもちろん普通の生活を送ることができます。

しかし、裁判所の職員や警察官が様子を見にくることがあるため、しっかりと対応できるようにしておかなければなりません。

もし裁判所の許可なく引っ越したり、旅行をしたりすれば、逃亡などのおそれがあるとして、保釈が取り消される可能性があります

被害者など関係者と接触した

保釈中は、被害者や共犯者などと接触することももちろん禁止されています。

これは、保釈中に被告人が被害者にお礼参りをしたり、共犯者と再犯に及んだりしないようにするためです。

日本保釈支援協会によると、関係者に接触したとして、保釈を取り消されてしまった事例があります。

  • 被害者に謝罪をしようと思って連絡を取ってしまった
  • 事件の関係者(友人)に悪気なく連絡を取ってしまった

参考:協会で仕事をして感じた事!後編 – 一般社団法人 日本保釈支援協会

保釈金の支払い方法

もし、保釈金を支払うことになった場合、どのように支払えばいいのでしょうか?

ここでは、保釈金の支払い方法について解説します。

保釈金はいつ払う|保釈決定後

保釈金は、支払いの期限は特に定められていませんが、保釈が決定されたその日に支払うケースが多いです。

保釈請求は、弁護士が裁判所に請求するのが一般的です。

また、被告人本人や配偶者や兄弟、両親や子どもなど直系の血族であれば、請求が可能です(刑事訴訟法第88条1項)。

裁判所に保釈請求が行われると、弁護士は裁判官と面談を行い、保釈の必要性を訴えます。

裁判所は、検察の意見や弁護士との面談を踏まえて、保釈の可否を判断します。

ここで保釈が認められれば、保釈金が明示されますので、それに従い保釈金を支払うことになります。

なお、保釈金が支払われないと、被告人はいつまでも保釈されないことになります。

保釈金は誰が誰に払う|弁護士経由で裁判所に払う

保釈金は弁護士経由で、保釈を決定した裁判所に支払うケースが多いです。

保釈金は、本人や家族、もしくは友人などから借りて支払うこともあります。

保釈金が用意できない場合は、保釈支援協会などから借りることも可能です。

保釈金は弁護士経由で、裁判所の出納課で、現金で納付されます。

最近では、事前登録することでネットバンキングなどから電子納付もできるようになりました。

参考:保管金の電子納付について – 千葉地方裁判所

保釈金が払えない場合

保釈金の相場は最低でも100万円以上し、場合によっては保釈金が払えないケースもあるでしょう。

ここでは、保釈金が払えない場合の対処法について解説します。

弁護士に相談する

保釈金が払えない場合は、弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談することで、弁護士が裁判官に保釈金を下げられるか交渉してくれます。

保釈金は、逃亡のおそれがあるような場合に、高額になるケースがあります。

弁護士は、そのような高額になるケースに対して、家族が身元引受人となり監督するため、逃亡のおそれがないなど、裁判官に主張してくれます。

日本保釈支援協会の立て替え制度を利用する

保釈金を用意できない人を支援しているのが、一般社団法人 日本保釈支援協会です。

保釈支援協会では、500万円を上限に保釈金の建て替えを行ってくれます。

立て替えてもらう保釈金によって手数料がかかりますが、保釈金を用意できない人にとっては心強い味方です。

保釈金が用意できないという人は相談してみてください。

参考:一般社団法人 日本保釈支援協会

保釈保証書を発行してもらう

保釈は、保釈金を預けるほかに、裁判所の許可のもと、保釈保証書を提出することで保釈してもらえるケースがあります。

保釈保証書は、万が一被告人が逃亡したような場合に、保釈保証書を提出した人が保釈金の支払い義務を負うというものです。

全国弁護士協同組合連合会という団体では、保釈金の一定額を預けることで、この保釈保証書を発行する事業を行っています。

もし被告人が逃亡した場合は、全国弁護士協同組合連合会が保釈金を一時的に支払ってくれます。

保釈保証書の発行には、収入などの審査や手数料の支払いが必要ですが、今すぐ保釈金全額を用意できないという人におすすめです。

参考:保釈保証書発行事業 – 全国弁護士協同組合連合会

保釈金制度は不公平でおかしい?

保釈制度をよく知らない人は、高額なお金を払えば、保釈される制度だから、金持ちだけが優遇されて、不公平でおかしいと批判する人もいます。

しかし、保釈制度は、逃亡などの抑止力として、資産状況に応じた保釈金を預けることで、身柄を解放してもらえる制度です。

保釈金は資産状況だけで決定するわけではありません。

しかし、裁判所の命令を守らせるためにあるお金なので、収入に応じた金額を求められる可能性があります。

むしろ高収入であればそれだけ高額な保釈金が求められることが予想できるでしょう。

また、保釈の条件を満たさなければ、どれだけ高額な保釈金を支払おうとしても、保釈されません。

さらに、高額な保釈金を支払ったとしても、罪から逃れられるわけではありません

裁判で有罪になれば処分を受けることになります。

お金がないという人でも、支援団体のサポートなどがあれば保釈金は用意できます。

お金持ちだけが優遇される制度だというのは誤解です。

保釈金に関するよくある質問

ここでは保釈金に関するよくある質問に回答します。

保釈金を払えば実刑にならない?

保釈金は、身柄を解放してもらう代わりに、裁判所に預けるお金です。

刑事裁判の判決には影響しないため、保釈金を払ったからといって、有罪や実刑が回避できるわけではありません

実刑になったら保釈金は返ってくるのか?

保釈金は、裁判に出廷するなど、裁判所の命令に従えば、判決後に返ってきます。

仮に実刑になったとしても、指定の銀行口座に自動的に返還されます。

まとめ

保釈金は、身柄を解放する代わりに、裁判所の命令に従わせるために支払う人質のようなものです。

保釈中に裁判所の命令に背けば、没収されてしまうため、資産状況や事件の内容などを考慮して、被告にダメージのある金額に設定されます。

仮に保釈金が用意できなくても、保釈金を立て替えてくれる団体もあるため、お金がない人でも保釈してもらえる可能性があります。

事件などによっては保釈金が高額となったり、保釈が認められなかったりすることもあります。

もし保釈金や保釈でお困りなら、ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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