刑罰の種類とは|刑罰の種類一覧と刑罰の重い順をわかりやすく解説
現代では、殺人や強盗など、他者に危害を加える行為は法律によって厳しく禁止されています。
法律で禁止されている行為を犯した場合、主に刑法にもとづき、裁判所の判断によって刑罰が科されます。
本記事では、2025年2月現在の日本における刑罰の種類や刑罰の重さについて詳しく紹介します。
目次
刑罰がある理由
犯罪行為によって裁判で有罪となった場合、法律にもとづいて刑罰が科されます。しかし、なぜ刑罰が必要なのか学ぶ機会は多くありません。
刑罰が定められている理由には、以下のものがあります。
- 刑罰を定めることで犯罪を抑止し、社会秩序を維持する
- 加害者に罪を償わせ、再び罪を犯さないように矯正を行う
刑罰というと、被害者が受けた苦痛に対する報いとしての側面を連想するかもしれません。
しかし、近年では高齢化や再犯率の増加などを背景に、加害者の更生をより重視する考え方が広まっています。
日本の刑罰の種類
日本の刑罰は大きく分けて3種類
日本での刑罰は、大きく分けて生命刑、自由刑、財産刑の3種類があります。
名称 | 概要 |
生命刑 | 犯罪者の生命を奪う刑罰で、日本では死刑のみが該当する
殺人などの極めて重大な犯罪に適用され、執行は絞首による方法で行われる |
自由刑 | 犯罪者の身体的自由を制限する刑罰で、懲役刑、禁錮刑、拘留が含まれる
社会秩序の維持や犯罪者の更生が目的 |
財産刑 | 金銭的な罰則を課すもので、罰金、科料、没収が含まれる
犯罪の抑止を目的とし、犯罪の軽重に応じて適用される |
これらの刑罰は、社会秩序を維持しつつ、罪を犯した人の責任を問うための重要な制度です。
日本の刑罰の種類一覧
現代の日本における刑罰は、大きく分けると、生命刑、自由刑、財産刑の3種類に分けられますが、さらに7つに細分化できます。
大分類 | 名称 | |
主刑 | 生命刑 | 死刑 |
自由刑 | 懲役刑 | |
禁錮刑 | ||
拘留 | ||
財産刑 | 罰金 | |
科料 | ||
付加刑 | 没収 |
刑罰の中で、死刑、懲役刑、禁錮刑、罰金、拘留、科料は主刑とされ、単独で科すことができます。
一方、没収は付加刑であり、いずれかの主刑と組み合わせて科されるため、単独では適用されません。
刑罰の重い順
日本の刑罰を、罰として重い順に並べると以下のようになります。
刑罰の重さは、基本的に死刑がもっとも重く、懲役刑、禁錮刑、罰金刑、拘留、科料、没収の順に軽くなります。
命を奪う生命刑
死刑は、罪を犯した人の命を奪う生命刑であり、日本でもっとも重い刑罰です。極刑や処刑といった表現を用いることもありますが、いずれも死刑を指します。
死刑の方法は、刑法第11条により以下のとおり定められています。
(死刑)
第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。
生命刑である死刑になる犯罪とは
死刑が科されるのは、極めて重大で悪質な犯罪に対してです。死刑が科される可能性がある犯罪は具体的に以下の犯罪が挙げられます。
罪名 | 根拠法 |
殺人罪 | 刑法第199条 |
強盗致死罪 | 刑法第240条 |
強盗・不同意性交等致死罪 | 刑法第241条 |
現住建造物等放火罪 | 刑法第108条 |
現住建造物等浸害罪 | 刑法第119条 |
内乱罪 | 刑法第77条 |
外患誘致罪 | 刑法第81条 |
外患援助罪 | 刑法第82条 |
激発物破裂罪 | 刑法117条 |
汽車転覆等致死罪 | 刑法第126条 |
往来危険による汽車転覆等致死罪 | 刑法第127条 |
水道毒物等混入致死罪 | 刑法第146条 |
組織的な殺人罪 | 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第3条 |
爆発物使用罪 | 爆発物取締罰則第1条 |
人質殺害 | 人質による強要行為等の処罰に関する法律第4条 |
航空機強取等致死罪 | 航空機の強取等の処罰に関する法律第2条 |
航空機墜落等致死罪 | 航空機の強取等の処罰に関する法律第2条 |
海賊行為致死 | 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第4条 |
決闘殺人罪 | 決闘罪ニ関スル件第3条 |
死刑が科される代表的な罪は、他人の生命を奪う殺人罪や強盗致死罪です。
単に殺人を犯しただけではなく、計画性や残虐性、被害者の人数などが考慮され、犯行の性質が特に悪質で社会的影響が大きい場合に死刑判決が下されることがあります。
特に過去の判例では、複数の被害者がいる場合や、被害者に著しい苦痛を与えた場合などに極刑がやむを得ないと判断され死刑の選択は許されると示されました。
戦争犯罪や反乱罪のように、国家や社会秩序を根底から揺るがす行為も死刑の対象になります。
なお、司法統計によると2023年に第一審で死刑判決が下されたのは1名のみでした。
参考:判例検索 – 裁判所
18歳未満は少年法により無期刑となる
少年法では、18歳未満の少年に対しては死刑ではなく、原則として無期刑(無期懲役・無期禁錮)が科される仕組みとなっています。
(死刑と無期刑の緩和)
第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。
少年法は、成長過程にある少年の犯罪に対し、社会的更生の可能性を重視すべきという考えにもとづいているためです。
2022年4月1日からは、改正少年法が適用されました。少年法が適用される年齢は、従来の20歳未満までですが、18歳・19歳の少年は特定少年という扱いになります。
特定少年が死刑、無期刑、または1年以上の懲役・禁錮に該当する罪を犯した場合、成人と同様の手続きで刑罰が科されるため、死刑判決が下される可能性もあります。
先進国で生命刑が残っているのは日本とアメリカのみ
2025年現在、先進国の中で生命刑として死刑制度を維持しているのは、日本とアメリカのみです。その背景には、それぞれの国の法制度や国民の意識が関係しています。
日本では、被害者遺族の感情を重視する文化や、犯罪抑止効果を期待する声があり、死刑制度の廃止には至っていません。
一方、アメリカでは州ごとに死刑制度の存廃が異なります。カリフォルニア州やニューヨーク州のように死刑を廃止した州がある一方で、テキサス州やフロリダ州では死刑が積極的に執行されています。
国際的には、ヨーロッパ諸国やオーストラリア、カナダなど多くの先進国が死刑を廃止しており、日本とアメリカに対して批判の声が上がることもあります。
自由を奪う自由刑
自由刑とは、罪を犯した人の身柄を拘束する刑罰であり、2025年現在では懲役刑、禁錮刑、拘留の3つがあります。
本来、日本国憲法によって、国民は国の権力による制約を受けずに自由に行動できる権利(自由権)が認められています。
しかし、自由刑が科されると、罪を犯した人を刑務所に収容して移動や生活の自由を大幅に制限されます。
懲役刑
懲役刑は、一定期間、刑務所に収容される刑罰であり、刑務作業を伴う点が特徴です(刑法第12条)。
懲役刑に処された受刑者は、刑務所内で与えられる労働に従事する義務があります。刑務作業には、工芸品製作や清掃作業などが含まれます。
作業内容は受刑者の能力や身体状況に応じて決定され、労働時間は1日8時間、週5日です。
懲役刑の目的は、受刑者の更生や社会復帰を促進することにあり、刑務作業を通じて責任感や規律を学ぶ機会を提供するものです。
懲役刑には有期と無期があり、無期懲役は終身収容を基本とします。
懲役の期間 | |
有期懲役 | 1か月以上20年以下
※刑が加重された場合は上限が30年以下 |
無期懲役 | 刑期に定めがない |
無期懲役は、法律上10年以上の収容期間を経たのちに仮釈放が認められる可能性がありますが、実務上では30年以上服役しなければ仮釈放の審査が行われません。
有期懲役の場合、判決時に量刑が3年以下であれば、執行猶予がつく可能性があります。
司法統計によると、2023年の第一審で有期懲役となった割合は約89%でした。
禁錮刑
禁錮刑は、受刑者を刑務所に収容する点では懲役刑と同じですが、作業を伴わない刑罰です(刑法第13条)。
禁錮刑の受刑者は、刑務所内で規則に従いながら日々を過ごしますが、労働に従事する義務はありません。
ただし、本人の希望により作業に参加することも可能で、多くの受刑者が刑務作業に取り組んでいます。
禁錮刑も懲役刑同様に、有期と無期があり、有期の収容期間は1か月以上20年以下、刑が加重されると最長30年以下です。
禁錮刑は、主に政治犯や過失犯など、犯罪の性質が懲役刑の適用にそぐわない場合に科されることが多いです。
例えば、故意に他者を傷つけるような犯罪ではなく、国家に対する違法行為や社会秩序を乱した行為、また過失運転致傷罪などで適用されます。
なお、同統計によると2023年に禁錮刑が科された割合は6.4%とわずかでした。
拘留
拘留は、比較的軽微な犯罪に対して科される刑罰で、1日以上30日未満の短期間、受刑者を拘禁するものです(刑法第16条)。
禁錮刑と同様に刑務作業の義務はありませんが、希望すれば作業を行えます。
拘留は、軽犯罪法違反や公然わいせつ罪など比較的軽微な罪に適用されるため、その刑罰の重さは懲役刑や禁錮刑と比べて軽いのが特徴です。
なお、検察統計の審級別 確定裁判を受けた者の裁判の結果別人員によると、2023年に拘留が科された人数はわずか5人であり、適用されるケースは非常に少ないのが実情です。
拘禁刑
拘禁刑は、刑法の改正により2025年6月1日から施行される自由刑です。
第十二条 拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。
2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。
3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。
現行制度では、懲役刑と禁錮刑の運用上の違いが少なく、禁錮刑を言い渡される受刑者が年間でも数十人程度にとどまる実情を踏まえ、懲役刑と禁錮刑が統廃合され、拘禁刑に一本化されます。
懲役刑では刑務作業が義務付けられていましたが、拘禁刑では改善更生を目的とした必要な作業や指導を行うこととされています。
これは、受刑者の再犯率低下を図り、一人ひとりに合った更生計画を柔軟に適用するためです。
財産を奪う財産刑
刑事事件を起こした者から財産を奪う刑罰が財産刑です。財産刑は、罪の重さに見合った金額を現金で納付させる形で執行されます。
罰金刑
罰金刑は、犯罪行為に対する刑罰として、一定の金銭を国庫に納付させる財産刑です(刑法第15条)。
日本では、罰金刑は軽微な犯罪から比較的重大な犯罪まで広く適用されています。
罰金刑は、以下のように犯罪ごとに上限額が定められ、犯罪の内容や情状に応じて裁判所が判断します。
罪名 | 罰金の上限 |
脅迫罪 | 30万円 |
窃盗罪 | 50万円 |
重過失致死傷罪 | 100万円 |
児童買春罪 | 300万円 |
※上記の犯罪は罰金のほかに懲役刑も定められています。
罰金を支払えない場合には、労役場に収容され、労役に従事する必要があります。
一般的に、1日あたり5,000円と換算され、罰金額に相当する金額になるまで留置されます。例えば、罰金が5万円の場合、10日間留置されることになります。
なお、犯罪によっては、罰金刑と懲役刑または禁錮刑が併科されることもあります。
科料
科料は、罰金刑よりも軽い財産刑で、1,000円以上1万円未満の金銭を国庫に納付するものです(刑法第17条)。
比較的軽微な犯罪に適用され、例えば公然わいせつ罪や器物損壊罪などが該当します。
よく似たものに過料や交通違反の反則金がありますが、科料とは異なります。
科料 | 刑法に違反した場合に刑事処分として科されるもの |
過料 | 法令上の義務に違反した場合に科されるもの(民事裁判の決定に反した場合など) |
反則金 | 交通違反に対する行政処分 |
罰金刑と同様に、科料を支払えない場合にも労役場への収容が行われ、労役を通じて支払うことになります。
没収
没収とは、罪を犯した者が所持するものの所有権を剥奪(はくだつ)し、国の物とする刑罰です(刑法第19条)。
没収は付加刑と呼ばれ、単体で科されることはなく、必ず懲役刑や罰金刑などの主刑と一緒に言い渡されます。
財産刑である没収の対象は、科料や罰金刑とは異なり多岐にわたり、犯罪に用いられた証拠品なども含まれます。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 犯罪行為に使用された凶器
- 犯罪行為によって生じた違法なもの(偽造通貨など)
- 犯罪行為によって報酬として得たもの(盗んだ現金で購入したもの)
- 覚せい剤など禁止薬物 など
特に、薬物犯罪ではこの没収が科されることがあります。
刑罰の種類に関してよくある質問Q&A
終身刑と無期刑は何が違う?
終身刑と無期刑は、どちらも原則として死ぬまで刑務所で服役する刑罰を指し、国によっていずれかの言葉が使われます。日本では無期刑(無期懲役や無期禁錮)が採用されています。
無期刑は基本的に仮釈放の可能性を含みます。一方、終身刑には仮釈放の可能性がある相対的終身刑と、仮釈放の可能性がない絶対的終身刑の2種類があります。
懲役・禁錮・拘留は何が違う?
懲役・禁錮・拘留はそれぞれ罪を犯した人の自由を奪う自由刑の一種ですが、以下のような違いがあります。
懲役 | 1ヵ月以上にわたり刑務所に入所し、刑務作業が義務となっている |
禁錮 | 1ヵ月以上にわたり刑務所に入所し、刑務作業は義務ではない |
拘留 | 30日未満の短期間刑務所に入所し、刑務作業は義務ではない |
日本では2025年6月1日から拘禁刑が導入され、懲役と禁錮が統廃合される予定となっています。
執行猶予って何?
執行猶予とは、懲役や禁錮などの自由刑について、実際に刑を執行せず一定期間様子を見る制度です(刑法第25条)。
裁判の判決時に、言い渡される量刑が3年以下の懲役や禁錮の場合、一般社会で更生の可能性があると判断された場合に適用されます。
執行猶予の期間は1〜5年とされ、その間に再び罪を犯して罰金刑以上を科されなければ、刑の言い渡しは効力を失います。
一方、執行猶予期間中に再犯し、罰金刑以上が科された場合は執行猶予が取り消され、刑務所に収容されます。
まとめ
本記事では、刑罰の種類や生命刑・自由刑・財産刑の概要を紹介しました。
日本の刑事裁判の有罪率は99.9%とされ、起訴されると高確率で有罪になります。
場合によっては実刑判決が下されるおそれがあるため、起訴を避けることや執行猶予を獲得することが重要です。
自身や家族が刑事事件を起こしてしまい、どのような刑罰を受けることになるか不安な場合や、一刻も早い釈放を目指す場合は、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。