痴漢冤罪で逮捕されそう・された…不当な結果を避けるための対処法とは

痴漢冤罪事件で困難な点は、冤罪であることを証明しなければならない点です。痴漢冤罪の場合は容疑を否認し続ける否認事件になるので、厳しい取り調べがなされたり、弁護活動の難易度が上がったりすることが予想されます。

万一痴漢を疑われた場合は、上記の点を念頭に入れつつ、今後有利な結果を得やすくなるような対応をするべきです。

痴漢冤罪で逮捕された場合は、どのように対応すればいいのでしょうか?

この記事では、主に以下の点をご紹介します。

  • 痴漢の疑いをかけられた時の対応方法
  • 痴漢冤罪をかけられた際に予想されるリスク
  • 痴漢冤罪事件における弁護活動の方針

痴漢に間違われた際の対応を知りたい方、あるいは痴漢冤罪でご家族が逮捕された方はぜひご参考ください。

痴漢冤罪で逮捕されそうな場合の初期対応

痴漢冤罪で逮捕されそうな場合、次の3点が大切です。

  • 不利になるような言動をしない
  • 冤罪を証明するための証拠を残す
  • 素早い初期対応をするために弁護士を呼ぶ

具体的な初期対応は、以下の通りです。詳しく見ていきましょう。

  1. 逃げない
  2. 可能な限り証拠を残す
  3. 痴漢をしたと解釈される発言をしない
  4. 家族に連絡をする
  5. 職場に連絡する
  6. 弁護士を呼ぶ

逃げない

基本的に痴漢の疑いをかけられた際に逃げるのはリスクの高いことです。

逃げた場合に予想される具体的なリスクは例えば…

  • 線路に降りてダイヤを乱した…損害賠償請求
  • 逃げる際に人にぶつかり怪我をさせた…傷害罪に問われる恐れ
  • 逃げようとして逃げきれなかった…逮捕・身柄拘束長期化の恐れ
  • 逃げきれた…後日逮捕の恐れがある

逃げた方がいいという専門家もいるようですが、本当にそうでしょうか?その場から逃走した場合のリスクについてもう少し詳しくご説明します。

その場から逃げ切れた場合、その後ただちに逮捕されることはないかもしれません。

しかし、防犯カメラの映像や交通系ICカードの情報、目撃者の証言により個人を特定されてしまった場合には、後日逮捕されてしまう可能性も十分にあります。

その際、自宅や勤務先に警察が来ることももちろん考えられます。

それだけではなく、本来であれば在宅で捜査されるようなケースでも逃亡のおそれがあると判断され逮捕されてしまったり、逮捕されてしまった場合になかなか釈放してもらえなかったりと、拘束期間が長くなる恐れがあります。

さらに、本当は痴漢行為はやっていないにもかかわらず、逃走したということは痴漢をしたのではないかと捜査機関にとらえられてしまう可能性があり、逃走したことが被疑者にとってマイナスな事情となってしまいます。

このように不利な結果にならないよう、以下でお伝えする初期対応を覚えておいてください。

可能な限り証拠を残す

痴漢冤罪事件で困難な点は、痴漢をしていないことを証明することです。やっていないことを証明するのはやったことを証明するよりも困難です。可能な限り証拠を残しておきましょう。

【痴漢冤罪の証拠になるもの】

  • 繊維鑑定・DNA鑑定の結果
  • 防犯カメラの映像
  • 目撃者の証言
  • 被害者の供述
  • 被疑者の供述
  • 録音

痴漢冤罪を疑われた段階で、証拠を残すためにできることは次の3点です。それぞれ見ていきましょう。

  • 録音する
  • 目撃者を探す
  • 繊維鑑定・DNA鑑定をするよう伝える

録音する

会話を録音しておくと、後で証拠として使えるかもしれません。事件発生後の被害者の証言を録音できるので、例えば、今後被害者の証言の矛盾点を探す際に録音が使えるかもしれません。

目撃者を探す

目撃者を探すのは事件直後であればあるほど簡単です。近くに乗っていた人が被疑者の無実を証言してくれれば、被疑者にとって有利な証拠になります。

繊維検査・DNA検査をするよう伝える

繊維検査、DNA検査をするように、駅員や警察に伝えましょう。

  • 繊維鑑定とは…被疑者の手に被害者の衣服の繊維がついているか鑑定すること
  • DNA鑑定とは…被害者の衣服に被疑者のDNAがついているか鑑定すること

痴漢では被疑者と被害者の証言以外に証拠がないような状況も少なくありません。事件発生直後に上記でお伝えした客観的な証拠を収集しておけば、冤罪を証明する上で有利な結果を得やすくなります。

痴漢をしたと解釈される発言をしない

痴漢の疑いをかけられてからは、こちらの発言は証拠になってしまうことを肝に銘じておきましょう。

「すみません」のような、痴漢をしたことに対する謝罪をしたととられるような発言は避けましょう。

取り調べや裁判のときなどに、「なぜ事件発生直後にすみませんと言ったのですか?痴漢をしたのではないですか?」と質問されるようなことが起こり得ます。

謝罪はせずに、痴漢をしていない旨をはじめから一貫して主張しましょう。

家族に連絡をする

逮捕されてからでは電話ができなくなってしまいます。すぐに家族に以下3点を伝えましょう。

  • 痴漢冤罪に巻き込まれたこと
  • 駅名
  • 弁護士を呼んで欲しいこと

痴漢冤罪で駅員室に連行された時点では逮捕される可能性も逮捕されない可能性もあります。しかし逮捕されてしまったとしたら、痴漢が冤罪であることを証明しなければいけなくなります。

そのためには刑事弁護が必要です。ご家族に上記3点を伝えることで、弁護士が迅速に現場に向かえます。

弁護士が早期に現場に到着するメリットは例えば…

  • 逮捕を回避しやすくなる
  • 取り調べでの対応方法を助言してもらえる
  • 迅速な事件解決を目指せる
  • 適切な証拠を集めやすくなる

お知り合いに弁護士の方がいる場合は、直接連絡をしてもいいかもしれません。

職場に連絡する

残念ですが、当日の仕事には遅刻してしまうでしょう。無断欠勤にならないように、職場に仕事を休む旨の連絡をいれましょう。

欠勤の理由は、体調不良などにしておくといいでしょう。痴漢を疑われたと伝えるのは、弁護士に相談をして、必要だと判断できてからでも遅くありません。

痴漢冤罪で逮捕された場合に予想されるリスク

残念ですが、冤罪でも逮捕されることはありえます。逮捕された場合も不利な結果にならないように適切な対応をするべきです。具体的な対応方法をお伝えする前に、痴漢冤罪で逮捕された場合のリスクを明確にしていきましょう。

  • 冤罪を証明できずに罪に問われてしまう
  • 厳しい取り調べがなされ、嘘の自白をしてしまう恐れがある
  • 身柄拘束の期間が長期化することもある

冤罪を証明できずに罪に問われてしまう

最悪の事態は、冤罪を証明できずに痴漢の罪に問われてしまうことです。

大変理不尽なことではあるのですが、痴漢を疑われ逮捕されている以上、何らかの方法で痴漢をしていないことを証明する必要があります。これができなければ、不起訴や無罪を得られる保証はありません。

痴漢の刑事罰につきましては、以下記事で解説しています。

関連記事
痴漢行為で逮捕された場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。 本コラムでは、以下の点を解説します。 痴漢をした場合に問われる罪 痴漢行為で科される刑罰 痴漢行為で刑罰を軽くする方法 目次1 痴漢をした場合に問われる罪...

厳しい取り調べがなされ、嘘の自白をしてしまう恐れがある

痴漢冤罪事件では、被疑者や被害者の証拠以外に証拠がないようなケースもあります。

被疑者が容疑を否認している事件のことを否認事件といいます。否認事件では、犯罪の証拠をおさえるため、警察の取り調べが厳しくなることがあります。

被疑者の供述をもとに、警察や検察が供述調書を作成します。被疑者がこれに署名捺印することで、供述調書は証拠として使えるようになります。

例えば、脅迫や強要じみた厳しい取り調べのすえの自白であったとしても、供述調書に被疑者の署名押印があれば、証拠としては有効になってしまいます。

何を言われても否認を貫くということだけは覚えておいてください。

身柄拘束の期間が長期化することもある

痴漢に限らず、否認事件では身柄拘束の期間が長くなる恐れがあります。起訴前の身柄拘束の期間は最大で23日間です。

特に厄介なのが、勾留という原則10日間、最大20日間の身柄拘束です。検察が勾留請求をし、裁判所がこれを認めることで、勾留が決定されます。

身柄拘束長期化のリスクを減らすためには、できるだけ早めに刑事弁護を依頼し、勾留請求や勾留決定を防ぐ必要があります。

痴漢冤罪で逮捕された後の対応

上記リスクを踏まえた上で、逮捕された後の具体的な対応をお伝えします。

  • 弁護士を呼ぶ
  • 弁護士が面会に到着するまでは黙秘や否認をする
  • 取り調べへの対応方法を弁護士に相談する
  • 自白調書を作成させない
  • 被疑者ノートに取り調べの様子を記入する

弁護士を呼ぶ

上でお伝えしたように、不起訴や無罪を得るためには、痴漢をしていない証拠を収集したり、証拠が不十分であることを主張したりする必要があります。このような活動は基本的に弁護士でなければ困難です。

痴漢冤罪で逮捕されたらすぐに弁護士を呼びましょう。

なお、逮捕された場合、電話を使うことはできません。ご家族が既に逮捕されている場合は、逮捕された方のご家族が弁護士を探して刑事弁護を依頼する必要があります。

弁護士が面会に到着するまでは黙秘や否認をする

黙秘権を使う、否認をする、というのが否認事件の基本的な対応です。ただし、弁護士を呼ぶことなく黙秘や否認をしても事態は好転しません。

取り調べを受ける際のストレスや恐怖は筆舌に尽くし難いかと思いますが、弁護士が到着するまではなんとか嘘の自白をしないようにしてください。

取り調べへの対応方法を弁護士に相談する

弁護士が面会に到着した後は、弁護士に事件の概要を伝えてください。今後の見通しや、取り調べへの対応方法など具体的な助言を受けられます。

逮捕後、周囲には味方はいません。弁護士は今後の助言だけではなく、ご家族からの伝言を伝えたり、取り調べに屈しないよう励ましたりします。痴漢の冤罪をかけられている方が厳しい状況に屈してしまわないよう、必要な対応をいたします。

自白調書を作成させない

嘘の自白をするのは避けてください。

供述調書に署名捺印する際は、必ず記入された内容を確認しましょう。事実と異なる内容が書かれていた場合は、表現を修正するように取り調べをしている警察や検察に伝える必要があります。

供述調書の内容が事実と異なる以上、署名捺印をする必要はありません。

被疑者ノートに取り調べの様子を記入する

被疑者ノートに取り調べの様子をメモしましょう。被疑者ノートとは、被疑者が不利な取り調べを受けることを防ぐためのノートで、日弁連により作成されました。

被疑者ノートに取り調べの記録を残しておくことで、自白調書を作成されてしまった場合に、違法・不当な取り調べがあった証拠になる場合があります。

被疑者ノートは、日弁連のHPからダウンロードできます。ご希望があれば、弁護士が接見をする際に差し入れることもできます。

痴漢冤罪で逮捕された後の流れ

逮捕後の詳しい流れについては、以下の記事をご参照ください。

関連記事
家族が逮捕された時、あるいは罪を犯し逮捕される可能性があるときなど、これからどうなるのか不安になると思います。 この記事では、家族が逮捕された人や、警察から連絡があり逮捕が不安な人に向けて、以下の点をわかりやすく解説しま...

ここでは逮捕後の流れについておおまかに図解します。

  • 警察による取り調べ(48時間以内):被疑者の供述をもとに供述調書が作成される
  • 検察への送致(24時間以内):警察から検察に身柄が引き渡される
  • 勾留(最大20日間):勾留請求が認められると、原則10日間(最大20日間)の身柄拘束がなされる
  • 起訴・不起訴の判断:検察が刑事裁判の開廷を求めるべきかどうか判断する
  • 起訴後勾留(原則2ヶ月):原則2ヶ月、以降1ヶ月ごとに更新される身柄拘束のこと
  • 刑事裁判:有罪か無罪か、有罪ならどの程度の刑罰が妥当か判断される

痴漢冤罪事件では、身柄拘束が長期化する恐れがあります。

捜査中に身柄拘束がされるのは、被疑者に逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されるケースです。

身柄拘束の長期化を防ぎつつ、被疑者にとって有利な証拠を揃えることが痴漢冤罪事件では重要です。

次の項目では、被疑者にとって有利な結果を得るために、弁護士がどのような弁護活動を行うのか具体的にご説明します。

痴漢冤罪で逮捕された場合の弁護活動の方針

最後に、弁護士が痴漢冤罪事件でどのような活動を行うのか、具体的な内容と方針について詳しくお伝えします。

  • 不起訴・無罪の獲得を目指す
  • 自白調書の作成を防ぐ
  • 身柄拘束の長期化を防ぐ
  • 冤罪を証明する証拠を集める
  • 被害者の供述の矛盾点を見つける

不起訴・無罪の獲得を目指す

刑事弁護の主な目的は次の2点です。

  • 不起訴の獲得を目指す
  • 無罪の獲得を目指す

不起訴の獲得を目指す

不起訴とは、裁判所の審判を求める必要がないと検察官が判断することです。

不起訴には、以下の3つがあります。

  • 嫌疑なし:犯罪を裏付ける証拠がないこと
  • 嫌疑不十分:犯罪を裏付ける証拠が不十分なこと
  • 起訴猶予:犯行を裏付ける証拠はあるものの、情状を鑑みて不起訴にすること

痴漢冤罪事件では、上記のうち嫌疑なしか嫌疑不十分の獲得を目指します。

無罪の獲得を目指す

起訴されてしまった場合は、無罪を目指します。

自白事件の場合は罪の軽減や罰金刑、執行猶予などを目指しますが、冤罪事件の場合は犯行事実を基本的には認めないため、自白事件とは方針が異なります。

以下では、不起訴・無罪を獲得するための具体的な活動内容についてご説明します。

自白調書の作成を防ぐ

弁護士は、被疑者と面会に向かい、取り調べへの対応方法を助言します。

被疑者に説明する内容は例えば…

  • 自白調書が取られる不利益について
  • 黙秘権があること
  • 調書訂正を申し立てる権利があること
  • 署名捺印の拒否権があること

身柄拘束の長期化を防ぐ

逮捕や勾留を防ぐために、弁護士は次のような活動をします。

  • 逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを警察官に主張
  • 検察官に在宅での取り調べを要請
  • 裁判官に検察官による勾留請求の却下を要請
  • 勾留に対する準抗告・取消請求

釈放や保釈を得るための弁護活動については、以下記事でより詳しくご説明しています。

関連記事
釈放(しゃくほう)とは、身柄拘束から解放されることです。 釈放されるタイミングを大まかにわけると、次の3つになります。 逮捕後勾留前 勾留後起訴前 起訴後 この記事では、釈放の基礎知識をお伝えした上で、釈放を得るために弁...

冤罪を証明する証拠を集める

痴漢冤罪事件では、警察が証拠を十分に集めないようなことも起こり得ます。弁護士は、例えば次のような証拠を収集します。

  • 目撃者を探す
  • 防犯カメラの映像を確認する
  • 繊維鑑定・DNA鑑定

目撃者を探す

事件の目撃者がいれば、被疑者にとって有利な供述が得られるかもしれません。

例え事件直後であっても、被疑者の方が直接目撃者を探すのは困難です。弁護士は、ご依頼者様にかわって事件の目撃者を探し、事件についての供述をお願いすることがあります。

防犯カメラの映像を確認する

バスや電車内・構内に設置された防犯カメラを確認します。カメラの映像をもとに、被害者と被疑者の位置関係から痴漢が不可能であることなど、痴漢をしていないことを主張します。

繊維鑑定・DNA鑑定

繊維鑑定・DNA鑑定の結果によって、被害者の衣服に被疑者のDNAが付着していない、または被疑者の手に被害者の衣服の繊維が付着してないことがわかれば、不起訴や無罪を獲得しやすくなります。

被害者の供述の矛盾点を見つける

被害者の供述の矛盾点や不自然な点を主張します。痴漢冤罪事件では被害者の供述以外に証拠がないことも少なくありません。被害者の供述に信憑性がないと判断されれば、不起訴や無罪の獲得に一歩近づきます。

警察や検察、裁判官は被害者女性の供述を信用することが多いです。弁護士はご依頼者様の味方になり、被害者の供述に証拠としての力がない旨を主張します。

まとめ

痴漢冤罪で逮捕される可能性があることは一般に知られるようになりました。満員電車に乗る機会の多い人は特にそのリスクを抱えていることになります。疑われないように気を付けようにも、限界があるように感じます。

もし痴漢を疑われてしまった場合には、はじめからはっきりと否定をすることです。もし逮捕されてしまうようなことがあれば、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

最短即日対応/夜間土日祝日対応/不起訴・釈放に向け迅速に弁護します 逮捕されたらすぐご連絡ください!

0120-949-231
受付時間24時間365日/メールでの相談予約はこちら
pagetop
0120-949-231
無料相談予約はこちら
支店一覧/アクセス