少年事件|手続きの流れや用語等を詳しく解説
少年が刑事事件を起こした場合、その後の手続きはどうなるのでしょうか。少年事件は成人事件とは違う複雑な手続きが用意されています。この記事では少年事件特有の手続きの流れや基本的な用語等の解説をします。
目次
少年事件とは
少年とは、性別に関わらず20歳に満たない者のことです。少年が罪を犯した場合には20歳以上の成人の刑事手続きとは異なる手続きが定められています。少年法の理念と少年法が扱う少年について解説します。
少年事件とは
罪を犯した少年の健全な育成のため、少年法は特別な措置を講ずるとしています。成人の場合には地方裁判所等での公開の法廷において審理され、有罪とされると刑罰を科されます。
少年の場合には凶悪な罪を犯した等一部の例外を除き、非公開の家庭裁判所で審判を行います。刑罰を科すのではなく、保護処分にし社会復帰を目指します。
少年とは
少年がどのような者かについて、少年法第2条1項に定義されています。
少年法第2条 この法律において「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。
引用:e-GOV法令検索
少年法改正(令和4年4月1日施行)のポイント(3つ)
成年年齢を18歳とする民法の一部改正にあわせて、少年法の改正も行われました。18歳・19歳の者が罪を犯した場合には、17歳以下の少年とは異なる特例が定められました。
- 少年法の適用
- 原則逆送対象事件の拡大
- 実名報道の解禁
引用元:法務省HP
民法では成年とされる18歳・19歳も特定少年として引き続き少年法が適用されます。ただし、逆送決定後は20歳以上の者と原則同様に取り扱われるなど、17歳以下の者とは異なる取り扱いがされます。
※逆送とは・・・家庭裁判所から検察に事件が送り返されること。
原則として逆送決定がされる事件に、18歳以上のときに犯した死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪の事件が追加されます。これにより18歳以上20歳未満の少年も、死刑が科される可能性があります。
少年のときに犯した事件については、犯人の実名・写真等の報道が禁じられていますが、18歳以上のときに犯した事件について起訴された場合には、上記禁止が解除されます。
少年の要保護性とは
日本の法律上、14歳未満の少年は刑事処罰を受けません。
刑法第41条 14歳に満たない者の行為は、罰しない。
引用:e-GOV法令検索
そのため、少年審判手続きを受ける少年は、原則として14歳以上20歳未満の子どもです。
少年審判手続きにおいてくだされる保護観察や少年院送致などの処分は、保護処分と呼ばれます。保護処分が言い渡されたとしても、前科はつきません。
成人の刑事事件においては、罪の重さ等に応じて刑罰が決まりますが、少年の場合には二度と罪を犯さず更生するにはどのような手当が必要かという考えで家庭裁判所裁判官が最終的な処分を決めます。
少年審判においてどの処分を下すかは、罪の重さだけではなく要保護性も考慮されます。要保護性とは以下3つです。
- 非行を繰り返す危険性
- 家庭裁判所が保護処分を選択する相当性
- 矯正の可能性
家庭裁判所が保護処分を選択する相当性とは、少年の処遇にとって、保護処分が児童福祉法上の措置や刑事処分など他の手段よりも適切であることです。
矯正の可能性とは、保護処分によって、少年の犯罪的危険性を除去できる可能性があることです。
要保護性が高い、つまり将来再び非行に陥る危険性が高いことになるため、少年院送致という厳しい保護処分になる可能性が高くなります。
少年法のもとでは、保護処分を選択することにより将来の非行を防止できる可能性があると認められない場合には、保護処分に付せません。児童福祉法上の措置や刑事処分など、他の手段をとることがより適切である場合には児童相談所長送致や逆送決定がされます。
家庭裁判所が扱う少年事件
少年法により少年は、以下の3つに分類されます(少年法第3条)。
犯罪少年
犯罪少年とは、14歳以上で罪を犯した少年です。
触法少年(しょくほうしょうねん)
触法少年とは、14歳未満で、刑罰法令に触れる行為をした少年です。14歳未満なので、刑罰法令に触れる行為をしても刑事責任を問われません。
虞犯少年(ぐはんしょうねん)
虞犯とは、罪を犯すおそれがあるということです。虞犯少年とは、少年法第3条第3号に規定されている法定の虞犯事由があり、将来罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれがある18歳未満の少年です。
年齢による区別
少年は年齢によっても取り扱いに区別があります。なお、いつを基準として年齢の判断をするか記載が無い場合には、罪を犯した時点ではなく、少年審判で処遇が決定した時点を基準にします。
18歳以上20歳未満(特定少年)
少年法では、20歳に満たない者を少年といいます。
少年法第2条第1項 この法律において「少年」とは、20歳に満たない者をいう。
引用:e-GOV法令検索
18・19歳は民法上成人とされますが、少年法では少年とされ、「特定少年」として17歳以下の者とは異なる取り扱いがされます。異なる取り扱いの内容は、少年法改正のポイントで記載したとおり以下3つです。
- 少年法の適用
- 原則逆送対象事件の拡大
- 実名報道の解禁
18歳未満
罪を犯したときに18歳未満であれば、死刑を科せません。
少年法第51条第1項 罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科する。
引用:e-GOV法令検索
16歳未満
少年法第20条第2項に、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合に、その事件を犯した時に16歳以上であった場合には原則検察官に送致しなければならないとされています。16歳未満の場合には被害者が死亡してしまった事件や、その他の重大事件で刑事処分が相当とされる場合のみ、逆送されます。
少年法第20条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。
引用:e-GOV法令検索
14歳未満
14歳未満の場合には、罪を犯した場合でも刑事責任を問えせん。14歳未満の刑罰法規に触れる行為をした少年(触法少年)は、児童福祉法上の措置が優先され、児童自立支援施設への入所や里親への委託等の措置がされますが、少年審判に付するのが適当と認められる少年は家庭裁判所に送致されます。ただし、14歳未満の少年の逆送はありません。
年齢切迫少年
罪を犯した時には20歳未満であったけれど、家庭裁判所送致時に20歳の誕生日に迫っている少年のことをいいます。事件が家庭裁判所に送られ、調査・審判を行っている最中に20歳に達すると、事件を成人の刑事手続きに戻さなければなりません。手続きの進み具合によって逆送の可能性があるため、注意が必要です。
少年事件の流れ
少年事件の場合、年齢によって、あるいは事件の内容によって手続きの流れが異なります。東京弁護士会のHPにオーソドックスな流れが掲載されているので、下図を。
引用元:東京弁護士会
捜査段階
少年事件も、成人の刑事手続き同様、逮捕される場合と在宅で捜査が進む場合とがあります。それぞれ見ていきましょう。
逮捕されている場合
逮捕されると、成人の刑事手続き同様、次のステップまでの時間制限がつきます。
14歳以上の少年で、法定刑が懲役・禁錮等の比較的重い罪を犯した場合、警察官は逮捕してから48時間以内に、検察官に事件を送致します。
14歳以上の少年で、法定刑が罰金以下の罪を犯した場合には、警察官は直接家庭裁判所に事件を送致します。
14歳未満の少年は罰せられません。したがって逮捕もされません。
在宅事件の場合
最初の取り調べ後に逮捕されずに自宅に帰されると、在宅事件となります。在宅事件の場合には身柄を拘束されていないため、時間制限がありません。家庭裁判所送致後に観護措置が取られることも基本的にはありません。
捜査中は捜査機関から呼び出しを受け、取り調べに応じます。学校行事などで予定がある場合には、取り調べを別の日程に変更できないか打診しましょう。呼び出しに応じなかった場合には、逃亡したと判断され身柄を拘束されてしまう可能性があります。必ず呼び出しに応じて取り調べを受けましょう。
事件が家庭裁判所に送致された後は、家庭裁判所から呼び出しがあります。こちらも応じなければなりません。
14歳未満の少年は罰せられず、逮捕もされません。警察官は少年の行為や環境などを調査し、その結果に応じて児童相談所に通告または送致します。児童相談所は家庭裁判所での審判が必要と判断した場合には事件を家庭裁判所に送致しますが、児童福祉法上の措置である児童自立支援施施設への入所や里親への委託等をして事件を終わらせることもあります。
児童福祉法第25条第1項本文 要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
引用:e-GOV法令検索
勾留か勾留に代わる観護措置|少年鑑別所送致
逮捕後検察官に送致された場合には、24時間以内に検察官は少年を勾留するか、勾留に代わる観護措置をとるか決定します。
勾留が認められれば最大20日間勾留されます。成人の場合、勾留を認められる要件は逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあることとされていますが(刑事訴訟法第60条第1項)、少年が勾留を認められるのは、それに加えてやむを得ない場合に限られます。
少年法第48条第1項 勾留状は、やむを得ない場合でなければ、少年に対して、これを発することはできない。
刑事訴訟法第60条第1項 裁判所は、被告人が罪を犯した事を疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の1にあたるときは、これを勾留することができる。
1 被告人が定まった住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
引用:e-GOV法令検索
少年事件の場合、勾留に代わる観護措置がとられることもあります。観護措置がなされると、少年は少年鑑別所に収容されます。観護措置は勾留とは異なり延長が認められていないため、期間は10日間に限られます。
観護措置をとる必要性とは、次の3つが考えられています。
- 少年の身柄確保の必要性
- 緊急に少年を保護する必要があること
- 少年を収容して心身鑑別をする必要があること
身柄確保の必要性とは、勾留の要件と同様、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれのことです。
緊急に少年を保護する必要があるとは、自殺のおそれがある場合や、保護者から虐待をうけるおそれがある場合等のことです。
勾留に代わる観護措置がとられ少年鑑別所に収容された事件が家庭裁判所に送致された場合、家庭裁判所送致後も引き続き少年鑑別所に収容されます。
家庭裁判所へ事件の送致(全件送致)
勾留または勾留に代わる観護措置の期間が終了すると、少年事件は原則としてすべて家庭裁判所に送致されます。成人の事件の場合には犯罪の嫌疑があっても検察官の裁量で事件が不起訴で終了しますが、少年事件の場合には犯罪の嫌疑があると判断した場合にはすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべきと考えた場合には、家庭裁判所に送致しなければなりません。
少年法第41条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
少年法第42条第1項 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第45条第5号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
引用:e-GOV法令検索
全ての事件を家庭裁判所に送致する理由は、少年法が処罰ではなく少年の健全な育成を目的としているためです。少年の健全な育成のため、どのような処分が適しているかを家庭裁判所の調査で明らかにするために全件送致します。
家庭裁判所送致後の観護措置
捜査段階の勾留に代わる観護措置とは別に、家庭裁判所送致後の観護措置もあります。捜査段階同様、少年鑑別所に送致します。少年鑑別所に収容される期間は、通常は最長4週間ですが、一定の事件で証拠調べが必要な場合は最長8時間まで延長できます。
観護措置は、審判を行うため必要があるときにできるとされています。
少年法第17条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもって、次に掲げる観護の措置をとることができる。
2 少年鑑別所に送致すること。
引用:e-GOV法令検索
少年鑑別所の役割は次の3つです。
- 鑑別を行う
- 観護処遇を行う
- 地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行う
少年鑑別所では、少年の処分を適切に決めるために、面接や様々な心理検査等が行われます。
家庭裁判所調査官による調査
事件が送致されると家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に調査を命令します。調査官は少年審判を開くか否か判断するための種々の調査をします。
少年保護事件の審理に必要な調査
調査官がする調査は多岐にわたります。調査官は基本的には、心理学、教育学、社会学等を専門に勉強してきています。少年の問題点を探るため、鑑別所での少年との面接、家族との面接、家庭状況の調査、学校生活の調査等を行います。調査官による調査は専門的なものであるため、専門スタッフによる調査が行われます。調査結果とともに、処遇意見をつけて家庭裁判所に報告します。
審判への出席
家庭裁判所で開かれる審判には、以下の人々が出席します。
- 裁判官
- 裁判所書記官
- 調査官
- 裁判所事務官
- 少年本人
- 保護者
- 付添人 など
原則として検察官は出席しませんが、一定の重大事件で事実認定の為必要がある場合は、家庭裁判所の判断で出席することがあります。
少年法第22条の2第1項 家庭裁判所は、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る事件であって、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させることができる。
引用:e-GOV法令検索
検察官が審判に出席する場合には、必ず国選付添人が付されます。
審判
審判は、本当に少年に非行があったのかどうかを確認した上、適正な処分を選択するための手続きです。審判開始決定がなされた場合、家庭裁判所に送致されてから4週間以内に審判が開かれます。
試験観察とは
家庭裁判所では、審判開始後少年に対する処分を直ちに決めることが困難な場合に、少年を適当な期間、家庭裁判所調査官の観察に付すことがあります。これを試験観察といいます。
試験観察では、調査官が少年に対し更生のための助言や指導を与えながら少年が自ら改善する様子を観察します。この観察の結果も踏まえて、裁判官が処分を決めます。
補導委託とは
補導委託とは、試験観察と併せて、家庭裁判所調査官ではなく民間の人や施設に指導を委託することです。
民間の補導委託先の協力によって、少年を家庭的な生活環境に置き、規則正しい生活習慣を身につけさせたり、仕事などを通して社会人としての生活習慣を学んだりします。
法的調査と社会調査
事件についての調査には法的調査と社会調査の2種類があります。法的調査とは、少年が本当に非行をしたのかどうかという調査です。
社会調査とは、要保護性に関する調査です。少年がどれくらい再非行の可能性があるか、どうすれば再非行の可能性を小さくできるかの調査です。
少年事件の処分内容
少年事件の処分とはどのようなものかについて解説します。
処分の目的
家庭裁判所における処分の目的は、成人の刑事手続きとは違い、犯した罪の重さに対して刑罰を与えるのではなく再非行の防止にあります。
処分の種類
家庭裁判所は、種々の調査を行ったうえで、どのような処分にするか判断します。
不処分、審判不開始(教育的働きかけ)
非行事実が存在しない、あるいは非行事実は存在するけれど、少年審判を開いて保護処分などを行う必要が無いと判断した場合には、審判不開始決定がされます。審判不開始決定がされた場合には、その時点で手続きは終了します。
何らかの処分をしなくとも、調査、審判などにおける様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められる場合には、不処分決定がされ、釈放されます。
不処分や審判不開始の決定により事件が終了する場合でも、裁判所は何もしなかったわけではありません。裁判官や調査官による訓戒や指導、犯罪被害について考えさせる講習などといった教育的な働きかけを行い、少年や保護者の更生可能性などを見極めた上で決定しています。
知事又は児童相談所長送致
児童相談所は、18歳未満の児童をめぐる各種の相談に応じ、児童福祉司による指導、児童福祉施設への入所や里親への委託などの措置を行う都道府県の機関です。保護処分に付するのではなく、児童福祉機関の指導に委ねるのが相当と認められた場合には、知事又は児童相談所長に事件を送致します。
保護処分決定
保護処分には以下3つがあります。
- 保護観察
- 少年院送致
- 児童自立支援施設等送致
保護観察官や保護司の指導・監督の下で、社会内で改善・更生できると判断された場合には、保護観察処分にします。少年が自分の力で社会復帰できるように保護観察官等が手助けをします。
再非行のおそれが強いため、社会内での更生が難しく、矯正教育を受けさせる必要があると判断されると少年院送致となります。少年院では、再び非行に走ることのないように反省を深めさせるとともに、規則正しい生活習慣を身に付けさせ、教科教育や職業指導などの指導を行います。
少年を取り巻く環境を重視し、開放的な施設における生活指導を要すると認められる比較的低年齢の少年は、児童自立支援施設等に送致されます。児童自立支援施設は、非行を犯した児童等の支援施設です。児童養護施設は、保護者のない児童や虐待されている児童等の保護施設です。
検察官送致(逆送)
犯行時14歳以上の少年について、非行歴、心身の成熟度、事件の内容などから、保護処分ではなく刑事裁判によって処罰するのが相当と判断された場合には、家庭裁判所は事件を検察官に送致します。逆送事件の場合には原則として起訴されます。
なお、犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合、犯行時18歳以上の少年が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯した場合には、原則として事件を検察官に送致しなければなりません。(少年法第20条)(原則検察官送致)
検察官は、検察官送致がされた場合には、原則として少年を地方裁判所または簡易裁判所に起訴しなければなりません。
少年事件における弁護士の役割
少年事件では、事件が家庭裁判所に送致されると弁護士は付添人と呼ばれます。弁護士の役割や、その弁護活動について解説します。
付添人
少年及び保護者は、事件発生後いつでも弁護士(家庭裁判所送致後は付添人)を選任できます。
家庭裁判所は、一定の重大事件について審判に検察官を出席させる決定をした場合や、被害を受けた方に審判の傍聴を許す場合に、少年に弁護士である付添人がないときは弁護士である付添人を付さなければなりません。
また、少年鑑別所送致の観護措置がとられていて、少年に弁護士である付添人がない場合に、事案の内容等を考慮し弁護士である付添人が必要であると認めるときは、職権で少年に弁護士である付添人を付せます。
国選弁護人・国選付添人
弁護人や付添人の費用を負担できない場合、少年が勾留されてから家庭裁判所に送致されるまでは国選弁護人を、少年が家庭裁判所に送致された後は国選付添人を選任してもらえます。
弁護活動の内容
弁護士は主に以下の弁護活動を行います。
- 勾留阻止のための活動
- 観護措置を避けるための活動
- 審判不開始を目指す活動
- 要保護性の解消に向けた活動
- 被害者との示談交渉
- 冤罪弁護活動 など
勾留阻止のための活動
逮捕後勾留されてしまうと、最長で23日間身柄拘束されてしまいます。弁護士が付いていない場合には、途中で身柄が解放される可能性は低いです。
事件発生後すぐに弁護士に依頼すると、逮捕されないように活動をします。逮捕されないようにするために被害者との間の示談成立を目指します。被害者が示談に応じてくれると逮捕されずに身柄解放される可能性が高くなります。
逮捕されると、48時間以内に検察官に送致されます。検察官は、身柄を拘束したままでさらに捜査をする必要があると判断した場合には、事件の送致を受けてから24時間以内に裁判官に対して勾留請求を行います。
弁護士は、勾留請求を阻止することを目指します。少年の場合、勾留するためには逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれに加えて、やむを得ない場合でなければなりません。
検察官が勾留請求すると、裁判官が勾留請求を認めるかどうか決めます。弁護士は、勾留理由が無いことを裁判官に対して主張したりして、早期に釈放されるような弁護活動をします。

観護措置を避けるための活動
勾留されている場合、勾留段階から観護措置をとられると、家庭裁判所に事件が送致された後も引き続き少年鑑別所に収容されてしまいます。逮捕勾留され、家庭裁判所送致後に少年鑑別所に収容される場合もあります。
家庭裁判所に送致された後に少年鑑別所に収容される期間は、通常最長4週間ですが、一定の事件で証拠調べが必要な場合は最長8週間まで延長されます。
逮捕から勾留され、観護措置決定されると、2カ月以上にわたって身柄拘束が続く可能性があります。長期の身柄拘束を避けるためには弁護士の活動が必須です。
審判不開始を目指す活動
家庭裁判所送致後、審判を開始する必要が無いと判断されるとそこで手続きは終了します。それまでの手続きの過程で、少年が心から反省し再犯のおそれが無くなったと判断してもらえるよう、弁護士は活動します。
要保護性の解消に向けた活動
少年が身柄を拘束されているか否かに関わらず、要保護性を解消しなければなりません。少年の話をじっくり聴き取り、少年が何故罪を犯してしまったか、今後罪を犯さないためにどうすればよいかを少年自身に考えさせる手助けをします。
自分が犯した罪と向き合い、これまでの生い立ちや友人関係等を振り返り少年が自分の言葉で反省を述べ、今後同じような状況に陥ったときにどのように対処するか等、少年自身が自らの言葉でしっかり述べられるようにすることを目指します。
少年の周りの環境整備も重要です。再び罪を犯さないようにするための家庭環境を整えるため、保護者との対話や、場合によっては学校との協議等も必要です。
被害者との示談交渉
少年事件では、身柄を拘束されてしまうと学校生活にも影響が出ます。なるべく早い段階で被害者と示談を成立させ、身柄解放を目指す必要があります。
冤罪弁護活動
逮捕されたけれど実は冤罪であるという場合もあります。その場合には、警察の取り調べに対し、何もしていないことを主張し続けます。自分はやっていないと主張すると、身柄が解放されることはまずありません。取り調べも非常に過酷なものとなります。
やってもいないことをやったと言わされた自白調書を作らせないため、過酷な取り調べの状況を把握・記録するため等、取り調べの段階から弁護士のサポートは必須です。
まとめ
少年事件の場合、二度と罪を犯さないようにすることが重視されます。そのための弁護活動は非常に幅が広く、質も求められます。少年事件に精通し、少年の心にじっくり寄り添える弁護士に依頼することをお勧めします。