詐欺未遂で逮捕された場合の刑罰や弁護活動について解説

詐欺の未遂で逮捕される件数は、近年では特殊詐欺事件で多くなっています。この記事では、詐欺の未遂が成立するとはどのようなときか、詐欺の未遂で逮捕された場合の刑罰はどうなるか等について解説します。

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詐欺罪の未遂とは

そもそも詐欺罪とはどのようなもので、その未遂とはどのような時に認められるかについて解説します。

詐欺罪の構成要件

詐欺罪は、刑法第246条に規定されています。

刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

引用:e-GOV法令検索

詐欺罪の構成要件は以下7つです。

  • 人(被害者)を欺く
  • 被害者が錯誤する
  • 被害者が財物を処分する
  • 被害者から犯人への財物の移転
  • 上記4つに因果関係が認められること
  • 犯人の故意
  • 犯人の不法領得の意思

詐欺罪とは、加害者が被害者を欺き錯誤に陥れ、錯誤に陥った被害者が加害者に対し財物を引渡し、加害者が不法に財産上の利益を得ることです。

例えば、犯人が被害者を騙そうとしたけれど被害者が気づき、犯人が可哀相だからお金を恵んであげた場合には、被害者から犯人への財物の移転はありますが、詐欺罪は成立しません。

未遂と既遂の違い

犯罪成立過程は、以下のとおりです。

犯行を決意➡実行に着手➡実行を終了➡結果の発生

実行の着手

詐欺罪の実行の着手時期については、いくつか見解があります。判例をみながら解説します。

参照:最高裁判所平成30年3月22日 刑集72巻1号82頁

事案

被害者を欺き現金をだまし取った被告らが、再度同一被害者から現金をだまし取る目的で、複数回にわたり被害者方に電話をかけ、被害者に預金口座から払戻しをさせた後、被害者から現金の交付を受けようとしたが、被害者宅近辺で警戒中の警察官に発見されて逮捕されたため、その目的を遂げなかった事件

実行の着手があったと認められると判示

実行の着手の有無につき、複数回の嘘を述べた行為が本件嘘を真実であると誤信させることにより現金の交付を受ける計画の一環として行われたものであり、本件嘘と一連のものとして被害者に対して述べた段階において、詐欺罪の実行の着手があったと認められるとしました。

詐欺の実行行為である「人を欺く行為」が認められるためには、財物等を交付させる目的で、交付の判断の基礎となる重要な事項について欺くことが必要です。

詐欺未遂罪は、このような「人を欺く行為」に着手すれば成立しますが、そうでなければ成立しえないわけではなく、犯罪の実行行為自体ではなくとも、実行行為に密接であって、被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為に着手することによっても未遂罪は成立しうるとされています。

実行行為に密接客観的な危険性が認められる行為への着手が認められるか否かが、未遂罪の成否のカギとなります。

既遂(犯罪成立)時期と未遂

詐欺罪の場合には犯行を決意し、実行に着手し実行を終了し、財物移転の結果が発生すれば既遂になります。

詐欺罪の場合の既遂時期は、財産が移転した時点、つまり占有移転時です。不動産の場合には移転登記完了により既遂となります。

実行に着手し実行行為は終了したけれど財物の交付に至らなかった場合には未遂となります。

詐欺罪未遂で逮捕された場合の刑罰

詐欺罪は未遂でも処罰されます。詐欺の未遂で逮捕された場合にどのような刑罰が科されるか解説します。

詐欺罪未遂の刑罰

詐欺罪は刑法第246条に、未遂に関しては同法第250条に、未遂の減免については同法第43条にそれぞれ規定されています。

刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第250条 この章の罪の未遂は、罰する。

刑法第43条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

刑法第12条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。

引用:e-GOV法令検索

詐欺罪は罰金刑の定めが無い重い罪です。詐欺罪で有罪になると1月以上10年以下の懲役が科されます。未遂の場合には、刑を減軽することができるため、15日以上5年以下の懲役が科される可能性があります。中止犯の場合には、必ず刑が減軽または免除されます。

詐欺罪未遂でも実刑になるのか?

詐欺罪は未遂でも処罰されます。実際に財物の占有は移転されていないため、金銭的な被害は生じなかったといえますが、被害者に与えた精神的なダメージや財物移転の危険性等を考慮にいれると、実刑に処せられてもおかしくありません。

近年は、特殊詐欺事件で現金等を受け取る「受け子」が、現金等を受け取る前に逮捕される詐欺未遂のケースが相次いでいます。前出の最高裁判例も同様のケースですが、最高裁判所は第1審の実刑言い渡しを維持するのが相当としています。

詐欺罪と詐欺罪未遂の刑罰の相場

令和3年版犯罪白書によると、詐欺罪全体の執行猶予の割合は49.4%、全部実刑の割合は50.6%です。特殊詐欺の場合には執行猶予の割合は32.7%と低く、通帳等・携帯電話機の詐取の執行猶予の割合は82.5%と高くなっています。

同白書による実刑の刑期を見ると、無銭飲食、通帳等・携帯電話機の詐取の場合には1年以上2年未満の実刑判決が多いですが、それ以外の詐欺罪の場合には2年以上3年以下の言い渡しが多く、次いで3年を超え5年以下となっています。

未遂罪の場合の科刑状況別構成比のデータはありませんが、詐欺既遂を参考にして良いと思われます。未遂罪の場合には刑を軽減するか否かは裁判官の裁量に任せられています。

詐欺罪の未遂で逮捕された事例(判例)

詐欺罪の未遂で逮捕された事例を日付の古い順にいくつかご紹介します。

平成29年12月11日 最高裁判所 刑集 第71巻10号535頁

被告人に懲役3年、執行猶予5年を言い渡した事例

共犯者による欺罔行為後に加わった被告人が、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに加担した場合であったとしても、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、被告人がその加功前の欺罔行為の点も含め詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うとした事件

平成30年3月22日 最高裁判所 刑集 第72巻1号82頁

被告人に懲役を言い渡した事例

被害者の甥になりすました氏名不詳者からの電話で至急現金を必要としている旨の嘘を言われ、その旨誤信し、被害者は現金を交付した。その翌日さらに警察官を名乗る氏名不詳者が被害者宅に電話し、預金口座から現金を下ろすよう求め、現金が被害者宅に移動した後に警察官が被害者宅を訪問することを予告する電話が行われた。被告人は氏名不詳者から被害者宅の住所を告げられ、お金を取りに行くよう指示を受け、その指示に従い被害者宅に向かったが、被害者宅に到着する前に警察官から職務質問を受けて逮捕された事件

本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた本件事案においては、詐欺の実行の着手があったと認められるため詐欺未遂罪の成立を肯定できるとし、第1審の懲役2年4月を維持しました。

令和3年5月20日 札幌地方裁判所

被告人に懲役5年を言い渡した事例

被告人は他の者Aと共謀し買い物カートからショルダーバッグを窃取する行為を繰り返した。窃取したショルダーバッグに入っていたクレジットカードを使用して商品をだまし取ろうと考え、代金を支払う意思もないのに、これらがあるように装い、同クレジットカードを提示して商品の購入を申し込み、同人をしてその旨誤信させ、同人から商品の交付を受けようとしたが、事故カードであることを見破られ目的を遂げることができなかった事件(他に複数の窃盗罪あり)

令和4年4月18日 大阪高等裁判所

被告人に懲役2年6月を言い渡した事例

被告人らが建設工事業者との間で既に正式の工事請負契約が締結されているにもかかわらず建設工事費の額が交付される補助金額に影響するという仕組みの概要を理解した上で、内容虚偽の水増し工事請負契約を作成締結し、水増し工事請負契約書で補助金を請求することが違法な行為であることを認識した上で、水増し工事請負契約書によって過大な補助金を請求し、国からの補助金を搾取した等の事件において、詐欺の故意が認められるとした事件

詐欺罪未遂で逮捕された場合の流れ

詐欺罪未遂で逮捕された場合の流れについて解説します。

逮捕

逮捕には3つの種類があります。

  • 現行犯逮捕
  • 通常逮捕
  • 緊急逮捕

詐欺の未遂の場合には現行犯逮捕あるいは通常逮捕になる場合がほとんどなので、その2つについて解説します。

現行犯逮捕とは、犯行の最中や犯行直後の犯行と密接した現場で行われる逮捕のことです。

例えば特殊詐欺事件で被害者宅に現金等を受け取りに行った受け子が、警戒中の警察官に職務質問され、現行犯逮捕されることがあります。

通常逮捕とは、裁判所が発付した逮捕令状を被疑者に提示して行われる逮捕のことです。

通常逮捕は、捜査機関の捜査の結果、被疑者に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがある場合に、捜査機関が裁判所に発付を請求し、逮捕の必要性が認められた場合に発付されます。

いずれの場合でも、逮捕されると捜査機関から取り調べを受けます。警察官は逮捕後48時間以内に被疑者を検察官に送致するか、釈放するか決めます。

警察から事件を送致された検察官は、送致後24時間以内に裁判所に被疑者の勾留請求をします。勾留の必要がない場合には被疑者を釈放します。

勾留

被疑者を勾留する必要があると判断すると検察官は裁判所に勾留請求します。裁判官は勾留の必要性を認めると、勾留決定をします。

勾留は原則10日間、延長が認められると更に最大で10日間、身柄拘束が続きます。

詐欺罪未遂事件で、特殊詐欺事件のように共犯者がいる場合には逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあるとされ、逮捕から勾留期間満期まで合計23日間、釈放されることはほぼありません。

勾留期間満期前に検察官は被疑者を起訴するか、不起訴にするか決定します。不起訴になれば事件は終了し、被疑者は釈放されます。

起訴・刑事裁判

検察官が起訴すると刑事裁判が開かれ、公開の法廷で有罪か無罪かが争われます。日本の刑事裁判の場合には、起訴されると99.9%が有罪になります。

有罪の言い渡しと同時に量刑の言い渡しもされます。詐欺の未遂の場合には、軽減される可能性があります。

執行猶予または実刑

起訴されると公開の法廷で審理がおこなわれます。公開の法廷なので、誰でも傍聴できます。特殊詐欺事件などの場合には、未遂であっても傍聴人が多数見物に来る可能性が高いです。

裁判で審理がおこなわれ、有罪か無罪か判決言い渡しがされます。有罪になると量刑の言い渡しもあります。

詐欺の未遂の場合には執行猶予が付く可能性もあります。執行猶予付き判決がでれば、刑務所に行かずに済み、その場で釈放されます。

詐欺罪未遂で逮捕された場合の弁護活動

詐欺の未遂で逮捕された場合に弁護士がする弁護活動についてお伝えします。

逮捕後すぐに接見に行く

詐欺罪は罰金刑の定めの無い重い罪です。被疑者が実際におこなった行為が詐欺罪に該当するか否かを早期に確認し、今後の弁護方針を決定することが、今後の弁護活動に影響を与えます。

早期の身柄解放を目指す

被疑者の行為が詐欺罪に該当した場合であっても、未遂に終わっているため財物窃取の被害はでていません。以下のような場合には家族等に身元引受人になってもらい、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが無いことを検察官に主張すれば勾留されずに在宅事件となる可能性があります。

  • 比較的軽微な事件である
  • 予想された被害額が低い場合
  • 被害者に与えた精神的苦痛が軽微と言える場合

被害者との示談交渉を行う

令和3年版犯罪白書によると、詐欺罪において全部または一部の被害回復をした被告人の執行猶予率は合計で71.8%でした。全部または一部の被害者と示談が成立した被告人の執行猶予率は合計で51.1%でした。

全部の被害者に対して被害回復や弁償をすることが望ましいですが、一部の被害者に対してだけでも被害回復や弁償をし、示談ができれば執行猶予を獲得する可能性が高くなります。

詐欺罪は、被害者を欺き、誤認させ、財物を窃取する犯罪です。財物を得られなかった場合でも被害者は精神的苦痛を受けます。

被害者に真摯に謝罪し、場合によっては精神的苦痛に対する損害賠償をすることで、被害者が示談に応じてくれる可能性があります。

被害者が示談に応じてくれた場合には不起訴あるいは執行猶予を獲得できる可能性が高くなります。

不起訴処分や、より軽い処分を目指す

詐欺罪は被害者を騙して財物を交付させようとするため、騙す際に被害者に与えた不安や精神的ダメージ等は被害者の心の傷として残る場合があります。詐欺罪の未遂であっても被害者の精神的苦痛は非常に大きい場合があります。そのため、示談に応じてくれない被害者もいます。

被害者に示談に応じてもらえなかった場合には示談に応じてもらえなかった経緯を記載した書面や、被害者を騙した行為について真摯に反省し再び同じことを行わないという誓約書等を検察官あるいは裁判所に提出し、不起訴処分やより軽い処分を目指します。

まとめ

詐欺罪は未遂であっても処罰される可能性が高く、場合によっては実刑判決を言い渡される可能性もある犯罪です。

詐欺の未遂で逮捕された場合には早期に弁護士に依頼し、被害者と示談交渉をしてもらう、不起訴処分を獲得する弁護活動をしてもらう、起訴された場合には執行猶予の獲得を目指して弁護してもらう等の弁護活動をしてもらうことをお勧めします。

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