国選弁護人に費用はかかる?いつ払う?国選弁護人のデメリットは?

国選弁護人とは、貧困などの理由で自分で弁護士に依頼できない場合に、国が選任してくれる弁護士のことです。

国選弁護人は国が選任するため、原則として費用の負担はありません。

しかし、例外的に費用が発生するケースもあるため、注意が必要です。

この記事では、国選弁護人の費用について、次の点を解説します。

  • 国選弁護人の費用と費用がかかるケース
  • 国選弁護人のデメリット
  • 国選弁護人はどうやって選ばれる?

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国選弁護人にかかる費用や報酬は発生しない?

国選弁護人の費用は法テラスが負担する

国選弁護人の費用は法テラスが負担するため、国選弁護人を選任してもらっても費用の負担はありません

法テラスは国が設立した法律相談センターで、裁判所の要請で、国選弁護人として契約している弁護士を選びます。

法テラスでは、国選弁護人及び国選付添人になろうとする弁護士との契約、国選弁護人候補及び国選付添人候補の指名及び裁判所等への通知、国選弁護人及び国選付添人に対する報酬・費用の支払いなどの業務を行います(総合法律支援法第30条第1項6号)。

引用:国選弁護等関連業務|法テラス

例外的に費用の負担が必要になるケースがある

法律上は、被告人が有罪となった際に国選弁護人の報酬を含む裁判費用を払うよう定められていますが、貧困などを理由に支払えない場合は、負担を命じられることはありません(刑事訴訟法第181条)。

ただし、被告人が裁判費用を支払える資力があると明らかな場合は、裁判費用の負担を命じられることがあります

例えば次のようなケースが考えられます。

  • 国選弁護人を選任する際は貯金がないと言っていたのに、警察や検察の取り調べに対して、いくらくらいの収入や貯金があると回答した
  • 勾留から釈放されるための保釈金を自分の貯金で支払っていた
  • 裁判で裁判官から収入を聞かれて、いくらくらいの収入があると回答した

後述しますが、国選弁護人を選任してもらう条件の一つは、収入や預貯金が50万円未満であることです。

そのため、実は50万円以上の収入や預貯金があると発覚した場合はもちろん、同居している家族にある程度の収入や資産がある場合も、裁判費用の負担を命じられる可能性があります。

負担を命じられても訴訟費用執行免除制度がある

もし有罪となり裁判費用の負担を命じられても、収入や貯金がない場合は、訴訟費用執行免除を認めてもらうことで、裁判費用の支払いが免除されます(刑事訴訟法第500条)。

裁判の判決が確定した後、20日以内に、裁判所に費用を負担できない理由と、それを証明する給与明細や源泉徴収票、預金通帳の写しなど収入や財産のわかる書類を添付して申請します。

参考:裁判の執行等について|検察庁

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被疑者国選弁護人にかかる費用と報酬

国選弁護人は、起訴前(刑事裁判になる前)の被疑者の段階で選任される被疑者国選弁護人と、起訴後に選任される被告人国選弁護人がいます。

それぞれ費用や報酬が異なりますので、解説します。

基本報酬

自分で弁護士を選ぶ私選弁護人の費用は、大きく分けると、事件を依頼した際に発生する着手金と、事件が終了時に発生する報酬金で構成されています。

国選弁護人の場合、着手金はなく、基本報酬と接見回数(面会の回数)に応じて報酬が決定されます。

弁護機関 基準となる接見回数 具体的な金額
4日以内 1回 2万円
5~8日 2回 4万円
9~12日 3回 6万円
13~16日 4回 8万円
17~20日 5回 10万円

基本報酬は2万円×接見回数、基準となる接見回数通りに接見を行えば、プラス6,400円です。

起訴前の勾留は最大で20日間なので、接見の基準回数は5回となり、報酬は10万6,400になります。

ただし、基準回数を超えて接見すると、超えた接見1回あたりの報酬は減っていきます。

例えば、勾留20日間で6回接見した場合、5回目までは10万円ですが、6回目の接見の報酬は1万円と半額になってしまいます。

遠方の警察署まで接見に行った場合は、4,000~8,000円が加算されます。

なお、私選弁護人の場合は、接見1回あたりの費用相場は3~5万円で、着手金に接見費用が含まれているケースもあります。

成果報酬

他にも、被疑者国選弁護人の活動によって成果が生じれば成果報酬が発生します。

身柄釈放 5万円
示談成立 3万円(被害者一名の場合)
嘆願書取得 5,000円(被害者一名の場合)

なお、私選弁護人のように不起訴処分(起訴されず事件終了)を獲得した場合の報酬は発生しません。

参考:国選弁護人・付添人の契約約款(報酬基準)の改正について|法テラス

被疑者国選にかかる費用の具体例

例えば、窃盗で逮捕され、被害者と示談をして不起訴になった場合、かかる費用は次の通りです。

  • 勾留20日間で接見5回:10万6,400円
  • 示談成立:3万円
  • 計:13万6,400円

私選弁護人に依頼した場合は、着手金と報酬金で相場はおおよそ60~100万円になることが考えられるため、確かにリーズナブルではあります。

被告人国選弁護人にかかる費用と報酬

起訴された場合、被告人国選弁護人となります。

被告人国選弁護人の報酬については、起訴報酬と公判加算(裁判)と判決宣言期日加算によって、報酬が決定します。

基本報酬

被告人国選弁護人の報酬は、担当する事件の内容によって異なります。

裁判所 内容 基本報酬
簡易裁判所

※罰金以下の刑にあたる罪や窃盗、横領など比較的軽微な事件

6万6,000円
地方裁判所 単独事件 7万7,000円
通常合議 8万8,000円
重大合議

※殺人など裁判員裁判対象事件のこと

9万9,000円

なお、重大事件や、被害者や被告人が複数人に及ぶ複雑な事件では、裁判前に争点を整理する公判前整理手続きが行われます。

この公判前整理手続きがある事件では、基本報酬もやや高くなります。

公判加算と判決宣告期日加算

公判加算とは、裁判に出席する時間と回数に応じて加算される報酬です。

例えば、地方裁判所の単独事件であれば次のように公判加算が設定されています。

時間 第1回目 第2回目
45分未満 0円 5,800円
45分~60分未満 5,800円 8,200円
1時間半~2時間半未満 8,200円 1万3,600円

5時間半以降は1回目で4万600円、2回目以降で4万7,400円です。

ただし、ほとんどのケースでは、裁判は1回1時間程度であるため、おおよそ5,800円程度であると考えられます。

判決が下される日は、判決宣告期日加算として3,000円の報酬が発生します。

判決を言い渡される日は、短時間で済むため、報酬も少なく設定されています。

その他報酬

その他報酬は次の通りです。

無罪獲得 上限50万円
一部無罪 上限30万円
被害者との示談成立 3万円(被害者一名の場合)
保釈 1万円
遠距離接見交通費 4,000~8,000円

私選弁護人によっては、執行猶予などの成果に対して報酬が発生することがあります。国選弁護人の場合は、執行猶予を得ても報酬は発生しません。

なお、無罪や一部無罪を獲得すれば最大で30~50万円の報酬が発生しますが、刑事裁判の有罪率は約99%であるため、無罪を獲得するのは非常に難しいとされています。

被疑者国選弁護人の段階から担当し、起訴後も継続して被告人国選を担当した場合、継続減算として、1万2,000円が差し引かれてしまいます。

被告人国選にかかる費用の具体例

実際に、被疑者段階から引き継ぎ、国選弁護人として担当した場合にかかる費用の具体例を挙げます。

なお、刑事事件では軽微な事件は簡易裁判所、殺人などの重大事件は裁判員裁判、その他の事件では地方裁判所で審理されます。

被告人が罪を認めて争わないことが多く、審理は1回、1時間程度で終わるケースがほとんどです。

審理は1度、2回目の裁判で判決が下されて終了します。その場合の国選弁護人の報酬は次の通りです。

地方裁判所での裁判 7万7,000円
第一回目の審理(1時間) 5,800円
第二回目判決 3,000円
継続減算 -1万2,000円
7万3,800円

示談成立や保釈があれば、別途加算されます。

参考:即決被告人の報酬基準 令和6年4月1日現在|法テラス

有罪で国選弁護人の費用を支払う場合

ここでは、有罪になった場合に国選弁護人の報酬以外にかかる費用や、いつ、どうやって支払うのかについて解説します。

その他有罪となった場合にかかる費用

刑事裁判にかかる費用は、刑事訴訟費用等に関する法律で主に次の3つと定められています。

裁判に出席するなどした証人の旅費や日当、宿泊料 実際にかかった交通費

宿泊費:1箔7,800~8,700円以内

日当:8,100円以内

鑑定や通訳にかかった鑑定料や通訳料 鑑定にかかった費用

通訳料:8,380円~時間による

鑑定人や翻訳人の宿泊費:証人と同様

鑑定人や翻訳人の日当:7,700円以内

国選弁護人の費用 前述の通り

なお、証人は家族や友人、勤務先の上司などになることが多く、仮に被告人に支払いが命じられても、請求を放棄するのが一般的です。

参考:証人等日当及び宿泊(止宿)料 – 裁判所

法テラスの通訳料基準|法テラス

※2024年9月時点

費用はいつ支払う?

被告人に国選弁護人の費用を含めた裁判費用の支払いが命じられるのは、判決が言い渡される時です。

裁判費用の回収は検察庁が行っています。判決が確定してから約1か月後に自宅や刑事施設に納付書が届きます。

身柄が釈放されている場合は、銀行で支払い手続きを行い、刑事施設に収容されている場合は、家族に支払ってもらうことになります。

国選弁護人のデメリット

国選弁護人は基本的に、国が費用を負担してくれるため、自分で負担をする必要がない点は大きなメリットです。

ただし、国選弁護人にはデメリットもあるため、解説します。

弁護士を選ぶことはできない

国選弁護人のデメリットの一つは、私選弁護人のように自分で弁護士を選ぶことができない点です。

国選弁護人は、裁判所によって、法テラスが契約している弁護士から自動的に選ばれるため、どんな弁護士が選任されるのかわかりません

もちろん弁護士資格を有している以上、弁護士として最低限の対応能力はあります。

しかし、どの程度刑事事件の実績がある弁護士が選ばれるのかは、運に任せるほかありません。

刑事事件の経験が不足していると、刑事手続きの流れの中で、今後の見通しを立てた適切な対応が期待できない可能性もあります。

刑事事件の実績が豊富な私選弁護人であれば、事件の傾向や知識が豊富にあり、被疑者・被告人の希望に沿って、今後の見通しを踏まえた方針を打ち立ててくれます。

弁護士選任においては、弁護士との相性も非常に重要です。

長期の勾留の中で、唯一の頼みの綱である弁護士との相性が悪いと、ただでさえ精神的に苦しい状況が、一層苦しくなる可能性もあります。

逮捕直後に呼ぶことはできない

国選弁護人は、逮捕直後から依頼することはできません。

被疑者国選弁護人が選任されるのは、逮捕から72時間以降、勾留が決定してからです(刑事訴訟法第37条の2)。

勾留が決定してしまうと、10~20日間は身柄拘束を受けることになり、私生活への影響を避けるのは難しくなってしまいます。

一方で私選弁護人であれば、逮捕直後から依頼できるので、最速で逮捕から3日以内に、釈放してもらえることもあります。

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在宅事件では起訴後しか選任できない

在宅事件の場合、国選弁護人が選任できるのは、起訴された後です。

刑事事件では、逮捕から勾留が行われ、身柄拘束が続く身柄事件と、逮捕されずに警察や検察から呼び出しを受けて、取り調べが行われる在宅事件があります。

在宅事件の場合は、身柄拘束を受けていないため、勾留段階で呼べる被疑者国選弁護人が選任されません。

国選弁護人が選任されるのは、起訴が決定してしまった後で、不起訴を得るためのサポートを受けられません

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報酬の問題で接見に来なくなるケースがある

被疑者国選弁護人の基本報酬は、接見回数に応じて決定されますが、基準回数を超えて接見をすると、報酬が減ってしまう仕組みになっています。

そのため、一定回数を超えると接見に来なくなったり、起訴後に接見の回数が減ってしまうケースもあります。

こうした理由から、国選弁護人は費用が安いから熱心に弁護をしてくれないと言われることもあります。

しかし、熱心に弁護をするほど採算が取れなくなってしまう報酬制度が背景にあると考えられます。

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国選弁護人を変更するのは難しい

国選弁護人は一度選任されてしまうと、別の国選弁護人に切り替えてもらったり、解任したりすることが難しいです。

国選弁護人が解任できるケースは次の通りです。

  1. 私選弁護人が選任されて国選弁護人が不要になった
  2. 被疑者や被告人と弁護士の利益が相反し、国選弁護人に職務を継続させることが相当でない
  3. 心身の不調などの理由により国選弁護人が職務を全うできない
  4. 国選弁護人が任務に著しく反したことにより、職務を継続させることが相当でない
  5. 国選弁護人に対する暴行や脅迫など、被告人の責任で国選弁護人の職務を継続させることが相当でない

参考:刑事訴訟法第38条の3|e-Gov

国選弁護人にやる気がないと感じられる場合、④を理由に裁判所に解任請求を申し立てることになりますが、裁判所に納得してもらえるだけの理由が必要です。

実務上は国選弁護人を解任するには、私選弁護人を選任するのがもっとも迅速な方法です。

しかし、貧困などにより弁護士費用を負担できない人にとっては現実的ではありません。

国選弁護人はどうやって選ばれる?選任までの流れ

国選弁護人が選任されるには、被疑者国選と被告人国選でそれぞれ条件があります。

被疑者国選弁護人 被疑者に対して勾留状が発せられている

貧困などの理由で弁護士に依頼できない(収入や預貯金が50万円未満の場合)

被告人国選弁護人 自分で請求する 貧困などの理由で弁護士に依頼できない(収入や預貯金が50万円未満の場合)
裁判所の職権で選任されるケース 死刑や無期など弁護士がいないと審理できない必要的弁護事件の場合

被告人が未成年、高齢、心身喪失などの場合

被疑者国選弁護人と被告人国選弁護人はどのように選ばれるのか解説します。

被疑者国選の場合

被疑者国選の場合は、次の流れで国選弁護人が選ばれます。

  1. 検察官が裁判所に勾留請求を行う
  2. 勾留質問で、裁判官から国選弁護人を選任するか聞かれる、もしくは勾留決定後に警察に国選を呼んでほしいと伝える
  3. 裁判所から法テラスに国選弁護人の選任を依頼する
  4. 法テラスと契約している弁護士に、国選弁護人を依頼する
  5. 法テラスが指定日に稼働可能な弁護士の候補者を裁判所に通知する
  6. 裁判所が自動的に国選弁護人を任命する
  7. 裁判所から任命されておおよそ24時間以内に、国選弁護人が被疑者と接見する

なお、国選弁護人を選任するためには、国選弁護人の選任請求書と資力申告書を記入する必要があります。

資力申告書は、わかる範囲で記入すれば問題ありませんし、勾留段階では細かく資力調査を行っていません。

しかし、虚偽の記載を行うと、裁判費用の支払いを命じられる可能性があるほか、10万円以下の過料が科されるため、虚偽の記載はやめましょう(刑事訴訟法第38条の4)。

被告人国選の場合

勾留されたまま起訴された場合は、勾留段階で選任された国選弁護人がそのまま起訴後も被告人国選弁護人として担当してくれます。

被告人国選が選任されるケースとして考えられるのは、最初から逮捕や勾留が行われていない在宅事件で起訴された場合です。

なお、逮捕や勾留後に、処分保留で釈放されても、その後在宅事件のまま起訴されるケースもあります。

  1. 在宅事件で起訴されると、裁判所から起訴状が届く
  2. 起訴状に同封されている弁護士選任に関する通知及び照会、弁護人選任に関する回答書、資力申告書を記入して裁判所に返送する
  3. 裁判所から法テラスに国選弁護人の指名を依頼する
  4. 法テラスが国選弁護人の候補者を裁判所に通知して、裁判所が国選弁護人を任命する
  5. 国選弁護人から被告人に連絡をして、裁判の打ち合わせを開始する

国選弁護人が選任された後に、裁判が行われる日が決定するため、指定された日時に自宅から裁判に出席することになります。

起訴から1~2週間程度で、国選弁護人の選任と、裁判が行われる日が決定します。

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刑事事件は国選弁護人と私選弁護人どちらを選ぶべき?

もし弁護士費用が用意できるのであれば、刑事事件は私選弁護人を選任した方が良いでしょう。

前述の通り、国選弁護人は選任されるタイミングが遅く、どんな弁護士が選任されるのかもわかりません。

勾留が決定してからでは、10~20日間身柄拘束を受けることになり、勤務先に隠し通すのも難しくなります。

どんな国選弁護人が選任されるかは運任せです。

刑事事件の実績や経験がどの程度あるのかだけでなく、本当に熱意をもって弁護してくれるのか、相性は良いのかどうかなどもわかりません。

刑事事件は人生に大きな影響を与えるため、弁護士を選べないというのは大きなデメリットです。

そのため、もし費用が用意できるのであれば、自分で弁護士を探すか、家族に刑事事件の実績がある私選弁護人を選任してもらうことが望ましいです。

まとめ

国選弁護人の費用は、国が負担するため、基本的に費用を負担する必要はありません。

仮に裁判で有罪になり、支払いを命じられても、免除制度を利用すれば支払いが免除されます。

弁護士費用を負担できない人にとっては、心強い制度です。

しかし、国選弁護人は費用がかからない一方で、さまざまなデメリットがあります。

刑事事件は人生に大きな影響を与えるため、もし弁護士費用を負担できるのであれば、私選弁護人の選任をおすすめします。

ネクスパート法律事務所は、開設以来刑事事件に注力し、年間1000件以上の相談を受けています。

家族の逮捕や在宅事件などでお困りの方の力になりますので、お気軽にご相談ください。

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