面会要求等罪とは?構成要件や罰則・時効などをわかりやすく解説
2023年6月23日、性犯罪に関する規定全般を見直す刑法等の改正案が成立し、同年7月13日より施行されました。
近年、わいせつ目的を隠してSNS等で若年者に近づき、信頼を得た上で実際に会って性的行為を行うといった被害が問題視されています。
今回の改正では、わいせつ目的で若年者を懐柔する行為(性的グルーミング)を処罰対象とする罪として、16歳未満の者に対する面会要求等罪が新設されました。
この記事では、面会要求等罪の成立要件や法定刑、時効等について解説します。
目次
面会要求等罪とは
ここでは、面会要求等罪の概要について解説します。
面会要求等罪の条文
面会要求等罪を規定する条文は、以下のとおりです。
(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条 わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
面会要求等罪の成立要件
面会要求等罪は、わいせつ目的で、16歳未満の者に対して、次のいずれかの行為をした場合に成立します。
- 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求する行為
- 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求する行為
- 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み・約束をして面会を要求する行為
- 上記1⃣~3⃣の罪を犯し、わいせつ目的で面会する行為
- 性交等をする姿態、性的部位を露出等した姿態等を撮って、その映像を送信することを要求する行為
ただし、同性代間の自由な意思決定による行為を処罰の対象から除外するため、13歳以上16歳未満との行為については、行為者が5歳以上年長である場合に限り、処罰の対象となります。
1⃣~3⃣および4⃣の行為の結果、実際に性的行為に及んだ場合には、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立し得ます。
5⃣の行為の結果、実際にそれらの写真や動画を遅らせた場合には、不同意わいせつ罪が成立し得ます。
わいせつとは
面会要求等罪におけるわいせつとは、不同意わいせつ罪におけるわいせつとは異なり、性交および性交類似行為を含みます。
威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求する行為とは
威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求する行為とは、脅したり、嘘をついたり、甘い言葉で誘って面会を要求する行為です。
例えば、子どもの孤独や承認欲求につけ込んで、悩み相談などに快く応じる良き理解者を演じ、信頼や好意を利用して、性的行為を行うことを目的として面会を要求した場合などが該当します。
SNSでのやり取りを通じて、子どもの個人情報や写真・映像を手に入れ、それらを学校や親など身近な人に暴露したり、SNSに拡散したりすることをほのめかして、会うことを要求することも同様です。
拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求する行為
拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求する行為とは、拒否されたのに、何度も繰り返して会うことを要求する行為です。
金銭その他の利益を供与し、又はその申込み・約束をして面会を要求する行為とは
金銭その他の利益には、「会ってくれるなら10万円あげる」「〇〇を買ってあげるから会おう」といった財産的な利益に限らず、「会ってくれるなら、オーディションで有利に扱ってあげる」「会ってくれたら次の試合に出させてあげる」といったような財産的でない利益も含みます。
刑法改正で面会要求等罪が新設された経緯
SNSの普及等により、児童ポルノの被害や児童買春、淫行など、性犯罪に巻き込まれる子どもが増加しています。
加害者は、社会的に容認される範囲の会話やスキンシップを通して安心感を与えながら、自らを善良な大人、信頼できる大人と思わせて、個人的な繋がりを深めていく傾向があります。
加害者が子どもにとって特別な存在になると、その大人に「もっと評価されたい」といった気持ちが子どものなかに生じ、加害者の度を越した要求や行為を受け入れてしまうことも少なくありません。
16歳未満の人は、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力が十分に備わっていないため、被害感情を抱かない危険性も高いと言えます。
そのため、16歳未満の人が性被害に遭うのを防止するため、実際の性犯罪に至る前の段階で、性被害に遭う危険性のない保護された状態を侵害する危険を生じさる行為や、現に侵害する行為を新たに処罰することとして面会要求等罪が新設されました。
面会要求等罪はいつから施行?
面会要求等罪が適用されるのは、改正刑法が施行された 2023年7月13日からです。
同日より前の行為は、たとえ面会要求等罪の要件を満たしていても処罰されません。
面会要求等罪の罰則・時効
ここでは、面会要求等罪の罰則(法定刑)や公訴時効期間について解説します。
面会要求罪の罰則
面会要求等罪の法定刑は、以下のとおりです。
行為 | 法定刑 |
16歳未満の者に対し、わいせつ目的で、
①威迫・偽計・誘惑 ②反復 ③利益供与又はその申し込み・約束 のいずれかの手段を用いて面会を要求した場合 |
1年以下の拘禁刑
または 50万円以下の罰金 |
上記の罪を犯し、わいせつ目的で16歳の者と面会した場合 | 2年以下の拘禁刑
または 100万円以下の罰金 |
16歳未満の者に対し、性交等をする姿態、性的部位を露出等した姿態等を撮って、その映像を送信することを要求した場合 | 1年以下の拘禁刑
または 50万円以下の罰金 |
なお、拘禁刑を創設する改正刑法の施行(2025年6月16日までに施行予定)より前にした行為に対しては、懲役刑が適用されます。
面会要求等罪の公訴時効期間
面会要求等罪の公訴時効期間はいずれも3年です。
要求・面会のいずれも、犯罪行為が終わった時から時効が進行します。
まとめ|面会要求等罪に該当しうる行為をしたら早期に弁護士に相談を!
面会要求等事件では、16歳未満の子どもとのSNS上のやり取りを削除したりするなど、証拠隠滅の可能性が高いとして、逮捕・勾留や家宅捜索を受ける可能性があります。
面会要求等罪が成立する行為をした場合は、捜査機関が逮捕に踏み切る前に、自首をすることで、逮捕・勾留や家宅捜索を回避したり、刑事処分を軽くできたりする可能性もあります。
面会要求等事件で、不起訴処分や執行猶予を得るためには、被害児童の親権者との間で示談交渉が不可欠です。被害児童の両親は、加害者に対して激しい怒りを感じているため、示談交渉が難航することが多く、示談金も高額になる傾向があります。
そのため、性犯罪事件の解決実績が豊富で高度な交渉力を持つ弁護士に相談することが大切です。
犯罪事実を否認する場合にも、取り調べへの対応方法や不当な捜査への抗議、証拠開示請求など適切な弁護活動が必要となるため、早い段階で弁護人を付けて対処することが望まれます。
ネクスパート法律事務所は、性犯罪事件の弁護に特化しており、相談実績・解決実績が豊富にあります。お困りの方は、当事務所の初回無料相談をご活用の上、弁護士にご事情をお話しください。