結婚詐欺とは|結婚詐欺で逮捕されたら懲役?成立要件や逮捕事例

結婚詐欺とは、結婚を匂わせて、相手からお金を騙し取る行為のことで、立派な詐欺行為です。

近年マッチングアプリや婚活パーティーなどで出会いの場が広がったこともあり、詐欺の被害に遭いやすい環境が整っています。

しかし、交際しているカップルの中には、たまたま結婚に至らなかった人や、借りたお金が返せなくなったという人もいるでしょうし、詐欺に該当するかどうかの判断が難しいでしょう。

この記事では、結婚詐欺について以下の点を解説します。

  • 結婚詐欺の概要や手口
  • 結婚詐欺が成立する要件
  • 結婚詐欺で逮捕されるリスクや刑事処分の傾向

詐欺罪は懲役刑が科される非常に重い犯罪です。

もし身に覚えがあり、警察から連絡があった場合は、弁護士に相談してください。

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結婚詐欺とは?

結婚詐欺とは、結婚をほのめかして相手からお金を騙し取る詐欺のことです。結婚詐欺を行うと、詐欺罪が成立します。

結婚詐欺は恋愛詐欺やロマンス詐欺にも似ていると言われますが、どう違うのでしょうか。

ここでは、結婚詐欺や他の詐欺との違い、手口などを解説します。

恋愛詐欺との違い

恋愛詐欺とは、相手に対して好意を示し、恋愛関係を築くことで、金銭を支払わせる詐欺です。

2023年には、男性に恋愛関係を抱かせて金銭を騙し取った女性が逮捕されて話題になりました。

結婚詐欺との違いは、恋愛感情を利用して金銭を騙し取る点です。

例えば、借金の返済に困っている様子を見せて、相手が金銭を支払うように話を誘導するなどが挙げられます。

ロマンス詐欺との違い

ロマンス詐欺とは、SNSやマッチングアプリなどで、相手と直接会わずに、相手に恋愛感情を抱かせ、結婚をほのめかすなどして金銭を騙し取る詐欺のことです。

手口としては、二人の将来のために投資をしようなどと持ちかけて、金銭を騙し取ります。

結婚をほのめかして金銭を騙し取るため、結婚詐欺の一種と言えるでしょう。

結婚詐欺の手口

結婚詐欺を行う者は、婚活パーティーやマッチングサービスでターゲットを探します。

当然ながら最初は礼儀正しく振る舞い、相手に好感を抱かせて、結婚を前提としたお付き合いを始めます。

中には、羽振りが良い自分を演出するために、医師など社会的な地位が高い職業を名乗り、ブランドものを身にまとい、食事や高価なプレゼントをしてくることがあります。

しかし、交際をしているにも関わらず、自分のことはあまり話しません。

結婚のために、家族や友人に会いたいと言っても、理由をつけて会わせてもらえません。

一定期間交際をして、信頼関係が築かれた所で金銭的な問題を持ちだし、これが解決しないと結婚はできないとお金を借りようとするのが典型的な手口です。

そして、金銭を支払ってしまうと、連絡がつかなくなります。

一方、ロマンス詐欺の場合は、SNSで対面したことのない相手に行われます。

親密なやり取りを繰り返し、結婚まで盛り上がった所で、二人の将来のために、投資をしようと誘われます。

相手が紹介するアプリに登録して投資を行うと、儲かっているように見えるのですが、実際に引き出そうとすると、引き出すことができません。

参考:特殊詐欺 被害相次ぐ 昨年の3倍、SNSで若年層に被害|朝日新聞デジタル

結婚詐欺が成立する要件

実際に交際をしていれば、当初は結婚する意思があったのに、別れてしまったり、借りたお金を返せなくなってしまったりするケースもあるでしょう。

単に結婚に至らなかった場合や、借りたお金が返済できなくなった場合だけでは、直ちに結婚詐欺であると断定できません。

結婚詐欺となるのは、以下の詐欺罪の成立要件を満たした場合です。

人を騙す欺罔行為

結婚詐欺が成立する要件の1つが、欺罔(ぎもう)行為があることです。欺罔とは、相手を欺いて騙す行為を指します。

相手が事実を知っていれば金銭を渡さなかったといえるような重要な事実を偽ることです。

結婚するために資金が必要だと訴えても、相手に結婚する意思がなければ、金銭を渡さないのが通常です。

一方で、本当に結婚するつもりだったが、周囲から反対されてしまったなどの事情で結婚に至らなかった場合は、詐欺ではなく民事上の債務不履行に該当する可能性があるでしょう。

故意に相手を欺いたかどうかは、被害者とのやり取りや言動などによって客観的に判断されます。

相手の錯誤

欺罔行為により、相手が錯誤するのも結婚詐欺が成立する要件の1つです。

わかりやすく言えば、欺罔行為によって、事実ではないことを事実だと認識した状態になることです。

例えば、結婚しよう、そのためにはお金が必要なんだと言われた場合、お金があれば結婚できるんだと相手が信じれば、錯誤した状態となります。

金品を渡す財物の交付と財産の移転

財物の交付や処分行為とは、欺罔により錯誤が生じ、相手に金品を渡すことを指します。

そして渡した金品が相手の手に渡れば、財産が移転した状態だと判断され、詐欺罪が成立することになります。

この財産の交付がなければ、詐欺未遂が成立する可能性があります。

結婚詐欺をするリスク

結婚詐欺をした場合は、さまざまなリスクが生じます。ここでは、結婚詐欺をするリスクを解説します。

逮捕される可能性がある

結婚詐欺を行った場合、被害者が警察に被害を訴え、逮捕される可能性があります。

ただし、双方の間で本当に結婚の話があったのか、結婚詐欺に該当するかどうかを確認するために、警察から一度連絡が来るケースもあります。

同様の手口で金銭を騙し取られる被害が寄せられていたり、結婚の話の経緯の中で一向に両親に紹介されなかったりと不審な点があれば、捜査が行われることも考えられるでしょう。

なお、2022年に結婚詐欺も含む詐欺罪で逮捕された人の割合は47.7%でした。

参考:令和5年版 犯罪白書 第3節 被疑者の逮捕と勾留|法務省

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10~20日間勾留される可能性が高い

結婚詐欺で逮捕された場合は、そのまま10~20日間勾留される可能性が高いです。

勾留とは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるなどの理由で、警察の留置場に身柄を拘束されることです(刑事訴訟法第60条)。

この勾留期間の終わりまでに、警察から事件を引き継いだ検察が、起訴(刑事裁判になること)をするか、不起訴にして事件を終了するか判断します。

なお、前述の統計によると、詐欺罪で勾留が認められた割合は99.4%でした。

逮捕されると、そのまま10~20日間、身柄を拘束されることになるでしょう。

当然その間は、出社したり、家に帰ったりすることはできません。家族にも知られることになるでしょう。

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起訴されれば実刑となる可能性がある

逮捕から勾留、そして起訴されれば、公開の刑事裁判で審理が行われ、刑事処分が科されるおそれがあります。

後述しますが、詐欺罪の罰則は罰金がなく懲役だけですので、実刑となる可能性もあるでしょう。

また、起訴後も勾留が継続することも考えられます。

示談金が高額になる

刑事事件では、被害者に謝罪を行い、示談金を支払って示談が成立すれば、被害者に与えた損害の回復に努めたと評価され、刑事処分が軽くなる可能性があります。

詐欺のような犯罪では、重い処分も考えられるため、被害者との示談の成否は非常に重要です。

早期に示談が成立すれば、不起訴処分を得られることもあります。

ただし、被害者の数が複数いたり、被害額が高額であったりした場合は、示談金もその分高額になることが考えられるでしょう。

なお、一般的な詐欺罪における示談金の相場は、被害額+慰謝料として数十万円程度です。

しかし、結婚詐欺の場合は、被害者の精神的な苦痛も大きいことが考えられますし、交渉によっても異なります。

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被害者から訴えられる可能性がある

結婚詐欺で被害者に示談を申し入れなかった場合は、被害者から民事裁判で訴えられることも考えられます。

これは刑法ではなく、民法上の不法行為に対する損害賠償請求です。

民法上では、故意や過失によって他人の権利を侵害した場合、加害者は損害を賠償する責任を負います(民法第709、710条)。

結婚詐欺の刑事処分の傾向

結婚詐欺で逮捕された場合は、長期の身柄拘束を受ける可能性があるため、今後の人生への影響を回避するのも難しいでしょう。

結婚詐欺でどのような刑事処分が下されるのかを解説します。

詐欺罪の罰則は10年以下の懲役

詐欺罪の罰則は、10年以下の懲役です。罰金刑がないため、非常に重い処分が下される可能性があります。

(詐欺)

第二百四十六条人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用:刑法第246条|e-Gov

詐欺罪の90%は懲役刑

法務省によると、2022年に詐欺罪で起訴されたうちの90%に懲役刑が科されています。

詐欺罪の懲役刑の量刑の平均は以下のとおりです。

年数 人数 割合
10年以下 6人 0.2%
7年以下 52人 1.6%
5年以下 340人 10.5%
3年 実刑 155人 4.8%
執行猶予 417人 12.9%
2年以上3年未満 実刑 442人 13.6%
執行猶予 691人 21.3%
1年以上2年未満 実刑 257人 7.9%
執行猶予 806人 24.9%
1年未満 実刑 60人 1.9%
執行猶予 13人 0.4%

2022年における詐欺罪の量刑の平均は1年以上2年未満で、執行猶予がつくケースが最多でした。

しかし、10%は5年以下の懲役が科されており、実刑となったのは全体の4割でした。

詐欺罪の処分が決定される際に重視されるポイントは以下のとおりです。

  • 詐欺行為の悪質性
  • 結果の重大性、被害額の大きさ
  • 反省の有無や被害者との示談の成否
  • 同種犯罪の前科前歴 など

前科前歴なども処分に影響しますが、初犯であっても、詐欺行為の悪質性や被害額が高額であるような場合は、実刑が科されることも十分考えられます。初犯だからと甘く見るのは危険です。

結婚詐欺で逮捕された事例

女性から1000万円を騙し取り逮捕

女性から現金約1,000万円を騙し取ったとして男性が逮捕されました。

男性は、会社経営者を名乗り、新規事業のためにお金がいる、出してくれたら結婚をするなどと言って、現金400万円を詐取しました。

さらに、別の女性には、会社の廃業に伴いお金が必要だ、貸してくれれば籍を入れると嘘を言って、現金約600万円を騙し取ったということです。

参考:女性から1千万円詐取容疑 結婚詐欺の42歳男|産経新聞

海保職員を装い2000万円を騙し取った男が逮捕

女性から約2,000万円を騙し取ったとして男性が逮捕されました。

男性は海上保安庁の職員になりすまし、偽名で被害者と交際、その後挙式を挙げました。

数週間や数か月に1度しか帰宅しない生活でしたが、女性は男性の訓練や出勤があるという説明を信じ、約10年間結婚していると思い込んでいたということです。

女性は男性から、仕事のトラブルで示談金が必要になったという話を不審に思い、事件が発覚したということです。

参考:海保職員装い挙式、「訓練ある」とほぼ帰宅せず2千万詐取…女性「10年間結婚したと思っていた」|読売新聞オンライン

結婚ほのめかして130万円を騙し取り逮捕

婚活アプリで知り合った女性に結婚をほのめかし、現金を詐取した男が逮捕されました。

男性は女性にタクシー会社の役員で車の修理が必要として、130万円を騙し取ったほか、女性のクレジットカードで外食費として580万円を使用。

さらに、女性名義で約800万円の高級車のローンを組んでいたということです。警察は5人の女性から同様の被害の相談があり、捜査を進めています。

参考:「タクシー会社役員」の54歳男、結婚ほのめかし130万円詐取…女性名義で800万円ローンも|読売新聞オンライン

結婚詐欺で逮捕やトラブルとならないために

結婚詐欺は、一見恋愛のトラブルに見えますが、詐欺罪が成立すれば逮捕される可能性があります。

もし今結婚を前提に交際している相手と別れる場合は、結婚詐欺を疑われないために、以下の点に配慮して対処することが重要です。

  • 相手に謝罪し、結婚できない事情をしっかりと伝えて納得してもらう
  • 借りているお金があれば、返済をする

結婚に際して両者でお金を負担している物についても、相手の負担分については相手に返さなければなりません。

婚約解消にともない揉めてしまうようであれば、弁護士を介して対処するようにしましょう。

結婚詐欺でよくある質問

結婚をほのめかして性交渉をしたら結婚詐欺になる?

自分が独身であることや、結婚をほのめかして性交渉をした場合は、結婚詐欺にはなりませんが、民法上の不法行為に該当することが考えられます。

交際相手が既婚者であると知っていれば、性交渉を避けるのが普通です。

独身であることや、結婚を前提としていると騙して、相手の誤解に乗じて性交渉をすると、自分の意思で性交渉をする権利を侵害したとして、慰謝料が認められる可能性があります。

結婚前提の交際でお金を借りた後に別れると結婚詐欺になる?

結婚前提の交際で、お金を借りた後に別れたとしても、結婚をする意思があり、お金を返すつもりがあった場合は、結婚詐欺に該当しないことが考えられます。

ただし、もともと既婚者であったり、無職で金銭を返済できなかったりした状況にあれば、結婚や返済の意思がなかったとして詐欺に問われる可能性があります。

もしお金を借りているのであれば、今後のトラブル防止のために、相手に返済しましょう。

キャバクラなどでお客さんから結婚詐欺だと言われたが詐欺になる?

基本的には、キャバクラやガールズバー、ホストなどは、飲食店に来たお客さんと会話をしてサービスをするお店です。

そのため、業務範囲を超えて結婚をほのめかす発言をし、相手に金銭を支払わせれば、詐欺罪が成立することが考えられます。

一方で、結婚をほのめかしたわけでもなく、お客さんが好意を抱き、一方的に結婚をしたいと思い込んで金銭を支払った場合は、結婚詐欺に該当しないと考えられるでしょう。

そうしたお店ではある程度好意を示すことで集客する特色がありますが、お客さんによってはトラブルに発展する可能性があります。

お店側ともよく話し合い、トラブルや身の危険が生じないように対処するようにしましょう。

まとめ

結婚詐欺は結婚をほのめかして金銭を騙し取る立派な詐欺行為です。

人と交際をしていると、当初結婚の予定がなくなったり、借りていたお金が返せなくなったり、予定と違ってしまうこともあるでしょう。

そういった場合は、最初から騙す意思がなければ、結婚詐欺には該当しません。

ただし、被害者が警察に相談をすると警察から連絡が来る可能性があります。

詐欺行為をした場合は、重い処分が下される前に、弁護士に相談するのがおすすめです。

結婚や金銭に関するトラブルが発生している場合も、弁護士に相談して、民事上のトラブルを解決しましょう。

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