恐喝罪とは?逮捕後の流れと傾向を解説

恐喝事件で逮捕されると、どのような刑事処分を受けるのでしょうか。
本コラムでは主に、以下の3点について解説します。
- 恐喝罪の概要
- 恐喝事件の傾向
- 恐喝事件で刑事弁護を依頼するメリット
恐喝で警察沙汰になってしまった方や、そのご家族の方はぜひご参考ください。
目次
恐喝罪とは
まず、恐喝罪の概要について説明します。
恐喝罪の構成要件
犯罪として法律により定められた行為の類型を構成要件といいます。恐喝罪の構成要件の要素は以下の4つがあり、すべての要素を満たす場合に恐喝罪の構成要件に該当します。
- 恐喝行為
- 財物の処分(交付)行為
- 財物の移転
- 不法領得の意思
恐喝行為
恐喝行為とは、お金などを脅し取るために人に暴行または脅迫を加えて人を畏怖(おそれおののく状態に)させることです。財物を不法に得る手段として暴行や脅迫をするわけですが、この暴行や脅迫の程度によって、該当する犯罪が異なります。
相手を畏怖状態にさせる程度の暴行・脅迫であって相手の反抗を抑圧するに至らない程度であれば恐喝罪、相手の反抗を抑圧するに足りる程度であれば強盗罪になります。
反抗の抑圧とは、肉体的または精神的に相手を抵抗できない状態にすることで、例えば、拳銃を突きつける行為は、反抗を抑圧するに足りる程度とみなされます。

財物の処分(交付)行為
財物の処分(交付)行為には、以下のような例があります。
- 加害者の恐喝行為により畏怖した被害者が自らお金などを渡すこと
- 被害者が畏怖して黙認しているのに乗じて財物を奪取すること
- 畏怖により被害者の飲食代金の請求を断念させること
ただし、被害者が畏怖せず、あるいは一旦畏怖した場合であっても、別の理由から財物の処分行為をした場合には、恐喝の未遂罪となります。
財物の移転
財物の移転とは、被害者から加害者にお金などの財物が渡ることです。財物の移転がなされると、恐喝罪は既遂となります。
恐喝して何らかの契約を結ばせて被害者から財物の移転を受けた場合、畏怖がなければ財物を交付しなかったであろうときには、たとえ相当な対価が被害者に支払われていたとしても、交付された財物の全部について恐喝罪が成立するとされています。
不法領得の意思
不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物とし、その経済的用法に従って利用または処分する意思とされています。
簡単にいうと、他人の物を自分の物にし、自由に扱えるようにしようとする意思です。
窃盗罪や強盗罪などの領得罪の構成要件該当性を認めるためには、刑法に規定されていませんが、主観的構成要件要素として不法領得の意思が必要になります。これは、財物を毀損して損害を与える毀棄罪との区別のために必要とされています。
もっとも、恐喝罪の場合、恐喝行為が行われている以上不法領得の意思が認められることは明らかなので、あまり問題になることはないです。
罰則
刑法249条は、人を恐喝して財物を交付させた者は10年以下の懲役に処すると規定しています。恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役です。
公訴時効
恐喝罪の公訴時効は7年です。犯罪行為を終えてから一定期間が経過し、犯人を起訴ないし処罰できなくなることを公訴時効といいます。
脅迫罪との違い
恐喝罪に似た犯罪として脅迫罪があります。どちらも脅迫を実行行為として定めています。
脅迫罪は「殺すぞ」などと人を脅す行為(害悪の告知)を処罰対象としており、財物の交付が含まれません。一方で、恐喝罪は、財産処分に向けられた脅迫です。
恐喝罪は脅迫に財産権の侵害が加わるため、脅迫罪の法定刑(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の方が軽いです。
恐喝罪で逮捕されるとどうなる?恐喝事件の傾向は?
恐喝事件で逮捕されるとどのような刑事処分を受けるのでしょうか。令和2年版犯罪白書で事件の傾向を確認します。
検挙率79.1%
犯罪白書によると、令和元年の恐喝事件の認知件数は1629件でした。検挙件数は1288件で、検挙率は79.1%でした。
同年の刑法犯全体の検挙率が39.3%だったことを踏まえると、恐喝事件の検挙率は高いです。
身柄率76.5%
令和元年の恐喝事件の身柄率は76.5%でした。身柄率は恐喝事件の全被疑者のうち、身柄を拘束された者の割合を示しています。具体的には、以下の計算式で求められます。
(警察が逮捕し身柄を検察官に送致した人数+検察庁で逮捕した人数)÷被疑者総数(%)
刑法犯全体の身柄率は36.5%で、恐喝事件は身柄率も高いです。
起訴率32.4%
令和元年に恐喝罪で起訴されたのは541人でした。不起訴になったのは1127人で、起訴率は32.4%でした。刑法犯全体の起訴率は38.2%で、恐喝罪の起訴率は刑法犯全体と比べてわずかに低くなっています。
起訴猶予率51.1%
令和元年に恐喝罪で不起訴になった人のうち、起訴猶予だったのは566人でした。
起訴猶予とは、証拠がそろい犯罪の嫌疑が認められながらも、被疑者の性格や年齢、犯罪の軽重、犯罪後の情況などを考慮して被疑者を起訴しない処分です。
起訴猶予率は以下の計算式で求められます。
起訴猶予率(%)=起訴猶予人員÷(起訴人員+起訴猶予人員)
令和元年の恐喝罪の起訴猶予率は51.1%で、刑法犯全体(51.7%)とほぼ同水準でした。
恐喝事件で逮捕された後の流れ
逮捕後の流れについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
恐喝事件で逮捕されると、次のような流れで刑事手続きが進みます。
- 警察は逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致
- 検察官は勾留(身柄拘束の継続)の必要性を判断。勾留する場合は送致から24時間以内に裁判官に勾留を請求
- 裁判官が勾留を認めた場合、原則10日間、最長で20日間、身柄拘束が続く(請求が却下された場合は釈放)
- 検察官は被疑者の起訴・不起訴を判断
- 起訴された場合、起訴後勾留の可能性(原則2か月間、以後1か月ごとの更新可能)
- 刑事裁判
恐喝逮捕で弁護士に相談するメリット
恐喝事件で逮捕された際は、弁護士に刑事弁護を依頼することをおすすめします。以下、その理由を説明します。
取調べへの対応の仕方がわかる
恐喝事件で逮捕されると、警察官や検察官から取調べを受けます。取調べで供述した内容は供述調書にまとめられ、署名押印するよう求められます。
この供述調書に被疑者がサインすると、供述調書は刑事裁判で証拠として採用されます。
それゆえ、取調べで何を供述するかは重要です。また、供述調書の内容に誤りがあったり納得できなかったりするときは、サインするべきではありません。
弁護人がいれば、取調べにどう臨むべきか助言を得られるだけでなく、供述調書がどういった書類なのか説明を受けられます。
被害者との示談交渉を進められる
被害者との示談交渉を進められる点も、弁護士をつけるメリットの1つです。
示談とは、加害者が一定の示談金を被害者に支払う代わりに、提出した被害届を取り下げてもらうなど合意を結び、被害者と和解することです。
示談交渉するのに資格は必要なく、示談は口頭でも成立します。しかし、交渉は弁護士に任せた方がよいです。
被害者の中には加害者と接触したくない人もいます。弁護士を介さず無理に示談交渉を始めようとすれば、被害者の感情を逆なでするだけかもしれません。
また、示談では成立後のトラブルを回避するために、通常は示談書を作成します。示談書の内容に不備があれば、合意したはずの事項が履行されないリスクが生じます。
示談交渉は弁護士に任せるのが得策です。
不起訴や罪の軽減を目指せる
こうした弁護士の活動によって、不起訴や刑の減軽が期待できます。
検察官や裁判官は、被疑者・被告人が犯行を自供し反省の気持ちを示しているか、また被害者がどのような処罰感情を抱いているか考慮します。
取調べで不合理な供述を繰り返せば、かえって不利になりかねません。弁護士から適切なアドバイスを受けるべきです。
また、示談が成立し、被害者が加害者を許す意思を示していれば、検察官が被疑者を不起訴にしたり、裁判官が判決で執行猶予を付したりする可能性が上がります。
まとめ
恐喝事件は検挙率の高い事件ですが、起訴率は刑法犯全体と比べて低く、弁護活動によって不起訴になる可能性はあります。恐喝をしてしまったと心当たりのある方、また恐喝事件に関して相談したいことがある方は、ネクスパート法律事務所にお問い合わせください。