示談書とは?基本知識からテンプレートまで【初めての人向けガイド】
示談書は、紛争の当事者同士が話し合って合意した内容を記録する、法的に重要な文書です。
後のトラブル再燃を防ぐためにも、正しい内容をきちんと示談書に落とし込むことが大切です。
この記事では、刑事事件の示談書のみに焦点をあてるのではなく、一般的な示談書の定義や法的効力、作成メリットをはじめ、具体的な書き方や注意点を幅広く解説します。
刑事事件・不倫慰謝料のテンプレートもご用意していますので、ぜひ参考にしてください。
示談書作成に必要なポイントをしっかり押さえて、安心できる合意形成を目指しましょう。
目次
示談書とは?|【定義と法的効力】
示談書は、紛争の当事者間で話し合いにより和解が成立した際に、合意内容を書面として明確に記録したものです。民事事件の解決手段として最も一般的に用いられます。
合意内容を書面化することで、口頭だけでは曖昧になりがちな支払い方法や賠償責任の範囲をはっきりさせられます。
示談書を作成する意義は、後々の追加請求や紛争再燃を抑え、当事者全員が納得した状態で問題を終結させる点にあります。
さらに、刑事事件では、不起訴処分や量刑の軽減にも関わるため、示談書の存在が大きな意味を持ちます。
示談書とは
示談書とは、紛争の当事者が話し合いで合意した解決内容を記述した書類です。
和解に関する具体的な条件や金銭の支払い方法などをはっきりと文書にすることで、互いの義務や権利が明確化され、後の混乱を防止するのに役立ちます。
示談書は、刑事事件や不倫慰謝料請求、交通事故事案など、幅広い場面で作成されます。
裁判所を通さずに話し合いのみで作成できるため、速やかな解決を目指す場面でよく利用されます。
近年では電子データで作成するケースも増えていますが、真正性を担保する観点から、署名押印をどのように扱うかを事前に確認すると安心です。
示談書の効力
示談書は、当事者間の私的な契約であるため、単なる口約束とは異なり、民法上の和解契約としての法的効力を持ちます。
- 合意内容の拘束力
示談書は、その内容について当事者双方が合意し、署名押印した時点で民法上の和解契約が成立したことを証明します。
示談書に記載された賠償金額や支払い方法、謝罪の方法などのすべての条項について、当事者双方を法的に拘束します。
一度成立すると、原則として「知らなかった。」「納得していない。」などの理由で一方的な破棄はできません。 - 裁判における証拠力
示談書は、裁判所に提出された場合、強力な証拠として扱われます。
示談書は、不法行為の事実や損害の発生、そして当事者間の賠償に関する合意があったことを明確に証明します。 - 強制執行力の限界
示談書は法的な効力を持ちますが、強制執行力そのものは持っていません。
相手が示談金を支払わない場合、示談書があるだけでは、銀行口座や給与の差押えができません。
差し押さえを行うためには、改めて民事訴訟を提起し、裁判所の勝訴判決または和解調書を得る必要があります。
示談書を作成する目的
示談書を作成する主な目的は、次の4つです。
- 合意内容の確実な履行と証拠の保全
- 将来的な紛争の封じ込め|【清算条項】
- 刑事処分での有利な考慮
- 早期解決と内容の再確認
以下、詳しく解説します。
合意内容の確実な履行と証拠の保全
示談書を作成する最大の目的は、当事者同士で話し合った解決策を書面という動かしがたい証拠として残し、その内容を確実に履行させることにあります。
示談後に、賠償金や慰謝料の支払いを定めた約束を一方が破った場合でも、示談書があれば民事訴訟において強力な証拠として提示できます。この証拠に基づき、裁判所を通じて相手に法的な履行を求められます。
将来的な紛争の封じ込め|【清算条項】
示談書には、通常、次のような清算条項を含めます。
| (清算条項) 甲及び乙は、甲と乙の間には、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
|---|
示談書に記載される清算条項は、紛争を完全に終結させるための重要な機能を果たします。
これにより、問題を長引かせず、示談で終結することを明確に示し、後の追加請求や紛争を法的に封じ込めるメリットがあります。
刑事処分での有利な考慮
刑事事件では、被害者との示談成立が、単なる民事上の和解を超え、後の刑事処分に影響を及ぼします。
被害者との示談が成立した事実と、被害者が「処罰を望まない。」(宥恕の意思)ことで、検察官の起訴・不起訴の判断において重要な有利な情状となり、不起訴処分獲得の可能性が高まります。
万が一起訴された場合でも、示談書は裁判所に提出され、量刑を判断する際の重要な情状となります。
これにより、執行猶予の獲得や、刑期が軽減される可能性が高まります。
早期解決と内容の再確認
示談書は、当事者間の認識のズレを防ぎ、迅速な解決へと導く機能を持っています。
示談書は、口頭での曖昧な約束ではなく、賠償額や約束事を明確な書面で残すことで、当事者間の合意内容の再確認に役立ち、後日の「言った、言わない」という水掛け論を防止します。
合意内容を速やかに書面に残すことで、問題を早期に終結させ、関係者全員が次のステップへ進むための区切りをつけられます。
早期解決は、紛争による精神的・時間的コストの軽減につながるため、作成する意義は大きいといえます。
示談書と合意書の違い
示談書と合意書は、法的には同じく【当事者間の合意を記録した契約書】であり、効力や意味合いに大きな違いはありません。
タイトルを、【示談書】と【合意書】どちらにすべきか悩まれる方も居るかもしれませんが、どちらにしても法的な効力に違いはありません。
示談書は、主に紛争(交通事故、不倫トラブル、刑事事件など)が解決した際の和解文書として使われることが多いです。
合意書は、紛争の有無にかかわらず、何らかの契約や取り決め(離婚条件の取り決め、業務提携など)をした際に、より広範な目的で使われることが多いです。
とはいえ、タイトルに拘ったり、悩んだりする必要はないでしょう。
示談書と公正証書の違い

示談書は、当事者が自由に作成できるメリットがある一方、そのままでは強制執行力がありません。
公正証書化し、強制執行認諾文言を付することで、相手の支払いが滞った場合には、裁判所の訴訟手続きを経ずに、強制執行の手続きに入れます。
公正証書とは、公務員である公証人がその権限に基づいて作成し、その記載内容を証明する公文書です。高い証明力があるとされています。
公証人は、法務大臣から任命され、法律の知識に富んだ人物です。
公正証書は、各自治体に設置されている公証役場で作成してもらえます。
公正証書を作成するには公証人役場での手続きや手数料が必要で、双方の立ち会いや確認が必須となります。
負担は増えますが、示談金の不払いリスクにも備えられるので、作成する価値は大いにあるでしょう。
補足|交通事故の免責証書とは
免責証書とは、主に交通事故の解決場面において、加害者側保険会社と被害者との間で作成される書面です。
示談書と免責証書の一番の違いは、示談書は通常、当事者双方の署名押印が必要ですが、免責証書は、賠償金を受け取った被害者のみが署名押印する点です。
加害者側の署名押印が不要なため、迅速な手続きが可能になるのが特徴です。
示談書を作成する2つのメリット
示談書を作成することで、裁判手続きを経ずに紛争を解決できる点は大きな魅力です。話し合いの内容を正確に書面化し、お互いが納得できる形で問題を早めに収束させられます。
合意内容が明確になることで、たとえ時間が経過しても、当時の取り決めを振り返りやすくなります。結果として、追加請求の防止や不必要な裁判リスクの低減にもつながります。
紛争解決の迅速化
示談書を作成することで、裁判所に頼らず短期間で解決を図れます。
裁判は手続きが多いうえに、判決確定まで時間がかかる一方、示談であれば当事者同士の合意が得られればそれで完了です。
結果として、金銭的・心理的なストレスを軽減しつつ解決に至る可能性が高まります。
特に、交通事故や不倫など早期解決が望まれるトラブルでは重宝される方法です。
一度合意した後は示談書の内容に従うだけですので、紛争相手と頻繁にやりとりする負担も少なくなります。
リスクの軽減
示談書を作成しない場合、トラブル相手が後になって追加請求を行うリスクがあります。
示談書には再度の請求を封じる清算条項を盛り込むことが多いため、追加リスクを抑えられます。
結果として、当事者双方にとってより柔軟な解決策が生み出されやすくなるはずです。示談書は書面として残るため、合意内容をより強固な形で残せる点も安心材料となるでしょう。
刑事事件で示談書を作成する5つのメリット
刑事事件の示談は、特に加害者にとって重要です。
示談が成立すると、加害者の身柄拘束を回避したり、不起訴処分を得るために有利に働いたりする可能性があります。量刑の軽減につながる可能性も高まります。
被害者からの民事訴訟のリスクも抑えられるため、適切な示談書の作成はメリットと言えるでしょう。
刑事事件化の回避
示談が成立することで、刑事事件化を回避できる場合があります。
被害者が被害届を提出する前や刑事告訴を行う前に示談が成立した場合、事件が捜査機関に知られる前にトラブルを解決できる可能性があります。
被害届の提出前であれば、示談によって被害届の提出を辞めてもらえる場合があります。
既に被害届が提出されている場合には、被害届の取り下げをしてもらえる場合があります。
これにより、警察の捜査が終結し、刑事事件化そのものを回避できる可能性が高まります。
逮捕・勾留の回避
示談が成立することで、被疑者が逮捕・勾留を免れる可能性があります。
示談が成立し、被害者への謝罪と賠償の意思が示されることは、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがないとされる判断材料になります。
示談金の支払いを受けた被害者が加害者を許す姿勢を示せば、捜査機関や裁判所が身柄拘束の必要性を低いと判断する可能性が高まります。
もちろん、示談の成立が必ず逮捕を回避するわけではありませんが、身柄拘束が短期間で終わるきっかけになる場合もあります。結果的に社会復帰が早まる利点があるでしょう。
ただし、被害の程度が大きい場合や重大事件の場合には、示談の有無にかかわらず身柄拘束が続く可能性もあります。
不起訴処分の獲得
示談が成立することで、不起訴処分の獲得の可能性が高まります。
検察官が起訴・不起訴を判断する際、被害者との示談が成立しているかどうかは大切な要素です。被害者が処罰を望んでいない場合は、加害者にとって有利に働く可能性があります。
示談の成立が必ず不起訴につながるわけではありませんが、特に初犯や比較的軽微な事案であれば、示談書はアピールポイントになるでしょう。
不起訴処分を得られれば、前科はつきません。裁判や刑罰を回避して生活を立て直せるため、示談は大きな意味を持ちます。
裁判での量刑の軽減
もし起訴された場合でも、示談の成立は量刑を軽減する重要な要素の一つとなり得ます。
被害者が許している事実や被害回復が成されていることは、被告人に有利な情状として考慮されるため、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
したがって、謝罪や示談金の支払いを通じて被害回復を図ることは、加害者にとってメリットが大きいといえます。加害者側がいかに誠意ある対応を見せるかが、結果に直結することを意識するとよいでしょう。
被害者からの民事訴訟の回避
示談が成立し、示談書に清算条項を盛り込むことで、事件後に被害者が加害者に対して、改めて損害賠償請求訴訟(民事訴訟)を提起するリスクを回避できます。
清算条項を盛り込むことで、被害者は同じ事案で重複した請求ができなくなります。
示談という形で終結することで、最終的なトラブルの拡大や長期化を防ぎ、双方にとって合理的な解決を得やすくなります。
示談書に記載すべき主な項目と記載例
示談書を作成する際には、示談書に記載すべき項目を押さえることが重要です。
示談内容を明文化する以上、当事者の基本情報や金銭の受け渡し条件を正しく記載することが必要不可欠です。書面に誰がどのような義務を負うのかを正確に示していないと、後々争いの種となる可能性が高まります。
以下の項目は、一般的な示談書に記載するものです。チェックリストを活用することで、漏れを防げます。

なお、これらはあくまで一つの参考としてください。
事案の概要や紛争の性質によって記載すべき項目は異なります。
示談書作成後のトラブルを避けるためにも、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
事案の概要・発生日時・関係者
何が起こったのか、どの時点で発生したのか、関係者が誰なのかを簡潔にまとめます。
例えば、交通事故なら事故発生日時や場所、被害の内容、運転者情報などが必要です。
この段階で、当事者を正しく特定できるように内容を詰めておくと、示談書の信頼性が高まります。
示談金の金額・支払い方法・支払い期限
示談金の金額を明記するのは当然ですが、それに加えて支払い方法と期限も重要なポイントです。銀行振り込みなのか分割払いなのか、いつまでに支払うのかなどを明確に定めます。
銀行振り込みの場合は、どちらが手数料を負担するのかも明記しましょう。
分割払いにする場合には、支払いスケジュールを具体的に記す必要があります。1回目の支払い期限と金額、2回目以降の計画を詳細に示すと良いでしょう。
こうした部分が曖昧だと、支払いに関するトラブルが起きやすいので、できるだけ具体的に書くことが大切です。
【振込送金・一括払いの場合】
(示談金)
乙は、甲に対し、示談金○○○万円の支払い義務があることを認める。
(支払い方法)
乙は、甲に対し、前条の示談金につき、令和〇年〇月〇日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
(振込先口座)
○○銀行○○支店
口座番号 ○○○○○○
普通預金 口座名義 ○○○○
【振込送金・分割払いの場合】
(示談金) 乙は、甲に対し、示談金○○○万円の支払い義務があることを認める。
(支払い方法)
乙は、甲に対し、前条の示談金につき、次のとおり分割して、毎月〇日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで○○万円ずつ
(振込先口座)
○○銀行○○支店
口座番号 ○○○○○○ 普通預金 口座名義 ○○○○
謝罪
金銭的な問題だけでなく、精神的なケアとして謝罪文が盛り込まれることもあります。
特に被害者が感情面で折り合いをつけたい場合は、誠実な謝罪が示談成立の鍵になることがあります。
(謝罪)
乙は、甲に対し、本件について事実を認め、真摯に謝罪する。
誓約事項
再発防止策やこの先同様の行為を行わないという宣言も示談書に含められることがあります。これが誓約事項として記載されることで、今後のトラブル発生を防ぐ抑止力にもなります。
誓約事項を文面化することで、当事者がお互いにけじめをつけやすくなり、問題解決への意識も高まります。
(誓約事項)
乙は、本件について、甲に真摯に謝意を示し、二度と同じ過ちを犯さないことを固く誓う。
(誓約事項)
乙は、甲に対し、次に掲げる行為を行わないことを約束する。
⑴ 甲の自宅や職場に訪問すること
⑵ SNS上に本件に関する書き込みをすること など
清算条項
清算条項とは、今回の示談書に定めた条件をもって、当該事案に関するすべての請求を行わないことを明示するための項目です。これにより、示談成立後に再度請求が行われるリスクを抑えられます。
明確な清算条項は、今後のトラブルを防ぎ、問題が収束したことを確認するうえで重要な意味を持ちます。
(清算条項)
甲及び乙は、甲と乙の間には、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
口外禁止条項
事情を外部に知らせたくない場合には、口外禁止条項を設けます。
例えば、不倫トラブルでは家庭のプライバシーを守るため、交通事故では当事者の名誉を守るために役立ちます。違反時のペナルティーも一緒に定めることで効果が高まります。
(口外禁止条項)
甲及び乙は、本示談書の内容について、第三者に対し一切口外しないことを約束する。
宥恕条項(刑事事件の場合)
宥恕条項とは、被害者が加害者を許す姿勢を明示する条項であり、刑事事件において大きな役割を果たします。
特に、不起訴処分の可能性を高めるための重要な役割を果たします。この条項を示談書内に明確に書き込むことで、捜査機関や裁判所に対して被害者の意向を伝えやすくなります。
ただし、宥恕条項が入っていても、事件の重大性によっては検察官や裁判官が独自に判断を下す場合もある点には留意が必要です。
(宥恕条項)
甲は、本件につき宥恕し、刑事処罰を望まない。
示談成立日・当事者双方の住所・署名押印
示談書の最後の欄に、示談の成立日・当事者双方の住所を記載し、署名押印します。
令和〇年〇月〇日
(甲) 住所・氏名 ㊞
(乙) 住所・氏名 ㊞
示談書作成時の注意点
示談書は双方が納得して結ぶものですが、作成時に押さえたい注意点が4つあります。
- 原則として示談内容の変更・撤回はできない|追加請求は不可
- 示談書が無効になる可能性もある
- テンプレートをそのまま使用しない
- 示談書の作成を相手に任せっきりにしない
以下、詳しく解説します。
原則として示談内容の変更・撤回はできない|追加請求は不可
示談書は双方合意の証拠として、強い拘束力を持ちます。いったん署名押印すれば、後から「やっぱり金額を変えたい。」などと主張するのは難しくなります。
合意内容を変えられるのは、原則として、再度双方が話し合って合意し直すケースに限られ、実際には相手が応じてくれないことが大半です。
示談書を作成する際は、早まらず、全体の条件を十分に検討してから合意するよう心がけましょう。
示談書が無効になる可能性もある
示談書の内容が法律に違反していたり、公序良俗に反する条項が含まれていたりする場合には、示談書が無効になる可能性があります。
例えば、極端に高額な示談金を強要した場合や、「示談書に署名押印しなければ家族や職場に不倫の内容をすべてバラす。」などと相手を脅して示談書に合意させた場合が挙げられます。
テンプレートをそのまま使用しない
インターネット上には示談書のテンプレートが数多く存在しますが、自身のトラブル事案に完全に合致するものは少ないでしょう。重大な抜けや記載ミスがあればトラブルが再燃する可能性が高いです。
テンプレートはあくまで参考程度にとどめ、自分の事案に合わせてカスタマイズすることが大切です。特に、支払条件や不履行時の対応策(違約金の定め)などは、テンプレートのままでは不足しがちなので、しっかり確認して書き加えることをおすすめします。
示談書の作成を相手に任せっきりにしない
示談書の作成を相手側だけで進めると、自分に不利な内容が書面化されるおそれがあります。自分が加害者側でも被害者側でも、示談書の文面には必ず主体的に関わりましょう。
相手の作ってきた案をそのまま受け入れるのではなく、細部までチェックし、必要ならば修正や追記を求めるべきです。
特に、金銭トラブルが関係する場合、記載内容の不備があなたの不利益につながる可能性があるので注意を怠ってはいけません。
【ケース別:刑事事件・不倫慰謝料】|示談書の書き方と例文
示談書の書き方は、案件の性質やトラブル内容によって様々です。
ここでは、具体的な事例(刑事事件・不倫慰謝料)別に、示談書の作成ポイントと記載例をご紹介します。
刑事事件では、宥恕条項がポイントに、不倫慰謝料請求では、接触禁止や求償権に関する記載が重要視されます。
ひとつひとつの事案に応じて、適切な文言を盛り込むことが示談成功のカギです。
以下はあくまで例ですので、実際に作成する際は必要事項をきちんと確認しましょう。
刑事事件に関する示談書【ひな形あり】
刑事事件では、被害者が加害者を許す意思を示す宥恕条項が特に重視されます。
示談金や謝罪の文言もしっかり含め、被害の性質や程度を踏まえて金額と支払い期日を設定します。
例文としては、冒頭に事件の概要、加害者と被害者の氏名、そして加害者が責任を認める部分を明記し、その上で示談金を列記する形が多いです。
なお、不起訴処分や量刑への影響は、あくまで検察・裁判所が判断する事項ではありますが、示談書が有利に働く可能性は高いです。
【刑事事件の示談書テンプレート】
示談書
被害者〇〇〇(以下、「甲」という。)と、加害者△△△(以下、「乙」という。)は、●年●月●日、●●●●●●した件(以下、「本件」という。)に関し、下記のとおり示談した。
第1条(謝罪)
乙は、甲に対し、本件の犯行について事実を認め、真摯に謝罪する。
第2条(示談金)
乙は、甲に対し、本件に関する示談金(以下、「本件示談金」という。)として、金●●●円を支払う義務を負う。
第3条(支払い方法)
乙は、甲に対し、前条に定めた金額を●年●月●日限り、甲の指定する下記口座に振り込み送金する方法によって支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
(振込先口座)
○○銀行○○支店
口座番号 ○○○○○○ 普通預金 口座名義 ○○○○
第4条(宥恕条項)
甲は、本件示談金を受け取り、本件につき宥恕する。
第5条(接触禁止条項)
乙は、甲に対し、本示談の成立後、甲に対して、電話・手紙・電子メール等の通信行為、面会、その他方法の如何を問わず一切の接触を行わない。
第6条(誓約条項)
乙は、本件について、甲に真摯に謝意を示し、二度と同じ過ちを犯さないことを固く誓う。
第7条(清算条項)
甲及び乙は、甲乙間には本示談書に定める他何らの債権債務がないことを相互に確認する。
第8条(口外禁止条項)
甲及び乙は、本件の経緯及び本示談書の内容について、正当な理由なく第三者に口外しないことを相互に約束する。
上記のとおり合意したことの証として、本書を2通作成し、甲及び乙が各自1通ずつ所持することとする。
令和〇年〇月〇日
(甲)住所 氏名 ㊞
(乙)住所 氏名 ㊞
不倫(不貞行為)慰謝料請求に関する示談書【ひな形あり】
不倫トラブルでは、慰謝料の金額や支払方法のほかにも、接触禁止条項や求償権放棄の条項などが含まれる場合があります。
結婚生活を継続する場合は、再発防止策として詳細な誓約事項をいれることも一般的です。
不倫トラブルはプライベートな問題のため、口外禁止条項によって周囲に情報を広めないよう制限を加えるケースが多いです。
不倫問題は感情的にこじれやすいため、示談書の文言については双方が納得できるよう、時間をかけて調整することが重要です。
【不倫慰謝料の示談書テンプレート】
示談書
甲と乙は、乙と甲の配偶者である丙との間の不貞行為に関して、本日以下のとおり合意した。
1.乙は、甲に対し、20○○年〇月ころから20○○年〇月ころまでの間、継続して、乙の自宅やホテルAにおいて、丙と少なくとも〇回程度の不貞行為があったことを認めるとともに、これについて深く謝罪する。
2.乙は、甲に対し、慰謝料○○○万円の支払い義務があることを認める。
3.乙は、甲に対し、前項の慰謝料につき、令和〇年〇月〇日限り、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
(振込先口座)
○○銀行○○支店
口座番号 ○○○○○○ 普通預金 口座名義 ○○○○
4.乙は、丙との交際を解消し、今後いかなる理由があろうと、丙と電話やメール、NS 等の手段を用いて連絡や接触を一切しないことを約束する。
5.乙がこの示談書に記載した内容に違反した場合には、乙は、甲に対し、その違約金として1回の違反行為につき○○円を支払う。
6.乙は、丙に対する、本件不貞行為に基づく求償権を放棄する。
7.甲及び乙は、本契約書の内容について、第三者に対し一切口外しないことを約束する。
8.甲及び乙は、甲と乙の間には、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
上記のとおり合意したことの証として、本書を2通作成し、甲及び乙が各自1通ずつ所持することとする。
令和〇年〇月〇日
(甲)住所 氏名 ㊞
(乙)住所 氏名 ㊞
示談書作成の流れ
示談書を完成させるまでに押さえるべきステップについて、順に整理します。
①事案の整理
示談書の作成に取り掛かる前に、トラブルや事件の全容を整理することが重要です。
状況や当事者を正確に把握しないと示談交渉の下準備が十分にできません。小さな誤解や事実関係の曖昧さが示談交渉を難航させる原因になりますので、関連書類や証拠を揃えておくと後の作業がスムーズになるでしょう。
この段階で専門家に相談し、法的観点から見てどういった項目が必要になるかをアドバイスしてもらうと安心度が高まります。
②示談条件の交渉
示談金の額や支払い方法、謝罪、口外禁止の有無など、具体的な条件を話し合います。
双方の意見のすり合わせを丁寧に行うと、後々のトラブルが減少するでしょう。
相手との折衝が難しい場合や刑事事件のように緊急度が高い場合は、弁護士を介入させることで、公平な条件を見いだしやすくなります。
納得する条件を模索することが重要であり、安易に譲歩しすぎると後から不満が生じる可能性もあるため、慎重に行いましょう。
③書面作成と公証役場での手続き
合意した内容をもとに示談書の文案を作成します。
支払い条件や清算条項、違反時の対応策など、詳細な条件が欠けていないか再確認してください。
必要に応じて、公証役場へ出向いて公正証書を作成することを検討します。
公正証書を得ることで、不払い時に強制執行がしやすくなるというメリットがあります。公正証書の作成には、多少の事務手続きや手数料が発生しますが、後日のトラブル防止効果を考えれば、公正証書化を検討することをおすすめします。
④示談書の取り交わしと保管
示談書が完成したら、当事者双方が署名押印し、それぞれが原本を保管します。
保管場所を確保し、紛失や改ざんが発生しないように注意しましょう。紛争が再燃した際、示談書は重要な証拠となります。示談書の保管期間に明確な定めはありませんが、問題解決後一定期間は確実に保管することが望ましいです。
示談書作成を弁護士に依頼するメリット
示談書作成を弁護士に依頼することで、様々なリスクを減らし、手続きをスムーズに進められます。
弁護士に依頼すると、法的に抜けや漏れのない示談書が作成できるだけでなく、交渉段階からサポートを受けられます。
適切な示談書の作成
弁護士は、示談書の必要条項に精通しており、法的に妥当な文言を組み込めます。
加害者・被害者のどちら側につく場合でも、点検作業をしっかり行いミスを防げます。
特に、不倫や交通事故、刑事事件など事案に応じた追加項目や特約が必要な場合、弁護士の存在が精度の高い書面作成に寄与します。
契約書としての効力だけでなく、後々の問題を想定したアドバイスを受けられる点で、弁護士を活用する意義は大きいでしょう。
トラブル回避と安心感
示談交渉では、お互いの感情が先立って話がまとまらないケースも珍しくありません。
弁護士が間に入ることで、冷静に交渉を進められるケースも多くあります。
示談書を作成するうえでの注意点やリスクを先回りしてアドバイスしてくれるため、不備や抜けが起こりにくく、合意内容に対する安心感を得やすくなります。
結果として、後から生じる紛争の種を芽のうちに摘み取り、長期にわたり根強く解決策を維持していくことにもつながります。
示談書に関するよくある質問(FAQ)
示談書作成に関して、よく寄せられる疑問や不安をQ&A形式でまとめました。
以下のQ&Aを参考に、実際の不安を解消してみてください。
示談書は必ず作成しなければいけませんか?
示談書は必ず作成しなければいけないものではありません。
しかし、示談の成立を明示し、後々の紛争を防止するためには作成することをおすすめします。
口頭だけの合意では証拠力が弱いため、万一トラブルが再燃した際に立証が難しくなります。安心して解決を目指したいのであれば、示談書という形で書面を残した方がよいでしょう。
示談書の部数は何部用意する必要がありますか?
示談書の関係者分の部数を用意します。
一般的には、当事者双方それぞれが原本を保管するために2部作成します。
署名押印された原本を双方が持つ形にし、コピーはそれと区別がつくようにしておきましょう。紛失リスクを考えてコピーを複数所持する方もいますが、原本の扱いが最も重要です。
示談書は自分で作成できますか?
示談書は自分で作成も可能です。
ただし、完全に自己流で作ると法的要件を満たさないおそれや不備があるおそれもあるため、弁護士に作成を依頼することをおすすめします。
テンプレートを利用すること自体は問題ありませんが、各項目が自分の事案に合っているかは慎重に見極める必要があります。
弁護士に依頼することで、後悔しない示談書を作成できます。
示談書のサイズやフォーマットに決まりはありますか?
示談書のサイズやフォーマットに厳密な規定はありません。
A4用紙で作成するのが一般的ですが、都合に合わせて自由に設定して構いません。
ただし、常識的に読みやすい紙面構成や字体、ページ番号などを配慮することで、後日参照するときの混乱を防げるでしょう。
示談書のサイズやフォーマットよりも、記載内容と署名押印が重要になるため、内容の正確性はきちんと確認しましょう。
示談書の作成費用はどちらが負担しますか?
示談書の作成費用の負担については、当事者同士の協議で決定するのが基本です。
支払いを加害者が一括で行うケースもあれば、被害者の要望で折半することもあります。状況によって柔軟に取り決めが可能です。
結果的には、両者が合意すればどのように決めても構いませんが、後々の不満を生じさせないためにも、明確な話し合いが必要です。
刑事事件の示談書に関するよくある質問(FAQ)
刑事事件ならではの示談書に関するよくある質問をまとめました。
以下のQ&Aを参考に、実際の不安を解消してみてください。
刑事事件の示談は自分でできますか?
加害者本人や被害者本人が示談交渉を行うこと自体は可能です。
ただし、刑事事件は手続きが進むスピードや内容が民事と異なり、専門的な知識が求められる場合が多いです。
検察や裁判所とのやり取りも視野に入れなければならないため、弁護士が仲介する方が円滑に進むことが多いのが現実です。
自力で交渉しようとして失敗するリスクや精神的な負担も大きいため、できるだけ弁護士に相談することをおすすめします。

示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?
示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。
示談成立は不起訴処分を得る上でプラスに働きますが、必ず不起訴が保証されるわけではありません。事件の性質や被害の重大性によっては検察が起訴を選択する場合もあります。
ただし、初犯や極めて軽微なケースなど、示談が大きく考慮される状況であれば、不起訴の可能性は高まります。
いずれにしても、示談書は検察や裁判所に被害者が許している事実を伝える重要な資料となるため、成立できるなら極力交渉した方が良いでしょう。

まとめ
示談書の作成は、紛争解決において重要な手続きです。
適切に内容を整え、安心できる合意を目指しましょう。
示談書は自分で作成可能ですが、内容を不備なく整えたいなら弁護士の協力を得ると安心です。
公正証書化による強制執行力の付与も含め、より確実な解決を目指してください。



