脅迫罪とは|成立要件や脅迫罪になる言葉の例

脅迫罪とは、相手に恐怖を与えるような言動によって成立する犯罪です。

脅迫罪は、すぐに逮捕・起訴されるとは限りませんが、言葉の内容や状況次第では、前科や実名報道など人生への影響も考えられます。

この記事では、脅迫罪に関して以下のポイントを解説します。

  • 脅迫罪の定義と罰則
  • 脅迫罪が成立する要件や該当する言葉の例
  • 警察が動くケース・動かないケースの違い
  • 恐喝罪・強要罪との違い
  • 弁護士に相談すべきタイミングと対応策

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脅迫罪とは

脅迫罪とは、他人に害を加えることを告げて相手を脅す犯罪です。日常的に使われる強い言葉や、SNSなどの文面が、脅迫罪に当たることもあります。

脅迫罪が成立すれば、逮捕や起訴に発展するおそれもありますが、脅迫罪に該当するかは、刑法の定める要件を満たす必要があります。

脅迫罪の罰則は拘禁刑と罰金

脅迫罪の罰則は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定められています(刑法222条)。初犯であっても刑務所に収容されることがある点には注意が必要です。

被害者の恐怖心の程度や、脅迫の内容・手段によっては、厳しい処分が下されることもあります。

2025年6月1日からは、これまでの懲役刑と禁錮刑に代わり、拘禁刑という新たな刑罰制度が導入されました。

拘禁刑は、これまでの懲役と禁錮の要素を統合したもので、労務の有無に関わらず刑務所での拘束が行われる点が特徴です。

2025年6月1日以降の脅迫罪には拘禁刑、それ以前の脅迫罪には懲役刑が適用されます。

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脅迫罪の時効

脅迫罪には、3年の公訴時効が設けられています(刑事訴訟法250条2項6号)。公訴時効とは、犯罪行為から一定の期間が経過すると、その事件について起訴されなくなる制度のことです。

脅迫罪の場合、基本的には脅迫行為が行われた日から3年がカウントの起点となります。

ただし、時効が完成する前であれば、たとえ数年経っていたとしても、逮捕・起訴される可能性は十分にあります。

時効の進行が一時的に止まる中断事由(国外逃亡など)に該当する場合には、3年を超えて訴追されることもあります。

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脅迫罪の成立要件

脅迫罪は、単に強い言葉を使っただけでは成立しません。刑法第222条に基づき、いくつかの要件を満たす必要があります。

以下では、脅迫罪が成立するための具体的な要件について解説します。

対象は被害者または被害者の親族

脅迫罪が成立するには、脅迫の対象が被害者本人またはその親族であることが要件になります。この親族は法律上の定義に基づき、以下のような範囲に限られます。

脅迫の対象 脅迫罪の対象になる? 補足
本人 ⚪︎ 明確に対象
配偶者 ⚪︎ 法律上の親族
子ども・親 ⚪︎ 直系血族
兄弟姉妹 ⚪︎ 三親等以内の親族
恋人 × 法律上の親族ではない
親しい友人 × 同上
勤務先の上司 × 法律上の関係なし

表にあるとおり、恋人や友人、上司などは脅迫罪の対象とはなりません。ただし、脅迫の内容や手段によっては、名誉毀損や業務妨害といった別の犯罪が成立する可能性もあるため注意が必要です。

生命・身体・自由・名誉または財産に対して

脅迫罪が成立するには、告げられた害悪の対象が生命・身体・自由・名誉・財産のいずれかである必要があります。

これらは刑法上、特に保護されるべき法益とされており、これらに対する侵害の予告が脅迫と評価されます。

たとえば、ただ怒りをぶつけただけ、精神的に不快にさせただけといった発言であっても、上記の法益に対する害悪と認められれば、脅迫罪の成立につながります。

一方で、これら以外の単なる悪口や無関係な話題では、原則として脅迫罪は成立しません。

害悪を告知する

脅迫罪では、害を加えると相手に告げること、すなわち害悪の告知が不可欠な要件となります。

害悪とは、相手の生命・身体・自由・名誉・財産などに対して、何らかの損害を与える旨を伝えることを指します。

重要なのは、実際に害を加えるかどうかではなく、危害を加えると告げる行為があったかどうかです。

その内容が相手にとって重大な不利益となるものである必要があり、冗談や誇張、あいまいな表現では成立しない場合もあります。

脅迫罪では、相手に明確に害悪を伝える意図と、それが伝わる内容であることが問われるのです。

恐怖心の程度・実現の可能性

脅迫罪が成立するためには、告げられた害悪が一般人を基準として恐怖を感じる程度であることが必要です。

実際に被害者が恐怖を感じたかどうかではなく、客観的に見て恐怖を感じる内容であったかが判断基準となります。

告知された害悪が実現可能であると一般的に認識されることも重要です。

告知者がその害悪を実際に引き起こす能力や手段を持っていると受け取られる場合、脅迫罪が成立する可能性が高まります。

一方で、実現不可能な害悪の告知(例:天罰が下る)は、一般的に脅迫罪には該当しません

脅迫の手段

脅迫罪は、直接対面して脅すだけでなく、口頭・書面・SNS・メール・電話など、さまざまな手段による脅しが対象となります。

告知の方法が間接的であっても、相手に内容が伝わっていれば脅迫罪が成立します。

加えて、第三者を介した脅しや、無言電話による不安のあおりなども、状況によっては脅迫と評価されるケースもあります。

以下は、代表的な手段と脅迫罪成立の可能性についての一覧です。

手段 脅迫罪が成立する可能性 補足説明
対面での発言 ⚪︎ 最も典型的なケース
電話での脅し ⚪︎ 相手に害悪が伝われば成立
メール・SNSでの送信 ⚪︎ テキストであっても成立しうる
手紙やメモ ⚪︎ 書面による害悪の告知も対象
無言電話・着信の連続 状況により威力業務妨害など他の罪に該当することも
第三者を通じて伝えた脅し ⚪︎ 内容が相手に伝われば成立

脅迫の手段は多様化しており、ネット上での脅しでも刑事責任を問われることがあります。

脅迫罪になる言葉と脅迫の事例

脅迫罪は、発言の内容や伝え方によって成立するかどうかが分かれます。

この章では、脅迫罪に該当する言葉・該当しない言葉の違いや、訴えるぞといった表現がどう判断されるかについて、事例を交えながら解説します。

脅迫罪になる言葉

脅迫罪では、相手の生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪の告知が対象になります。以下のような言葉は、状況によって脅迫罪が成立する可能性が高いため注意が必要です。

対象となる法益 脅迫罪になりうる言葉の例
生命 殺す

夜道には気をつけろよ

お前の命、明日まであると思うな

身体 殴るぞ

顔に一発お見舞いしてやる

腕の一本くらい覚悟しとけ

自由 閉じ込めてやる

次に出歩いたらただじゃ済まない

お前の行動は、全部を監視してるからな

名誉 不倫のことを職場にバラす

全部録音してネットに流すからな

親に全部言ってやる、お前の汚いことを

財産 お前の車、傷つけるぞ

家の窓、全部割ってやる

なお、俺の知り合いにヤクザがいる・事務所を通すことになるなど、反社会的勢力の存在をほのめかす言動も、脅迫罪が成立する可能性が高くなります。

たとえ明言を避けていても、相手の受け止め方や文脈によっては犯罪として扱われることがあります。

脅迫罪にならない言葉

脅迫罪は、すべての強い言葉に適用されるわけではありません。そのため、次のような言葉は脅迫罪に該当しないことが多いとされています。

脅迫罪にならない言葉 ならない理由
ミサイルを撃ち込むぞ 現実には実行不可能な内容のため、脅迫罪は成立しにくい
宇宙人を呼んでやる
覚えておけよ/見てろよ 意味があいまいで、害悪の内容が明確でない
いい加減にしろ/ムカつく 不満や怒りの表現にとどまる
あんたなんか終わりだ 具体的な危害が示されていない

これらは、相手に不快感を与える可能性はありますが、一般的に刑法上の脅迫として処罰されることはありません。

ただし、執拗に繰り返したり、状況によっては別の犯罪(名誉毀損・侮辱罪など)に発展することもあるため、注意は必要です。

訴えるぞと発言した場合

訴えるぞ・警察に通報するぞといった言葉は、脅迫罪に当たる場合とそうでない場合があります。

脅迫罪にならないケース 民事で訴えるつもりです

この件は弁護士を通じて対応します など

※これらは法的手段を冷静に伝えるものとして、正当な権利行使とみなされる

脅迫罪になり得るケース 訴えてやるよ、職場にもバラすからな

警察に突き出すってことがどういうことかわかってんのか? など

※名誉毀損や社会的信用の失墜をちらつかせて脅すような言動は、脅迫罪の成立要素を含む可能性がある

このように、言葉そのものではなく、言い方・文脈・表情・口調などを含めた全体の雰囲気が判断材料となります。

言葉が問題なくても、威圧的に繰り返す、他の害悪と組み合わせるなどすれば、処罰対象となる可能性があります。

脅迫罪・恐喝罪・強要罪との違い

脅迫罪と似た犯罪に、恐喝罪や強要罪があります。

いずれも相手を威圧して何らかの結果を得ようとする点では共通していますが、目的や行為の内容、成立要件、罰則に違いがあります。

以下では、脅迫罪と混同されやすい恐喝罪・強要罪の違いについて、解説します。

恐喝罪|脅して金銭を要求

恐喝罪は、相手を脅して金品や経済的利益を不当に得る犯罪です。

脅迫罪との違いは、脅した結果、実際に財物を交付させたかどうかが成立のポイントとなります。以下のような場合が恐喝罪に該当します。

  • このままだと痛い目にあうぞ。金を払えば見逃してやると脅してお金を払わせた
  • 不倫の事実をバラされたくなければ示談金を払えと迫って金銭を得た

恐喝罪の罰則は、10年以下の拘禁刑です(刑法第249条)。

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強要罪|義務のないことを強要する

強要罪は、暴行や脅迫によって、相手に義務のないことを無理やりさせたり、権利の行使を妨げる行為に適用されます。

脅迫罪との違いは、単に脅しただけでなく、相手に何らかの行動をさせた場合に適用される点です。以下のような場合は、強要罪に該当する可能性があります。

  • 今ここで土下座しなければ許さない・SNSの投稿を今すぐ削除しろと脅して実行させた
  • 会社を辞めろと圧力をかけて退職に追い込んだ

強要罪の罰則は、3年以下の拘禁刑です(刑法第223条)。

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脅迫罪で警察は動かない?

脅迫罪が法律上の構成要件を満たしていれば、警察は適切に捜査を行います。

通報を受けてもすぐに逮捕に至らないケースがあるのは、証拠の有無や脅迫の内容に応じて対応が慎重に判断されているためです。

警察が動かないと誤解される背景や、実際に捜査が始まる基準、証拠の重要性や逮捕後の流れについて解説します。

脅迫罪でも犯罪が成立していれば警察は動く

脅迫罪は、刑法に明確に定められた犯罪であるため、警察は当然に対応します

脅迫罪の構成要件(害悪の告知・恐怖の程度・対象の法益など)を満たし、被害者が恐怖を感じている状況であれば、警察は通報を受けた段階で捜査を開始し、加害者の特定や事情聴取などの対応を行います。

脅迫罪の捜査では、以下のようなケースもあります。

  • 被害届は出されていないが、第三者からの通報やSNS上の書き込みをきっかけに捜査が始まるケース
  • 被害者が怖くて通報できないという状況を想定して、慎重に聞き取りや裏付け捜査が進められるケース

目に見える動きがすぐにない場合でも、水面下で捜査が進んでいるケースや、すでに捜査対象として情報が共有されているケースもあります。

脅迫罪で訴える際に証拠となるもの

脅迫罪の立証には、相手が害悪を告知し、それによって恐怖を与えたという客観的な証拠が非常に重要です。以下は、脅迫の手段ごとに有効な証拠の例をまとめた表です。

脅迫の手段 有効な証拠の例
LINE・メールなどの文章 メッセージのスクリーンショット、ログ保存
SNSの投稿 投稿のスクリーンショット、URL、タイムスタンプ
電話 通話録音、通話履歴、ボイスメモ
対面での発言 ICレコーダーの録音、同席者の証言、録画映像
手紙・メモなど 現物の保管、封筒ごとの提出、筆跡がわかる形

実際は、発言の内容が明確で、相手の特定が可能な証拠がある場合に警察が動く見込みが高まります。

とくに録音やスクリーンショットは、言い逃れを防ぐ強力な証拠になり、複数回の脅迫がある場合は、時系列で整理したメモや記録表も有効です。

脅迫罪で逮捕された後の流れ

脅迫罪は、相手に恐怖を与える行為として比較的重く見られやすく、逮捕に至るケースも少なくありません。

検察庁(2023年)の統計によれば、脅迫罪で検挙された2,675人のうち、1,453人が逮捕(身柄事件)として処理されています。

これは全体の約54%にあたり、在宅事件(逮捕されずに捜査が進むケース)よりやや多い傾向にあります。

脅迫の内容や手段、証拠の明確さ、被害者との関係性などによって、逮捕の必要性が総合的に判断されます。逮捕された場合の一般的な流れは、以下のとおりです。

  • 警察による逮捕:現行犯または後日の呼び出しによる逮捕
  • 48時間以内に送検(検察へ):事件が検察に引き継がれる
  • 勾留請求・勾留決定(最長20日間):逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合、勾留される
  • 起訴か不起訴の判断:証拠や被害者の意向、示談の有無などをもとに判断される
  • 刑事裁判(起訴された場合):罰金刑や拘禁刑が科される可能性あり
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脅迫罪に関するよくある質問

脅して金銭を要求した場合は脅迫罪になる?

状況によりますが、金銭を脅して要求した場合、脅迫罪ではなく恐喝罪に該当する可能性があります。相手に害悪を告知して金銭を得ようとする行為は、恐喝罪として処罰されます。

一方、害悪の告知があっても実際に金銭を得ていなければ脅迫罪として扱われます。

つまり、脅して終わったか・脅して何かを得たかによって、脅迫罪と恐喝罪が分かれるのです。

脅迫罪の罰則は懲役刑(拘禁刑)のみ?

脅迫罪には拘禁刑だけでなく、罰金刑も用意されています。脅迫罪の罰則は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定められています。

そのため、犯行の態様や前科の有無、示談の成立などを踏まえて、罰金刑で済むケースもあります。

2025年6月1日からは懲役刑・禁錮刑が一本化され、拘禁刑という新しい刑罰区分が導入されました。今後は、労務の有無に関係なく、拘禁刑として刑務所に収容される可能性があります。

まとめ

脅迫罪は、相手に恐怖を与えるような言葉や行動によって成立する犯罪です。

明確な脅しはもちろん、LINEやSNS上の発言でも脅迫罪に該当する可能性があり、逮捕に至るケースも少なくありません。

一方で、訴えるぞなどの言葉は、使い方によっては正当な権利行使にとどまり、脅迫罪には当たらないこともあります。

どのような発言が処罰対象となるのかは、非常に判断が難しい問題のため、脅迫罪に問われた場合は、刑事事件に強い弁護士に相談することで、適切な対処が可能になります。

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