起訴後の勾留とは|起訴後の生活や保釈制度について解説
刑事事件では起訴された後も勾留が続くケースがあります。
起訴後まで勾留が続いてしまうと、今後の人生にも影響が及びますし、なぜ勾留が続くのかと納得できない人もいるのではないでしょうか。
起訴後の勾留は、弁護士に依頼することで釈放してもらえる可能性があります。
この記事では、起訴後の勾留について、次の点を解説します。
- 起訴後に勾留される理由や根拠
- 起訴後に勾留された場合どうなるのか
- 起訴後の勾留から解放される保釈制度について
起訴後の勾留とは
ここでは、起訴後の勾留について次の点を解説します。
- 起訴後に勾留される理由
- 起訴前と起訴後の勾留の違い
- 起訴後に勾留される場所
- 起訴後の勾留率
起訴後に勾留される理由
法律では、次に当てはまる場合、勾留を求めることができます。
- 被告人が定まった住居を有しないとき
- 被告人が証拠を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるとき
- 被告人が逃亡すると疑うに足る相当な理由があるとき
起訴前の捜査の段階では、容疑者(被疑者)の証拠隠滅や逃亡を阻止するために勾留が行われるのです。
起訴後の勾留に関しては、こうした事情だけでなく次の理由があります。
- 裁判に出廷しないことを避けるため
- 裁判前に被害者に会い、不利な証言をしないように迫ったり、危害を加えたりさせないため
日本では原則として被告人(裁判にかけられる人)が不在のまま刑事裁判は開廷できません(刑事訴訟法第286条)。
必ず出廷してもらうため、被害者保護のためから起訴後に勾留される可能性があるのです。
起訴前と起訴後の勾留の違い
起訴前と起訴後の勾留の違いは次の通りです。
起訴前 | 起訴後 | |
①呼ばれ方 | 被疑者 | 被告人 |
②拘束期間 | 最長20日間 | 2か月以上 |
③弁護士の選任 | 〇 | 〇 |
④家族や友人との接見(面会) | 接見禁止でなければ可 | 接見禁止でなければ可 |
⑤拘束場所 | 留置場 | 留置場がほとんど |
⑥勾留中の生活 | 取り調べ | 裁判の準備 |
⑦保釈請求 | × | 〇 |
起訴前勾留は被疑者勾留、起訴後勾留は被告人勾留とも呼ばれます。
起訴前の拘束期間は最長でも20日間であるのに対し、起訴後の拘束は2か月以上、場合によっては刑事裁判が終了するまで拘束を受ける可能性があります。
起訴前の勾留では捜査が行われますが、起訴後になると裁判が行われるのを待つことになります。
接見が禁止されていなければ、家族や友人などとの面会は起訴前と同様に可能です。
保釈請求に関しては、起訴後の制度であるため、起訴前には利用できません。
起訴後に勾留される場所
起訴後に勾留される場所は、本来拘置所と決められています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第3条、15条)。
拘置所というのは、起訴後に刑事裁判の結果が確定していない被告人(未決拘禁者)が収容される施設です。
刑が執行されて収容される刑務所とはまた別の場所です。
しかし、拘置所の収容力の問題や、移送の手続きの煩雑さなどから、警察の留置場になるケースがほとんどです。
起訴後の勾留率
法務省の犯罪白書によると、2022年の起訴後の勾留率は次の通りです。
裁判所 | 勾留率 |
簡易裁判所 | 60.7% |
地方裁判所 | 72.6% |
簡易裁判所では、罰金刑や3年以下の懲役が罰則となるような軽微な犯罪の裁判が行われます。
懲役が科されるような一般的にニュースでよく知られる刑事裁判は、地方裁判所で行われます。
それぞれの勾留率は60~70%と高い割合になっているため、早い段階で弁護士に依頼して不起訴を目指したり、保釈を求めたりすることが重要です。
起訴後の勾留までの流れと期間
起訴後の勾留は、裁判の出廷を目的の1つとしています。
そのため、起訴後の場合、刑事裁判の終了まで勾留が続くケースがあります。
ここでは、起訴後の勾留までの流れや、起訴後の勾留の期間について解説します。
逮捕
事件発生から警察が捜査を行い、被疑者と疑われた場合に、逮捕されることになります。
刑事事件の基本的な流れは、警察が事件の捜査を行い、それを踏まえて検察が事実を調査して、刑事裁判にするかどうか判断します。
警察では取り調べを行い、逮捕から48時間以内に事件を検察庁に送るかどうか判断するのです。
起訴前の勾留(最長20日間)
逮捕から48時間以内に検察に身柄が送られたら(送致)、検察は24時間以内に、刑事裁判にするか(起訴か不起訴)、さらに捜査を行うかどうかの判断を下します。
ほとんどのケースでは捜査や身柄拘束が必要と判断され、検察が裁判所に勾留を求めます(勾留請求)。
勾留が認められると、起訴前の勾留は原則として10日間、延長が認められればさらに10日間身柄を拘束されることになります。
勾留後は警察の留置場に入れられることになり、警察や検察から取り調べを受けることになります。
この最長20日間の間に、検察は起訴か不起訴かを判断するのです。
起訴後の勾留(2か月以上)
また、起訴前の勾留は検察が必要だと判断して裁判所に請求しますが、起訴後の勾留は裁判官が判断して行います(刑事訴訟法第280条)。
起訴後の勾留の期間は、起訴から2か月と法律で決められていますが、継続の必要性が認められれば、1か月だけ更新できます。
また、次に当てはまる場合は、起訴後の勾留の更新に制限はありません(刑事訴訟法第60条、第89条)。
次に当てはまる場合、更新には限度がないため、保釈されない限りは刑事裁判の終了まで、起訴後の勾留が続く可能性があります。
- 被告人が死刑または無期懲役、もしくは短期1年以上の懲役、もしくは禁固にあたる罪を犯したとき
- 被告人の犯罪に常習性があり、長期3年以上の懲役または禁固にあたる罪を犯したとき
- 被告人が証拠を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるとき
- 被告人の氏名や住所がわからないとき
一般社団法人 日本保釈支援協会の2022年の統計によると、半年から1年以上勾留された人は3,399名、全体の10.5%でした。
事件が複雑であるような場合は、刑事裁判自体も長期化し、その間も勾留が続くおそれがあるります。
起訴後の勾留も留置場に入れられるケースが多いですが、拘置所の収容人数に余裕があったり、移送が手間でなかったりすれば、拘置所に入れられることもあります。
参考:保釈に関する数値データ – 一般社団法人 日本保釈支援協会
起訴後に勾留された場合
実際に起訴後に勾留された場合、どうなってしまうのでしょうか?
ここでは、起訴後の勾留中の生活について紹介します。
起訴後の勾留中は裁判に向けて準備する
起訴後に勾留された場合、留置場で裁判の開始や結果を待つことになります。
そのため、裁判に関して証拠収集や整理、事実関係や検察側の証拠書類の確認など、弁護士との打ち合わせが行われることになるでしょう。
懲役3年以上の刑罰が科される犯罪や、刑事裁判の手続きによっては、弁護士がいないと裁判を行えません(刑事訴訟法第36条)。
そのため、起訴後に被告人が弁護士を選任していなくても、裁判所が国選弁護人を選任してくれます。
しかし、国選弁護人が選任されるのを待っていては、身柄を釈放してもらうのにも時間がかかってしまいます。
長期の勾留を回避するためにも、早めに弁護士に依頼をして保釈を申請してもらいましょう。
起訴後勾留中でも家族と接見できる
起訴後に勾留されても、基本的には家族や友人との接見ができますし、家族から差し入れをすることもできます。
しかし、共犯者がいるような場合は、共犯者や関係者が接見で証拠の隠滅など、口裏合わせをするおそれがあるとして、接見が禁止されるケースがあります。
こうした場合でも、弁護士であれば接見に制限は受けません。
接見禁止で不安な場合は、弁護士に相談して、差し入れや接見禁止の解除をしてもらいましょう。
余罪があれば取り調べが行われる
起訴された段階では、証拠収集は終えて審理が行われることになるため、起訴された事件についての取り調べは行われません。
実務上は余罪がある場合に、起訴後の勾留中も取り調べを受けるケースがあります。
その余罪でも起訴されるおそれがあるため、どのように対応すべきなのか、すぐに弁護士に相談しましょう。
勾留日数は刑に算入される可能性がある
刑事裁判で有罪判決が下されるまでは、犯罪は行ったと認定されていないため、無罪として扱われます(推定無罪)。
まだ結果がわかってない段階で、起訴後に勾留されるのは、刑罰を受けているのと同じことになってしまいます。
そのため、もし裁判で有罪、刑罰が科された場合は、勾留日数を刑期に算入される可能性があります。
例えば、勾留日数を懲役期間から差し引くようなイメージです。
勾留日数を刑期に算入するかどうかは、事件を担当する裁判官によって決められます。
もっとも、有罪になったり、起訴されてしまったりする前に、弁護士に依頼して実刑を回避することが重要です。
起訴後の勾留から解放される保釈制度とは
起訴後に勾留されても、保釈が認められれば、身柄拘束から解放してもらえます。
ここでは、起訴後の勾留から解放される保釈制度について解説します。
保釈金を預けて保釈してもらう手続き
保釈制度とは、刑事裁判が行われる裁判所に保釈金を預けることで、被告人を釈放して社会復帰できるようにする手続きのことです(刑事訴訟法第90、91条)。
起訴後の勾留の目的は、裁判への出廷や、被害者保護です。
しかし、裁判で有罪判決が下るまで、被告人は推定無罪の状態にあり、本当に罪を犯したのか、冤罪なのかわかりません。
推定無罪の状態で、長期間身柄拘束を受ければ、社会復帰が困難になるなど、その影響は大きなものになります。
そうした被告人の不利益を少しでもなくすのが、保釈制度なのです。
簡単にいえば、裁判所への出廷などのルールを守り、担保としてお金を預けてくれれば、身柄を解放しますよという制度ですね。
保釈金の金額
保釈に必要な保釈金の金額は、いくらとはっきり決まっていませんが、相場は150万円ほどといわれています。
裁判所への出廷などが保釈の条件であるため、そうした約束を破れば保釈金は没収されることになります。
ルールを破らせないためにあるのが保釈金なので、没収されて困る金額に設定されます。
保釈が認められる条件
保釈が認められる条件は次の通りです。
- 死刑または無期もしくは1年以上の懲役や禁固にあたる罪を犯していない
- 以前に死刑や無期懲役、もしくは10年以上の懲役や禁固の有罪判決を受けたことがない
- 犯罪の常習性がないこと
- 証拠を隠滅するおそれがないこと
- 被害者やその親族などに危害を加えるおそれがないこと
- 被告人の名前や住所がわかること
保釈には、被告の生活や行動を監督できる身元引受人が必要な場合がほとんどです。
上記に該当するため、保釈されるだろうと思っていても、認められない可能性もあります。
令和5年の犯罪白書によると、2022年の保釈率は次の通りでした。
裁判所 | 保釈率 |
簡易裁判所 | 17.9% |
地方裁判所 | 32.2% |
保釈が認められる割合は高くても30%くらいです。
保釈請求は申請の回数に上限はないので、早期に弁護士に相談して諦めずに申請することが大切です。
保釈申請ができる人
保釈申請ができる人は次の通りです。
- 被告人本人
- 依頼した弁護士
- 親権の有無を問わず父親や母親や保佐人
- 婚姻関係にあたる夫や妻
- 直系の親族、兄弟姉妹 など
保釈の条件や保釈金を準備できない場合、納付の流れなどは次の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
起訴後の勾留で弁護士に依頼するメリット
起訴後まで勾留されると、今後の社会復帰が厳しくなってしまうため、早期に弁護士に依頼して保釈を求めることが重要です。
ここでは、起訴後の勾留を弁護士に依頼するメリットを紹介します。
身柄が解放されるようにサポートしてくれる
起訴後の勾留が続けば、強制的に社会から切り離されてしまうため、仕事や生活に大きな悪影響が及んでしまいます。
弁護士に依頼することで、保釈の申請を行うなど、身柄が解放されるようにサポートしてもらうことが可能です。
早期に社会復帰ができれば、社会的に孤立せずに済み、再犯防止にも繋がるかもしれません。
接見禁止でも差し入れなどをしてもらえる
起訴前や起訴後の勾留では、共犯者がいると疑われるような場合、接見禁止という処分を受ける可能性があります。
起訴後の勾留で接見禁止を受けてしまうと、ご家族は勾留されている人の様子もわからず、非常に不安になるでしょう。
勾留されている人にとっても、刑事裁判が行われる中で、家族や友人に会えない心細さや不安を感じるはずです。
接見禁止の状態でも、弁護士に依頼することで、家族の様子を伝えてもらったり、接見禁止を解除してもらったりすることができます。
重い処分が下されないように弁護してくれる
日本の刑事裁判の有罪率は、99.97%といわれており、起訴されれば高確率で有罪判決が下ってしまうおそれがあります。
そのため、もし起訴された場合は、少しでも処分が軽くなるように、適切な弁護活動をしてもらうことが重要です。
例えば、被害者がいる犯罪では示談交渉を行ってもらい、被害者の許しを得る必要があります。
起訴後でも弁護士への依頼は可能です。
少しでも重い処分が下されないように、早期に社会復帰ができるように、弁護士に相談しましょう。
まとめ
起訴後の勾留は長ければ3か月、罪によっては無期限になる可能性があります。
逮捕からずっと勾留が続き、万が一実刑になってしまうと、保釈されることなく、そのまま刑務所へ行くことになってしまうのです。
長期間の勾留はご本人はもちろん、ご家族にとってもとてもつらいものです。
ネクスパート法律事務所では、身柄解放や起訴後の保釈にも豊富な実績があります。
「もうダメかもしれない」と諦めずに、早期に身柄を釈放できるようサポート致しますので、お気軽にご相談ください。