被害者と示談したい方へ
示談の成立は加害者にとって有利な事情になり、不起訴や罪の軽減を期待できます。
しかし、いざ示談交渉をしようとすると、以下のような問題が予想されます。
- 被害者の連絡先がわからない・教えてもらえない
- どうすれば示談を進められるのかわからない
- 被害者に示談を断られる
結論からお伝えすると、刑事事件の示談交渉をする場合は弁護士のサポートを受けるのが一般的です。
以下、被害者に示談を申し入れてから和解を得るまでの流れをご説明しつつ、弁護士によるサポートの内容をご案内します。

目次
被害者と示談をする流れと弁護士のサポート内容
被害者と示談をする流れと、弁護士によるサポートの内容についてご説明します。
被害者の連絡先を入手する
被害者の連絡先がわからなければ示談できません。
仮に被害者の連絡先がわかったとしても、被害者は加害者と顔を合わせたくない方も多く、加害者からの直接の連絡を拒むことも多いです。
被害者が店舗である場合、加害者本人とは直接示談交渉をしないと決めている会社もあります。
また、店舗等の場合には、示談交渉をする権限のある人物(管理者等)が決まっていることが多く、権限が無い人物と示談交渉しても管理者が了承しないこともあります。
加害者が逮捕・勾留されている場合には例え友人・知人であっても、連絡を取ることはできません。
被害者不明の場合には、連絡先は全くわかりません。謝罪しようにも連絡先が不明ではどうしようもありません。
弁護士のサポート内容
加害者とは直接顔を合わせたくない被害者でも、弁護士からの連絡であれば応じてくれることがあります。
被害者が店舗である場合には弁護士から連絡が来ると、示談の権限を有する人物を教えてくれることが多いです。
被害者の連絡先が不明の場合には、捜査機関に被害者の連絡先を教えてもらえるか、確認します。捜査機関は、被害者に、「加害者が示談交渉したがっているが、連絡先を教えて良いか」確認します。被害者が良いと言ってくれれば連絡先を教えてくれます。
謝罪と示談の申し入れ
被害者の連絡先が判明し、謝罪や弁償の話ができる場合には示談交渉に入ります。
弁護士のサポート内容
加害者が真摯に反省し、謝罪していることを伝え、被害の弁償を申し出ます。被害が店舗に陳列されている物等の物的被害である場合にはその物の価格を弁償することが多いです。
場合によってはその物の価格だけではなく慰謝料もプラスして請求されることもあります。例えば今まで何度も被害に遭っていたがいつも逃げられていて、やっと捕まえることができた場合、これまでの被害も慰謝料として請求されることがあります。その場合には、今までの被害の弁償も含めて適正と考えられる価格での示談がまとまるように交渉します。
精神的苦痛を受けた場合にはその被害を金銭に換算して弁償することになりますが、この金額は個々の事案によって変わるため、金額の算定は難しく弁護士のサポートは欠かせません。
被害者の方は今後も同じ被害に遭わないか不安を感じています。被害者の不安を取り除くことも示談を成立させるための鍵となります。
二度と同じ事件を起こさないためにどのような方策を講じるべきか、具体的な案を提示し、被害者に納得していただくため、弁護士は加害者による検討のサポートをします。
例えば事案が万引きの場合、その店舗には二度と行かない、万が一その店舗に行く必要があるときには必ず付き添いを連れていく等、事案が電車内の痴漢等であれば、その路線を使わない、それが無理な場合には乗る時間や車両を変える等、具体的に実現可能な条件を提示して、被害者に納得してもらえるように弁護士はサポートします。
示談書を作成する
示談金の金額その他内容の合意ができたら、その内容に沿った示談書を作成します。
弁護士のサポート内容
示談書は後々のトラブルを防止するため、記載しなければならない内容を全て記載する必要があります。弁護士に示談書の作成を依頼すると、必要事項を網羅した示談書を作成します。
示談金の金額は、被害者の被害感情が大きく関係してきます。被害感情が大きければ大きいほど高額な示談金を請求されます。
精神的苦痛は事件ごとに異なるため慰謝料に相場はありませんが、実際には経験上の相場のようなものが存在します。また、加害者側に、高額な示談金を支払えるだけの資力が無いこともあります。
過去の事例から適正な示談金の金額を被害者に示し、被害者の方に納得していただくように弁護士はサポートします。適正な示談金を支払うことで加害者を許すという合意ができるように弁護士は交渉します。
双方合意ができたら、合意内容を記載した示談書を2通作成します。加害者の代理人弁護士・被害者双方が署名押印した示談書を、被害者、加害者の弁護士がそれぞれ1通保管します。示談書には被害者の情報が記載されるため、示談書を加害者に渡したり見せたりすることはありません。
示談金を被害者に支払う
示談が成立したら、被害者に示談金を支払います。
弁護士のサポート内容
示談金の支払い方法は被害者の指定する口座への振込みが一般的です。被害者の情報が加害者に伝わることが無いように、加害者には弁護士の口座に振り込みをしてもらい、それを被害者の口座に振込む形で示談金が支払われます。
示談金を振込んだら被害者には示談金領収証に署名押印してもらいます。
示談書を検察・裁判所に提出
示談が成立したことにより被害者の処罰感情が無くなったことの証明として、示談書を検察あるいは裁判所に提出します。
弁護士のサポート内容
弁護士が作成する示談書には、被害者が示談金を受領する代わりに加害者を許すという文言を記載することが一般的です。
この文言により、被害者の処罰感情が無くなったことが捜査機関に明らかになり、加害者に有利な事情として考慮され、不起訴処分につながりやすくなります。
なお、被害感情が非常に大きい場合には慰謝料は受領するけれど、示談金名目では受け取らないし加害者を許すつもりも無いという被害者もいます。
この場合には、慰謝料の受領証だけ提出することになります。許してはもらえなかったけれど、被害の弁償をしたことが加害者に有利な事情として考慮されます。
示談金相場について
示談金は被害者が被った被害を金銭に換算して支払うものです。従って財産上の被害の場合には、通常その物の価値が被害額となります。
精神的苦痛に対する慰謝料も示談金に含まれますが、精神的苦痛は事件ごとに異なるため、相場は存在しないと言えますが、実際には過去の例や経験上の相場のようなものが存在します。
刑事事件の示談金相場は概ね以下のとおりです。
- 暴行罪の示談金の相場【10~30万円】
- 傷害罪の示談金の相場【10~100万円】
- 窃盗罪の示談金の相場【被害額+ ~20万円程度】
- 詐欺罪の示談金の相場【被害額+ ~20万円程度】
- 横領罪の示談金の相場【被害額+ ~20万円程度】
- 恐喝罪の示談金の相場【被害額+ ~20万円程度】
- 強盗罪の示談金の相場【被害額+ ~50万円程度】
- 強制性交等罪(旧強姦罪)の示談金の相場【100~200万円】
- 痴漢の示談金の相場【20~100万円】
個別の事情によって金額が増減します。
示談金相場の詳細に関しては、こちらの記事をご覧ください。
被害者への謝罪と示談をして、事件の早期解決を目指しましょう
弁護士が間に入って被害者に謝罪し示談交渉をすることにより、早期に和解を得られるため、不起訴や罪の軽減が期待できます。
事件を起こしてしまい、被害者と示談したいと思われる場合には、早急にご相談ください。