賭博罪とは|賭博罪の定義や構成要件・賭博は日本でなぜ違法?
賭博罪とは、金品などを賭けて、賭け事を行った際に成立する犯罪です。
近年はオンラインカジノを利用したとして、著名人などが検挙され、賭博罪が注目されました。
日本では、金銭を賭けて行うギャンブルは原則禁止されています。しかし、パチンコや競馬など例外的に許されているものもあり、その違いついて疑問を抱く人も少なくないはずです。
この記事では、賭博罪について以下の点を解説します。
- 賭博罪の概要や罰則
- 賭博罪になるもの・ならないもの
- 賭博が日本でなぜ違法?
- 賭博罪で逮捕されることはある?
なお、賭博罪は逮捕されたり、懲役や前科となったりするリスクがあります。
オンラインカジノなどの賭博罪で逮捕されるのではと不安な場合は、弁護士に相談して、適切な対応を行うことが望ましいです。
目次
賭博罪とは
賭博罪とは、金品などを賭けて賭け事を行った際に適用される犯罪のことです。刑法第185条から第187条に、賭博及び富くじに関する罪という名称で定められています。
例外的にパチンコや競馬などが認められているため、賭け事は問題ないと認識している人も少なくないでしょう。
しかし、賭け事やギャンブルは原則として違法です。
賭博罪の種類と罰則
賭博罪にも、以下のような種類があります。
内容 | 罰則 |
単純賭博罪 | 50万円以下の罰金または科料 |
常習賭博罪 | 3年以下の懲役 |
賭博場開帳図利罪 | 3か月以上5年以下の懲役 |
それぞれの違いについて解説します。
単純賭博罪
単純賭博罪とは、金銭を賭けて賭博を行った場合に適用される犯罪です。
(賭と博)
第百八十五条 賭と博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。
引用:刑法 – e-Gov
罰則は50万円以下の罰金、もしくは1,000円以上1万円未満の科料(罰金のようなもの)が科されます。
常習賭博罪
常習賭博罪とは、賭博を常習的に行っていた場合に適用される犯罪です。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
引用:刑法 – e-Gov
罰則は3年以下の懲役と、単純賭博罪よりも重い罰則が科されます。
常習賭博罪と判断されるのは、前科の有無や、賭けた金額、賭博を行った期間や回数などから総合的に判断されることになります。
賭博場開帳図利罪
賭博場開帳図利罪(とばじょうかいちょうとりざい)は、主催者となり、賭博を行う場所を開設した場合に適用される犯罪です。
賭博場の開設に該当する行為は幅広く、以下のような行為でも賭博場開帳図利罪が成立する可能性があります。
- 友人などを集めて一時的(もしくは継続的)に賭博を行う場を設ける
- 電話などで申し込みを受けて賞金を配当する・携帯アプリを通じて参加者に賭博の情報提供を行う
- 賭博ができるインターネットサイトを開設する など
賭博場と聞くと、人を集めて行うようなイメージがありますが、必ずしも賭博者を一か所に集める必要はないとされています(最高裁判所昭和48年2月28日決定、名古屋高等裁判所昭和46年10月27日判決)。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
引用:刑法 – e-Gov
賭博場開帳図利罪の罰則は、3か月以上5年以下の懲役です。
単純賭博罪の構成要件・定義
単純賭博罪が成立する構成要件や定義はどのようなものでしょうか。
成立するタイミングや罪に問われる金額などが気になる人もいるかもしれません。以下では、単純賭博罪の構成要件や定義について解説します。
勝敗が偶然により勝敗が決定されるもの
単純賭博罪が成立する要件の一つは、刑法に反する賭博行為であることです。
賭博の定義は、当事者が確実に予見できず(偶然の事情)、当事者の意思で自由に支払いできない事実について勝敗を決定することです(大審院大正11年7月12日判決)。
過去には、麻雀、花札、じゃんけん、競馬などが該当しました。
さらに、当事者の技量が結果に大きく影響を及ぼすと思われるものでも、多少であっても偶然の事情により勝敗が左右するものであれば、賭博に該当する可能性があります。
過去の判例では、囲碁や将棋、FX取引なども賭博に該当します。
一方で、いわゆるイカサマを行っている場合は、当事者の片方だけが勝敗を知っており、偶然の結果ではないため、騙した側に詐欺罪が成立すると考えられます。
勝敗により財産の得喪を争うもの
賭博罪の構成要件であり、定義となるもう一つは、勝敗により財物の得喪を争うものであることです。
財物とは、現金だけでなく財産上の利益であれば該当します。例えば、不動産や動産、債権などでも成立します。
財物の得喪とは、賭け事で、勝者は財産を得て、敗者は財産を失うことです。
そのため、参加者が負けても財産を失わない福引や懸賞は、賭博に該当しません。
賭博罪が成立するタイミングは、現金などを受け渡す約束で成立します。
一時の娯楽に供する物を賭けた場合は成立しない
例外的に賭博罪が成立しないのは、賭けたものが一時の娯楽に供する(差し出す)物である場合です。
(賭と博)
第百八十五条 賭と博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。
引用:刑法 – e-Gov
一時の娯楽に供する物とは、すぐに消費できる低額な物を指します。例えば、ジュース1本やタバコ1箱、お菓子などが該当します。
一方で、どんなに少額であっても、1円であっても現金を賭ければ、賭博罪が成立します。
他の賭博罪の構成要件
常習賭博罪の構成要件
前述のとおり、常習賭博罪は、賭博を常習的に行っていた場合に成立します。
賭博の常習性とは、反復して賭博行為をする習癖がある人を指しますが、必ずしも賭博により生計を立てている博徒だけが当てはまるわけではありません。
常習的に賭博を行っていたかどうかは、下記により総合的に判断されます。
- 賭博を行った頻度・期間
- 前科の有無
- 賭けた金額の多寡
- 賭博の種類 など
賭博場開帳図利罪の構成要件
賭博場開帳図利罪の構成要件は、①賭博場を開帳すること、②図利の目的があることです。
賭博場とは、賭博をする場所で、どのような場所でも、設備が整っていなくても、賭博場として成立します。
前述のとおり、必ずしも一か所に人を集める必要はありません。
②の図利の目的とは、賭博場を開帳する対価として、参加者から手数料などをもらい、不法な財産的な利益を得ようとする意思を指します。
賭博罪になるケース・ならないケース
ここまで、賭博罪の構成要件や定義を解説しましたが、なぜ合法と違法な賭博があるのか、疑問に感じる人も少なくないでしょう。
以下では、賭博罪に該当するケース、賭博罪とならないケースを具体例で解説します。
パチンコ・競馬・競艇
ギャンブルとしてよく知られる競馬、競艇、競輪、そして宝くじなどは、公営ギャンブルとして国から許可が出ているため、賭博罪が成立しません。
国が公営ギャンブルを認めている理由として、国や地方自治体への収益となるためです。
実は、競馬は農林水産省、競輪とオートレースは経済産業省、ボートレースは国土交通省、パチンコは警察庁が管轄しています。
競馬の場合は、収益が地域の教育・文化の発展、社会福祉の増進、医療の普及、都市計画や公共施設の整備などに活用されています。
なお、パチンコの場合は、風俗営業法によって営業が認められ、現金を直接交換しないことで、賭博罪とならないようにされています。
パチンコでは、パチンコの出玉を特殊景品と交換し、景品を景品交換所で交換することで現金化できます。
ただし、特殊景品を現金化できる時点で、財物に該当し、賭博行為に当たるとする見解もあります。
公営ギャンブルは例外的に認められたギャンブルではありますが、一方で、ギャンブル依存症を対策する日本政府の足かせになっているとの指摘もあります。
オンラインカジノ
オンラインカジノとは、スマホやパソコンなどオンライン上で、バカラやポーカー、スロットやルーレット、スポーツなどに対して、実際に現金や暗号資産などを賭けるギャンブルです。
オンラインカジノを運営しているのは海外サイトが多く、近年では、YouTubeやメディアなどで無料版のCMが流れることもあり、日本国内から利用しても賭博罪とならない、もしくはグレーゾーンだと考えている人が多く存在していました。
しかし、2025年に著名人が警察から事情聴取を受けたことで、オンラインカジノが違法であると知った人も少なくありません。
オンラインカジノは利用者やもちろん、決済代行業者も摘発されています。
オンラインカジノは、海外の法律で合法的に運営されていることがありますが、日本国内からアクセスして利用するのは違法であり、賭博罪が成立します。
賭け麻雀
前述のとおり、賭け麻雀は賭博罪が成立します。
麻雀はプレイヤーの技量もありますが、引く牌などは運の要素が大きなものとなります。そのため、麻雀に対して現金を賭ける行為は違法です。
過去には、賭け麻雀をしたとして漫画家が逮捕されています。
賭けじゃんけん
ジュースやお菓子をかけてじゃんけんをする場合は、賭博罪は成立しないと考えられます。
これは、ジュースやお菓子など、すぐに消費可能なもの、金額が少額であり一時の娯楽に供する物だと判断されるためです。
一方で、じゃんけんであっても現金を賭けてじゃんけんをすれば、違法となります。
アミューズメントカジノ・ゲーム大会
アミューズメントカジノとは、現金でチップを購入し、チップを賭けて遊べる施設のことです。
海外のカジノようにポーカーやルーレットなどで遊べますが、チップが増えても現金化はできません。
しかし、アミューズメントカジノにおいても、チップを現金化できるような場合や、参加者から参加料やゲーム代を徴収して賭博をさせれば、違法賭博に該当します。
さらに、近年注目されているeスポーツですが、eスポーツの大会においても、参加者から参加料を徴収し、参加料をもととして賞金を支払うと、賭博罪が成立する可能性があります。
eスポーツもプレイヤーの技量が試される部分が大きいですが、ゲームによっては運の要素によって勝敗が左右されることもあります。
加えて、参加者が参加料として支払った金銭をもとに賞金を設定し、それを目的としてゲームを行うと、賭博だと判断される可能性があります。
株式・FX取引・仮想通貨
射幸行為とは、努力をせず運否天賦で幸運を得たい欲の心を指し、射幸行為とは広い意味でギャンブルや株・FX取引などを指します。
自己破産を定めた破産法では、浪費や賭博、株式などの射幸行為による借金は、自己破産の対象外とされています。
しかし、刑法上では、株式、FX取引、仮想通貨などは投資という経済活動だと判断されるため、賭博罪は成立しません。
スポーツ賭博
スポーツ賭博とは、スポーツの勝敗の結果を予想するギャンブルです。
スポーツ賭博にはいくつか種類があり、Jリーグなどの試合結果を予想するスポーツくじは、文部科学省が管轄とし、スポーツ振興投票の実施等に関する法律で認められています。
一方で、オンライン上で行うスポーツ賭博や、知人の間で現金を賭けて行うスポーツ賭博は違法です。
宝くじ
宝くじは総務省によって管理されており、当せん金付証票法に定められた公営ギャンブルであり、違法にはなりません。
なお、宝くじで当選する金額は、宝くじの発売総額に対して5割以下と定められており、収益は公共事業や少子高齢化、地域経済活性化、災害対策、社会貢献活動などに使われています。
参考:宝くじについて 総務省・全国自治宝くじ事務協議会 令和6年12月 – 総務省
賭博は日本でなぜ違法?
賭博は、自分の財産を賭けて行います。間接的には家族などに迷惑をかける可能性がありますが、基本的には他人の権利を侵害するものではありません。
そのため、賭博をするのは個人の自由であり、なぜ賭博は違法なのだろうかと考える人もいるかもしれません。
賭博が違法とされる理由について、判例では以下のように示されています。
国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法二七条一項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。
わかりやすく言えば、賭博は国民に怠惰な浪費をさせ、健全な経済的生活の美しい風習を害するだけでなく、場合によっては暴行や脅迫、殺人、強盗などの副次的な犯罪を誘発し、国民の経済機能に大きな障害を与えるおそれがあるとしています。
これは昭和25年の判例ですが、近年オンラインカジノで借金を負ったことで、闇バイトに参加するケースもなども散見されます。
このような理由から、公営ギャンブル以外の賭博は、禁止されています。
賭博罪で逮捕されることはある?
賭博罪は現行犯逮捕が多い
賭博を行えば逮捕される可能性があります。
法務省によると、2023年の賭博罪の検挙率は70.9%でした。検挙された人員の中には、逮捕された人も含まれます。
賭博罪の場合は、賭博が行われている場所を警察が捜査を行い、疑いが固まった時点で、捜索差押え令状を携え、賭博場に踏み込んで現行犯逮捕するケースが多いです。
他にも、こうした摘発から、賭博場の提供者、換金係などが摘発され、他の利用者が特定されることも考えられます。
他にも、オンラインカジノの例で言えば、オンラインカジノ運営者や決済代行業者の摘発による発覚、不正な入出金に対する税務調査から発覚するケースなどが考えられます。
賭博罪で逮捕された後の流れ
逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に検察に身柄が送致されます。これは、検察官が刑事裁判で訴えるかどうか(起訴)の権限を有しているためです。
その後、検察は24時間以内に勾留の要否を判断し、裁判所の許可のもと、10~20日間警察の留置場に拘束されることになります。
この勾留期間の満了までに、起訴・不起訴が判断されます。
ただし、賭博罪の場合は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕から72時間以内に釈放され、在宅のまま捜査が進められることが多いです(在宅事件)。
在宅事件の場合は、定期的に警察や検察に呼び出されて、取調べを受けることになります。
勾留が行われる身柄事件と違い、時間的な制約はないため、起訴などが決定するにもおおよそ2か月~4か月ほどかかることがあります。
なお、在宅事件であっても、捜査は継続することになるため、起訴され処罰されることもあります。

賭博罪の初犯の量刑
単純賭博罪の場合は、十分に反省を示すことで、初犯であれば不起訴処分となる可能性があります。
しかし、常習性が見られ、常習賭博罪が適用された場合、罰金刑が定められていないため、懲役刑となるおそれがあります。
起訴には、公開の刑事裁判が行われる正式起訴と、簡易的な書面で審理を行い罰金刑が言い渡される略式起訴があります。
100万円以下の罰金に該当する犯罪であれば、略式起訴となる可能性があります。
略式起訴は罰金刑で済む一方、前科がつくことになるため、注意が必要です。
弁護士に相談して適切な対応が重要
前述のとおり、単純賭博罪で有罪となった場合は前科がつくことになります。
常習賭博罪の場合は、懲役刑が科される可能性もあるため、弁護士に相談して適切な対応を行うことが重要です。
被害者のいる犯罪では、被害者に対して謝罪と示談を行うことで、処分が減軽される可能性があります。
しかし、賭博罪では被害者がいないため、示談交渉はできません。そのため、以下のような対応を行うことがあります。
- 犯罪が発覚する前に警察に自首を行い、減軽を目指す
- 取調べに積極的に協力し、反省を示す
- 反省を示すために、犯罪の被害者支援団体に贖罪寄付を行う
- 再犯防止策として、ギャンブル依存症の治療を受け更生の姿勢を示す など
弁護士に相談することで、今後逮捕の可能性や、刑事処分の見通しを立て、今すべき対策を講じることができます。
さらに、検察に意見書を提出するなど、早期の釈放や不起訴処分獲得に向けて、適切なサポートを行ってもらえます。
特にオンラインカジノなどに関しては、違法だと十分に認識せずに遊んでしまったという人も少なくありません。
不安な場合は、まず弁護士に相談して、適切な対応を行うことが望ましいです。
賭博罪に関するよくある質問
賭博罪の時効はいつ?
刑事事件における時効とは、検察が起訴できる期限である公訴時効のことです。賭博罪の時効は、適用された罪によって異なります(刑事訴訟法第250条)。
内容 | 時効 |
単純賭博罪 | 3年 |
常習賭博罪 | |
賭博場開帳図利罪 | 5年 |
賭けが違法になるのはどこから?
賭けが違法になるのは、賭けているものが賭博の定義に当てはまるかどうかや、賭けているものが財物であるかどうかによって異なります。
賭博の定義は、勝敗が偶然の事情により決定されるもの、財物とは現金や不動産、動産、債権などです。
一般的によく知られている麻雀やスポーツなどはもちろん、じゃんけんであっても、現金を賭ければ違法賭博となります。
賭博罪になる金額はいくらから?
たとえ1円でも現金を賭ければ賭博罪が成立します。
一方で、一時の娯楽に供するジュースやタバコ、お菓子など、その場で消費できるものや少額のものであれば、賭博罪に該当しません。
まとめ
日本で賭博が違法とされているのは、賭博が横行することにより、国民が怠惰な浪費を行い、適切な経済活動が行われないだけでなく、副次的に犯罪を誘発するおそれがあるためとされています。
公営ギャンブルが認められているため、賭博はグレーゾーンだと考えがちですが、公営ギャンブル以外は原則違法です。
たとえ軽い遊びのつもりでも、オンラインカジノや賭け麻雀など、身近なところで摘発されるケースが増えています。
ギャンブルにはまってしまうと、賭博罪で逮捕されるだけでなく、財産上に大きな損害を受けることになります。
もしオンラインカジノなどを利用してしまい、逮捕が不安な場合は、弁護士に相談して、今後の見通しや今可能な対策を講じることが重要です。