不起訴処分とは|不起訴になる理由や無罪との違い

前科や実刑を避けるには、不起訴(処分)を獲得する必要があります。

不起訴を獲得するためには以下の2点が大切です。

  • 被害者と示談する(犯罪事実を認める場合)
  • 弁護士から適切なアドバイスを受ける(犯罪事実を認めない場合)

この記事では、以下の内容を解説します。

  • 不起訴とは何か
  • 不起訴獲得のメリット
  • 不起訴を獲得するために必要なこと

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不起訴処分とは

不起訴処分とは、被疑者を刑事裁判にかけずに事件を終了させることです。

検察官は、警察や検察で収集した証拠をもとに起訴(裁判の開廷を提起する)か不起訴(裁判の開廷を提起しない)か判断します。

不起訴処分となれば、前科がつかずに済み、身柄が釈放され、日常生活に戻ることができます。法務省のデータによると、2022年の不起訴率は67.8%でした(刑法犯・特別法犯・道交違反含む)。

刑事事件に関与してしまった場合、不起訴処分を得ることが重要です。

参考:令和5年版 犯罪白書 第2編 犯罪者の処遇 第2章 検察 第4節 被疑事件の処理|法務省

不起訴とよく似た言葉

ここでは、不起訴とよく似た下記の言葉を解説します。

  • 起訴と不起訴の違い
  • 不起訴と無罪の違い
  • 不起訴と罰金の違い
  • 不起訴処分告知書とは

起訴と不起訴の違い

起訴とは、犯行の疑いがある人を刑事裁判にかけることです。

日本の刑事裁判では、起訴後の有罪率が約99.9%と高く、一度起訴されてしまうと無罪を獲得するのは難しい可能性があります。

起訴されると前科が付きます。不起訴の場合、前歴はつきますが前科はつきません。

不起訴となったからといって、疑いのある罪について許されたわけではありません。

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不起訴と無罪の違い

不起訴の場合は刑事裁判にならないので、有罪無罪の判断はされません。

刑事裁判になった結果、犯罪の証明がない場合は無罪が言い渡されます。

不起訴処分と無罪の違いは以下の通りです。

不起訴処分 無罪
裁判 裁判にならない 裁判で無罪になる
判断する人 検察官 裁判官
確率 67.8% 0.1%
前科 前歴のみ 前歴のみ

参考:令和4年 司法統計年報(刑事編) – 裁判所

前述の通り、有罪率は約99%と言われる背景には、検察が有罪に持ち込める確実な事件のみを起訴する傾向があります。

そのため、適切な弁護を受ければ不起訴処分を得る可能性がありますが、無罪判決を得るのは非常に困難だとされています。

不起訴のうち、嫌疑なしや嫌疑不十分は犯罪事実の証拠が不十分なので、無罪に準じるとみなされます。

起訴猶予は証拠があり起訴もできる状態だったので、有罪に準じるといえます。

不起訴と罰金の違い

罰金は刑事裁判で有罪になった結果、科される刑罰です。不起訴の場合はそもそも刑事裁判にならないため、罰金はありません。

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不起訴処分告知書とは

不起訴処分告知書とは、捜査の対象となった刑事事件について不起訴になったこと等が記載されている書面です。郵送により取得する方法と、直接交付を受ける方法があります。

不起訴処分になっても、多くの場合被疑者に連絡はありません。留置されている場合は「帰って良いですよ」としか言われず、理由も教えてもらえません。ただし、被害者が告訴や告発をした事件は、告訴人や告発人に対して通知されます。

不起訴になったことを知らなければ、「いつか起訴されて刑事裁判にかけられるかも」という不安が残ります。逮捕されると周囲に知られ、職場に影響がでる可能性もあります。不起訴処分になったら不起訴処分告知書を取得し、職場に報告をしましょう。

不起訴処分になる理由

不起訴処分になる明確な理由は公表されていませんが、以下のように分類することができます。

  • 起訴猶予
  • 嫌疑不十分
  • 嫌疑なし
  • 親告罪の告訴取り下げ
  • その他

詳しく解説します。

起訴猶予|さまざまな事情により起訴しない

起訴猶予とは、犯罪事実が明白でも様々な事情、情状に鑑みて不起訴とすることです。検察官は起訴しようと思えばできますが、本人の反省や更生の見込みなどの様々な事情を考慮し、起訴を見送る処分です。

犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

引用:刑事訴訟法248条

上記条文から、不起訴処分は以下の点を基準に判断されると考えられます。

  • 被疑者の性格、前科前歴の有無
  • 被疑者の年齢(少年なのか、高齢なのか)
  • 被疑者の境遇(家庭環境、保護監督者の有無、職業)
  • 犯罪の軽重(犯罪の内容、被害の程度)
  • 犯罪の情状(経緯や動機、故意か過失か、犯行の手口、社会への影響)
  • 犯罪後の状況(示談や反省の有無、被疑者の言動)

被害者がいる犯罪では、示談の成立、被害回復への努力が非常に重視されます。示談が成立したことになどにより不起訴処分となる場合は、この起訴猶予を指します。

法務省によると2022年の不起訴処分のうち約69.2%が起訴猶予によるものでした。

起訴猶予の場合、起訴されなかったというだけで、無罪になったわけではありません。その後の事情により、起訴されるべきであると判断されれば起訴されます。早めに弁護士に相談し、起訴回避のための対処をしておくのが良いでしょう。

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嫌疑不十分|証拠が不十分

嫌疑不十分とは、犯罪行為の事実を認定すべき証拠が不十分であるため、不起訴とすることです。

犯罪の証拠が揃っていないため、処分保留(※)で釈放されるケースがあります。

(※)処分保留:確実な証拠が出てこないため、起訴か不起訴の処分を保留にして釈放すること

以下の嫌疑なしとは違い、完全に犯罪の疑いがないわけではありませんが、裁判では被告人が罪を犯したことを証明できなければ無罪になります。十分な証拠がない場合は嫌疑不十分で不起訴になります。

嫌疑なし|犯罪の疑いがない

嫌疑なしとは、捜査機関の捜査の結果、犯罪の疑いがないと判明した場合に不起訴とする際の理由です。

犯罪事実の疑いがないとは、以下のような場合です。

  • 犯罪行為の事実を認定すべき証拠がない
  • 犯罪行為の事実を認定すべき証拠をもとに真犯人が見つかった
  • 被疑者のアリバイが立証された

親告罪の告訴取り下げ

親告罪の場合、被害者が告訴を取り下げると検察官は被疑者を起訴できなくなり不起訴になります。

下記のような罪が親告罪に該当します。

  • ストーカー規制法違反
  • 過失傷害罪
  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪 など

被害者が親告罪で刑事告訴をした後で、被疑者との示談がまとまり告訴を取り下げる場合があります。告訴が取り下げられると、検察官は起訴できないので、不起訴処分になります。

その他の不起訴理由

不起訴処分となる理由は、起訴猶予や嫌疑不十分など以外にもいくつか種類があります。例えば以下のものが挙げられます。

訴訟条件を欠くもの 被疑者死亡・法人など消滅
申告時の告訴・告発・請求の欠如・無効・取り消し
時効完成
道交法違反反則金納付済み
確定判決あり(同一の事件について判決が確定している)
起訴済み・公訴取り消し
刑の廃止(犯罪後に刑が廃止された)
大赦
事件が罪にならないもの 心神喪失
刑事未成年(被疑者が14歳未満)
犯罪の要件に該当しない、違法性阻却事由がある

不起訴になったらどうなる?

不起訴になると、以下のメリットがあります。

  1. 刑事裁判及び刑罰を受けない
  2. 前科がつかない
  3. 刑事手続きから解放される
  4. 社会的不利益を受けなくて済む

刑事裁判及び刑罰を受けない

不起訴になれば起訴されないので、刑事裁判を受けずに済みます。刑事裁判を受けなければ、比較的早く釈放され、刑罰も科されません。

前科が付かない

刑事裁判を受けなければ刑罰が科されないので、前科も付きません(ただし、前歴は残ります)。

前科が付くと、日常生活や勤務先等にも影響がでるかもしれませんが、前科がつかなければ、もとの日常生活に比較的早く復帰できます。警察や検察の記録に被疑者として捜査を受けた記録(前歴)は残りますが、すぐに何かのデメリットになることはないでしょう。

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刑事手続きから解放される

身柄を拘束されている場合(勾留中の場合)は刑事施設からの解放(釈放)が期待できます。

刑事裁判を受けるとなれば、起訴から判決まで早くても即決裁判で約1週間、通常の裁判なら約1か月はかかります。不起訴になれば、その間の面倒な手続きや不安から解放されます。

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社会的不利益を受けなくて済む

会社によっては刑事裁判で有罪判決を受けた場合に、以下のような処分を受ける場合があります。

  • 懲戒
  • 解雇
  • 減給
  • 降格 など

不起訴を獲得できればこれらの処分をされずに済みます。

また、罰金以上の刑に処せられたことを欠格事由とする職業があります。不起訴を獲得できれば、欠格事由に該当することなくそうした職に就けます。

逮捕から不起訴までの流れ

刑事事件で逮捕されると、48時間以内に送致され、24時間以内に勾留請求をするかどうかを検察官が判断します。

裁判所が勾留を決定すると、原則10日間勾留され、その間に起訴・不起訴を検察官が判断します。争いがある、必要な捜査が終了しない等やむを得ない理由があれば、さらに10日延長される場合もあります。

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不起訴獲得のためにできること

不起訴を獲得するためには何をしたらよいのでしょうか。

検察官が起訴または不起訴を決めるのは、被疑者が勾留されてから10日まで(最大20日)の間です。この間にできることをみていきましょう。

犯罪事実を認める場合

誠実に謝罪する

被害者のいる事件では、示談の成否が鍵です。被害者に対して誠実に謝罪をすることが大切です。

逮捕・勾留されている場合は被害者と直接会えないので、弁護士を通して謝罪文を渡してもらいましょう。

被害者と示談する

犯罪事実を認める場合は起訴猶予による不起訴獲得を目指すため、早期に被害者と示談をします。

検察官は起訴・不起訴を決めるにあたり、示談の成否や示談後の被害者の気持ちなどを勘案します。

被害者から「加害者を起訴しないで欲しい」「許して欲しい」と言われているのであれば起訴猶予による不起訴を獲得できる可能性が高まります。

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犯罪事実を認めない場合

弁護士から適切なアドバイスを受ける

犯罪事実を認めない場合は嫌疑不十分による不起訴獲得を目指します。

公判前には、警察や検察の捜査資料は弁護士に開示されません。弁護士は被疑者から聞き

取った内容や客観的証拠、集めた情報などにより嫌疑不十分を目指して弁護活動をします。

取り調べの対応に困った場合は、弁護士から適切なアドバイスを受けましょう。

弁護士は取り調べに関して助言し、あるいは聴取した取り調べ状況を踏まえて捜査官に異議を申し立てます。

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冤罪ならば否認を続ける

冤罪ならば否認の姿勢を貫きましょう。

取り調べでは厳しい追及が予想されます。精神的にも疲弊し、事実でないことを事実であると話して、その内容が記載された調書が作成されてしまう場合があります。

冤罪に陥るリスクを回避するためにも、弁護士のサポートをうけつつ、否認を続けましょう。

薬物事件で被害者がいない場合

贖罪寄付をする

被害者がいない薬物事件である場合には、贖罪寄付(※)をすることで罪を償う気持ちを意思表示でき、不起訴を獲得できるケースがあります。寄付金は、日弁連および各地の弁護士会の法律援助事業基金に充当され、法律援助を必要とする方のために使用されます。

(※)贖罪寄付:公益活動を行なっている団体に寄付すること

被害者がいない薬物事件や道路交通法違反、脱税などの事件の場合は、弁護士と相談をして贖罪寄付を検討しましょう。

手続きを弁護士にまかせる

検察官に起訴・不起訴の判断をされるまでに示談を成立させることが不起訴獲得のために重要です。

逮捕・勾留されていると自分で交渉することはできません。被害者側としても、加害者との直接交渉は望まないことが多いでしょう。弁護士がついていれば、被害者との示談交渉や示談書の作成といったすべての手続きを行ってもらえます。

交渉に慣れている弁護士に依頼をすることで、早期解決および不起訴処分の獲得の可能性が高まります。

まとめ

当事務所は、年間1,000件の相談実績があり数多くの事件を解決してまいりました。

被害者との示談交渉はもちろん、警察への取り調べに対してどのような発言をするべきなのかなど、これまでの経験を活かし状況に応じた適切な弁護活動ができます。

また24時間365日相談を受付していますので、不起訴を獲得したいなど、刑事事件にお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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